スモールサンニュース山口恵里の”現場に行く!”

「第63回 VIWAKO GLASTAR(ビワコグラスター)
株式会社満天星/株式会社礎」


皆さん、こんにちは!スモールサン事務局の山口恵里です。
「山口恵里の“現場に行く!”」第63回は、昨年のゼミKYOTO会社見学企画の懇親BBQで訪れた滋賀県大津市のグランピング施設『VIWAKO GLASTAR(ビワコグラスター)』の運営をされている株式会社満天星の役員であり、京都市中京区にある株式会社 礎の代表取締役社長 重松健治さんにお話をお聞きしました!

雄大な琵琶湖の浜辺を目の前にしたグランピング施設のビワコグラスター。
グランピングの由来である「豪華なキャンプ(glamorous camping)」という言葉の通り、まるでホテルの一室のように家具の揃った豪華な宿泊用テント、日差しや雨を防ぐ屋根有りのバーベキューサイトでの手ぶらBBQ、そして元々水浴場で県内でも一・二を争う水質を誇る浜辺では様々なアクティビティを楽しむことができます。

重松さんは関西を中心に建築設計・不動産運用を手掛ける株式会社礎の2代目社長。その本業とはまた別に、互いに共鳴し想いを同じくする仲間と別会社の株式会社満天星を立ち上げ、2017年に滋賀県内で初となる本格的なグランピング施設をオープンさせました。
なぜ琵琶湖でのグランピング施設だったのか?また、何より大変だったという資金集めの苦労など、重松さんの挑戦に迫ります!


【会社概要】
会社名:株式会社満天星 (マンテンボシ)
設立:2017年
代表取締役:東元大喜
業種:飲食業、宿泊業
業務内容:バーベキュー場、グランピング施設の運営
「VIWAKO GLASTAR(ビワコグラスター)」Webサイト:https://glastar.jp/

会社名:株式会社 礎
設立:1995年3月10日
代表取締役社長:重松 健治
業務内容:不動産及び資産運用 / 建築企画設計監理 / コンサルティング / 販売促進
オフィシャルサイト:https://ishizue-inc.com/

琵琶湖の自然を気軽に堪能できるグランピング施設
『VIWAKO GLASTAR(ビワコグラスター)』

山口:以前ゼミKYOTOの会社見学企画での懇親会で、滋賀県にあるグランピング施設の『ビワコグラスター』を利用させていただきました。まずはこの『ビワコグラスター』について、そのような施設なのか教えてください。

重松:ビワコグラスターは、滋賀県の琵琶湖畔にあるグランピング施設です。施設の目の前が浜辺になっていて、琵琶湖の水質も滋賀県内で1番か2番と言われるほど綺麗な場所です。もともと水泳場として使われていた場所なので、美しい琵琶湖と夜には満天の星空と絶景を楽しんでいただけます。

山口:グランピングというのは、いわゆるキャンプ場とは違うんですよね?

重松:はい。グランピングは、テントで宿泊するんですけど、一般的なキャンプとは違ってホテルのような設備を整えているのが特徴です。ビワコグラスターもテント内にダブルベッドやテーブル、ソファといった家具を完備していて、冷暖房設備もすべてのテント完備しています。またBBQ施設も備えていて、日差しや雨を防ぐ屋根有り席(バーベキューサイト)がある他、炭・コンロ・食器・お肉や海鮮などの食材も全てご用意していますので、天候に左右されず琵琶湖を眺めながら手ぶらでバーベキューが楽しめます。

山口:私初めてグランピングのテントに入ったのですが、室内はホテルの一室のようで、でもホテルよりもずっと自然を近くに体感できて、まさに「豪華なキャンプ(glamorous camping)」という由来通りの空間でした。琵琶湖の湖畔で、グランピング施設は以前からあったんですか?

重松:いえ、滋賀県内で本格的にグランピングを始めたのは、うちが最初だったと思います。今は県内に大小20ヶ所くらいのグランピング施設ができていますが、あれだけ琵琶湖の綺麗な浜辺に面してテントを設置している施設は、うちだけですね。他のところは若干浜辺から離れていて、その分ハウス型のグランピング施設だったりするところが多いと思います。というのも、うちの施設がある場所は市街化調整区域で、建物が建てられない場所なんです。だからあくまでもテントのグランピング施設で、その分どこよりも琵琶湖に接近したロケーションが楽しめる立地になっています。

山口:なるほど。雄大な琵琶湖を目の前に自然を感じながら、アウトドア初心者でも安心して快適に過ごせるというのは最大の魅力ですね。

重松:水質の良さを活かした湖水浴や水遊びの他にも、スタンドアップパドル体験やバナナボード、鮎のつかみ取りといったアクティビティも堪能していただけます。



サラリーマンから経営者へ


山口:重松さんは元々ご自身で起業されたんですか?

