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		<title>スモールサンニュース - 山口恵里の”現場に行く！”</title>
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			<dc:creator>山口恵里</dc:creator>
			<title>山口恵里の“現場に行く！”2026年10月号</title>
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			<description><![CDATA[
				
				



<!-- テキスト -->

<h2 >「第８３回：全国の仲間と学び、つながる一日<br />
〜『自主独立』の経営者達の学びの場〜（全国合同ゼミin広島レポート）」</h2>









































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<p>2026年9月11日、広島に全国各地のスモールサン・ゼミメンバーが集まり、「全国合同ゼミin広島」が開催されました。北海道から沖縄まで、地域を越えて集まった経営者たちは、広島ならではの見学企画や交流を楽しみながら、二つの講演を通じてこれからの経営について学びを深めました。<br />
<br />
前半は、広島修道大学商学部の木村弘教授による「経験・勘を経営の力に変える―アート・クラフト・サイエンスから考える戦略的思考―」。後半は、スモールサン主宰・立教大学名誉教授の山口義行先生による「激動の政治・経済情勢と中小企業～なぜ、中小企業を支援するのか～」です。<br />
経営者自身の経験や勘をどう活かすのか。変化する政治・経済情勢をどう読み、自社の経営に引き寄せて考えるのか。そして、なぜ経営者同士が学び、つながる場が必要なのか。全国合同ゼミならではの一日を振り返ります。</p>








































<hr class="clearHidden">





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<div class="column-image-right js_notStyle acms-col-sm-12">
	<a href="https://www.smallsun.jp/archives/002/202610/large-a593f70621df8810c5c2a7911bac32f5afdea3b09a1c05c49980a240062e60f2.jpg" data-rel="SmartPhoto[6639]" data-caption="">
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	</a>
</div>

































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<h3 >地域を越えて学び、つながる全国合同ゼミ<br />
〜北海道から沖縄まで全国の経営者が広島に集結〜</h3>








































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<p>2026年9月11日、スモールサン全国合同ゼミが広島で開催されました。全国合同ゼミは、普段は各地域で活動するスモールサン・ゼミのメンバーが一堂に会し、地域を越えてともに学び、交流する機会です。<br />
第1回の石垣島、第2回の札幌に続き、3年目となる今年の開催地は広島！主管を務めてくださったゼミHIROSHIMAでは、2月頃から準備を進め、この日を迎えました。当日は北海道から九州、沖縄まで、全国各地のゼミから70名にのぼる経営者が広島に集結。また、現地会場だけでなくZoomでの同時配信もあり、オンラインでも60名近い参加がありました。<br />
<br />
合同ゼミが始まる前には、広島ならではの特別企画も用意されました。参加者は江田島を訪れる見学組とゴルフ組に分かれて交流し、ゼミHIROSHIMAのメンバーは朝から各企画の運営や会場設営に奔走。地元のゼミがホストとなり、全国から訪れる仲間を迎えるのも、全国合同ゼミならではの光景です。<br />
<br />
そして、夕方からはいよいよ合同ゼミ。今回は、スモールサンニュースでも<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/column/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">「中小企業コラム」</a>を執筆いただいている広島修道大学商学部の木村弘教授と、スモールサン主宰・立教大学名誉教授の山口義行先生が登壇しました。木村教授からは、経営者の経験や勘をどのように経営の力へ変えていくのか。山口教授からは、激動する政治・経済情勢をどう捉え、中小企業経営にどう引き寄せて考えるのか。それぞれ異なる角度から、経営者が自ら考え、判断するための視点を学ぶことができました。<br />
まずは木村教授による、「経験・勘を経営の力に変える―アート・クラフト・サイエンスから考える戦略的思考―」から、当日の学びを振り返ります。</p>









































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<h3 >経験・勘を、経営の力に変える<br />
〜アート・クラフト・サイエンス〜</h3>








































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<div class="column-image-right js_notStyle acms-col-sm-6">
	<a href="https://www.smallsun.jp/archives/002/202610/large-7991c829c521215fface6cfa5a61a27354f4c3595d0ff9fe31fe0d2d47e644cd.jpg" data-rel="SmartPhoto[6639]" data-caption="">
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	</a>
</div>


































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<p>木村教授の講演は、これまでスモールサンニュースのコラムでも取り上げてきた「経験・勘・度胸」、いわゆるKKDをどう捉えるかという話から始まりました。<br />
中小企業経営では、「うちはKKDだから」と自虐的に語られることがあります。もちろん、どんぶり勘定や放漫経営、思いつきだけに頼る意思決定は避けなければなりません。一方で木村教授は、長年の実践の中で培われた経験や、そこから生まれる勘には、経営者にとっての財産や強みとしての側面もあると言います。<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/column/entry-6405.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">4月の「中小企業コラム」</a>でも、経験や勘を単なるデータ不足として捉えるのではなく、その中にある固有の価値に目を向けています。<br />
<br />
そこで手がかりとして紹介されたのが、経営学者ヘンリー・ミンツバーグの「アート・クラフト・サイエンス」という考え方です。<br />
「アート」は、洞察力やビジョン、直感などをもとに未来を構想する力。<br />
「クラフト」は、経験や実践を通じて身につけた現場感覚や技。<br />
「サイエンス」は、事実やデータを分析し、判断を支える力です。<br />
木村教授は、この三つのどれか一つが正しいのではなく、経営のさまざまな場面でそれぞれを組み合わせていくことが重要だと説明しました。<br />
例えば、意思決定一つをとっても、「まず見て直感的に判断する」人もいれば、「まず行動して確かめる」人、「データを集めてじっくり考える」人もいます。木村教授は、経営者それぞれに判断の特徴があり、実際の経営では、アート・クラフト・サイエンスを状況に応じて組み合わせながら判断していくことが大切だと説明しました。<br />
<br />
また、講演では「マネジメントは多次元の綱渡り」というミンツバーグの考え方にも触れられました。経営では、どちらか一方だけを選べば済むわけではない場面が数多くあります。その時々の状況に合わせてバランスを取り続けることも、経営者に求められる重要な力です。<br />
この点は、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/column/entry-6629.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">9月の「中小企業コラム」</a>でさらに掘り下げています。そこでは、経営に付きまとうさまざまな「板ばさみ」と向き合いながら、絶えず変化する中でバランスを取り続けることこそがマネジメントだと整理されています。<br />
経験や勘を否定するのでも、データだけを信じるのでもない。それぞれの強みを理解し、経営の場面に応じて活かしていく。木村教授は、そんな経営のあり方を示しました。<br />
そして講演後半では、この考え方をさらに「戦略的思考」へと広げていきます。</p>









































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<h3 >「正解」をつくる方法は一つじゃない<br />
〜自社なりの戦略をどう描くか〜</h3>









































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<p>講演後半では、木村教授が「戦略的思考」について話を進めました。ここで紹介されたのが、「6」という答えをどうつくるか、というシンプルな例です。<br />
「6」をつくる方法は、「1＋5」でも「2＋4」でも「3＋3」でもいい。「正解」が一つでも、そこに至る組み合わせはいくつもあります。木村教授は、これを事業経営に置き換えると、「6」は会社が目指す将来像やビジョンにあたり、それを実現する方法は会社によって違うと説明しました。<br />
同じような目標を掲げていても、それぞれの会社が持っている人材や技術、経験、資金、顧客との関係は異なります。だからこそ、他社のやり方をそのまま当てはめるのではなく、まず自社がどうなりたいのかという姿を描き、そこから自社の強みや資源をどう組み合わせれば実現できるのかを考える。その道筋をつくることが、戦略的に考えるということです。<br />
<br />
そして、戦略は最初から完成された計画として存在するとは限りません。経営の現場では計画通りにいかないことも多く、実際には行動し、結果を確かめ、修正しながら進む中で、戦略が形になっていくことも多いと木村教授は語ります。<br />
4月のコラムでも、戦略は未来に向けて「意図するもの」である一方、後から振り返ると「実現されたもの」として捉えられることがあり、行動の積み重ねの中から戦略が見出されていくと整理されています。<br />
だからこそ大切になるのが、最初に描いた方向を持ちながらも、現場で起きていることに応じて柔軟に考え続けることです。経営者自身の経験や直感、現場での実践、そして事実やデータ。それぞれを使いながら、自社にとってのより良い方法を探していく必要があります。<br />
<br />
また、どれだけ経営者の中に明確な構想があっても、それが社内で共有されなければ組織は動きません。木村教授は、結論を示し、その理由を説明し、さらに事実やデータで補強することで、考えをより伝わる形にしていくことにも触れました。そして、自ら会社の立て直しに取り組む経営者と社員のやり取りを目の当たりにした自身の経験からも、「思いを組織のメンバーと共有しながら進めること」の大切さを語りました。<br />
「正解」を探して外から持ってくるのではなく、自社が目指す姿を起点に、自社の強みや経験を生かしながら試し、修正し、自分たちなりの道筋をつくっていく。そして、その考えを社員と共有する。木村教授の講演は、経営者が自社なりの戦略をどう描いていくかを、改めて考える機会となりました。</p>









































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<h3 >激動する情勢を、自社の経営に引き寄せて考える<br />
〜数字の先にある変化をどう読むか〜</h3>








































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<div class="column-image-right js_notStyle acms-col-sm-6">
	<a href="https://www.smallsun.jp/archives/002/202610/large-fe9abbae6c5fed24f677acbd26948dce90b876bed31e9e59be545c3cad4af349.png" data-rel="SmartPhoto[6639]" data-caption="">
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	</a>
</div>


































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<p>続いて登壇したのは、スモールサン主宰・立教大学名誉教授の山口義行先生です。<br />
講演前半では、その時点での物価や金利、為替、中東情勢などを取り上げながら、それぞれの数字がなぜ今の動きをしているのか、その背景を読み解いていきました。<br />
<br />
まず取り上げたのが、物価と金利。講演日時点で、表面上の物価上昇率には低下傾向が見られる一方、日本銀行はすでに金利を引き上げ、今後も利上げを続ける姿勢を示していました。「物価が落ち着いてきているのに、なぜ金利を上げるのか」。山口教授は、その理由を政府の物価対策との関係から説明しました。<br />
ガソリンなどへの補助金が拡充されれば、その分だけ統計上の物価上昇率は押し下げられます。そこで政策による押し下げ効果を除いて物価の動きを見ると、実際の物価上昇の勢いは表面の数字ほど弱まっておらず、日銀が目標とする2％を上回る状態が続いている――というのが、山口教授の見方でした。<br />
さらに山口教授は、物価が上がっているのに金利を低く据え置くこと自体が、かえって物価上昇を促す要因にもなり得ると説明しました。物価上昇率に対して金利が低ければ、資金を借りてモノを買う動きが強まりやすくなる。だからこそ日銀としても、物価の勢いに合わせて金利を引き上げざるを得ないというわけです。<br />
<br />
もう一つ大きなテーマとなったのが為替です。講演時点で、円相場はそれまでの円安から円高方向への動きを見せていましたが、山口教授はこれを単純に「円安が終わった」とは見ませんでした。背景には日銀の利上げだけでなく、米国からの円安是正への圧力や、日本の財政政策をめぐる動きもあると分析。一方で、円安を生んできた積極的な財政運営そのものが変わらなければ、利上げ後に再び円安方向へ戻る可能性もあると見通しを示しました。<br />
円高になれば、輸入原材料を扱う企業にとっては仕入れコストの低下が期待できます。しかし、その恩恵だけを見ていればいいわけではありません。金利が上がれば、中小企業にとっては借入負担が重くなります。為替や金利の変化は、自社だけでなく、取引先の資金繰りや仕入れ、販売価格にも波及していきます。<br />
<br />
さらに、中東情勢や原油価格、原材料の供給についても触れました。必要なモノが以前より入ってくるようになったからといって、供給の不安定さそのものが解消したわけではありません。国際情勢が変われば、原油価格や物流、原材料価格が再び大きく動く可能性があります。だからこそ、目の前の「価格」や「入手しやすさ」だけで判断せず、その背景にある情勢まで見ておく必要があると指摘しました。<br />
<br />
山口教授が示したのは、物価や金利、為替の数字を覚えることではなく、「なぜ今こうなっているのか」を考えることの大切さでした。そして、その変化が自社の借入や仕入れ、販売先、取引先にどのようにつながるのかまで考える。政治・経済情勢を自社の経営に引き寄せて読むことが、経営判断の土台になるのです。<br />
そして講演はここから、そんな山口教授自身がなぜ中小企業経営者とともに学ぶ場をつくってきたのか、その原点へと話が進んでいきました。</p>









































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<h3 >自分の頭で考える「自主独立」の経営者であるために<br />
〜学びを持ち帰り、またつながる〜</h3>









































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<p>講演後半で山口教授は、なぜ自分が中小企業経営者とともに学ぶ場をつくり、長年支援に関わってきたのか、その原点を振り返りました。<br />
きっかけの一つになったのは、バブル崩壊後の時代。経営者たちから寄せられたのは、経営ノウハウそのものを教えてほしいという声ではなく、「自分たちが今、時代の流れの中でどこに立っているのかを知りたい」という思いだったと語りました。日々会社を経営していても、その背後にある大きな変化が見えなければ、これからどこへ向かえばいいのか判断できない。そこで山口教授は、自らの専門を生かして経済や社会の動きを読み解きながら、経営者とともに考える勉強会に関わるようになりました。<br />
<br />
その学びは、一度話を聞いて終わるものではありません。講演では、ある勉強会で「社員と一対一で話してみよう」という課題が生まれ、参加した経営者たちがそれぞれ会社に持ち帰って実践したエピソードも紹介されました。翌月には、その結果を持ち寄って報告。そこである経営者が社員に「なぜこの会社で働いているのか」と尋ねたところ、「ここだけが、自分を一人の人間として名前で呼んでくれる場所だから」という答えが返ってきたといいます。<br />
学んだことを会社へ持ち帰り、自分なりに試してみる。社員と向き合い、そこで得た気づきをまた仲間と共有する。山口教授が紹介したこのエピソードは、経営者同士で学ぶ場が、実際の経営や組織づくりへつながっていく一つの姿を示していました。<br />
<br />
そして講演終盤で山口教授が強調したのが、「自主独立」の大切さです。誰かの答えをそのまま受け入れるのではなく、さまざまな情報を学びながら、最後は自分の頭で考え、自分で判断する。講演では、大手企業との取引に依存した経営から離れ、自ら新しい道を切り開いていった中小企業の事例にも触れながら、そうした姿勢こそ中小企業経営者の力ではないかと語りました。<br />
経済を学ぶことも、経営の理論を学ぶことも、それ自体が目的ではありません。得た知識を自社に引き寄せ、自分で考え、実践し、その経験をまた仲間と共有する。そうした自主独立の経営者を支える場でありたい――。山口教授の話は、スモールサン・ゼミが大切にしてきた学びのあり方にもつながるものでした。<br />
<br />
二つの講演を終えた後は、場所を移して懇親会へ。全国各地から集まったメンバーが地域を越えて顔を合わせる、全国合同ゼミならではの時間が続きました。<br />
普段はそれぞれの地域で学ぶスモールサン・ゼミ。その学びを自社へ持ち帰り、また次のゼミで考える。そして全国合同ゼミでは、地域を越えて新たなつながりをつくる。広島での一日は、経営を学ぶことと、経営者同士がつながること。その二つを改めて感じる全国合同ゼミとなりました。<br />
</p>








































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	<a href="https://www.smallsun.jp/archives/002/202610/large-db5fe0229ce900f6e44f5c849f149035bef22d780e2e5b687d0c7e59f6c89444.png" data-rel="SmartPhoto[6639]" data-caption="">
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	</a>
</div>

































				
				
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			<category>山口恵里の”現場に行く！”</category>
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			<pubDate>Mon, 05 Oct 2026 12:00:59 +0900</pubDate>
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			<dc:creator>山口恵里</dc:creator>
			<title>山口恵里の“現場に行く！”2026年9月号</title>
			<link>https://www.smallsun.jp/smallsun_news/other/yamaguchi/entry-6590.html</link>
			<description><![CDATA[
				
				



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<h2 >「第８２回：『今の商売』を『次の商売』につなげる！発想を広げるビジネスモデルのつくり方（SSゼミFUKUOKAレポート）」</h2>








































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	</a>
</div>


































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<p>皆さん、こんにちは！スモールサン事務局の山口恵里です。<br />
今回の「現場に行く！」は、6月に開催されたゼミFUKUOKAの模様をレポートします！<br />
講師は、ゼミFUKUOKAではおなじみのリピーター創出コンサルタント・一圓克彦氏。今回のテーマは、「お客様が増え続ける、減らない」ビジネスモデルのつくり方です。<br />
居酒屋から福祉、警備、製造業、そしてコンサルタントへ——。一圓氏自身のユニークな経営経験をたどりながら見えてきたのは、まったく新しい事業をゼロから始めるのではなく、今ある設備、人材、顧客との接点を生かして、一つの仕事からいくつもの売上を生み出すという発想でした。<br />
「一回動いて、一回の売上」で終わっていませんか？<br />
自社の仕事をいつもとは少し違う角度から見直すヒントが詰まった、今回のゼミFUKUOKA。その一部をご紹介します！</p>









































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<h3 >同じ設備、同じ人で、別の売上をつくれないか？</h3>









































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<p>講演は、一圓氏が20歳の頃に経営していた居酒屋の話から始まりました。<br />
「美味しいものを作ればお客さんは来るだろう」とメニュー開発に励み、お客さんを呼ぶために最後には生ビールを100円に。行列こそできたものの、当然ながら店は大赤字。一圓氏がオーナーになってわずか2カ月ほどで、倒産の危機に陥ったといいます。<br />
そんな中、近くの市役所職員から「高齢者向けのお弁当を作れないか」と声をかけられたことが、一つの転機になりました。行政から受託した弁当事業では、年間でどれだけの売上が上がるのかがあらかじめ見えている。それまで、天候や予約のキャンセルによって毎日の売上が大きく変わる居酒屋を経営してきた一圓氏にとって、「売上が先に決まっているビジネス」の存在は大きな発見だったそうです。さらに、昼間には店舗を使った高齢者向けの会食サービスにも参入しました。<br />
ここで重要なのは、新たに店舗をつくったわけでも、新しい厨房を用意したわけでもないことです。お弁当を作るのは居酒屋の厨房。会食サービスを行うのも、夜は居酒屋として使っている同じ店舗です。スタッフも、昼は高齢者の送迎やサービスを担当し、夜になればそのまま居酒屋の仕事に入ります。<br />
「設備が増えてないのに、売り上げが増える。『これがビジネスか！』と思った」<br />
それまで一圓氏が考えていたのは、繁盛店をつくり、2号店、3号店と店舗を増やしていく方法でした。しかし店舗が増えれば、人件費も管理の手間も増えていきます。それよりも、今すでに持っている設備や人材を使って、別の売上を生み出せないか。考え方をそうシフトさせた一圓氏は、夜間まで働いているスタッフを活かして福祉事業の見守りと、その仕組みを活かして警備業にも参入。やがて、一つの拠点から「飲食」「福祉」「警備」という三つの売上が生まれるようになりました。<br />
新しい事業を始めるというと、つい新しい設備や人材を用意することから考えてしまいます。しかし、今回のゼミで学んだのは、自社の「今あるもの」を見直し、「別の売上に使えないか？」と考える発想でした。</p>









































