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山口恵里の“現場に行く!”2025年5月号
「第65回:株式会社おまめ」
皆さん、こんにちは!スモールサン事務局の山口恵里です。
「山口恵里の“現場に行く!”」第66回は、京都府京都市にある株式会社おまめの代表取締役、蔵立晋伍さんにお話をお聞きしました!

銀行で法人営業を経験したのち、母親とともに惣菜店『ながいきおまめ』を立ち上げ、経営はもちろん現場での調理も担っていたという蔵立さん。
その後、自身の補助金・助成金活用のノウハウを強みに起業し、現在では海外人材の採用支援も担い、「ヒト・モノ・カネ」をトータルでサポートする伴走型支援を展開されています。
これまでの実践や経験から培った「地域密着・対話型」支援に迫ります!
【会社情報】
会社名:株式会社おまめ
代表:蔵立晋伍
本社所在地:
〒602-0059 京都市上京区実相院町139番地3 GoogleMap
事業内容:
経営コンサルティング業(経営革新等認定支援機関:ID10726000212)
外国人材の紹介、宅地建物取引業(京都府知事(1)第14613号)
Webサイト:https://omame-kyoto.com/
大手銀行に学んだ「数字を見る力」と「現場の肌感覚」
山口 元々京都のご出身なんですか?
蔵立 はい。大学まで京都で、卒業後は大手銀行に就職して法人営業をしていました。そこでは大阪、福岡と異動して、5年目で辞めて京都に戻ってきた感じです。
山口 辞めたきっかけは何だったんですか?
蔵立 大学の頃から漠然と将来的には自分で商売をしたいなっていう思いがあったんです。なので、就活では銀行に絞ってました。いろんな業種の企業を見られるし、財務や経営の勉強にもなるかなと。
山口 なるほど。最初から修行のような感じで銀行に就職されたんですね。
蔵立 銀行では中小企業を中心に、さまざまな業種の法人と関わらせてもらいました。決算書や財務諸表など数字を見る力はもちろん、経営者との対話や現場訪問を通じて、その会社の強みやリスクなど数字に出てこない部分を感じる肌感覚というのも養われたと思います。融資計画書や稟議書を書くというのも、銀行時代の経験がベースになって今の会社で活きていますね。
山口 確かに様々な企業の経営の深い部分に触れる機会って他では中々得られない経験ですよね。
蔵立 本当にそう思います。いろんな会社のリアルを見せてもらえたのは、今の仕事にすごく繋がっていますね。
母親と共同創業した惣菜屋『ながいきおまめ』
山口 銀行を辞めた後は、すぐに今の会社を起業されたんですか?
蔵立 いえ、それが母と一緒にお惣菜屋を立ち上げたんですよ。
山口 お母様と一緒に起業って、珍しいですよね!
蔵立 あんまりいないですよね(笑)。サラリーマン時代、福岡にいる時に年に1〜2回くらい京都に帰って、母親と話す中で「お惣菜屋やりたい」って話が出てたんです。僕も商売したいって気持ちがあったんで、「じゃあ一緒にやってみるか」と。それで、母が個人事業主で、僕が専従者という形で始めました。
山口 そもそもどうしてお惣菜屋をやろうと思われたんですか?
蔵立 母はもともと病院とか高齢者施設の給食を作る業者で働いていたんです。パートから始めて、正社員になって、最終的にはスーパーバイザーまで行って。その中で「食を通じて地域に貢献したい」って気持ちが芽生えたみたいです。
山口 パートからの叩き上げってすごいですね!
蔵立 それで北野天満宮、天神さんの近くの商店街の一角に店舗を借りて、『ながいきおまめ』という惣菜屋を始めました。地元の素材を使って、添加物をなるべく使わず、減塩・薄味で出汁を活かした和惣菜を作っています。
山口 なるほど。蔵立さんは主に経営面で協力されてたんですか?