重松:いえいえ。私はもともと京都の設計事務所に新卒で入社して営業の仕事をしていました。ところがその会社が倒産することになりまして、その頃に株式会社礎の前代表に声をかけてもらって転職しました。礎は今年で30周年になるんですが、私が入社したのは会社設立から6〜7年目くらいの頃で、当時はまだ5〜6人規模の小さな会社でした。最初は本当に右も左もわからず、ペーペーの営業としてスタートしました。ただ、建築業界は独立しやすい業界なので、周りの先輩たちが次々に独立していった結果、気づけば自分が最古参になっていたという感じですね(笑)。

山口:創業当初から関わっていたわけではないんですね。

重松:礎はもともとマンションやホテルの設計を手がける建築設計事務所なんですが、私が入社した当時はまだ会社の目標といったものがあまり明確にできていなかったので、「とにかくチャンスがあるなら何でもやる!」というスタンスで寿司屋やパン屋の経営なんかもやったりしていました。そこから2、3年経った頃から、会社としての方向性が少しずつ定まってきて、やっと設計と不動産という今のスタイルにシフトしていきました。周りが独立していく中で私も自然と責任のあるポジションになっていって、この10年で専務という肩書きをいただき、現在は代表取締役社長をさせてもらっています。

山口:なるほど、この10年で経営に深く参画されるようになったんですね。Webサイトを拝見しますと、ちょうどその頃からグループ会社でスイーツショップの経営なども始められているようですが、これは重松さんが率先されたんですか?

重松:そうですね。というのも、我々もリーマンショックまでは順調に業績を伸ばさせていただいていたんですが、リーマンショックの時に、仕事量が3分の1ぐらいになってしまったんです。何とか冬の時期を耐え忍んで、これからもう一度浮上しようという時に、これまでと同じ設計と不動産という柱だけでは難しいだろうと。それでまだ体力に余裕がある内に他の柱となる事業も育てようということになり、その頃にちょうど私が経営に入って色々な勉強会に参加したり他業種の方とも知り合うようになって色々と挑戦させてもらっています。


ニッチ市場を活かしたスイーツショップの展開


山口:飲食店では最初に『祇園セレブリテ』『北新地セレブリテ』というスイーツショップが最初ということですが、なぜスイーツだったんですか?

重松:それは、元々オークラやグランヴィアといった有名ホテルで長年パティシエをしていた人から「独立したい」という相談を受けたのがきっかけです。彼は美味しいケーキを作るのはプロですが、立地や内装を考えたり資金を集めたりといったことは当然どうしたら良いか分からない。我々はその逆です。それで「じゃあ一緒にやろう」と、ある意味起業支援のような形で10年前に始めました。当然ベースはしっかりしているので、やり方さえ間違わなければ、私たちが自分で人を雇ってやるよりは成長が早いというのもあります。エキスパートの人間を社長に就けて新しい器(会社)を作り、我々はホールディングスでオーナーとして自社のノウハウから経営指導なりバックアップをしていくという形です。

山口:お店の立地なんかも特徴的ですよね。

重松:そうですね。例えばデパ地下に入るようなスイーツショップは知名度や歴史のある勝ち組なので、私たちがどう頑張ってもそんなところには入り込めません。それであえてニッチな部分を行こうということで、祇園と北新地で夕方から夜にかけて営業するスイーツショップを始めました。クラブやスナックなどのお店ではお客様にバースデーケーキを提供することがありますよね。お祝いされてお客様は嬉しいし、お店はケーキに合わせてシャンパンなど勧めやすくなる。そういう目的のケーキ屋さんというのはどこの地域にもあるんですが、正直オリジナリティや味へのこだわりが薄くあまり美味しくないんです。

山口:役割がはっきりしてる分、必要最低限のクオリティになっちゃうんですかね。


重松:それで、うちでは小さい店舗ですが厨房も全部備えて、ちゃんと美味しいものをその場で作っていけるような体制を整えました。パティシエがその日売れる分を店で作って、プレートもちゃんと書いて、クオリティにもこだわったものを提供していこうということで始めました。バックボーンのない我々には「王道」は無理。それならそこの王道は最初から諦めて、ニッチなコンセプトをしっかりと練って戦略的に展開しています。


市街化調整区域を逆手に!ビワコグラスターの挑戦
「自分の人脈の中で共鳴したメンバーと新しいことに挑戦したい」


山口:こうしてお話を聞いていると、市街化調整区域であることを活かして琵琶湖の浜辺に接近してオープンしたビワコグラスターもコンセプトは同じですね。

重松:そうですね。ただ、ビワコグラスターは礎の関連会社としてではなく、私個人で新たな会社を立ち上げて運営しています。先ほども少し話しましたが、自分自身が会社の経営に関わるようになって色々な勉強会で学んだり色んな人と出会うようになりました。それで、自分の人脈の中で、そのビジネスに本当に共鳴したメンバーと何か新しいことに挑戦してみたいと思ったんです。それでチャレンジを試みた中の一つが、今回のグランピング施設のビワコグラスターなんです。

山口:元々グランピングやアウトドアの分野でビジネスをやりたい!みたいな気持ちはあったんですか?