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<h3 >一度集めたお客様を、次の売上へつなげる</h3>









































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<p>「今ある設備や人材から、別の売上をつくる」。そこから一圓氏の話は、さらに「一度つくった顧客接点をどう広げるか」という話へ進んでいきました。<br />
居酒屋を経営していた当時、一圓氏が注目したのが、「領収書をお願いします」と言うお客様でした。個人で飲みに来るお客様よりも、接待や懇親会で利用する法人客の方が客単価が高い。そこで、それまで行っていた広告やポスティングをやめ、近隣の会社や建築現場へ直接営業に出るようにしました。送迎にも対応し、「接待で使ってください」と営業した結果、法人利用が増え、客単価も大きく上がったと言います。<br />
ただ、一圓氏はそこで終わりません。店を出たお客様たちが「次、どこ行きます？」と話しているのを見て、「だったら、その「次」も自分たちで用意できないか」と考えたのです。<br />
そこから二次会の店、さらにその先の飲食店へと店舗を増やしていき、最終的に合計13店舗。各店舗がそれぞれで集客するのではなく、入口となる一つの店にお客様を集めれば、その後は自然と次の店の売上へとつながっていく。お客様が自然と循環する仕組みをつくったのです。「ここにさえ集客してれば、あとは全部流れていく」一圓氏は、そう振り返ります。<br />
新しい売上をつくるというと、新しいお客様を探すことばかり考えてしまいがちです。しかし、一度来てくれたお客様との関係をそこで終わらせず、「このお客様は、この次に何を必要とするだろう？」と考えてみる。そこにも、次のビジネスの入口があります。新規顧客を毎回ゼロから集め続けるのではなく、一度できた接点を次へつなげていく。その視点は、まさに「隣接異業種」の入り口だと感じました。</p>









































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<h3 >一回動いて、いくつ売上をつくれるか？</h3>









































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<p>続いて一圓氏が紹介したのが、製造業を継いだ後に手がけたリサイクルトナーカートリッジの販売です。<br />
当時、一圓氏は企業へトナーを納品する中で、ある会社の壁一面に積まれた段ボールに目を留めました。中身は、処分を待つ機密書類。「これ、うちが回収したら売上になるんじゃないか」そう考え、機密書類の処理事業にも参入します。すると、一度お客様の会社へ行くだけで、トナーの納品、機密書類の回収・処分料、さらにその紙を再生紙メーカーへ持ち込めば原材料として買い取ってもらえる。一回の訪問で、三つの売上が生まれる仕組みができました。<br />
さらに、トナーを届けるついでに文房具のカタログを置かせてもらう。使い終わったインクリボンを回収する等。今やっている仕事の流れを変えずに、その中へ新しい売上を一つずつ付け加えていく。<br />
「一つのアクションの中で、いくつキャッシュポイントを作れるか」。一回動いて、一回の売上で終わるのではなく、今の仕事の「ついで」にできることはないか。そんな視点で日々の仕事を見直すことが、新しい売上を生み出すヒントになります。</p>









































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<h3 >「営業にはお金がかかる」という常識を疑ってみる</h3>









































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<p>こうして「一つのアクションから、いくつの売上を生み出せるか」を考えてきた一圓氏。その発想は、コンサルタントとして独立した後の仕事にも、そのまま生かされていきました。<br />
一圓氏が常に念頭に置いたのは、「仕入れはお金をもらいながらやるもの。そして営業も、お金をもらいながらやるもの」という考え方。一般的には、仕入れにはお金を払い、営業にも広告費や人件費などのコストをかけるものと考えます。しかし、機密書類の処理では、お客様から処分料をもらって紙を引き取り、その紙を再生紙メーカーに買い取ってもらっていました。つまり、仕入れそのものから売上が立っていたわけです。<br />
ならば営業も同じようにできないか。コンサルタントとして仕事を始めた一圓氏が目をつけたのが、商工会議所などから依頼を受ける講演の仕事でした。自分でお金をかけてセミナーを開催し、見込み客を集めるのではない。講師として呼んでもらい、講師料や交通費を受け取りながら、多くの経営者に自分のことや考え方を知ってもらう。つまり、講演という一つの仕事そのものが売上であり、同時に次の仕事につながる営業活動にもなっているのです。<br />
今やっている仕事を「その仕事だけ」で見ない。その仕事を通じて誰と出会えるのか。そこから次に、どんな仕事へつながる可能性があるのか。そう考えてみれば、今の本業そのものが、次のビジネスの営業活動になり得る。「営業にはお金がかかる」「仕入れにはお金がかかる」。そんな当たり前を一度疑ってみることが、発想の転換のきっかけになるのかもしれません</p>









































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<h3 >「今やっていること」の中に、次の商売の種がある</h3>









































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<p>講演の最後、一圓氏はこれまでの話を自社に置き換えて、新しいビジネスモデルを考えるための「発想テンプレート」を紹介しました。<br />
「何か新しいことできないかな」と、まっさらな状態から考えようとしても、なかなかアイデアは出てきません。そこで必要になるのが、今の事業をいくつかの切り口に分けて考える方法です。<br />
たとえば、「誰に売るのか」という顧客属性だけでも、一般消費者向けのBtoC、法人向けのBtoB、公的機関向けのBtoGなど、いくつもの選択肢があります。さらに、「一対一」なのか「一対多」なのか。提供するものは「物」なのか「サービス」なのか「コンテンツ」なのか…と分けて考えていく。こうした要素を掛け合わせていくことで、今のビジネスに何を足せるか、今の事業の“ついで”に何ができるかを具体的に考えやすくなるといいます。その組み合わせパターンは、なんと640通り！<br />
もちろん、そのすべてが実際のビジネスになるわけではありません。大切なのは、「これできへんかな、これできへんかな……あ、これいけんちゃうか」と、今あるものを組み合わせながら考えてみることだと一圓氏は言います。<br />
今回の講演を通して繰り返し登場したのは、「今やっていることを別転用して、別の売り上げが作れないか」という新しいビジネスモデルを生み出すベースとなる考え方です。<br />
居酒屋の厨房やスタッフを別の事業にも使う。一度来てくれたお客様を、次のサービスへつなげる。いつもの納品の中に、別の売上を生む仕事を加える。今の仕事そのものを、次の仕事への営業活動にする。「一つの仕事を、一つの売上だけで終わらせない」という視点を持つだけでも、普段見慣れている自社の仕事が少し違って見えてきます。<br />
講演後には参加者からも、「今のビジネスをどう展開していくのか、どういう発想で考えていくのかを考えることができた」との声が上がりました。さらにオンライン参加者からも、さまざまな事業を複合的に組み合わせていく考え方が印象に残ったとの感想をいただきました。講師の実体験を聞くだけでなく、「では、自分の会社だったら？」と参加者それぞれが考えてみる。スモールサン・ゼミは、そのための時間であるとも言えます。<br />
皆さんの会社でも、今ある商品、設備、人材、そしてお客様との関係を改めて眺めてみると、その中にまだ気づいていない「次の商売の種」が隠れているかもしれません。</p>








































				
				
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			<category>山口恵里の”現場に行く！”</category>
			<guid isPermaLink="true">https://www.smallsun.jp/smallsun_news/other/yamaguchi/entry-6590.html</guid>
			<pubDate>Mon, 07 Sep 2026 12:00:59 +0900</pubDate>
		</item>
		<item>
			<dc:creator>山口恵里</dc:creator>
			<title>山口恵里の“現場に行く！”2026年8月号</title>
			<link>https://www.smallsun.jp/smallsun_news/other/yamaguchi/entry-6557.html</link>
			<description><![CDATA[
				
				



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<h2 >「第８１回：クロボー製菓株式会社」<br />
</h2>









































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<p>皆さん、こんにちは！スモールサン事務局の山口恵里です。<br />
今月の「山口恵里の“現場に行く！”」は、福岡県久留米市にあるクロボー製菓株式会社さんに伺いました！<br />
<br />
大正9年創業、今年で106年を迎えるクロボー製菓株式会社。全国で販売されている看板商品『黒棒名門』で、その名をご存じの方も多いのではないでしょうか。久留米の郷土菓子として親しまれてきた黒棒を中心に、黒糖菓子を作り続けてきた老舗企業です。<br />
その隣に2014年にオープンしたのが、黒糖創作菓子を楽しめる『黒棒茶寮 Doch（ドッホ）』。黒糖になじみの薄い若い世代にもその美味しさを届けたいという思いから生まれたお店です。<br />
<br />
今回お話を伺ったのは、クロボー製菓の次代を担う岡田宗士さん。黒糖米粉ロールケーキや黒糖カスタードプリンなど、一つひとつの商品に込めた工夫や、黒糖、そして商品づくりへの熱いこだわりについて伺いました。<br />
創業時から受け継がれてきた姿勢を守りながら、新たな可能性を広げるクロボー製菓の挑戦をお届けします！</p>








































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<div class="column-image-left js_notStyle acms-col-sm-6">
	<a href="https://www.smallsun.jp/archives/002/202608/large-4200def38b4797680946871e7ed9a632c222bd7a1b36c0140f5377509fda49cf.png" data-rel="SmartPhoto[6557]" data-caption="">
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	</a>
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<div class="column-image-left js_notStyle acms-col-sm-6">
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	</a>
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<p><b>【会社概要】</b><br />
会 社 名　クロボー製菓株式会社<br />
創　業　大正９年<br />
所 在 地　福岡県久留米市荒木町白口字栗の内1290<br />
製造品目　黒棒・白棒・黒糖丸ぼうろ・他　黒砂糖を使用した和洋菓子<br />
<a href="https://www.kurobo.co.jp/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">久留米黒棒本舗、黒棒茶寮Ｄｏｃｈ（ドッホ）オフィシャルサイト</a><br />
<a href="https://kurobo.stores.jp/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">お取り寄せ</a></p>








































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<h3 >大正9年創業、「作るのが大変な黒棒」を選んだ理由</h3>








































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<div class="column-image-right">
		<img class="columnImage" src="https://www.smallsun.jp/archives/002/202608/954647986390efc553fc18f218dfad79fdfe459bb5279bb5a3c89e6b38ebc399.jpg" alt="" width="402" height="305">
</div>


































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<p><b>恵里</b>　『黒棒名門』といえば、今や全国で食べられる定番の黒糖菓子です。クロボー製菓さんは、今年でなんと創業106年ということで。<br />
<br />
<b>岡田</b>　創業は1920年、大正9年です。現在の社長である父が4代目になります。創業当時は、黒棒や飴玉などを作って売る個人商店のような形だったと聞いています。<br />
<br />
<b>恵里</b>　黒棒は、もともとこの地域で親しまれてきたお菓子なのですか？<br />
<br />
<b>岡田</b>　そうですね。この辺りでは昔、小麦が採れて、サトウキビも少し作られていたそうです。農家の方が仕事の合間に食べるおやつとして、各家庭で小麦粉を練り、黒糖蜜につけて食べていたのが始まりだと聞いています。ですから、うちが最初に作ったというよりは、もともと地域の家庭で作られていたお菓子なんです。<br />
<br />
<b>恵里</b>　そこから商品として製造し、販売するようになったのですね。<br />
<br />
<b>岡田</b>　最初は自転車で売り歩いていたそうです。その後、1966年にクロボー製菓という会社になり、流通を通して黒棒を全国へ展開するようになりました。創業当時は飴玉やせんべいなども作っていたようですが、祖父の代に黒棒を中心にしていったと聞いています。<br />
<br />
<b>恵里</b>　いくつか商品がある中で、なぜ黒棒を選んだのでしょうか。<br />
<br />
<b>岡田</b>　「黒棒が、一番作るのが大変だったから」と聞いています。作るのが大変だからこそ、ほかの人が簡単にはやらない。簡単なものだと、みんなが作るので競争相手も増えますから。それで黒棒に絞っていったそうです。<br />
黒棒の主な原料は、小麦粉、卵、黒糖蜜と非常にシンプルです。こねた生地を帯状に絞って焼き上げ、斜めに切った後、周りに黒糖蜜をつけます。しかし、材料や工程がシンプルだからこそ、その一つひとつが味や食感を大きく左右します。<br />
当社では、現在も黒棒の蜜付けは、機械でまとめて蜜に浸すのではなく、人の手で一本ずつ行ってるんですよ。蜜に浸す時間が長いと中まで染み込みすぎるし、短ければ十分に蜜がつかない。表面だけにちょうどよく蜜をまとわせることで、外側はザクッと、中は柔らかい独特の食感が生まれます。手間はかかりますが、手作業だからこそ、ちょうどよく蜜をつけることができるんです。この蜜付けが当社の黒棒の原点であり、一番の特徴だと思います。ベテランの担当者は、1分間に80本くらい仕上げるんですよ。<br />
<br />
<b>恵里</b>　全国へ展開されてるお菓子なのに、手作業で仕上げされてるんですか！作るのが大変だからこそ、あえてそれを選ぶ。それがクロボー製菓さんの商品づくりの源流なんですね。</p>









































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<h3 >家業へ戻った次代の担い手に、父が勧めた『洋菓子』</h3>









































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<p><b>恵里</b>　岡田さんはこれから5代目を受け継いでいくわけですが、以前から家業は継ぐつもりで考えていたんですか？<br />
<br />
<b>岡田</b>　いえ、私は大学から北海道に行き、そのまま現地で就職しました。お菓子とはまったく関係のない業界です。当時は家業を継ぐことは全然考えていませんでしたね。<br />
<br />
<b>恵里</b>　そうなんですか。そこから久留米へ戻ろうと思われたのは、何かきっかけがあったんですか？<br />
<br />
<b>岡田</b>　これというきっかけがあったわけではないんです。向こうで7年ほど働き、仕事にもある程度慣れてきた頃に、このままずっと今の会社で働いていくのかと考えるようになりました。それと同時に、父が会社のことをすごく大事にしているのを見ていました。親が大事にしてきたものは、自分も大事にしたいという思いがあって、戻ろうと決めました。それで家業へ入る決意を父に伝えたところ、言われたのは「まずお菓子の勉強をしてきなさい」ということでした。当時、製菓についての知識は全くありませんでしたから。そこで東京の日本菓子専門学校へ通い、1年目に和菓子、洋菓子、パンの基礎を学び、2年目には洋菓子科で学びました。<br />
<br />
<b>恵里</b>　黒糖がメインなので、てっきり和菓子を専攻されたのかと思いました。<br />
<br />
<b>岡田</b>　黒糖やあんこを使った商品があるので、私もてっきりそうだろうと思っていました。ところが父からは、「洋菓子の方へ行きなさい」と言われたんです。後から考えると、その頃から黒糖を使った新しいお菓子を作りたいという構想があったんだと思います。それで洋菓子科で1年間学んで、久留米へ戻ってクロボー製菓に入社しました。それから約1年後の2014年にオープンさせたのが、黒糖創作菓子のお店『黒棒茶寮Doch（ドッホ）』です。</p>








































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<div class="column-image-left js_notStyle acms-col-sm-12">
	<a href="https://www.smallsun.jp/archives/002/202608/large-0bb18680aa87da8537cf0a76bd87c015802164edc2b2fc63882ff26d5f01b4c7.png" data-rel="SmartPhoto[6557]" data-caption="">
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	</a>
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<h3 >若い世代に黒糖を届ける、黒糖創作菓子店『黒棒茶寮Doch（ドッホ）』</h3>








































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<p><b>恵里</b>　本店である『久留米黒棒本舗』は黒糖菓子専門店、『黒棒茶寮Doch（ドッホ）』はカフェスタイルで黒糖創作菓子を楽しめるお店としてお隣にオープンされたんですね。<br />
<br />
<b>岡田</b>　はい。洋菓子を中心に、黒糖や含蜜糖を使ったお菓子を作っています。かつて黒糖は、白砂糖よりも身近な存在でした。特に九州では、家庭で日常的に使われていました。しかし、時代とともに白砂糖の方が一般的になり、若い世代にとって黒糖は、次第になじみの薄いものになっていきました。そういった世代が増えてくるというのは、黒糖菓子を専門に扱ってきた当社にとっては大きな問題です。そこで、若い世代にも親しまれやすい洋菓子を入口にして、黒糖の美味しさを知ってもらい、そこから当社の原点である黒棒や他の黒糖菓子にもつながっていけば、と。<br />
<br />
<b>恵里</b>　「Doch（ドッホ）」というのは「やっぱり」という意味のドイツ語ですね。<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5983.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">山口教授がよく講演で話している</a>のを聴いたことがある方も多いのではないでしょうか。物事を「わかる」というのは、それを一度否定して、それをさらにもう一度否定すること。「やっぱり○○だ」という言葉が出てやっと本当にそれをわかったと言える。「『わかる』とは“Doch（ドッホ）”だ！」と。<br />
<br />
<b>岡田</b>　実はこの店名は、父が先生の講演でその話に共感して、「うちのコンセプトにピッタリだ」と言って決めたんですよ。黒糖に馴染みのないお客様にも、「来てみて“やっぱり”良かった」と思ってもらえるように。うちのお菓子を食べて、「“やっぱり”黒糖は美味しい」と思ってほしい。また、いつも来てくださっているお客様にも、「黒棒屋さんが変わったことを始めたけど、“やっぱり”黒糖にこだわってるんだね。美味しいね」と。そんな「最上級の“やっぱり”」を感じて頂けるようにという想いを込めています。<br />
また、店舗自体も随所にこだわって設計しています。家具には1960年代のデザインを受け継ぐ「カリモク60」を採用し、窓の配置にもこだわりました。店の奥に大きな窓があって、その向こうに広がるのは、この店のために整備された「ドッホの森」です。もともとは芝生の小山だった場所に木々を植え、苔を育て、長い時間をかけて現在の景観をつくり上げました。春には桜、夏にはセミやカブトムシ、秋にはどんぐりを目当てに子どもたちも訪れるんですよ。<br />
<br />
<b>恵里</b>　お店でゆっくりと過ごす体験も含めて、黒糖のお菓子を味わってもらう。従来とは異なる空間と商品を通して、新しいお客さんとの接点を生み出したんですね。</p>








































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		<img class="columnImage" src="https://www.smallsun.jp/archives/002/202608/f12572964ba74f16b52349a99c4f08572e9db29efc6b56bf277f18fa614ee66e.png" alt="" width="340" height="222">
</div>






































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<div class="column-image-left js_notStyle acms-col-sm-6">
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	</a>
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<h3 >「黒糖を使う」のが目的ではなく、より美味しくするために黒糖を使う</h3>








































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<div class="column-image-right js_notStyle acms-col-sm-6">
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</div>


