蔵立 経営面はもちろんですが、がっつり惣菜も作ってましたよ。もともと僕も料理したり食べてもらうことが好きだったので、好きが昂じて大学時代に調理師免許も取ったんです。それで1週間を4日と3日に分けて、週の半分は僕がメインで調理に入って残りはサブで入ってという感じに母と分担して回していました。
山口 そうだったんですね。がっつり現場にも入られていたとは驚きです。
蔵立 以前は介護施設向けの昼食などの配食サービスもやってたんですが、やはり一から丁寧に手作りすることにこだわっているので、業態を増やすと体力的にも精神的にもキツくなる。それで現在は店舗での販売に絞っています。また、母も女手一つで子供2人育ててきた「肝っ玉母ちゃん」なので、人に任せるより何でも自分でやる方が性に合っているということもあり、5年ほどやってから僕は別の道に進むことにしました。現在店舗の方は母と従業員5名で運営をしています。
自社で培った補助金活用のノウハウを活かして起業
山口 それでお惣菜屋さんから離れるということになり、新たに自分で事業をやってみようという流れだったんですか?
蔵立 そうですね。現在の株式会社おまめでの事業に繋がるんですが、『ながいきおまめ』では補助金や助成金を上手く活用してキャッシュを貯めて、借入れ金を全額返済したんです。それで軽くなったタイミングで、知り合いの経営者さんから自分の会社でもそれをやって欲しいという依頼をもらったんです。京都と大阪で飲食店を三店舗ぐらいやっている会社で、今度グランピングの事業を立ち上げるということで、「その補助金の動きをうちでもお願いできへんか」と。
山口 今年2月の別刊スモールサンニュースで取材させて頂いた株式会社満天星さんですね。滋賀県大津市でグランピング施設『VIWAKO GLASTAR(ビワコグラスター)』の運営をされています。
蔵立 そうなんです。そこでご縁があって、満天星の経理と他の飲食系2社の業務を任せてもらうことになり、補助金の申請もやりつつ、経理周りもしっかり整えていった感じです。それが2018年頃ですね。最初は個人で請け負っていたんですが、そこからどんどん業容が広がっていって2022年に法人成りしました。
山口 コロナ関係で補助金のニーズが高まった時期でもありますね。
蔵立 コロナ禍は大きなきっかけになりました。特に事業再構築補助金ができて、国もかなり力を入れていた時期に、130件ぐらい申請させていただいて採択率は90%以上でした。ありがたいことにそれが噂になって、どんどん依頼が来るようになっていって。今では補助金だけではなく、助成金なども含めて網羅的に支援をさせていただいています。
「地域密着・対話型」でしかできない伴走支援
山口 いつか自分で商売をやると決めて、銀行での法人融資、そして『ながいきおまめ』での経験がそのまま活かされているのが素晴らしいですね。
蔵立 そうですね。やっぱりオン・ザ・ジョブ・トレーニングで、自分で実践しながら少しずつブラッシュアップしてきて、今に至っているという感覚があります。前職もそうだし、遡ればスタート地点は銀行での経験だなと思います。実務はもちろん、色んな社長さんとのコミュニケーションであったり、その頃から培ってきた経験が今に繋がっています。現在は45〜50社ぐらいの会社さんと顧問契約をさせていただいていて、京都を中心に、大阪、滋賀も含めて、製造業や飲食、建設など、いろんな業種の方とお付き合いがあります。
山口 補助金や助成金って制度が複雑で、企業の方も分からないことが多いですよね。
蔵立 そうなんです。だからこそ丁寧に、きちっと最後まで伴走するというのを心がけています。補助金ってスケジュールがすごく大事なので、期限に間に合わせるのは最低限として、ギリギリではなくお客さんが「ちゃんと支援してくれたな」と満足してもらえるように、納得感のある支援を意識しています。ビッグデータを活用したり等大手には大手にしかできない支援がありますが、経営者とフェイストゥフェイスで対話し、事業や業務内容を拝見して深く理解した上で、最初から終わりまで一貫してサポートできる「地域密着・対話型」でしかできない支援があります。
山口 今は補助金の方向性も変わってきているので、活用するにはやはり専門家のサポートも大切になりますよね。
蔵立 はい。コロナ禍での支援は「売上が何%下がったら」とか「利益率がこれだけ下がったら」みたいな基準があって、いわゆる“しんどい会社”を救済する流れでした。でもそれは一巡して、今は逆に「体力や事業基盤のある会社」や「成長の道筋を持っている会社」「成長産業に通じるシナジーがある会社」を選別してバックアップしていこうという方向性に変わってきています。そうして間口が狭まった分、がっつり大規模投資も補助するようになっていますね。
山口 なるほど。そうなると、これから採択されるのも難しくなりますよね。
蔵立 そこでどうストーリーを作り道筋を立てて申請するかというのが重要になりますね。逆にその企業の状況や規模、業態などからある程度通るか通らないかも判断できるので、これをやっても返って負担になるだけだろうという時には正直にそうお伝えしてお断りしています。また、逆に契約をさせてもらっても一定以上の成果が出ていないとうちが感じる場合には、うちから報酬の返上を申し入れさせてもらうこともあります。これまでに培った経験とノウハウをフルで活かし、銀行との交渉やアドバイス、提案などをすることもできますので、「心強い財務参謀」として堅実にサポートさせていただいています。
海外人材採用でヒト・モノ・カネをトータルで支援!