重松:いや、それがアウトドアには全く興味がなくて、正直最初はグランピングというものも知りませんでした。グランピングは元々ヨーロッパで始まって、日本では星野リゾートさんが2015年に富士山麓でオープンしたのが最初です。それで私の親友の東元が、「これからグランピングがビジネスになりそうだ」と始めようとしたのがきっかけです。

山口:東元さんというのは?

重松:京都で飲食店を経営している私の親友です。彼は当初自分の会社の1つの事業として小規模なグランピング施設を始めようとしていて、実は滋賀県の別の場所である程度計画を進めていたんです。私もそれで相談を受けたんですが、どうしてもアクセスの悪さや環境の厳しさがネックになる。「これはちょっと待った方がいいんじゃないか」という話になったタイミングで、今のビワコグラスターの場所が浮上したんです。あの場所は琵琶湖でも水質が1番か2番かと言われるほど綺麗で、元々水泳場やキャンプ場になっていたんですが、土地を持っていた方が亡くなられて相続の関係で半分売ることになったんです。でもせっかくの良い場所なので、それを活かしたビジネスに利用してほしい。かといって、半分はキャンプ場として残すので、そことバッティングしてしまうのも困るということで相談があったんです。

山口:なるほど、それであの場所でグランピングを!

重松:そうなんです。元々のキャンプ場は場所だけを貸し出す本格的なアウトドアで、客層は自分たちでテントやアウトドア用品を車に積み込んで来るようなアウトドア好きです。一方グランピングは、キャンプに必要な道具を自分で用意することなく気軽に自然を楽しむのが目的で、客層も単価も全然違うんです。市街化区域で建物を建てられないという問題もありましたが、それもあくまでもテントであるグランピングであれば問題ない。むしろその立地を活かして、他にはないグランピング施設にすることができます。それならと先方にも了解が得られたので、「もうここに決めよう」とあの場所に定めて動き始めました。その頃私は礎の専務だったのですが、実は最初社長(現在の会長)にも黙っていまして・・・。

山口:本業が疎かになるんじゃないかと思われかねないですもんね。

重松:そうなんです。それで悩んでいたのですが、他にも協力してくれるメンバーが集まってきて、いよいよ道筋として見えてきた時に話をしたら、「いいやん、やってみろよ」と言っていただけて、更には一部出資もいただいて、背中を押してもらえました。そうして東元を代表に数名の役員と株式会社満天星という会社を起こしたのがスタートになります。


異業種の経営者が集い、一つの事業に得意分野を結集!


重松:ただ、大変なのはそこからでした。というのも、あの場所を使うには買い上げなきゃいけないわけです。その資金調達が一番過酷でした。通常なら銀行から融資を受けるのが一般的ですが、1年目の会社な上に、場所も市街化調整区域で担保評価が低いので銀行融資は厳しい。そこで、資金を集めるために種類株を活用したりしました。

山口:種類株というのは?

重松:議決権はなく配当のみが出るといった、普通株式と権利内容が異なる株式です。これも出資法とか色々な問題があるので専門の弁護士さんや司法書士さんに監修してもらいながら、その株を元に約3ヶ月で2億5000万円集めました。

山口:ええ!たった3ヶ月ですか!?相当な営業力ですね・・・

重松:正直めちゃくちゃ大変でした。皆自分の会社を経営していますので、それぞれの取引先に出資をお願いして回って、共感してもらえるようにとにかくビジョンを伝えました。グランピングのビジネスとしての成長性や、琵琶湖の環境を活かした施設で地域への貢献や会社の福利厚生、イメージアップにも繋がるのでぜひ協賛してください。ただ単純にお金を出してもらって何もないという訳にはいかないので、種類株を発行して儲かった時にはちゃんと配当を出しますと。そうして調達した資金を元手に土地を購入して、中の設備投資をかけて、オープンしたのが2017年です。今同じことをもう一度やれと言われても絶対に嫌ですね(笑)。

山口:すごいですね!それで、そういった資金なんかの部分は重松さんが中心に、施設の運営なんかのソフト部分は飲食をされている東元さんが担当してという感じなんですか?