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<p><b>恵里</b>　でも、洋菓子で黒糖ってあまり使われないですよね。商品開発が大変だったんじゃないでしょうか。<br />
<br />
<b>岡田</b>　そうですね。単純に洋菓子の砂糖をそのまま黒糖に変えればいいかと言うとそうではありません。黒糖って栄養価が高いんですよ。カルシウムやミネラル、カリウムなどが豊富に含まれていて、それが独特のコクや旨味になっています。でも、洋菓子作りにおいては、それらの成分が不純物になってしまい、例えばスポンジが膨らみにくくなったり、食感が重くなったり、洋菓子の仕上がりに影響することがあります。かといって黒糖の量を減らせば、今度は風味も色も弱くなり、「黒糖のお菓子」としての特徴が出ません。とにかく試行錯誤の繰り返し、ようやく完成したのが『Doch（ドッホ）』の看板商品の一つである黒糖米粉ロールケーキです。<br />
<br />
<b>恵里</b>　取材にかこつけて食べさせていただいたのですが、めちゃくちゃ美味しいです！生地に米粉ならではのもちっとした弾力がありつつ、重たくなくて、ふわふわ軽い食感。甘さ控えめのクリームの中にある黒糖ゼリーと一緒に食べると、グッと黒糖の風味が際立って、生地とクリームと黒糖ゼリーの絶妙なバランスが完成されます！まさに黒糖創作菓子の看板商品という感じですね。<br />
<br />
<b>岡田</b>　ありがとうございます。生地には白砂糖を使わず、黒糖を使用しています。最初はクリームにも黒糖を使ってみたのですが、正直なところクリームは白砂糖の方が味のバランスが良くて美味しいんです。それでクリームにはあえて黒糖を使わないことにしました。ただ、生地だけだと黒糖の風味が少し弱い。そこで、クリームの甘さを控えめにして、ロールケーキの中心に黒糖ゼリーを入れています。このゼリーにたどり着くまでにも、わらび餅や黒糖カスタードなど色々試行錯誤しました。ゼリーの硬さも、柔らかすぎれば存在感がなく、硬すぎれば一体感が失われてしまいますので、何度も調整をして、生地とクリームと一緒に食べることで最高のバランスになるようにしています。<br />
<br />
<b>恵里</b>　ただ黒糖を使うのではなく、より美味しくするためにどう黒糖を使うのか、とても考えられているのが味から伝わってきます。</p>








































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	</a>
</div>


































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<p><b>岡田</b>　同じく看板商品の黒糖カスタードプリンは、下がカスタードプリン、上が黒糖プリンという二層仕立てになっています。これも最初から二層にしようと考えていたわけではなく、最初は普通のプリンの砂糖を黒糖に変えるところから始めました。でも、それだけではいまひとつで、色々と試していくうちに今の形になりました。単純に黒糖だけのプリンにするのではなく、二つを重ねることで、味の違いと黒糖らしさをより分かりやすくしています。しかも、凝固剤で固めて重ねるのではありません。まずカスタードプリンを緩い状態まで蒸し焼きし、その上に黒糖プリンを重ねて、もう一度蒸し焼きしています。<br />
<br />
<b>恵里</b>　上の黒糖プリンはやさしい甘さと黒糖の香り。下のカスタードプリンはとろりと柔らかな口当たり。二つの層が味だけでなく食感も異なっていて、別々に味わっても、一緒にすくっても楽しめますね。上に添えられた黒糖ゼリーと、底の自家製カラメルが加わるとさらに味の輪郭がはっきりして、黒糖のコクとカスタードのまろやかさがちょうどよく重なってすごく美味しいです！</p>








































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<div class="column-image-right js_notStyle acms-col-sm-6">
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	</a>
</div>


































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<p><b>岡田</b>　ありがとうございます。生菓子ではもう一つ、黒糖生シュークリームがあります。こちらも中のクリームにはあえて黒糖を使わず、フレッシュな生クリームをブレンドした濃厚なカスタードクリームに仕上げました。その代わり、焼き上げたシュー生地に黒糖蜜をかけ、さらにもう一度焼く製法を選びました。黒糖が最初に舌へ触れるため、使用量が多くなくても風味がしっかり伝わります。<br />
<br />
<b>恵里</b>　二度焼きされたシュー生地のやや硬めな食感と表面の香ばしさが、黒糖蜜の風味としっかり合わさって、濃厚なカスタードクリームとの相性が抜群ですね！どれも何度でも食べたくなる美味しさです。ただ、こだわって作られている商品だけあって、賞味期限が当日中ということでお取り寄せはできないのですが、福岡県に来られた際には、ぜひお店で味わっていただきたいです。</p>









































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<p><b>岡田</b>　福岡市内にある黒棒本舗の高宮店でも販売していますのでぜひ。また、焼き菓子の人気商品の黒糖リーフパイは全国からお取り寄せいただけます。詳しい製法は非公開なのですが、フレッシュバターの風味を最大限に活かし、香ばしく焼き上げたざっくりと厚みのあるバター生地が特徴です。焼き上げたパイに塗る黒糖蜜は、毎回パイが焼き上がる時間に合わせて、その都度蜜を炊いて、一枚ずつ手で塗っています。<br />
<br />
<b>恵里</b>　こちらも手作業なんですね！ちょっと硬めのザクっとしたパイと黒糖のコクと甘味がこれ以上ないくらいマッチしていて、しかもサイズが大きめなのも嬉しいところです。どこに、どのように使えば黒糖の魅力が最も伝わるのか。その答えを探し続けた結果が、『Doch（ドッホ）』の商品一つひとつに表れていますね。</p>








































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<div class="column-image-left js_notStyle acms-col-sm-6">
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	</a>
</div>






































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	</a>
</div>

































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<h3 >変え続けるから、百年続く<br />
〜ぶらさないのは「黒糖」と「大変だからこそ、それを選ぶ」という軸〜</h3>








































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<p><b>恵里</b>　『Doch（ドッホ）』では新しい商品を次々と開発されていますが、昔から作り続けている黒棒も、製法は変わらないのでしょうか。<br />
<br />
<b>岡田</b>　黒棒や黒糖丸ぼうろなど、どの商品も日々ブラッシュアップしています。新しい機械や粉、製法、オーブンなどが出てくるので、その都度、一番いいものを作るために見直しています。厳密に言えば、味も少しずつ変化していると思います。<br />
また、小麦粉も農作物なので、毎回同じではありません。去年の同じ時期に、どのくらいの数値の粉を、どの配合で使って、どんな生地ができたのかというデータもあります。それを見ながら、実際の生地に合わせて少しずつ変えています。黒糖も同じ。沖縄では複数の島で黒糖が作られていますが、島によって色や味が異なり、年によっても出来が変わります。そのため毎年状態を確かめ、必要な量を確保できる産地の中から、商品に合うものを選んでいます。<br />
<br />
<b>恵里</b>　一番美味しい状態にするために、変えていくことも必要なんですね。<br />
<br />
<b>岡田</b>　もちろん絶対に変えない部分もあります。例えば、当社では黒糖は大きなブロックの状態で仕入れ、必要な分だけその都度自社で砕きます。あらかじめ粉砕されたものを仕入れる方が当然効率はいいのですが、砕いてから時間が経てば経つほど風味が落ちていってしまいます。焼き上げた黒棒に使う黒糖蜜も、一度に大量に作って保管するのではありません。これも時間が経つと風味や状態が変わるため、作業中に何度も炊いて、出来たての蜜を製造現場へ運びます。原料がシンプルなので、一つひとつが仕上がりに大きく影響するんです。<br />
<br />
<b>恵里</b>　効率だけを考えれば、省ける工程は少なくない。それでも、仕入れや製造の効率だけを優先せず、原料の状態を見極め、必要な工程には人の手をかける。創業以来の黒棒から、『Doch（ドッホ）』で生まれた新しい商品まで、「手間をかけて、ここにしかないものを作る」という一貫した姿勢を感じます。今後、新しい店舗や事業を広げていく構想はありますか？<br />
<br />
<b>岡田</b>　今のところ、新しいお店を出すことはそこまで考えていません。どちらかというと、これまでお世話になってきた地元の方に来ていただきたいという思いがあります。当社が100年以上続いてきたのは、黒糖が好きな方がいて、求められるものに応えてきたからだと思います。時代の変化には対応しながらも、黒糖や健康志向という大きな軸はぶらさず、これからも作っていきたいと思っています。<br />
実は2年ほど前に、『Doch（ドッホ）』の店内に『黒棒茶寮 Gesund（ゲズント）』というパン工房をオープンしました。ゲズントは、ドイツ語で「健康的」という意味です。白砂糖を基本的に使わず、黒糖や含蜜糖を取り入れたパンを展開していて、うちの黒糖蜜を使った出汁に漬け込んだ明太子で作る明太フランスが一番人気です。<br />
<br />
<b>恵里</b>　変わり続けることと、変えないこと。その両方を積み重ねてきたからこそ、クロボー製菓の味は100年以上にわたって愛され続けているんですね。本日はありがとうございました！</p>








































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<div class="column-image-left js_notStyle acms-col-sm-6">
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	</a>
</div>






































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	</a>
</div>

































				
				
			]]></description>
			<category>山口恵里の”現場に行く！”</category>
			<guid isPermaLink="true">https://www.smallsun.jp/smallsun_news/other/yamaguchi/entry-6557.html</guid>
			<pubDate>Wed, 05 Aug 2026 12:00:59 +0900</pubDate>
		</item>
		<item>
			<dc:creator>山口恵里</dc:creator>
			<title>山口恵里の“現場に行く！”2026年7月号</title>
			<link>https://www.smallsun.jp/smallsun_news/other/yamaguchi/entry-6525.html</link>
			<description><![CDATA[
				
				



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<h2 >「第８０回：中東不安・AI革命と世界・日本の経済と市場（SSゼミKYOTOレポート）」</h2>








































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	</a>
</div>


































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<p>皆さん、こんにちは！スモールサン事務局の山口恵里です。<br />
<br />
今月の「現場に行く！」は、6月16日に開催されたスモールサン・ゼミKYOTO第13期初回講義の模様をレポートします！<br />
<br />
今回の講師は、国際金融市場や地政学リスクに詳しいリサーチアンドプライシングテクノロジー株式会社代表の倉都康行氏。折しも国内では日銀が政策金利を1％へ引き上げ、中東情勢をめぐっても停戦合意に関する報道が相次ぐなど、世界経済が大きく動くタイミングでの開催となりました。<br />
<br />
講義で取り上げられたのは、中東情勢、AI、インフレ、金融市場など、いま経営者が押さえておきたい複数のリスクです。個々のニュースを追うだけでなく、それらがどのようにつながり、自社の仕入れや物流、価格、資金繰りに影響していくのか。そうして見えてきたのは、不確実な時代にこそ、経営者が自社の判断軸を持つことの大切さでした。<br />
タイムリーな情勢を経営の視点で学ぶ、ゼミならではの講義の様子をレポートします。</p>









































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<h3 >いま起きていることを、経営の目線で学ぶ</h3>









































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<p>2026年6月16日、スモールサン・ゼミKYOTO第13期の初回講義が開催されました。<br />
講義冒頭、ゼミ長からは「今日一日だけでも、株価やホルムズ海峡など、いろいろなニュースがあった」として、それらを日々の行動や企業運営に役立てていきたいという言葉がありました。<br />
<br />
この日の開催は、まさに情勢が大きく動くタイミングでした。<br />
国内では、日本銀行が政策金利を0.75％程度から1.0％程度へ引き上げることを決定。政策金利が1％台に乗るのは約31年ぶりのことであり、「金利のある社会」へと移行した日本経済が、さらに新たな段階に入ったことを印象づける出来事でした。<br />
また、開催前後には、トランプ大統領が停戦合意に関する発言を行ったとの報道が出て市場が反応。17日にはアメリカとイランが和平に向けた覚書に署名したとのニュースが報じられました。<br />
<br />
こうした情勢の変化は、すでに多くの経営者が自社への影響として実感しているテーマでもあります。その背景には、原油価格の変動は燃料費や物流費に、円安は輸入価格に、金利上昇は資金繰りや設備投資に影響するという構造があります。世界のどこかで起きた出来事が、時間を置いて自社の仕入れ、販売価格、顧客の購買力、金融機関との関係にまでつながってくる。いま経営者に求められているのは、個々のニュースに一喜一憂することではなく、それらがどのように自社の経営環境へ波及していくのかを考える視点です。<br />
<br />
おりしも、この日講師に招いていたのは、国際金融市場や地政学リスクに詳しいリサーチアンドプライシングテクノロジー株式会社代表の倉都康行氏。テーマは、中東情勢、AI、インフレ、金融市場など、いま世界経済を揺さぶる複数のリスクをどう捉えるかというものでした。<br />
<br />
スモールサン・ゼミでは、決まったテーマを体系的に学ぶだけでなく、その時々に経営者が押さえておくべき情勢をタイムリーに取り上げることがあります。今回のゼミKYOTOも、中東情勢、AI、インフレ、金融政策という複雑なテーマを、経営者の目線で捉え直す機会となりました。</p>









































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<h3 >中東情勢、AI、インフレをつなげて見る</h3>









































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<p>倉都氏が講義の冒頭で示したのは、世界経済の注目テーマが「関税」から、「地政学」「AI」「インフレ」へと移っているという見方でした。<br />
この三つのテーマは、それぞれ別々のニュースとして報じられることが多いです。中東情勢は国際政治のニュースとして、AIは技術革新や業務効率化のニュースとして、インフレは物価や金利のニュースとして扱われます。しかし、倉都氏はこれらを個別に見るのではなく、互いに影響し合うものとして捉える必要があると強調しました。<br />
<br />
たとえば、地政学リスクはエネルギー価格や物流コストに影響します。中東情勢が緊迫すれば、原油や石油製品の供給に不安が生じ、海運や保険、輸送ルートにも影響が及びます。それは結果として、燃料費や原材料費、物流費の上昇につながり、企業の仕入れ価格や販売価格にも関わってきます。地政学は、遠い地域の政治問題にとどまらず、インフレを押し上げる要因にもなるのです。<br />
<br />
一方、AIもまたインフレと無関係ではありません。AIの進展は、企業にとって新たな成長機会であり、業務効率化や新サービスの創出につながる大きな可能性を持っています。しかしその裏側では、データセンターの建設、半導体需要の拡大、膨大な電力消費など、さまざまな資源需要を生み出しています。AI投資が拡大すれば、電力や設備、関連部材への需要が高まり、それがコスト上昇の一因にもなります。<br />
<br />
さらに、インフレが進めば金利が上がりやすくなります。金利が上がれば、AI関連投資に必要な資金調達コストも高くなります。つまり、AIは経済成長への期待を高める一方で、インフレや金利を通じて金融市場にも影響を与え、その金融市場の変化が再びAI投資の環境を左右するという関係にあります。<br />
倉都氏は、このように地政学、AI、インフレが三角形のように絡み合っていると説明しました。<br />
<br />
新聞やテレビでは、日々さまざまなニュースが個別に流れていきます。しかし経営者にとって重要なのは、そのニュースがそれぞれどのように関わっているのか、そして自社を取り巻く市場や経営環境にどのようにつながるのかを考えることです。今回の講義は、個別の情勢を詳しく知ること以上に、複雑に絡み合う出来事をどう整理し、経営の視点で捉えるかを学ぶ時間となりました。</p>









































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<h3 >ニュースの先にある、仕入れ・物流・価格への影響</h3>









































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<p>中東情勢をめぐっては、アメリカとイランの和平に向けた覚書署名のニュースを受け、金融市場ではひとまず安心感が広がりました。株式市場は終戦ムードを織り込み、原油価格も一時的に下落しました。しかし倉都氏は、そこで楽観しすぎることへの注意を促しました。<br />
<br />
金融市場は、ニュースに素早く反応します。しかし、実体経済はそれほど単純には動きません。ホルムズ海峡の通航が再開されるとしても、船舶の運航、保険、港湾や海運の調整、石油関連施設の修復、各国の在庫補充など、実際にモノが流れ、価格に反映されるまでには時間がかかります。金融市場が見ている原油先物の価格と、企業活動に直接関わる石油製品の価格は分けて考える必要があると倉都氏は指摘しました。<br />
<br />
新聞やニュースでは原油先物価格が取り上げられることが多く、そこだけを見ると「原油価格が下がったから安心だ」と受け止めてしまいがちですが、企業が実際に負担するのは、ガソリン、軽油、重油、ジェット燃料、石油由来の原材料などの価格です。原油先物が下がったとしても、すでに高値で仕入れられた在庫が使われている間は、石油製品の価格がすぐに下がるとは限りません。<br />
この時間差は、中小企業にとって重要な意味を持ちます。原材料や燃料、物流費が高い状態で残れば、そのコストは仕入れ価格に反映されます。仕入れ価格が上がれば、企業は販売価格にどう転嫁するかを考えなければなりません。価格転嫁ができなければ利益が圧迫され、転嫁すれば顧客の購買力や受注への影響も考えなければならない。つまり、国際情勢の変化は、やがて現場の見積もりや価格交渉、資金繰りの判断にまでつながっていくのです。<br />
<br />
質疑応答でも、参加者からエネルギー供給や物不足に関する質問が出されました。中小企業の経営者にとって、中東情勢は遠い国の出来事ではありません。特に石油製品や原材料、物流に関わる業種では、「本当に供給は戻るのか」「どのくらいの期間、影響が続くのか」「自社はどこまで備えるべきか」という問いが、現実的な経営課題になります。<br />
倉都氏は、供給が正常化するまでには時間がかかる可能性を示しながら、川上から川下までモノが流れるには段階があると説明しました。原油が動き、精製され、製品となり、物流を経て、最終的に企業や消費者のもとに届く。そのどこかで目詰まりが起きれば、末端に届くまでの時間はさらに長くなります。だからこそ、表面的な価格の上下だけでなく、供給の流れ全体を見る必要があります。<br />
<br />
今回の講義で印象的だったのは、国際情勢を予測すること以上に、その影響がどのような経路で自社に届くのかを考える視点でした。世界情勢が大きく動く時代には、経営判断の前提も変わります。だからこそ、遠くで起きているニュースを自社の現場に引き寄せて考えることが、これまで以上に重要になっているのだと感じました。</p>









