蔵立 もう一つ、当社の大きな強みとして、海外人材の採用や雇用定着もサポートしています。
山口 それはどういったきっかけで始められたんですか?
蔵立 当社でアシスタントとして働いてくれている女性がいるのですが、彼女の叔父さんが外国人技能実習生の受入れや特定技能登録支援の組合をされていて、現在高齢なのですが後継者がいないということで紹介されたんです。現在は弊社が顧客開拓部門として稼働し、実務も少しづつ習得していっている他、将来の承継を見据えて大口での出資もしている状況です。
山口 すごいご縁ですね!
蔵立 この組合は滋賀県の優良監理団体(過去に法令違反がなく、技能評価試験の合格率・指導・相談体制等について、一定の要件を満たしている外国人監理団体)で、ベトナムの人材を強みにしています。現地の送り出し機関と提携していて、日本側の企業から人材ニーズを拾ってきて、「こういう人材が欲しい」というのを伝えると、日本語学校で人材を教育して日本に送り出してもらえる。組合はその人材を紹介するだけではなく、受け入れ先の日本企業との間に入って、毎月フォローをしなくてはいけません。それが組合の売り上げになっていて、企業からは一人あたり毎月3〜4万円といった管理費をいただく形です。うちで支援している会社さんもやはり人材不足の問題は抱えていて、どの業界でも人材の悩みは付きものですから、これはシナジーがあるなと。
山口 海外人材の支援と、そのための補助金や助成金の支援が一体で提供できるのって素晴らしいですね!そういう助成金ってたくさんあるんですか?
蔵立 直接的に海外人材向けという補助金や助成金はあまりないんです。業務改善助成金のように、海外人材も分け隔てなく人材育成や教育訓練の対象として申請できるものも僅かにありますが、多くの場合はビザの関係などもあって申請できません。でもお金って「色」がないので、直接海外人材にかかるコストを対象にした助成金でなくても、別の切り口で助成金を受け取ってペイできるなら問題ないですよね。また、人を入れることで必要になる設備投資に対して補助金を活用することもできます。この経営に不可欠な“ヒト・モノ・カネ”を一斉にサポートできるというのが、うちの最も大きな強みだと思っています。
山口 それもまた対話型で事業内容なども深く理解した上で支援をしてくれる専門家だからこそですね!
今後の展望
山口 今後の展望などもお聞きしていいですか?
蔵立 補助金って国の制度なので、このビジネスがいつまで続くか分からないっていうのはあります。急になくなることはないとは思うんですけど、予算の関係で規模が縮小されたり、制度が変わったりする可能性はあるので。なので、海外人材の支援を始めたのもそうですが、先の不安定な面も見据えて今の内に自分の“引き出し”を増やしていかなければと思っています。そうして伴走型の支援に繋げて、スポットだけではなくストック型を軸にした収益構造にして、ちょっとやそっとでは崩れない事業基盤を作っていきたいなと。そう思って、宅建業も取得しました。
山口 すごいですね!
蔵立 銀行時代に宅建士は取ってあったんです。今すぐメインでやる予定ではないですが、ちらほら仲介させていただいたりはしています。でも専門でやっている訳ではないので、今後不動産に特化した人材を入れるのもいいなと考えています。将来的には依頼があれば仲介でも売買でも対応できるようにして、同時にこういう補助金や助成金も活用できますよという提案ができるようにしたいと思っています。
山口 物件探しから資金調達まで相談できるとは経営者さんにとっても頼もしいですね。本日はありがとうございました!