重松:そうですね。皆それぞれの業種があるので、それぞれの得意分野を結集して一つの事業を成長させています。メンバーにはゼミKYOTOの仲間もいて、株式会社おまめの蔵立くんは元バンカーなので銀行の交渉、税務面や補助金申請など裏方としてすごく活躍してくれています。また、出資してる会社さんにも仕事をしてもらっていて、株式会社夢咲工務店の屋敷さんには施設の工事をしてもらったり、他にも電気工事屋さんや水道屋さん、お酒のメーカーさんとか。出資してもらいつつ、施設の経営でビジネスとしても協力してもらっています。

苦労した人材の確保
地元での認知向上と適材適所での定着

重松:あともう一つ大変だったのは、やっぱり人材の確保ですね。地方なので人が少ないことに加え、スタートアップで地域に根ざしていないこともあって、最初の数年は大変苦労しました。さらに、残念ながら私たちの施設というのは、地元の方はあまり利用されないんですよ。やはり京都や大阪、一番多いのは名古屋方面から来られる方で、とても満足度高くお帰りいただいても、地元での評判にまではなかなか繋がらないんです。それでとにかく1年2年…と施設を継続して定着させること、それと例えばロードサイドに大きい看板を出したりして地元で認知してもらえるよう多方面でPRを続けました。幸い今は安定的に雇用ができるようになっていますが、それには4年から5年程はかかりましたね。

山口:
宿泊施設を地元で定着させるにはどうしても時間がかかりますね。

重松:ありがたいことに滋賀県や大津市の行政も観光に力を入れているので、今は観光協会などのバックアップも取れている状態です。滋賀県は近隣の京都や奈良、大阪に比べて宿泊がすごく少ないんですよ。それで今の滋賀県知事や大津市長はどんどん観光に力を入れています。例えば昨年大河ドラマになった『光る君へ』の紫式部は元々大津、滋賀県にゆかりのある歴史の偉人で、滋賀県も結構あれで観光PRをしたりしています。そういった観光や宿泊を増やそうとしているタイミングで我々もグランピングをスタートさせたので、観光協会にも結構推していただいたりしています。

山口:実際に人を採用する際には、どのようにしているんですか?

重松:近くに全国から学生が来ているスポーツ大学があるんですが、そこからバイトに来てくれる子も年々増えてますね。うちはレジャー施設なので髪型や服装など普通のバイトより厳しくないですし、華やかさもあります。学生バイトなので当然卒業と共に辞めていってしまいますが、いいバイトだと思ってもらえれば先輩の口コミで後輩が来てくれるようになるんです。それとは逆に、地元ではシルバー人材の方もたくさん来てくれています。定年退職して都会から自然の多いところに引っ越して来たけど、まだバリバリ現役で働けるという方が沢山いらっしゃるんですよ。施設の運営には料理作ったりお客様にサービスしたりといった花形の仕事だけじゃなくて、例えばベッドメイキングや草刈り、ゴミ拾いといった裏方的な仕事も沢山あります。若い子はそういう仕事はやりたがらないですが、シルバー人材や主婦の方なんかは普段からそういった作業に慣れていらっしゃるし、逆に接客などの表の仕事よりも裏方仕事を好む方も多いんです。

山口:やはり人材ごとに適材適所配置することが、定着の良さに繋がりますね。

重松:そうですね。おかげさまでここ数年はよっぽどの繁忙期以外は人材不足で困るということは無くなりました。

「グラスター」ブランドで各地にグランピング施設を!

山口:最後に今後の展望について教えていただけますか。

重松:まずは当然ですが、ビワコグラスターを更に良いものにしていきたいです。その上で、将来的にはフランチャイズのようにしてグランピングの運営場所を多方面に広げていきたいと思っています。私たちが立ち上げで一番苦労したのはやはり資金計画なので、その部分は大手などの資本に頼りながら、我々はグランピングの運営、オペレーションを増やしていく。例えば「グラスター」というブランド名で、ホテルのように各都道府県に行くとその土地ごとの風土やロケーションに合わせたグランピング施設を作っていきたい。

山口:
なるほど。今は琵琶湖のほとりにあるので「ビワコグラスター」ですけど、他の土地に行ったらその地名の「○○グラスター」があるみたいな。

重松:
そうです。各地にご当地グラスターがあるようなグランピングのチェーン展開が、最初から目指している目標であり理念でもあります。グランピングはテントや家具など設備投資としてはそんなに多額ではないので、場所や必要な許認可さえあれば比較的簡単に始めることができます。それで旅館に張り付いたグランピング施設などでは、どっちつかずで上手くいっていないところも結構多いんです。私たちはあくまでもグランピング自体に特化し、スポンサーの協力も得ながらビワコグラスター以上の場所を見つけて大きくしていきたいと思っています。

山口:今後新たな土地で新たなグラスターがオープンされるのが楽しみですね! 本日はありがとうございました!



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