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<h3 >AI時代の期待と不安をどう捉えるか</h3>









































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<p>今回の講義では、AIも重要なテーマとして取り上げられました。AIというと、業務効率化や省人化、新しいサービスづくりなど、企業がどう活用するかという実務的な関心が先に立ちます。実際、中小企業にとっても、AIをどう取り入れるかは避けて通れない課題になりつつあります。<br />
しかし、倉都氏が示したのは、AIは一つの便利な技術であると同時に、世界経済や金融市場を大きく動かす存在にもなっているという視点です。<br />
<br />
特にアメリカでは、巨大IT企業によるAI関連投資が急速に拡大しています。データセンターの建設、半導体の確保、クラウド基盤の強化、人材獲得など、AIをめぐる投資は非常に大きな規模になっています。こうした投資は、短期的にはアメリカ経済を押し上げる力になります。<br />
一方で、期待が大きいからこそ、そこには不安も生まれます。AI関連企業の株価が大きく上昇すれば、それは成長への期待を反映したものとも言えますが、同時に「期待が先行しすぎていないか」という懸念も出てきます。巨額の投資に見合う収益が本当に得られるのか。投資が過熱し、株価が実態以上に膨らんでいないか。そうした問いが、金融市場ではすでに意識され始めているのだといいます。<br />
AI関連投資が拡大するには、多額の資金が必要になります。その資金は株式市場や社債市場、ファンドなど、さまざまな金融の仕組みを通じて調達されます。投資が順調に進み、期待どおりの成長が続いている間は問題が見えにくくても、どこかで収益見通しが崩れたり、金利上昇によって資金調達コストが高まったりすれば、金融市場に不安が広がる可能性があります。倉都氏は、AIと金融が結びつくことで、これまでとは違う新しいリスクが生まれていると指摘しました。<br />
<br />
中小企業にとって、AIはもちろん活用すべき技術です。人手不足への対応、事務作業の効率化、情報収集、企画や営業の支援など、実務に役立つ場面は今後さらに増えていくはずです。しかし、AIを「自社でどう使うか」という視点だけではなく、「AIによって経済全体がどう変わるのか」という視点も持つことで、これからの経営環境を読み解くための重要な切り口になります。</p>









































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<h3 >供給不足の時代に、自社の判断軸を持つ</h3>









































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<p>講義の終盤で倉都氏が示したのは、日本経済が直面しつつある新しいリスクでした。それは、これまでのような「需要不足」ではなく、「供給不足」が経営の前提になっていくのではないかという視点です。<br />
<br />
長く日本経済では、需要をどう増やすかが大きな課題とされてきました。個人消費をどう伸ばすか、企業の投資をどう促すか、景気をどう下支えするか。そうした問題意識のもとで、金融緩和や財政支出が繰り返されてきました。<br />
しかし、これからの経営環境では、そもそも必要なものが十分に手に入らない、あるいは調達に時間とコストがかかるという供給側の制約が大きくなっていく可能性があります。石油製品、労働力、水、食料品、AI技術、リスクマネーなど、倉都氏はさまざまな不足の可能性を挙げながら、経営者がその変化を実感として捉える必要があると語りました。<br />
<br />
供給不足は、単に「モノが足りない」という問題にとどまりません。原材料が足りなければ仕入れ価格は上がり、人手が足りなければ賃金や外注費が上がります。エネルギーの供給に不安があれば燃料費や物流費に影響し、AIを活用しようとしても技術や人材、投資資金が不足すれば、思うように進められないこともあります。必要なものを、必要な時に、これまで通りの価格で調達できるという前提が揺らぎ始めているのです。<br />
<br />
この変化に対して、経営者が考えるべきことは一つではありません。重要なのは、目の前のニュースに反応するだけでなく、自社にとってどのリスクがどの経路で影響するのかを整理しておくことです。中東情勢はエネルギーや物流へ、AI投資は電力や金融市場へ、インフレは金利や仕入れ価格へ、そして供給不足は人材や原材料、資金調達へとつながっていきます。個々の出来事は別々に見えても、経営の現場では一つにつながって表れてくるのです。<br />
<br />
スモールサン・ゼミでは、経営に関する知識を学ぶだけでなく、いま起きている出来事を自社の経営にどう結びつけるかを考える機会があります。情勢は日々変わります。だからこそ、特定の予測に頼るのではなく、複数の可能性を想定しながら、自社の判断軸を持つことが欠かせません。<br />
今回のゼミKYOTOは、世界情勢を読み解く講義であると同時に、不確実な時代に経営者がどのような視点を持つべきかを考える時間となりました。遠くのニュースを、自社の明日の判断につなげる。その積み重ねこそが、変化の激しい時代を生き抜くための力になっていくのではないでしょうか。</p>








































				
				
			]]></description>
			<category>山口恵里の”現場に行く！”</category>
			<guid isPermaLink="true">https://www.smallsun.jp/smallsun_news/other/yamaguchi/entry-6525.html</guid>
			<pubDate>Mon, 06 Jul 2026 12:00:59 +0900</pubDate>
		</item>
		<item>
			<dc:creator>山口恵里</dc:creator>
			<title>山口恵里の“現場に行く！”2026年6月号</title>
			<link>https://www.smallsun.jp/smallsun_news/other/yamaguchi/entry-6468.html</link>
			<description><![CDATA[
				
				



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<h2 >「第７９回：三重化学工業株式会社（ゼミOSAKA見学会）」</h2>









































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<p>皆さん、こんにちは！スモールサン事務局の山口恵里です。<br />
今月の「現場に行く！」は、ゼミOSAKAで開催された三重県松阪市の三重化学工業株式会社の工場見学の模様をレポートします！<br />
<br />
三重化学工業株式会社は、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-4291.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">2022年3月号の本刊ニュース対談</a>にもご登場いただいた企業です。当時は、コロナ禍のなかで始まった「ミエラボ」という取り組みを中心に、社外人材や副業・兼業人材を巻き込みながら、新しい商品開発や働き方に挑戦する中小企業の姿をお届けしました。<br />
<br />
そこから数年が経ち、今回は実際に現地へ。<br />
ゼミOSAKAの皆さんとともに松阪を訪れ、三重化学工業の山川大輔社長にご案内いただきながら、会社の歴史や事業内容、製造現場、そして現在のミエラボの取り組みについてお話を伺いました。<br />
そうして見えてきたのは、変化を恐れず、外部の知恵や地域の人たちを巻き込みながら進化し続ける中小製造業の姿でした。</p>








































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	<a href="https://www.smallsun.jp/archives/002/202606/large-3ea812dc2ab2d6e7dbbba61c61b7e726fd2b54ffbeba706b286dd446eaa5a023.png" data-rel="SmartPhoto[6468]" data-caption="">
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<h3 >創業70年、松阪から“守るもの”をつくる三重化学工業</h3>








































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</div>


































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<p>三重化学工業は昭和31年創業。今年でちょうど70周年を迎える老舗企業です。<br />
同社の事業を一言で表すなら、「“守るため”のモノづくり」。<br />
<br />
<b>代表取締役社長 山川大輔氏：</b>何のために三重化学があるのか。それは、“守るため”です。作業者の手を守る工業用の手袋、それから食品の鮮度を守る業務用保冷剤、そして人の命を守る医療用の罨法製品。この 3つが当社の核としてあって、これらで三重から“守るもの”をつくっていきたいと思っています。<br />
<br />
ミエローブを代表とする作業用手袋は、防寒や耐油・耐切創など工場や作業現場で働く人の手を守るもの。保冷剤は、ケーキや惣菜など、私たちが普段何気なく持ち帰っている食品の鮮度を守るもの。特に「スノーパック」のパッケージは多くの人が見たことがあるのではないでしょうか？そして医療分野の商品は、医療やリハビリの現場で人の身体を冷やしたり温めたりすることで、患者さんを支えるものです。<br />
日頃何気なく手にしている保冷剤や手袋。普段の生活の中で、その背景にある会社のことまで考える機会はあまりないかもしれません。しかし、その一つひとつの製品には、長年積み重ねてきた技術と、時代の変化に合わせて事業を変化させてきた中小企業の歩みがありました。</p>








































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<h3 >混ぜる技術で洗濯糊から硬くならない保冷枕、そして日本初の小型保冷剤へ</h3>








































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<p>三重化学工業のものづくりの出発点は、現在の主力商品からは少し意外な「洗濯糊」でした。<br />
今ではあまり使う機会が少なくなりましたが、昔は衣類をパリッと仕上げるために洗濯糊が広く使われていました。山川社長がスライドに映し出したのは、創業当時につくられていた白い液体の洗濯糊。そこから同社は、「混ぜる」という技術を応用し、硬くならない保冷枕へと展開していきます。</p>








































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<div class="column-image-right js_notStyle acms-col-sm-6">
	<a href="https://www.smallsun.jp/archives/002/202606/large-12d20f688c4bcb09fd0108b58a57a4a79b8bb41a5a86493a3357845dee61b078.png" data-rel="SmartPhoto[6468]" data-caption="">
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	</a>
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<p>さらにその技術は、今では私たちの生活に欠かせなくなっている「小型保冷剤」へとつながっていきました。なんと三重化学工業は、小型の保冷剤を日本で初めてつくったメーカーなのだそうです！<br />
今でこそ、ケーキ屋さんやデパ地下で商品を買うと、ごく当たり前のように保冷剤が入っています。しかし、かつては氷やドライアイスが主流で、小型の保冷剤というものはまだ一般的ではありませんでした。同社は、保冷枕で培った技術とその端材を活かし、小さな保冷剤を開発。テイクアウト文化の広がりとともに、その需要は少しずつ大きくなっていきました。<br />
「すごくニッチな市場をやっている」と山川社長は言います。確かに、保冷剤だけで大きな売上をつくるメーカーは全国で10社もないくらいだと言います。けれども、ニッチだからこそ、そこには専門性があります。温度、持続時間、素材、袋の強度、用途に応じた形やサイズ。見た目にはシンプルな保冷剤も、実はお客様の使い方に合わせて細かく設計されているのです。<br />
<br />
ただし、この事業も決して順風満帆だったわけではありません。<br />
かつてドラッグストアなどの店頭向けに保冷枕を展開していた頃、某大手メーカーの商品との競争で「めちゃめちゃ負けた」と山川社長は振り返ります。「しかもこの業界って、夏場に一生懸命つくったやつが、シーズン過ぎると売れないからって返品されてくるんです。知名度で負ける中小企業にはかなり厳しい。」<br />
そこで、保冷枕に関しては、培った技術やノウハウを活かしてOEMへと大きく舵を切ったのだそうです。現在、大手製薬メーカーやスポーツ用品メーカー、ファッションブランドなど、さまざまな企業の商品を三重化学工業が企画・製造しています。なかには、誰もが名前を知っているような有名企業の商品も。表に出るブランド名は別の会社であっても、その中身には三重化学工業の技術が使われている。そうしたOEMの取り組みは、同社にとって今も大切な収益の柱になっています。</p>









































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<h3 >雇用を守るための新規事業。冬場の作業用手袋、そして医療分野へ</h3>









































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<p>同社の事業展開は、単に「新しい商品を作った」という話だけではありません。そこには、地方の中小製造業として、社員の雇用をどう守るか、会社をどう継続させていくかという切実な課題がありました。<br />
テイクアウトが盛んな今でこそ冬場にも使用することはありますが、保冷剤といえば基本的には暑い時期に需要が高まる商品です。暑い季節には忙しくても、秋から冬にかけて仕事が減ってしまう。そうなると、夏の繁忙期に働いてくれた社員やパートさんに、冬になると辞めてもらわなければいけない。<br />
<br />
そこで、雇用を安定させるための「冬にできる仕事」としてたどり着いたのが、作業用手袋。特に力を入れたのが、冬の現場で使われる暖かい生地やボアがついた防寒機能の高い手袋でした。<br />
現在では、大手自動車メーカーをはじめとする工業系の現場で使われる耐油手袋や、刃物で手を切らないようにする耐切創手袋など、さまざまな作業用手袋を扱っています。今でも防寒手袋については、手袋業界の中でも高いシェアを持っているそうです。<br />
<br />
さらに三重化学工業は、医療分野へも事業を広げていきました。<br />
というのも、時代の変化とともに、作業用手袋の生産は中国へと移管することになったのです。手袋で冬場の仕事をつくっていたものの、国内で担う仕事がまた減ってしまう。そこで、年間を通じて取り組める新しい分野として、医療分野の商品開発に挑戦するようになったのです。<br />
ここで活かされたのが、三重化学工業が長年培ってきた「冷やす」「温める」技術でした。<br />
<br />
<b>山川社長：</b>保冷枕や保冷剤で培ったノウハウは、医療やリハビリの現場でも活用できます。しかし、市場が全く分からない。販売先もない。そこで、OEMの取り組みを始めた時と同じように、とにかく病院や整骨院に足を運び、「どんなアイシング剤が必要ですか」「どんな保温材だったら患者さんに使ってもらえますか」と、現場の声を聞いて回りました。<br />
<br />
そうして様々な罨法製品が開発され、まだ他部門より売上げは少ないながらも、目立つ部門になってきているといいます。2017年には医療機器ブランド「メディアン」を立ち上げられました。<br />
透析時の血管痛や化学療法における痛みの緩和などを目的に、透析現場の看護師の声から誕生した温熱パックの「バリアホット」。タオルウォーマーで温めるだけで使用でき、温めると身体に柔らかくフィットします。また、「ぷるCUREアイスパック」は、マシュマロのように柔らかい特殊なふわぷるゲルで、発熱時や乳腺炎、術後の患部、スポーツ後など、敏感な箇所や患部にやさしくフィットするのが特徴です。どれも、単に「冷やす」「温める」だけではなく、医療や介護の現場で実際に使う人の声をもとに、形状や柔らかさ、使いやすさまで考えられた製品です。<br />
<br />
洗濯糊から始まり、保冷枕、小型保冷剤、工業用手袋、医療分野の商品へ。扱う商品は変わっても、その根底にあるのは、目の前の課題に向き合い、自社の技術をどう活かせるかを考え続ける姿勢。そしてその変化の中心には、いつも「人」がありました。</p>








































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	</a>
</div>






































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	</a>
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<h3 >社員の幸せを起点に、人が活きる会社へ。ミエカガクの働き方と人づくり</h3>








































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<p>三重化学工業は、創業者が立てた経営理念を現在も踏襲しています。しかし、山川社長が就任する際、一つだけ修正した部分があるのだそうです。<br />
<br />
<b>山川社長：</b>昔はお客様の利益や満足というのが一番に来ていたんです。でも私が社長になる時に、「社員の幸せを高めていく」ということを一番に持ってきました。会社はお客様のためではなく、社員のためにある。それを、社長就任の時に皆さんの前で話しました。<br />
<br />
世の中の多様化が進む中で、幸せの形も人それぞれ同じではありません。とにかく稼ぎたい人もいれば、休みが欲しい人、趣味が生きがいの人など、全てを100％満たすことは難しい。けれど、給与、休日、働き方など全部の水準を上げていくことで、80％満たすことはできると言います。実際に、給与面はもちろん、少なかった休日も毎年少しずつ増やしてきました。働き方についても非常に柔軟で、子育て中の時短勤務など、それぞれの事情に合わせた働き方を取り入れています。<br />
<br />
<b>山川社長：</b>本来、製造業は朝から夕方まで時間が決まっている方が効率はいいと思います。でも、地方で人に働いてもらおうと思うと、それくらい柔軟な時間配分をしないとなかなか集まらないんです。<br />
<br />
松阪市には大手企業もあり、優秀な若い人材は県庁や銀行、市役所、あるいは愛知県の大手企業へと流れやすい。山川社長も、かつては「会社の知名度が上がれば人が来てくれるのではないか」「規模が大きくなれば応募が増えるのではないか」と考え、メディア露出や地域向けの発信にも力を入れてきたそうです。しかし、それでも思うように人が来ない。</p>








































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	</a>
</div>


































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<p>そこで、「自社に足りない人材を採用する」のではなく、「やりたいことに必要な知恵や経験を、外部の人に借りる」という発想から生まれたのが、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-4291.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">2022年3月号のスモールサン・ニュース</a>でも取り上げた共創の拠点づくり『ミエラボ』です。<br />
ミエラボは、三重化学工業が社外の人たちと一緒に新しい商品や事業を考えるためにつくった共創の場です。社内だけでは足りない知識や経験を取り入れるために、大手企業で働く人材や専門家、学生、大学関係者など、さまざまな人がプロジェクトごとに関わっています。コロナ禍には、副業人材がオンラインで商品開発やマーケティングに参加し、社員と一緒に新しいアイデアを生み出してきました。<br />
この取り組みは、単純な人手不足対策にとどまりません。ミエラボを通じて集まった多様な人材との協働は、「こんな考え方があるのか」「自分たちももっと挑戦してみよう」と社内で新たな視点や発想が生まれ、自分たちの仕事の進め方や考え方を見直す機会になっているのだと言います。<br />
<br />
<b>山川社長：</b>これまでは、自分たち数人で商品を開発して、提案して、通るか通らないかというやり方でした。でも、そこに外部人材で第三者の意見が入ってくるんです。大手企業の方の市場調査やプレゼン資料を見ると、本当にレベルが高いんですよ。それを見て、社員たちもすごく刺激を受けたんです。研修に何回も行くより、一回そういう方々とセッションする方が大きいんじゃないかと思うくらい。ミエラボは人手不足をきっかけに始めた取り組みでしたが、結果的に社員が育ち、自分で考えて主体的に動ける人が増えてきたと感じています。<br />
<br />
人手不足をきっかけに始まった取り組みが、新規事業の創出や商品開発、社員の成長、そして社外とのネットワークづくりへと広がっていく。ミエラボは、単なる外部人材活用の仕組みではなく、三重化学工業の未来をつくる共創の場として機能しているのだと感じました。<br />
<br />
同社では、現在年齢も国籍もさまざまな人が働いています。最年長は75歳ほどで、午前中だけ働くベテランの方もいれば、高校卒業後に入社した若い社員もいます。さらに、中国、ベトナム、タイ、台湾など、海外出身の社員も加わっています。<br />
山川社長は、ダイバーシティを早く進めたかったと言います。多様な人が関わることで、自由な発想や新しいアイデアが生まれやすくなる。だからこそ、年齢や国籍、働き方の違いを会社の力に変えようとしているのです。</p>









































<!-- テキスト -->

<h3 >視線を変えれば、視点が変わる。新社屋に込められた経営の仕掛け</h3>









































<!-- テキスト -->

<p>さて、ここまで三重化学工業の取り組みを伺った後、山川社長に工場と新社屋を案内していただきました！<br />
<br />
三重化学工業では、2022年に現在の本社を購入し、30年ほど経った建物をフルリノベーションしました。中に入ってまず驚いたのは、一般的な製造業の事務所とは少し違う、開放的で自由な雰囲気です。<br />
天井は抜かれ、床も素材を活かした仕上げ。フリーアドレスの席に加えて、畳のコーナーやスタンディングで話せる場所、少しこもって考えられるスペースなど、場所ごとに雰囲気が変わるつくりになっていました。<br />
<br />
山川社長がこの空間づくりで意識したのは、「視線を変えること」だそうです。<br />
社員の皆さんは毎日同じ場所に座るのではなく、違う場所で仕事をします。今日は見える景色が違う。隣にいる人も違う。そうして物理的に視線を変えることで、考え方や会話にも変化が生まれるのではないか。そんな狙いが込められています。<br />
実際、約20人が働く空間に対して席は80席ほどあるそうで、「結局いつも同じ場所に座ってしまう」ということが起きにくいように設計されています。</p>








































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<div class="column-image-left js_notStyle acms-col-sm-6">
	<a href="https://www.smallsun.jp/archives/002/202606/large-e91c46ea34c0343eceeeee1a83d2468512ef05a040c7d8968cf5bad036e5f821.png" data-rel="SmartPhoto[6468]" data-caption="">
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	</a>
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<p>また、社屋の中には開発室もあり、保冷剤のサンプルづくりや検査などを行う様子も見せていただきました。通常、開発室というと奥まった場所にあるイメージですが、三重化学工業ではあえて人の動線上に配置されています。営業や事務の方、お客様が通りながら自然に開発の様子を目にできることで、ちょっとした会話やアイデアが生まれやすくなるのだそうです。<br />
<br />
開発室では、色や形の違う保冷剤のサンプルも見せていただきました。保冷剤といえば青色のイメージが強いですが、企業カラーや商品のイメージに合わせて色を変えたり、用途に応じて形を変えたりすることもできるそうです。また、素材によって水分の抜けやすさや持ちの良さも違うとのことで、普段何気なく使っている保冷剤にも、細かな品質の違いや工夫があることを知ることができました。<br />
さらに、保冷剤は冷やすだけでなく、お湯で温めて保温材として使えるものもあると聞き、参加者からは驚きの声も上がっていました。</p>








































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	</a>
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<p>新社屋は、ただおしゃれなオフィスというだけではありませんでした。<br />
社員同士が自然に交わること。開発の現場が見えること。来客や外部人材とも一緒に考えられること。そして、工場ともオンラインでつながり、離れた場所にいてもリアルタイムで情報を共有できること。<br />
ミエラボや柔軟な働き方と同じように、この新社屋にも「人がつながり、アイデアが生まれる」ための仕掛けが随所に込められていました。</p>








































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<h3 >質疑応答から見えた、地域と人材を巻き込む中小企業の可能性</h3>








































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<div class="column-image-right js_notStyle acms-col-sm-6">
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	</a>
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<p>新社屋や開発スペースを見学した後は、ゼミOSAKAのメンバーからも次々と質問が上がりました。<br />
<br />
ミエラボについては、「外部人材を集める基準はあるのか」「プロジェクトありきで人を呼ぶのか、それとも外部から提案が来るのか」といった質問がありました。<br />
山川社長によると、最初の頃は「海外展開をしたいから英語ができて人脈のある人」「この分野の商品開発をしたいから専門性のある人」というように、プロジェクトごとに必要な人材を探すことが多かったそうです。一方で、現在では外部からの商品開発の相談が、通常のコラボレーションとして広がるケースも増えているといいます。<br />
ここから見えてきたキーワードは、やはり「共創」です。<br />
社内に足りないものを補うためだけでなく、社内外の人が同じプロジェクトメンバーとして一緒に考える。その関わり方が、三重化学工業の商品づくりや社員の成長につながっていました。<br />
<br />
また、地域貢献についても話が広がりました。<br />
山川社長は、最初の5年は会社が生き残るために利益率を高めることに集中し、その後、共創の取り組みへ進んできたと振り返ります。そして今は、地域や社会にどう価値を返していくかを考える段階に入っていると話されました。<br />
子どもたちにものづくりを体験してもらうこと、学校や大学で授業を行うこと、地域企業や行政と連携すること。会社が持つ技術や場、人とのつながりを地域に開いていくことが、三重化学工業らしい地域貢献なのだと感じました。<br />
<br />
人材の話では、リファーラル採用にも触れられました。社員の友人や知人が入社につながることもあるそうで、ゼミメンバーからは「友達を呼ぶというのは、相当職場が好きでないとできないことですよね」という声も上がりました。<br />
外部人材を巻き込むだけでなく、社員自身が人を呼びたくなる会社であること。それもまた、三重化学工業の大きな力なのかもしれません。<br />
<br />
さらに話は、若い経営者や事業承継にも及びました。山川社長は、「会社を大きく変えるタイミングとして、社長交代はとても大きい」と話されます。そこから、伊勢神宮の式年遷宮にも通じる「常若」という言葉も出てきました。<br />
古いものをただ残すのではなく、大切な技術や思いを次の世代へ受け継ぐために、新しく作り替えていく。三重化学工業の変化も、まさにその考え方と重なるように感じました。<br />
洗濯糊から保冷剤へ、手袋へ、医療分野へ。そして、社内だけで完結する会社から、社外人材や地域、海外人材を巻き込む会社へ。<br />
<br />
今回の工場見学では、三重化学工業の製品や製造現場だけでなく、変化し続ける中小企業のあり方を学ぶことができました。<br />
現場を見て、経営者の言葉を聞き、参加者の問いかけからさらに話が深まっていく。ゼミOSAKAの工場見学は、まさにスモールサン・ゼミらしい「現場で学ぶ」機会となりました。</p>








































				
				
			]]></description>
			<category>山口恵里の”現場に行く！”</category>
			<guid isPermaLink="true">https://www.smallsun.jp/smallsun_news/other/yamaguchi/entry-6468.html</guid>
			<pubDate>Fri, 05 Jun 2026 12:00:59 +0900</pubDate>
		</item>
		<item>
			<dc:creator>山口恵里</dc:creator>
			<title>山口恵里の“現場に行く！”2026年5月号</title>
			<link>https://www.smallsun.jp/smallsun_news/other/yamaguchi/entry-6422.html</link>
			<description><![CDATA[
				
				



<!-- テキスト -->

<h2 >「第７８回：株式会社Tropical Ketchups」</h2>









































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<p>皆さん、こんにちは！スモールサン事務局の山口恵里です。<br />
<br />
<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/other/yamaguchi/entry-700.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">2016年</a>、岐阜県山県市の田中金属製作所を訪ねた私は、ウルトラファインバブルシャワーブームの火付け役であり、シャワーヘッド「ボリーナ」を武器に下請け町工場から自社ブランドメーカーへと大きく踏み出していく田中和広さんの姿を取材しました。<br />
あれから10年。田中さんは、大手の参入にも負けず二度のV字回復を経てファインバブル事業を大きく伸ばし、そして会社の未来を託す一つの手段としてM&amp;Aを選択しました。今回の取材では、この10年の歩みをあらためて伺いました。<br />
<br />
見えてきたのは、M&amp;Aには「成功」や「失敗」だけで語れない様々な側面があるということ。事業承継や成長戦略として有効な戦略である一方で、実際に経験してみて初めてわかる難しさもある――。現在は<a href="https://tksjapan.jp/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">株式会社Tropical Ketchups</a>の代表として、キッチンカーをメインとした唐揚げ販売の『岐阜せんから』を展開し、第16回からあげグランプリでは東日本バラエティ賞金賞も受賞されている田中さん。今回はシャワーヘッドで起死回生を果たした時代を振り返りつつ、その先にあったM&amp;Aの「光」と「影」を辿っていきます。</p>








































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<div class="column-image-left">
		<img class="columnImage" src="https://www.smallsun.jp/archives/002/202605/9440a15251abe6a67ad90999ca17546f7d3304195cb68d60796a7ce2e89f94d6.png" alt="" width="2272" height="1193">
</div>

































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<!-- テキスト -->

<h3 >下請け町工場から、自社ブランドへ<br />
〜田中さんが切り開いた“売るものづくり”〜</h3>








































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<p>田中さんの家業は、水栓バルブなどの真鍮部品を手がける町工場でした。岐阜県山県市という、水栓バルブの地場産業が根付く土地で育ち、家業を引き継いでからは設備投資を進めながら、より上位の取引先との直接取引を目指していきました。<br />
そうした中で強くなっていったのが、下請けのままではなく、自分たちで価値を決められる商品を持ちたいという思いでした。節水器具の市場を知った時、もっと良いものを、もっと適正な価格で届けられるのではないか――。そんな発想から、自社商品の開発に踏み出していきました。最初のきっかけは節水用のアダプターで、そこから東急ハンズとの接点が生まれ、やがて節水シャワーヘッド、さらにファインバブルのシャワーヘッドへと発展していきます。<br />
<br />
ただ、商品は作っただけでは売れません。店頭に置けば売れるほど甘くはなく、良いものを作っても、それを伝えなければお客さんには届かない。節水シャワーヘッドは当初東急ハンズに置いてもほとんど売れなかったと言います。田中さんは節水への意識が強い業種であるホテルへの営業を細々と続けながら、その後ご縁があったテレビショッピングでブレイクしたことでようやく売れるようになりました。</p>









































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<h3 >実演販売とメディア戦略で二度のV字回復<br />
〜ファインバブル事業を伸ばした力〜</h3>









































<!-- テキスト -->

<p>そのブレイクぶりは凄まじく、1日で1万5000本が売れた日もあったと言います。しかし、そんな追い風も長くは続きませんでした。なんとベンダーが節水シャワーヘッドとは無関係な商品でリコール騒ぎを起こしてしまったのです。結果、そこを通していた販売先には商品を出せなくなり、予定していたテレビショッピングの契約も白紙に。更には、当時長く取引していた水栓メーカーの廃業まで重なり、会社は債務超過を抱えていつ倒れてもおかしくない状態まで追い込まれてしまいました。<br />
<br />
そんな中で起死回生をかけ新たに開発したのが、ウルトラファインバブルのシャワーヘッドだったのです。しかし、当時はまだ「シャワーヘッドに1万円近く払う」という感覚が一般的ではなく、商品を持ち込んでも店側にはなかなか相手にしてもらえませんでした。そこで田中さんが選んだのが、自ら売り場に立つことでした。東急ハンズの店頭で実演販売を行い、自分で商品の良さを直接伝える。そこから少しずつ販売実績が積み上がり、やがてメディアにもつながっていきます。『ガイアの夜明け』で取り上げられたことが大きなきっかけとなり、債務超過を脱して見事V字回復を遂げたのです。<br />
<br />
しかし、ウルトラファインバブルのシャワーヘッドが一躍ブームとなったことで、今度は美容シャワーヘッドに大手が続々と参入してくることとなりました。資本力の強い競合の台頭によって再び業績が急速に落ち込んでいきました。<br />
しかし、そこでも田中さんはメディア戦略に活路を見いだしました。田中さんは自身の販売スタイルを「アーティスト理論」と表現します。路上ミュージシャンが自分の歌を自分で届けるように、経営者も自分の商品を自分で語り、自分で広げていかなければならないと言います。そうした積み重ねがやがて大阪の『ほんわかテレビ』や『モーニングショー』へとつながり、二度目のV字回復を果たしていきます。この田中さんの“売るものづくり”の姿勢こそが、自分の足で市場を切り開き、ファインバブル事業を大きく伸ばした原動力なのだと思います。</p>









































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<h3 >成長の先で、なぜM&amp;Aを選んだのか<br />
〜事業承継と次のステージへの期待〜</h3>









































<!-- テキスト -->

<p><b>山口</b>　ファインバブル事業が伸びていった一方で、その先の会社の形というのもその頃から考え始めていたんですか。<br />
<br />
<b>田中</b>　そうですね。一度目のV字回復の後、一気に会社が伸びた時に思ったんですけど、会社って一気に伸びると多分「成長」じゃないんですね。「膨張」になってくるんです。お客さんも増えるし、売上も上がるし、周りもわっと来る。でも、その分だけ組織強化とか社員教育とか、仕組みづくりが追いついていかない。だからその頃は、社内を整えなきゃいけないとか、次の世代にどうつないでいくかとか、そういうことをかなり考えていました。その時はIPOの話も来ていたんですが、年間3,000万ぐらいコストがかかると聞いて、それなら社員の給与を増やした方がいいと思ってお断りしました。また、ホールディングスを作ったこともあったんですけど、社員の理解をあまり得られなくて、結局は数カ月で解散して元の形に戻しました。M&amp;Aの話も来ていましたが、そうこうしている内に二度目の業績の悪化でサーっと消えていきましたね。<br />
<br />
<b>山口</b>　その後また二度目のV字回復を果たされるわけですが、そうした流れの中で、改めてM&amp;Aが現実的な選択肢になっていったと。<br />
<br />
<b>田中</b>　事業承継って中小企業の大きな課題ですよね。うちは娘が三人で、それぞれ別のことをやっていましたから、このまま自分の代で終わらせるのか、それともどこかに託して続けていくのかを考えないといけなかった。「会社は経営者の器以上には大きくならない」という言葉もあるじゃないですか。実際、社員との考え方の差もあったし、僕が一人で先頭を走り続けることに対する迷いもありました。そういう意味では、会社の未来を考えた時に、M&amp;Aは十分ありだと思いました。大きな会社の資本力や内部統制といった組織力を借りて、会社を次のステージへ持っていけるんじゃないかという期待があったんです。</p>









































<!-- テキスト -->

<h3 >売却後に見えた現実<br />
〜「続投」の難しさと、分割新設が突きつけたもの〜</h3>









































<!-- テキスト -->

<p><b>山口</b>　M&amp;Aを選んだ時点では、会社を次のステージへ進めたいという前向きな期待があったわけですが、実際にやってみていかがでしたか？ <br />
<br />
<b>田中</b>　強く感じたのは、やはり「売った時点で自分の会社ではない」ということですよね。そこは頭では分かっていたつもりなんですけど、現実になると全然違う。僕は社長を続投する前提で話が進んでいましたし、向こうからも「やってくれるのが条件です」と言われていました。だからそのままバリバリやるつもりだったんですが、例え代表であっても実際は自分の思うようにできるわけではありません。<br />
<br />
<b>山口</b>　以前の講演で、「続投という言葉に騙されてはいけない」とおっしゃっていましたね。<br />
<br />
<b>田中</b>　僕は三年はやってくれと言われていたけど、結果的には二年半で終わりました。勿論それは仕方ないことです。売った以上もう僕の会社ではないんだから、そこは割り切らなきゃいけない。でも、経営者ってやっぱり仕事がしたいんですよ。自分で作って、自分で広げてきたわけですから。M&amp;A後もアパホテルに全室導入してもらえたことや、社員の努力もあって過去最高の経常利益を出すことができました。ただ、それもやり過ぎたのかなと今になると思います。以前ある社長さんに聞いたことがあるんですが、雇われ社長として長く残るなら、赤字にせず、かといって黒字にもしすぎないことが一番だって言ってましたね。<br />
<br />
<b>山口</b>　結局当初の3年を待たずに退任の話をされたと。<br />
<br />
<b>田中</b>　最初に退任してほしいという話を受けたんですが、その後で今度はシャワー部門と部品加工の受注部門を分けたいと言われたんです。で、僕にはその受注部門をやってほしいと。シャワー部門は収益性が高かったですが、受注部門はそこまでではありませんでしたから、要は分割新設して「いいとこどり」をしたいという話ですよね。というのも、私が M&amp;A した時の社長はその時点で既に退任されていて、別の方が社長をされていたんです。前社長からは「申し訳ない」という言葉をたくさんもらいました。<br />
受注部門には当時１２人の社員がいて、それまで賞与も出ていたわけです。でも分割新設してこの部門だけ別会社になったら賞与だって出なくなる。僕は創業者利益をいただいているから、極端に言えば辞めても食べていけます。でも社員は違う。彼らは巻き添えを食ったようなもので、だからこれはM&amp;Aをした僕の責任だなと思いました。会社を残すための手段としてM&amp;Aを選んだはずなのに、結果として社員全員が同じ未来を共有することはできなくなってしまった。この現実は重かったですね。個人としてM&amp;Aが成功しても、会社の歴史や社員みんなの流れまで、そのまま残るとは限らない。そこは本当に覚悟しておかないといけないと思いました。<br />
<br />
<b>山口</b>　それで、その受注部門を引き受けたんですね。<br />
<br />
<b>田中</b>　はい。ただ、実際には受注部門もそれほど収益性が悪い事業ではないんですよ。新設後も経常利益5％くらいは出し続けていましたから。それで現在は弟に社長を引き継いで、僕は今年1月に会長も退任しています。</p>









































<!-- テキスト -->

<h3 >それでもM&amp;Aに意味はあった<br />
〜「何を守るか」を決めて臨むために〜</h3>









































<!-- テキスト -->

<p><b>山口</b>　ここまでリアルなM&amp;Aの現実を聞かせていただきましたが、田中さん自身はM&amp;Aそのものを否定しているわけではないんですよね。<br />
<br />
<b>田中</b>　勿論です。実際、ちゃんと創業者利益が確保できたことは大きかったと思います。今思うと安売りし過ぎたかなという感覚はありますけど、それでも会社の価値をきちんと認めてもらえたという意味では良かったと思っています。そして、経営者として次の挑戦ができる土台になりました。食べていくだけなら食べていけるけど、やっぱり経営者マインドって捨てられないんですよ。「何かやりたい」という気持ちがある。僕は見切り発車で唐揚げ事業を始めましたが、M&amp;Aをすることで次に何をするかをゆっくり考えることができると思います。僕自身としてはM&amp;Aは成功したと思っています。<br />
<br />
<b>山口</b>　想定とは違う部分もあった一方で、ちゃんと成果もあったということですね。<br />
<br />
<b>田中</b>　そうですね。むしろ中小企業がなくしてはいけない技術や事業を残していくためには、大事な手段だと思います。でも、その時に自分の思いまで全部残ると思ったら、それは違うよということですね。<br />
<br />
<b>山口</b>　会社や技術を残す手段としては有効だけれど、創業者が抱いていた理想や空気感まで、そのまま引き継がれるとは限らない。<br />
<br />
<b>田中</b>　そうです。だからこそ、やる前に何を守りたいのかをはっきりさせておかないといけないんです。事業を残したいのか、社員の雇用を守りたいのか、自分は売却後も残ってやりたいのか、それとも創業者利益を確保して次に行きたいのか。そこが曖昧なまま入ると、あとで苦しくなると思います。M&amp;Aは目的じゃなくて手段ですから、まず自分が何のためにやるのか、そこを決めることが大事なんだと思います。<br />
<br />
<b>山口</b>　講演でも、「条件交渉が大事」と何度もおっしゃっていましたね。<br />
<br />
<b>田中</b>　そこは本当に最後の最後までやらないといけないと思います。売ると決めた以上、後はいかに会社の価値をちゃんと見てもらって、きちんと対価をもらうかですから。続投するなら、どこまでの権限があるのか、途中で退任となった時はどうなるのか、そこまで含めて考える必要があると思います。言葉ではいくらでもいいことを言えますからね。<br />
特に創業経営者は、自分でやってきた人ですから、残った後もしっかりやりたくなるんですよ。でも、売った時点でもう自分の会社ではない。そこを受け入れられるかどうかは大きいです。だから僕は、残るなら心と体を分ける覚悟が要ると思ってますし、それができないなら、きっぱり辞めるという選択もあると思います。</p>









































<!-- テキスト -->

<h3 >M&amp;Aのその先へ<br />
〜ゼロから挑む、唐揚げ事業という新たな現場〜</h3>








































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<!-- 画像 -->
<div class="column-image-right js_notStyle acms-col-sm-6">
		<img class="columnImage" src="https://www.smallsun.jp/archives/002/202605/afab7c6ff86a1ba75f6d9fe5b73d2ff1c18939bb70339c41319d246d4f627e9c.png" alt="" width="340" height="340">
</div>


































<!-- テキスト -->

<p><b>山口</b>　先ほど次の挑戦という言葉が出ましたが、現在はこれまでと打って変わって唐揚げ事業を展開されているんですよね。<br />
<br />
<b>田中</b>　はい。今はキッチンカーをメインに『岐阜せんから』という唐揚げ屋さんをやっています。実際にやってみると、これがまた大変で。僕は二代目だったから、もともと会社には機械も人も資産もあったんです。でも今回は飲食ということで、ゼロからイチをつくる大変さをひしひしと感じています。<br />
<br />
<b>山口</b>　どういう経緯で始められたんですか。<br />
<br />
<b>田中</b>　元々は浅草で唐揚げ屋さんをやっている若い人を少し支援してあげてくれないかという話があって、最初は出資する形で関わっていたんですが、結局は自分でもやる形になりました。自分で言うのもなんですけど、これ本当に美味しいんですよ。というのも、唐揚げグランプリで最高金賞を2年連続、金賞を5回受賞した「ケンティのからあげ」のたれを使い、さらに浅草の素焼き煎餅をヒントにお煎餅を衣にして揚げたのが「せんから」という唐揚げなんです。お煎餅を細かく割って、それをコーティングして揚げてますから、冷めてもサクサクでとにかく美味しい。僕はそこに地元の岐阜県山県市で無農薬で育てられたブランド鶏「清流美どり」を使用して唐揚げにしています。<br />
<br />
<b>山口</b>　なるほど、それで<a href="https://senkara.tksjapan.jp/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">「岐阜せんから」</a>なんですね！今はキッチンカーでの販売が中心なんですか？<br />
<br />
<b>田中</b>　岐阜市に店舗もオープンしましたが、収益性でいうとキッチンカーがメインですね。また、僕はやっぱり製造業の人間ですから、単に店売りをするだけでなく、卸販売にも力を入れたいと思っています。苦心して完成させたんですけど、これ揚げてから特殊な方法で急速冷凍することで、湯煎するだけでサクサクジューシーにできるんですよ。「【湯煎でからあげ串】清流美どりからあげ串」として岐阜県山県市のふるさと納税返礼品に採用されています。また、名古屋で開催される<a href="https://cte.jp/hawaii-fes/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">ハワイフェスティバル(5月)</a>や<a href="https://tebasaki-summit.jp/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">手羽先サミット(6月)</a>にも出店予定です。良かったらぜひ食べに来てください。<br />
<br />
<b>山口</b>　ぜひ行きたいです！今の事業にも、田中さんらしい「作る」「売る」「広げる」という発想がそのまま生きている感じがしますね。<br />
<br />
<b>田中</b>　結局、唐揚げも競合が多いじゃないですか。その中でどうやって自分たちの商品を選んでもらうかを考えないといけない。そこはシャワーヘッドの時と同じです。早すぎてもダメだし、遅すぎてもダメ。だから、変わったことをやるのは好きなんですよ。冷やし唐揚げ串とか、そういうのも考えています。<br />
<br />
<b>山口</b>　これからの展開も楽しみにしています。本日はありがとうございました！</p>








































				
				
			]]></description>
			<category>山口恵里の”現場に行く！”</category>
			<guid isPermaLink="true">https://www.smallsun.jp/smallsun_news/other/yamaguchi/entry-6422.html</guid>
			<pubDate>Thu, 07 May 2026 12:00:59 +0900</pubDate>
		</item>
		<item>
			<dc:creator>山口恵里</dc:creator>
			<title>山口恵里の“現場に行く！”2026年4月号</title>
			<link>https://www.smallsun.jp/smallsun_news/other/yamaguchi/entry-6382.html</link>
			<description><![CDATA[
				
				



<!-- テキスト -->

<h2 >「第７７回：三星刃物株式会社」</h2>









































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<p>皆さん、こんにちは！スモールサン事務局の山口恵里です。<br />
<br />
今月の別刊ニュースでは、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/other/yamaguchi/entry-702.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">2016年5月号</a>以来10年分ぶりに岐阜県関市にある三星刃物株式会社を訪ね、ゼミNAGOYA/GIFU合同メンバーである有限会社梅村工務店の梅村 裕子さん、アーボ株式会社の杉村 和敬さんと一緒に工場見学を体験してきました！<br />
<br />
三星刃物は、明治6年創業、刀鍛冶の流れをくむ老舗刃物メーカーです。長年OEM生産を手がけてきた一方で、自社ブランド「和 NAGOMI」を育て、近年は工場見学や体験を通じて、包丁の魅力だけでなく関という“刃物のまち”の価値そのものを伝えようとしています。<br />
<br />
今回の取材では、三星刃物の歩みや「和 NAGOMI」誕生の背景に加え、工場見学を通して見えてきたものづくりの現場、そして渡邉隆久社長が今描いている地域への広がりと未来についてもお話を伺いました。<br />
一本の包丁の背景にある歴史や手仕事、そして関の未来への思いまでレポートします！</p>








































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<p><b>【会社概要】</b><br />
会社名 &nbsp; &nbsp;三星刃物株式会社<br />
所在地 &nbsp; &nbsp;〒501-3217 岐阜県関市下有知5178番地<br />
代表者 &nbsp; &nbsp;取締役社長　渡邉 隆久<br />
創業年月 &nbsp; &nbsp;明治6年5月<br />
従業員 &nbsp; &nbsp;35名<br />
<a href="https://mitsuboshi-cutlery.com/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">企業オフィシャルサイト</a><br />
<a href="https://nagomi.mitsuboshi-cutlery.com/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">「和　NAGOMI」ブランドページ</a></p>








































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<h3 >関はなぜ刃物の町なのか</h3>








































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	</a>
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<p><b>渡邉：</b>関が「刃物の町」ということは、皆さんご存知なんですけども、どうして刃物の町かというと文献も少なく、意外と知られていません。<br />
<br />
<i>一般には良質な水や炭、周辺の自然環境などが理由として挙げられますが、そうした地域は日本中どこにでもあると渡邉さんは言います。では、なぜ関だったのか。渡邉さんが強調したのは、関という土地の持つ地理と歴史的な背景でした。</i><br />
<br />
<b>渡邉：</b>関というのは、関東と関西の真ん中の関所です。戦国の世を終わらせるためには、京に上って天皇陛下から勅令をいただいて全国を治められる。つまりここは戦さの通り道だったわけです。『美濃を制すものは世も制す』とも言われた程で、そこで武器としての刀の需要が高かった。関に刀を伝えたのは元重公という人物で、鎌倉時代に九州から来たと言われています。なんで九州からわざわざここまで来るのかというと、ここに来れば飯が食える。大きな需要があるんだから、侍からも取り立ててもらえるわけです。<br />
<br />
<i>関はものづくりに適した土地だったというだけでなく、戦の時代に刀が強く求められる場所だったからこそ、全国から技術を持った人物が集まり、一大産地として発展していったのです。</i><br />
<br />
<b>渡邉：</b>刀というのは分業じゃないと作れません。刀匠や研ぎ師、鞘師など色々な人が集まって、この地で分業で刀を作るようになったと言われています。その分業制を近代的な形に変えながら現在まで受け継がれているのが、今のこの関です。関では今も分業制で、これから見ていただく私どもの工場は最後の工程になりまして、その前の工程までは分業制でやっています。<br />
<br />
<i>現在の包丁づくりもまた、関の分業の中で成り立っていると渡邉さん。三星刃物の製品も、焼き入れや冷却、研削、ハンドル加工などを地域の外注先と連携しながら進めていくそうです。焼き入れ後は歪みを取り、さらにマイナス90度以下で冷却すると再び歪みが出るため、一本ずつ職人が確認しながら修正していきます。一部にロボットも導入されていますが、最後は刃付けも磨きも人の手で行われており、最終的には三星刃物の工場で職人が一本ずつ手で仕上げていきます。現代のものづくりの中にも、関ならではの分業と手仕事が息づいているのです。</i></p>









































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<h3 >創業153年、刀鍛冶の流れをくむ刃物メーカー『三星刃物』</h3>









































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<p><b>渡邉：</b>三星刃物は明治6年、1873年の創業で、今年153年。私が5代目になります。創業者は曽祖父の渡邉善吉氏で、もともとは「渡邉善吉商店」として始まりました。祖父、そして父の代を経て現在の「三星刃物」という社名になりました。これは渡邉家の家紋に由来しています。お皿の上にお団子が3つ乗ったような渡邉紋というものなんですけども、これは別名三星紋と言いまして、そこから取ったのが現在の社名です。<br />
<br />
<i>さらに家系を遡ると、三星刃物のルーツは刀鍛冶に行き着くといいます。</i><br />
<br />
<b>渡邉：</b>曽祖父の代は鍛冶屋で作った打ち物、例えばハサミだとか糸通しといったものを販売していたようです。その後、祖父の代にはアジアを中心に販路を広げ、父の代では戦後の高度成長期を背景に、いち早くアメリカ向けのOEM生産へと事業を広げていきました。OEMはお客様から注文いただいた数量を作れば在庫を持たなくていいし、自社での販売もしなくていいため、ビジネスモデルとしては理想的でした。<br />
ただ、その一方で競争が激しくなるほど利益は削られていきます。1985年のプラザ合意をきっかけに中国に生産拠点をつくり、20年ほど製造を続けてきたものの、現地メーカーの力がついてくるにつれて状況は厳しくなっていきました。<br />
<br />
<i>粗利が少なくなり、競争が激しくなるとともに注文も減っていく。なんと、ある日には取引先の上位3社の注文が一気になくなったと言います。</i></p>









































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<h3 >OEMメインの会社が、自社ブランド「和 NAGOMI」を生むまで</h3>









































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<p><i>そんな中で、自社ブランドづくりのきっかけになったのは、意外にも奥様の一言でした。</i><br />
<br />
<b>渡邉：</b>家内はパン教室を開いているのですが、ある日生徒さんから「いい包丁が欲しい」と言われたんだそうです。ところが、OEM生産がメインの当社には、そういう時にお勧めできる自社ブランドの包丁がない。それを「１５０年以上続く老舗企業なのに、なんで自社ブランドがないの？」と聞かれたんです。それで「じゃあ作ろう！」と決めたんです。<br />
<br />
<i>ここで意外だったのは、渡邉さん自身がその時「『いい包丁とは何か』が分からなかったんです」と話したこと。</i><br />
<br />
<b>渡邉：</b>OEMをやっていると、その定義がないんですよ。お客さんからスペックをもらって、その通りに作る。その中でコストを安くできればそれだけ利益になる。それがOEMビジネスです。だから、いざ「いいもの」を作ろうとしても、まず「いいもの」の定義が分からないんです。それで関の刃付けで有名な私の師匠の工房に毎日通いました。そこには師匠に刃付けをしてもらうために関の有名な包丁が集まってくるので、「それを見て、自分で刃をつけて、感じろ」ということです。そうした中で出会ったのが、440Aモリブデン鋼という鋼材です。近年は切れ味を重視する硬度の高い鋼材が主流ですが、440Aは錆に強いだけでなく、粘りのある特性を持っています。この鋼材を一枚刃として砥ぎ出し、巧みな焼き入れと刃付けを行うことで、鋭い切れ味でありながら、しなやかな刃身を作り上げることができました。<br />
また、刃だけでなく、ハンドルにもこだわりました。手に馴染むように緩やかな丸みを帯びた持ち手は、刃身とハンドル、リベットの境目が分からないほど滑らかになるよう自社工場で一つひとつ手作業で仕上げています。耐水性の高いスペイン製の強化合板を使うことで、防水の塗装を施さず、木目が美しい仕上がりになっています。その他にも刃との重量バランスなど、関の職人さんたちの叡智を集めて完成したのが「和 NAGOMI」の包丁です。<br />
食というのは人と人をつなぐコミュニケーションです。家族での団らんの食事や友達との食事など、コミュニケーションが弾む中で「和み」が生まれる。この包丁で料理することによって、もっと楽しいコミュニケーションが、和みが生まれるようにという想いから「和 NAGOMI」と命名しました。</p>








































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<p><i>こうして、いよいよ形になった「いい包丁」。しかしここからがまた大変だったと、渡邉さんは振り返ります。</i><br />
<br />
<b>渡邉：</b>OEMしか作ってこなかった工場で、高品質な自社ブランド包丁を作れというのは、軽自動車の量産品を作っている工場で急にBMWのプレミアムシリーズを作れと言ってるのと同じなんですよ。実際、出来上がった製品を私が1本ずつ検品すると、95％がやり直しになる。当然現場からの反発も凄くて、「俺たちは美術工芸品作ってるんじゃない」「こんなんで飯が食えるわけない」「社長、検品に何分かけてるんですか？」と凄い剣幕で怒られる。それでも一歩も妥協せず、「社長があんだけやるんなら仕方ないか…」と何とか納得してもらって出来上がりました。<br />
ところが、今度は中々売れないわけです。OEMをやってたんで売り方を知らないんですよ。それで夫婦で百貨店の売り場に立って販売しましたが、1日せいぜい5本、10本売れたら大成功。売れないから、当然社内の反発もより強くなる。そんな中でも諦めず、海外の展示会にも積極的に参加しました。そこで転機になったのが、フランクフルトの展示会でした。ドイツ人からこの包丁の品質はBMWだ！でもBMWはドイツの企業がつくるもので、「日本企業は日本らしい包丁を作れ」と言われショックを受け、隣のブースのフランス人に相談したところ、「今フランスでは日本人のシェフが活躍してて、フランス人のシェフはすごく尊敬してるよ。彼が使ってくれたら面白いかもしれないね」と言って、フランス・リヨンの日本人シェフ、新居 剛氏の本を見せてくれたんです。<br />
勿論彼とは何のコネも繋がりもありませんでしたが、とにかく藁にもすがる気持ちで「一度使ってみてもらえませんか？」と彼のお店にメールを送ったんです。すると、使ってみてもいいと返事が来たんです。「ただし僕はプロだから厳しいよ」と。それで本当に包丁を送ってみたところ、「日本の包丁としての凛とした佇まいがあって、僕は好きだ。応援するから頑張れ」と評価してくださって、何と新居さんと仲間のシェフが「和 NAGOMI」を使っている写真を無償で送ってくれたんです。<br />
<br />
<i>社内の反発にも妥協せず、覚悟と信念を持って挑んだものづくりが功を奏した瞬間です。この出来事が大きな自信になり、「この人が認めてくれたんだから、きっと売れる」と販売にもより力が入る。すると少しずつ売れるようになり、次第にテレビや雑誌にも取り上げられるようになりました。こうしてブランドが成長していくことで、最も変わったのは社員の意識だったと言います。</i><br />
<br />
<b>渡邉：</b>社長がいくらブランドの重要性だとかお客様を大事にとか言っても響かないでしょ。でも、お客様からお礼の手紙や電話をいただいたり、自分が使ってみて良かったから大切な人への贈り物にしたいといった注文が入るようになったんです。そうした声に触れると、もう手は抜けなくなる。若い子からどんどん変わっていきましたね。ブランドって何かと言うと、やっぱり自分が本当に愛して、そして「ありがとう」と言ってもらえるのがブランドなんだと私は思います。</p>








































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<h3 >工程を知ると、一本の包丁の見え方が変わる</h3>









































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<p>ここでいよいよ工場見学へ。広報の佐藤さんから、まずは展示された工程サンプルの説明を聞きます。<br />
プレスで型を抜く、焼き入れをする、先に向かって薄く加工する、ロゴを入れる、ハンドル材を組み合わせる、研磨をかけて仕上げていく等。実際にはもっと多く細かい工程が、<br />
関市内の様々な企業との連携で進められています。一本の包丁が地域の分業の中で作られていることがよく分かりました。<br />
<br />
特に印象的なのは、ハンドル部分の仕上げです。完成品からは想像できないほど、最初はピンが大きく出っ張った状態になっていて、そこから少しずつ削って滑らかにしていきます。佐藤さんによると、磨きの工程は職人がやるところだけでも6工程。職人一人当たり大体1日20本できるかどうかと言います。美しい持ち手の裏に、これだけ細かな手仕事が積み重なっているのかと驚かされました。</p>








































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<p>工場内では、ロボットを使った工程も見せていただきましたが、そこでも人の手は欠かせません。「機械を購入しただけでは動かせなくて。職人の動きを真似させるような設定をして、なんとか使えるようになっています」と佐藤さん。ハンドルを組み合わせた後、まずは人の手でピンの部分を削り、その後ロボットがサンドペーパーに当てて全体を整え、さらにその後の仕上げは再び人の手に委ねられます。</p>








































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<p>仕上げの磨きも、工程ごとに分かれての流れ作業ではなく、一人が最初から最後まで担当しているそう。何故かというと、それが職人のモチベショーンになるから。「流れ作業にした方が生産性は上がるかもしれませんが、やっていて楽しくないじゃないですか。最後まで一人が責任を持って仕上げる方がやる気も出るし成長できます。現場からの意見で採用されました」と佐藤さん。<br />
<br />
さらに刃付けの工程では、「和 NAGOMI」ならではの工夫も教えていただきました。持続性を高めるため、先端を二段に分けて刃付けしているのだそう。最後は牛革でバリを取り、一本一本切れ味を確認して仕上げていくそうです。実際に、バリが残った状態のものと仕上がったものを比べさせていただくと、その差は一目瞭然でした。見た目にはほとんどわからないのに、切れ味はまるで別物です。</p>








































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<p>そして今回の見学では、一般向けの通常プランにはまだ入っていない研ぎ体験も、特別に体験させていただきました。渡邉さんに指導していただきながら、まだ刃付けをされていない小さな刃を自分で研いだのですが、これがなかなか難しい！直前に職人による刃付け工程を見たこともあり、あの切れ味鋭い包丁はまさに職人の技術で出来ているのだと体感できました。出来上がったものは、何と名入りのペーパーナイフに！ 研ぎ前は全然切れなかった紙がスパッと切れて感動しました。この研ぎ体験もゆくゆくはプランに入れたいと渡邉さん。ぜひ多くの人に体験して欲しいなと思いました！</p>








































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<p>こうして、一本の包丁が完成するまでの工程を追っていくと、多くの手間と判断の積み重ねの上に成り立っていることがよく分かります。工場見学を終える頃には、「和 NAGOMI」の見え方だけでなく、関の刃物づくりそのものの見え方も、少し変わっていました。</p>








































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<h3 >「関の刃物」に、もう一度価値をつくりたい</h3>








































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<p><i>そしてここからは、三星刃物一社の話ではなく、もっと大きな視点で「関の刃物」のこれからを見据えた取り組みについてお話いただきました。今、渡邉さんは「関の刃物」をもう一度地域のブランドとして育て直すための働きかけを始めているといいます。この工場見学を始めたこともその一環。その背景にあるのは、人口減少の進行と地域の衰退に対する危機感です。</i><br />
<br />
<b>渡邉：</b>これを今やらなかったら地域は衰退し、最後に残るのは大手の強烈なブランドだけです。しかし、彼ら大手はどこでもモノが作れる。別に関でなくても、日本でなくたっていい。でも我々は違います。地域全体としての力が弱まれば、この土地ならではの刃物産業の土台そのものが揺らいでしまう。世界的に有名な刃物産地であるドイツのゾーリンゲンにはヘンケルという強いブランドがあるが、彼らはベトナムでも生産しています。イギリスのシェフィールドでは、刃物産業そのものが厳しくなる中で、高級品や医療用などに特化した企業が生き残りました。じゃあ我々、関はどうするのか？私は「刃物の街」として残るべきだと思っています。なぜなら、関には「刀鍛冶から紡いだ街」という歴史があるからです。<br />
<br />
<i>“歴史”は、単なる昔話ではありません。他の地域にはない価値であり、世界に向けて発信できる資産であり、武器になるものです。しかし、同時に渡邉さんは既存の地域ブランドへの違和感を語ります。</i><br />
<br />
<b>渡邉：</b>関にはすでに「関の刃物」というロゴもあり、地域ブランドとしての取り組みはありました。でも誰もそのロゴを使っていないんです。何故かというと、価値がないから。色んな企業にロゴを使ってもらうために基準を下げた結果、自分のブランドを持ってる老舗は地域のロゴを使う意味がないんです。それでロゴ自体の価値が下がり、誰も使わなくなってしまっている。現に「和 NAGOMI」も使っていません。<br />
ただ組合が何となく地域ブランドを作って、「皆さん使いましょうね」とやったところで訴求力もないし告知にもなりません。必要なのは、歴史認識も含めて「関の刃物」とは何か？から始めて、自分たちの真の強みとは何か、今やらなければならないことは何かを勉強し直すこと。そして何より、それを「勉強して終わり」にしない実行力です。<br />
そこで今電通名鉄さんや名鉄観光さんも巻き込んで、「実行」を念頭においた地域ブランドの再構築をしようと取り組んでいます。今はまだ刃物組合を何とか口説いて今度説明会をやらせてもらうという段階ですが、その後は全６回の勉強会、その先には夜間鍛錬イベントの開催や東京のポップアップショップなどを実現していきたいと思っています。<br />
<br />
<i>三星刃物の工場見学もまた、その取り組みの第一歩だと言います。関の包丁を知ってもらうことはもちろん、関という土地そのものに関心を持ってもらう入口をつくること。また、自分が先行事例として動くことで、他の企業が真似して始めやすくなればと語りました。</i></p>









































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<h3 >若い社員が動かした、三星刃物のDXと組織改革</h3>








































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<p><i>こうした地域や未来を見据えた取り組みに挑戦できている背景には、社内で若い社員たちが育ち、現場を動かし始めていることが大きいと言います。実際、10年前に三星刃物さんを取材させていただいた時とは、社内の風景も雰囲気も大きく変わり、若い職人さんが生き生きと働いている様子が伝わってきました。これには「和 NAGOMI」がブランドとして成長したこともあると言います。</i><br />
<br />
<b>渡邉：</b>「『ものづくりがしたい』という若い人が入ってくるようになりました。インスタを見て入ってきた人もいます。彼らが自分たち主導でDXや効率化を積極的に進めてくれています。例えば、工場見学で話があったと思いますが、現場ではあえて分業制にしない。一人の職人が1本の包丁を作ることでモチベーションを保てるし、何か問題があった時には自分でどこが悪かったのか分かる。そういう育て方をしないと職人は育たないって職人頭に怒られたんですよ（笑）。でもそうすると固定費は上がるし、職人が育つまで売り上げも落ちるのを覚悟しなきゃいけない。それで、若い社員たちが中心になってどうしたら効率を上げられるかを本気で考え始めたんです。<br />
まず彼らはデータを集め出すんですよ。工程ごとに職人一人ごとの仕上げの秒数まで計算するんです。コストをかけないようGoogleのアンケート機能を使って、誰がどの工程に何秒かかったか、品質のランクはどうか、不良率はどうか、さらに不良がどの工程で出ているのかまで分析しました。それで一番効率の良かった人のやり方を全員でシェアし、逆に効率が落ちている部分も理由を一つずつ探っていく。すると「ここの工程で不良率が高いのは、どうやた彼の目が悪いからだ。じゃあ、彼は別の工程をやってもらおう」となる。<br />
<br />
<i>こうした地道な分析の積み重ねが、現場を変えていったのだといいます。ある程度現場の理解が進むと、本格的なソフトやタブレットも導入されました。変化は工場の中だけにとどまらず、営業と工場が連携し、販売計画に合わせて生産を考える体制ができてきたそうです。</i><br />
<br />
<b>渡邉：</b>年間計画を立てて、そのためには月ごとに何をやっていくのか。営業担当が「ここでこういうプロモーションを打ちたいから工場に相談しよう」とか、「ここで新製品を入れた方がいいよね」といった計画が自主的に動いていくわけです。今は元々大手でバイヤーをしていた人が、自分でブランドを作りたいと言ってうちに入ってくれて、予算設定や在庫管理、人事評価なんかも整い始めています。そんな最中私がポッと出て「新しくこれやりたいんだけど」とか言うと、年間計画に入っていません、みんな忙しいのです！社長の思いつきはやめてください。と皆からブーイングを食らうわけです（笑）。じゃあ、わかったと。俺は組合とか関の刃物ブランドのことをやるから、お前たちは会社で利益出してくれと話しています。<br />
<br />
<i>現場改善から営業連携、組織づくりまで、若い社員たちが中心となって会社を動かし始めている。だからこそ渡邉さん自身も、会社の外へと視野を広げ、地域に向けた新しい挑戦に力を注げるようになっているのだと感じました。</i></p>









































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<h3 >体験を入口に、関の刃物と地域の未来をひらく！</h3>









































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<p><i>今回の工場見学では、三星刃物一社の取り組みだけではなく、関という地域全体の未来についても聞くことができたのが印象的でした。</i><br />
<br />
<b>渡邉：</b>うちでもこれだけできるんだから、他の企業さんもできるよというシグナルになればと思っています。皆がそれぞれ工夫すれば、もっと面白いことができる。ここに来てもらう理由になるのは、やはりここにしかないものがあること。関市には「刀鍛冶から続く刃物の街」というここにしかない歴史あります。<br />
<br />
<i>現代の包丁づくりも、その根っこには刀鍛冶の歴史がある。その物語ごと伝えていくことが、地域の価値を高めることにつながるのだという考えが、一貫していました。渡邉さんが見据えているのは、自社だけがブランドや工場見学で人を呼ぶことではなく、地域の企業がそれぞれの強みを生かして人を迎え入れる流れをつくること。その先に、関という地域全体のにぎわいや、刃物の町としての新しい魅力が生まれてくるのだと思います。動き始めた三星刃物と地域の未来への取り組みを、引き続き楽しみにしています。ありがとうございました！</i></p>








































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<div class="column-image-left js_notStyle acms-col-sm-12">
	<a href="https://www.smallsun.jp/archives/002/202604/large-ded21f81d3a2b2da2004b87ded273290ea2554f6a2e1801593d9244c94879da7.png" data-rel="SmartPhoto[6382]" data-caption="">
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	</a>
</div>

































				
				
			]]></description>
			<category>山口恵里の”現場に行く！”</category>
			<guid isPermaLink="true">https://www.smallsun.jp/smallsun_news/other/yamaguchi/entry-6382.html</guid>
			<pubDate>Mon, 06 Apr 2026 12:00:59 +0900</pubDate>
		</item>
		<item>
			<dc:creator>山口恵里</dc:creator>
			<title>山口恵里の“現場に行く！”2026年3月号</title>
			<link>https://www.smallsun.jp/smallsun_news/other/yamaguchi/entry-6348.html</link>
			<description><![CDATA[
				
				



<!-- テキスト -->

<h2 >「第７６回：ゼミKYOTOレポート 〜“がんばらない効率化”が会社を変える〜」</h2>









































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<p>皆さん、こんにちは！スモールサン事務局の山口恵里です。<br />
今月の「山口恵里の“現場に行く！”」は、ゼミKYOTOの模様をレポートします。</p>








































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<div class="column-image-right js_notStyle acms-col-sm-6">
	<a href="https://www.smallsun.jp/archives/002/202603/large-7ab51678185651632aff11e2a1fb699832a89e8bf7c698efbfa5941d09e63501.png" data-rel="SmartPhoto[6348]" data-caption="">
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	</a>
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<p>今回ご登壇いただいたのは、千葉県を拠点に“食の一気通貫モデル”を築き上げてきた株式会社諏訪商店 代表取締役の諏訪寿一氏。<br />
千葉県産の食材にこだわった直営店舗「房の駅」を16店舗展開し、自社農場での生産、味噌や佃煮などの製造、県内外への卸売、通販、さらには牛乳配達網を活用したラストワンマイル配送まで――農業から製造、卸、小売、配送までを自社でつなぐ独自の経営を実践されています。<br />
<br />
戦略的なM&amp;Aによって事業を拡大しながらも、その根底にあるのは「頑張る」のではなく「仕組みで回す」という思想。<br />
今回のテーマは、著書のタイトルでもある『がんばらない効率化』です。<br />
皿洗いの実験から始まった90分の講義は、経営の“思い込み”を静かに、しかし確実に揺さぶる時間となりました。</p>









































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<h3 >千葉の“食”をつなぐ経営者──諏訪寿一氏の原点</h3>









































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<p>諏訪さんが家業である諏訪商店に入社したのは1996年。大学卒業後は大手食品卸会社に勤務し、現場で流通の仕組みを学びました。学生時代から勉強を続けていた中小企業診断士の資格を取得し、結婚を機に帰郷。当時の諏訪商店は、観光土産品の卸売が主力事業で、製造機能も一部ありましたが、ビジネスの軸足はあくまで“卸”にありました。<br />
入社当時、会社は決して順風満帆ではありませんでした。既存の卸売事業は頭打ちの傾向が見えはじめ、新たに始めた小売事業もうまく軌道に乗っているとは言えない状況。そんな中で迎えたのが、東京湾アクアラインの開通でした。観光需要が一気に高まり、売上は急伸。いわば“神風”が吹いた瞬間です。<br />
<br />
しかし、その追い風は永遠には続きませんでした。翌年以降、売上は再び減少へと転じます。<br />
「神風は永遠には吹かない」<br />
この経験が、諏訪さんの経営観を大きく形づくりました。環境に左右されるのではなく、自ら構造を変えなければならない。卸売だけでは限界がある。何か新しい柱をつくらなければならない──。そうした危機感が、次の一手へとつながっていきます。<br />
<br />
そして2002年に立ち上げたのが、千葉県産の食材にこだわった直営店舗「房の駅」です。特徴的だったのは、観光客をメインターゲットにしなかったこと。あくまで主役は地元のお客さま。地元の方が日常的に利用する店を目指すことで、結果として観光客も「地元に愛される店」を求めて集まる──そんな戦略でした。<br />
また、諏訪さんは早い段階で、卸と小売では“DNAが違う”と気づきます。卸の論理だけでは小売は回らない。そこで、小売経験のある弟を呼び戻し、店長として現場を任せました。組織に異なるDNAを取り入れたことは、その後の展開に大きな影響を与えます。<br />
こうして房の駅は1店舗、2店舗と拡大。現在では16店舗を展開するまでに成長しました。地元密着型の店舗運営を徹底しながら、千葉の名産品を磨き上げ、自社農場や製造部門との連携も強化。単なる小売ではなく、地域資源を活かす拠点として進化していきます。</p>









































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<h3 >M&amp;Aで広げた“食の一気通貫モデル”</h3>









































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<p>房の駅の展開と並行して、諏訪さんが次に打った一手がM&amp;Aでした。<br />
最初のM&amp;Aは2009年。得意先でもあったナカダイという卸売会社から「会社を引き継いでほしい」という話が持ち込まれたことがきっかけです。ナカダイは千葉県外の量販店や質販店に商品を卸しており、諏訪商店とは商圏が重なっていませんでした。<br />
当時、諏訪商店の卸売は県内中心。ナカダイを取得することで、県外への販路を一気に広げることができる。しかも、生協など品質基準の高い取引先が多く、結果的にグループ全体の商品力の底上げにもつながりました。<br />
<br />
次に大きな転機となったのが、2016年の小川屋味噌店のM&amp;Aです。<br />
諏訪さんは当時、小売と卸だけでなく、より強い“メーカー機能”を持たなければならないと考えていました。ちょうど自社農場の法人化も進んでおり、「農業―製造―販売」を自社内で完結できる体制を構想していた矢先に、小川屋味噌店の話が舞い込みます。<br />
実際に現地を訪れて驚いたのは、欲しかった機能がすべて揃っていたことでした。味噌の醸造設備だけでなく、野菜の加工室、発酵室、パッキング設備。これがあれば、味噌に限らず佃煮や漬物、瓶詰、甘酒など、さまざまな加工食品に展開できる。まさに製造のハブとなる拠点です。<br />
小川屋味噌店は、自社農場とも、房の駅とも、卸売部門ともつながる存在となりました。単体の工場取得ではなく、グループ全体の構造を強くするM&amp;Aだったのです。<br />
<br />
その後も、佃煮メーカーの統合、ピーナッツ菓子の自社工場設立と、メーカー機能を着実に強化。現在ではグループで扱う商品の約2割を自社製造できる体制を整えています。<br />
さらに一昨年には、牛乳配達網を活用した卸売会社、アーネスト・エフツーをM&amp;Aしました。<br />
牛乳配達と聞くと縮小市場のように思えますが、実際には全国で約300万世帯が利用しているとも言われます。15世帯に1世帯が牛乳配達を取っている計算です。諏訪さんは、この“ラストワンマイル”の配送機能に可能性を見出しました。<br />
牛乳配達店が既存顧客にチラシを配布し、注文を取りまとめる仕組みは、在庫リスクが少なく、販促コストも抑えられるビジネスモデルです。自社商品を直接エンドユーザーへ届ける新たなチャネルとして、戦略的に位置づけられました。<br />
<br />
こうして農業、製造、卸、小売、通販、そして配送までが一本につながっていきます。<br />
諏訪さんのM&amp;Aは、単なる規模拡大ではありません。隣接異業種をつなぎ、シナジーを最大化する構造づくり。事業を広げながら、千葉の“おいしい”をつなぎ続ける経営。<br />
その背景には常に「どうすればもっと効率よく、無理なく回る仕組みにできるか」という問いがありました。「もっと頑張る」ではなく、「頑張らなくても回る仕組みづくり」へ。それが今回の講演テーマでもある「がんばらない効率化」でした。</p>








































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<!-- テーブル -->
<div class="column-table-">
	<div class="entry-container">
	<table class="table-">
	<tr>
		<td>諏訪さんへのインタビュー記事はこちらからお読みいただけます。&nbsp;<div><a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/other/yamaguchi/entry-4986.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">別刊スモールサン・ニュース2023年8月号</a></div></td>
	</tr>
</table>

	</div>
</div>




































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<h3 >ゼミKYOTOで語られた「がんばらない効率化」</h3>









































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<p>講演は、こんな問いから始まりました。<br />
<br />
「皿を10枚洗うとき、皆さんどうやっていますか？」<br />
A：全部を洗剤で洗ってから、まとめてすすぐ。<br />
B：1枚ずつ洗剤で洗い、その都度すすぐ。<br />
<br />
多くの人は感覚的に「まとめてやった方が効率が良い」と思いがちです。<br />
しかし、実験結果はB。1枚ずつ完結させる方が約20％速いというのです。会場からは「え、なんで？」という声が自然と漏れました。<br />
<br />
効率が落ちる原因は“まとめる”ことによって発生する余計な動作にあるのだと諏訪さんは言います。取って、置いて、また取る。この“中間の動き”こそが無駄なのだと。<br />
そこで、参加者全員で1円玉を使った実験も行われました。10枚をためて処理する方法と、1枚ずつ完結させる方法。実際に計測してみると、多くの参加者が「ためない」方が速くなることを体感しました。これまで130人以上に検証してきたデータでも、約9割が生産性向上を確認しているそうです。<br />
<br />
キーワードは、「ためない」「まとめない」。<br />
効率化というと、コスト削減や人員削減を連想しがちです。しかし諏訪さんの話は違います。現場を疲弊させず、無理をさせず、それでも生産性を上げる。そのための“仕組み”の話なのです。<br />
日々の作業や仕事、ある程度「たまって」から「まとめて」やるという人は多いでしょう。しかし、「ためない」「まとめない」を実践することで、生産性は2割近くも変わるのだと諏訪さんは言います。<br />
「『ためる』やり方で仕事をしている会社さんは多いです。社長がためるなと言っていても、現場に行けば行くほどしています。この2割の違いが会社の中で起きてると思うとゾッとしませんか」<br />
この視点こそが、今回のゼミの核心でした。</p>









































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<h3 >生産性を2割変える「5つの型」</h3>









































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<p>「ためない」「まとめない」。この二つのキーワードを軸に、その後も1円玉を使った実験を交えて講演は進みます。<br />
紹介されたのは、生産性向上のための「5つの型」。<br />
<br />
<b>① 一人分業からの一気通貫法<br />
</b>皿洗いの例がこれです。<br />
一つの仕事を「まとめて処理する」のではなく、1件ずつ完結させる。途中で置かない。取ったら最後までやる。この“取って置く”という動作が減るだけで、生産性は2割近く変わる。<br />
<br />
<b>② 複数人分業からの一気通貫法<br />
</b>続いて紹介されたのは、郵便物の開封実験。<br />
一人が封筒を切り、もう一人が中身を取り出す。いかにも効率が良さそうな分業ですが、実際は一人で「切る→出す」を完結させた方が速い。実験では36％もの差が出たそうです。<br />
さらに、バケツリレーの例。人が増えれば増えるほど、中継の回数が増え、かえって遅くなる。町内会の櫓づくりや、物流現場の積み込み作業にも同じ構造が潜んでいると指摘します。<br />
「協力＝効率アップ」と思い込んでいないか。ちょっとドキリとする指摘でした。<br />
<br />
<b>③ 大から小に変換法<br />
</b>「ためる」ことが起きるのは、そもそも「ためられる環境」があるから。<br />
そのため諏訪商店グループでは、あえて作業台を小さくしています。大きなパレットや大型カゴ台車をやめ、小さな単位に切り替えることで、余白が減り、通路が生まれ、無駄な載せ替え作業も減ったといいます。米袋も30キロではなく10キロに。重さを小さくすることで、より多くの人が作業できるようになり、結果的に生産性が上がりました。<br />
「うちは『大は小を兼ねる』ではなく『小は大を兼ねる』と言っています」<br />
<br />
<b>④ 時間ピボット法<br />
</b>なんと諏訪商店グループでは、１０社の経理をほぼ一人で回しているのだそうです。それを可能にしているのも、「ためない」「まとめない」仕事の仕方。<br />
通常は1社ずつ完結させてから次へ進む。しかしそれでは“待ち時間”が発生し、仕事がたまっていく。そこで9時〜10時はA社、10時〜11時はB社、11時〜12時は…と、これを毎日繰り返す。毎日少しずつ完結させることで、仕事をためない。<br />
製造現場でも同じ。大量ロットを生産し、在庫をためて出荷するのではなく、小ロットで生産機会を増やす。そうすることで繁忙期でもギリギリまで注文を受け付けることができ、欠品リスクが減るのだと言います。<br />
<br />
<b>⑤ ボトルネック解消法<br />
</b>最も遅い工程以上に、生産量は増えない。にもかかわらず、その手前で仕事をためるから無駄が増えて生産性が悪くなる。「だから、うちではボトルネック以上に速くやってはいけないことになってるんです。ボトルネックのところに人を厚くしていくけど、機械だともうどうしようもないじゃないですか。だから、この一番遅い機械に合わせて仕事をする。登山でも遅い人を隊列の先頭に置くでしょう」と諏訪さん。</p>









































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<h3 >DXの3つの型と、その先にある“がんばらない経営”</h3>









































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<p>生産性向上の「5つの型」に続いて説明されたのが、DXへの取り組みにおける「3つの型」。<br />
まず一つ目は「つなげる」。分業は非効率を生むこともありますが、情報の世界では“適切につなぐ”ことで生産性は飛躍的に向上します。採用管理、労務管理、勤怠管理、給与計算、銀行振込、会計処理――これらが分断されていれば、同じデータを何度も入力し直すことになります。しかしAPIなどを活用して接続すれば、データは自動で流れていく。<br />
二つ目は、データ分析とAI活用。需要予測、テキストマイニング、売上構造の分析など、日々の意思決定にデータを活かす取り組みを進めています。<br />
三つ目は、「一瞬で仕事を片づける」。社内にある繰り返し業務やExcel作業を洗い出し、プログラムやツールを活用して短時間で終わらせる。半日かかっていた業務が数分で終わる例もあるといいます。<br />
<br />
こうして講演は続き、最後は質疑応答へ。「社員とパートの役割分担はどう考えるべきか」「フルスクラッチで組んだシステムをどう改善するか」「M&amp;A後のチェック体制はどこまでやるのか」などなど、参加者から次々と具体的な質問が飛びました。諏訪さんは一つひとつに丁寧に答え、中には自社で実際に使っているデータを見せてくださるシーンも。<br />
その回答は様々ながら、軸となる考えは一貫しています。規模や業種によっても自社への取り入れ方は変わってきますが、大事なのはただ頑張るのではなく、まず構造を見直すこと。分業を当たり前にしていないか。まとめることを前提にしていないか。ボトルネックを無視していないか。人の努力に頼りすぎていないか。<br />
講演の中で、諏訪さんはこうも語りました。「7割の人は納得してくれます。でも、2〜3割は元に戻ります。」だからこそ、作業台を小さくしたように環境や仕組みを変える。そうすることで生まれる「がんばらない効率化」は、従業員の働きやすさ、仕事のしやすさにも関わってきます。固定観念にとらわれない「問う力」の大切さもまた改めて感じました。</p>








































				
				
			]]></description>
			<category>山口恵里の”現場に行く！”</category>
			<guid isPermaLink="true">https://www.smallsun.jp/smallsun_news/other/yamaguchi/entry-6348.html</guid>
			<pubDate>Thu, 05 Mar 2026 12:00:59 +0900</pubDate>
		</item>
		<item>
			<dc:creator>山口恵里</dc:creator>
			<title>山口恵里の“現場に行く！”2026年2月号</title>
			<link>https://www.smallsun.jp/smallsun_news/other/yamaguchi/entry-6329.html</link>
			<description><![CDATA[
				
				



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<h2 >「第７５回：ゼミNAGOYA／GIFU合同レポート〜『人を見る力』を経営に活かす〜」</h2>









































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<p>皆さん、こんにちは！スモールサン事務局の山口恵里です。<br />
今月の「山口恵里の“現場に行く！”」は、1月に開催されたゼミNAGOYA/GIFU合同の模様をレポートします！</p>








































<hr class="clearHidden">





<!-- 画像 -->
<div class="column-image-right js_notStyle acms-col-sm-6">
		<img class="columnImage" src="https://www.smallsun.jp/archives/002/202602/86229fcd69b4ad7cdf257333d2332e6348a6278ea5023bae1b98c7bc7988f44f.png" alt="" width="340" height="248">
</div>


































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<p>スモールサン・ゼミは、全国各地で毎月１回、年１２回開催されている中小企業経営者のための勉強会です。毎月専門家の講師を招き、中小企業の経営課題を解決するためのヒントや実践的な学びを得るだけでなく、ゼミ生同士が交流し、仲間として連携したり切磋琢磨できる場としても大切にされています。<br />
<br />
今回レポートする2月のゼミNAOYA/GIFU合同では、講師に元警部として長年、詐欺や横領などの知能・経済犯を担当してきた一般社団法人日本刑事技術協会 理事長の森透匡氏をお迎えし、「人間心理」と「ウソの見抜き方」についてご講演いただきました。刑事として培われた人を見る視点は、採用や商談、社内マネジメントなど、経営の現場にも直結します。<br />
<br />
本レポートでは、その学びの内容を振り返ります。</p>









































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<h3 >雪の夜に行われたゼミNAGOYA/GIFU合同<br />
〜不確実な時代に「人を見る力」を問い直す〜</h3>









































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<p>１月のゼミNAGOYA/GIFU合同は、あいにくの天候のなかでの開催となりました。「最強寒波」ということで名古屋市内はかろうじて雪を免れていたものの、岐阜方面ではすでに降雪が始まっていて、会場参加を断念してオンラインに切り替えた参加者も少なくありませんでした。開始早々、戸田ゼミ長と杉村ゼミ長からは、そうした状況への気遣いとともに、移動や体調管理への注意が呼びかけられました。<br />
<br />
しかし、こうした悪天候以上に、冒頭で共有されたのは「いま、経営者を取り巻く環境そのものが非常に不確実である」という認識でした。杉村ゼミ長は、衆議院総選挙を控えた政局の流動性に触れつつ、「選挙の行方は見守るしかないが、我々の経営は止められない」と語りました。戸田ゼミ長からは、金利高や円安の進行について具体的な数値を挙げながら、中小企業、とりわけ製造業にとって無視できない影響が出始めていることが指摘されました。<br />
<br />
外部環境が大きく揺れるなかで、経営者に求められるのは、単なる情報収集ではなく、「何を信じ、どう判断するか」という姿勢そのものです。そうした問題意識の延長線上で、この日のテーマとして据えられたのが、「人間心理」そして「ウソの見抜き方」でした。<br />
<br />
本日の講師は、元警部として長年、詐欺や横領といった知能・経済犯を扱ってきた一般社団法人日本刑事技術協会　理事長の森透匡氏です。刑事としての現場経験から導き出された人間観察の視点は、一見するとビジネスとは距離があるようでいて、実は経営判断や組織運営と深く結びついています。取引先、社員、採用候補者──経営者は日々「人を見る」判断を迫られているからです。<br />
<br />
「不確実な時代に、経営者は何を拠り所に判断すべきなのか」という問いを、深く掘り下げる場として幕を開けることとなりました。</p>









































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<h3 >元刑事が語る「人間心理」のリアル<br />
〜言葉よりも雄弁なもの〜</h3>









































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<p>森透匡氏は、警察官として27年間勤務し、そのうち約20年を詐欺や横領、贈収賄、選挙違反といった知能・経済犯を扱う刑事として過ごしてきた人物です。2,000人以上の取調べや事情聴取を通じて培われたのは、「ウソを見抜く技術」というよりも、「人間はどこに本音を隠し、どこにそれが表れるのか」という、人の本質を見極める視点でした。<br />
<br />
講義の冒頭で森氏は、「ウソには種類がある」と語りました。コミュニケーションを円滑にするための「調和のウソ」、自分をよく見せるための「着飾りのウソ」、相手を陥れるための「だましのウソ」、そして自分や他者を守るための「防御のウソ」です。とくに経営者が注意すべきなのは、言うまでもなく「だましのウソ」だといいます。<br />
<br />
では、そのウソはどこに表れるのでしょうか。森氏が強調したのは、「言葉よりも、言葉以外の情報に目を向けること」の重要性でした。人は言葉では簡単にウソをつくことができます。しかし、表情、視線、姿勢、足の向き、仕草といった非言語の部分は、意識的にコントロールしきれないことが多いのです。<br />
<br />
「目は口ほどにものを言う」「顔に書いてある」。こうした表現が昔から使われてきたのも、人が本能的に“言葉以外”から相手の心理を読み取ってきた証拠だと森氏は語ります。刑事の現場では、まさにその非言語情報こそが、相手の本音を探る手がかりになります。<br />
<br />
講義では、取調べの現場や職務質問、捜索時のエピソードが次々と紹介されました。汗をかく、手が震える、視線が不自然に動く、足先が出口を向く──それらはすべて、本人が何かを隠そうとしたときに無意識に表れるサインだといいます。重要なのは、ひとつの仕草だけで判断しないことです。複数の違和感が重なったとき、そこに「見るべきもの」が浮かび上がってきます。<br />
<br />
こうした話は、決して刑事の世界だけのものではありません。採用面接、商談、社内のトラブル対応など、経営者が人と向き合うあらゆる場面に通じるものです。相手の言葉をうのみにするのではなく、「その言葉と態度は一致しているか」という視点を持つこと。その積み重ねが、経営判断の質を左右します。<br />
<br />
この日のゼミは、早くも参加者に対して、「人を見るとはどういうことか」という根本的な問いを突きつける形となりました。</p>









































<!-- テキスト -->

<h3 >観察力が真実を浮かび上がらせる<br />
〜刑事の視点を体感するワーク〜</h3>









































<!-- テキスト -->

<p>講義の中盤では、森氏の話を「聞く」だけでなく、「体感する」時間が設けられました。写真を使ったワークを通じて、参加者自身が人間心理を読み取る側に立つ試みです。<br />
<br />
画面に映し出されたのは、何気ない日常の一場面を切り取った写真。そこに写る人物が「どのような関係性にあるのか」「どんな心理状態なのか」を、言葉の説明なしに読み取っていきます。選択肢を前に、参加者からはそれぞれの直感や理由が語られました。<br />
<br />
このワークで森氏が強調したのは、「正解を当てること」そのものではありません。重要なのは、なぜそう感じたのかを言語化し、どこを見て判断したのかを自覚することだといいます。視線の向き、手の置き方、身体の距離感、姿勢のわずかな違い──そこに現れるのは、言葉では隠せない本音です。<br />
<br />
たとえば、笑顔を浮かべていても、視線が合わない、身体が相手からわずかに離れていることがあります。あるいは、言葉では親しげでも、手の置き場に迷いが見られることもあります。こうした微細な違和感を拾い上げることで、表面的な印象とは異なる関係性が浮かび上がってくるといいます。<br />
<br />
森氏は、「人は、興味のあるものしか見ていない」とも語りました。刑事が現場で目を配るのは、犯人が「何を見ているか」です。一般の人が商品を見る場所で、犯人は別のものを見ている。その視線の違いが、行動の意図を教えてくれるといいます。<br />
<br />
この話は、参加者にとって決して他人事ではありませんでした。営業の現場での商談、部下との面談、採用面接など、相手が何を語っているか以上に、「どこに視線が向き、どんな態度を取っているか」を見ることで、判断の精度は大きく変わります。<br />
<br />
ワークを通じて浮かび上がったのは、「観察すること」は特別な才能ではなく、意識の持ち方次第で誰でも鍛えられるスキルだということでした。普段、何気なく見過ごしている仕草や態度に目を向けるだけで、人の心理は想像以上に多くの情報を発しているのです。</p>









































<!-- テキスト -->

<h3 >ウソはこうして見抜かれる<br />
〜質問・態度・証拠の使い方〜</h3>









































<!-- テキスト -->

<p>講義が核心に入っていったのは、「では、実際にどうやってウソを見抜くのか」という実践的な話題に移ってからでした。ここで示されたのは、勘や経験に頼るのではなく、刑事が現場で用いてきた“手順”としての考え方です。<br />
<br />
まず前提として語られたのは、「ウソをついている人の頭の中は、非常に忙しい状態にある」という点でした。つじつまを合わせながら話を組み立て、相手がどこまで知っているのかを探り、疑われていないかを気にし続ける。そのため、そこに“負荷”がかかると、無意識の反応が表に出やすくなるといいます。<br />
<br />
その負荷を与える手段として、森氏が重視するのが「質問」です。ただし、単なる直球の問いかけは必ずしも有効ではありません。二度目、三度目の質問になるほど、相手は否定の答えを用意してくるからです。そこで鍵になるのが、相手の想定を外す質問や、思考を揺さぶる聞き方でした。<br />
<br />
講義では、実際の取調べをもとにした事例を通じて、「質問を繰り返す」「聞いていない情報を付け足す」「過度に詳しく説明する」「急に感情的になる」といった、話し方に表れるウソのサインが紹介されました。とくに印象的だったのは、「明確に否定しない」という反応です。やましいことがない場合、人は自然に「違います」「していません」と即答できます。しかし、言い切れずに言葉を濁すとき、そこには何らかの引っかかりがある可能性が高いといいます。<br />
<br />
さらに踏み込んだ技法として紹介されたのが、「可能性質問」。「あなたがやったかどうか」を問うのではなく、「見られていた可能性はありますか」「そういうことが起きる余地はありましたか」といった形で問いを投げかけます。やっていない人は即座に否定できますが、やっている人は「見られたかもしれない」という方向に思考が引きずられ、反応に変化が生じます。このわずかな揺らぎを、刑事は見逃しません。<br />
<br />
また、経営者にとってとりわけ示唆的だったのが、「証拠の使い方」に関する話でした。多くの場合、人は証拠を見つけた瞬間に相手に突きつけてしまいます。しかし、それは相手に考える時間と逃げ道を与える行為でもあります。刑事の現場では、証拠は最後まで見せません。雑談や質問を重ねて外堀を埋め、言質を取ったうえで、矛盾を説明してもらいます。いわば“後出しジャンケン”の発想です。<br />
<br />
この考え方は、社内不正やトラブル対応だけでなく、採用や取引先との関係にも通じます。大切なのは、早く白黒をつけることではなく、「判断を誤らないための材料をどう集め、どう使うか」という視点です。</p>









































<!-- テキスト -->

<h3 >経営者に突きつけられる現実<br />
〜リスクの時代にゼミが果たす役割〜</h3>









































<!-- テキスト -->

<p>講義の終盤では、森氏から現代の経営者を取り巻くリスクについても言及がありました。とりわけ注意が促されたのが、年々巧妙化する詐欺の存在です。警察官をかたる手口や、SNSを通じた投資詐欺など、その多くが「相手を信じたい心理」を巧みに突いてきます。経営者は資金や信用を持つがゆえに、狙われやすい立場でもあります。<br />
<br />
さらに、近年の法改正によって、私生活を含めたリスク管理の重要性も増しています。知らなかった、悪気はなかったでは済まされない時代において、経営者にはこれまで以上に高い倫理観と自己管理が求められています。森氏の話は、犯罪を防ぐための知識にとどまらず、「経営者としてどう振る舞うべきか」という姿勢そのものを問いかけるものでした。<br />
<br />
質疑応答では、営業や商談の場面で相手の心理をどう読み取るか、部下との面談や指導にどう活かせるかといった、より身近なテーマについての質問が寄せられました。森氏が一貫して強調したのは、「ウソかどうかを決めつけるのではなく、普段との違いに気づくこと」の大切さです。日常をよく観察しているからこそ、わずかな違和感に気づけます。その積み重ねが、判断の精度を高めていきます。<br />
<br />
今回のゼミNAGOYA/GIFU合同は、不確実な時代において、経営者が何を拠り所に判断すべきか、「人を見る力」という原点に立ち返る機会となりました。知識やノウハウを得るだけでなく、考え続ける視点を持つこと。地域や立場を越えて、経営者同士が学びを共有すること。そうした場としてゼミが果たす役割は、今後ますます重要になっていくと感じました。</p>








































				
				
			]]></description>
			<category>山口恵里の”現場に行く！”</category>
			<guid isPermaLink="true">https://www.smallsun.jp/smallsun_news/other/yamaguchi/entry-6329.html</guid>
			<pubDate>Thu, 05 Feb 2026 12:00:59 +0900</pubDate>
		</item>
		<item>
			<dc:creator>山口恵里</dc:creator>
			<title>山口恵里の“現場に行く！”2026年1月号</title>
			<link>https://www.smallsun.jp/smallsun_news/other/yamaguchi/entry-6287.html</link>
			<description><![CDATA[
				
				



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<h2 >「第７４回：ストレスチェック制度　中小企業も義務化でどう変わる？」</h2>








































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<div class="column-image-right js_notStyle acms-col-sm-6">
	<a href="https://www.smallsun.jp/archives/002/202601/large-29e7e0e3aeed702bf30146a44ee49a7c6aecd94d5b6ee9fb0cfa1a87ab23a3a6.png" data-rel="SmartPhoto[6287]" data-caption="">
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	</a>
</div>


































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<p>これまで従業員50人以上の事業場が対象とされていた従業員のストレスチェック制度が、2025年5月の労働安全衛生法改正により、「従業員50人未満」の中小企業でも義務化されることに決まったのは、これまでスモールサン・ニュース<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/extra/series_mental-health/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">『社長のためのメンタルヘルスニュース』</a>やSSインターネットラジオ<a href="https://www.smallsun.jp/radio/wednesday/sakie/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">『咲江のメンタルタフネスへの道』</a>でも度々お伝えしてきました。<br />
<br />
とはいえ、施行は「公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日」ということで、詳細な施行時期はまだ未定（2028年4月1日までには施行される見込み）ということもあり、まだまだ意識していない経営者さんも多いのではないでしょうか。<br />
<br />
しかし、この施行までの3年間はあくまでも準備期間。<br />
何しろ2023年の労働安全衛生調査（実態調査）によれば、50人未満の事業場でのストレスチェック実施率は34.6％。実に7割近くの中小企業が新たにストレスチェック制度を導入し実施しなくてはならないわけです。<br />
<br />
そこで今回は、産業カウンセラーでスモールサンのメンタルヘルスプロデューサーの咲江さんに、中小企業のストレスチェック制度について詳しくお聞きしました！<br />
そもそもストレスチェックって何をすればいいの？<br />
実施することで企業にとってどんなメリットがあるの？<br />
などなど、制度の基本的な仕組みから、中小企業ならではの課題、そして組織づくりへの活かし方までお届けします。<br />
皆さん、ぜひ読んでしっかり備えてくださいね！</p>








































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<!-- テーブル -->
<div class="column-table-">
	<div class="entry-container">
	<table class="table-">
	<tr>
		<td><b>咲江さんプロフィール
</b><div>公認心理士（国家資格）、産業カウンセラー、キャリアコンサルティング2級技能士（国家資格）
</div><div>厚生労働省委託事業　東京産業保健総合支援センター促進員、（社）日本産業カウンセラー協会　認定講師、タッピングタッチインストラクター
</div><div>総合不動産会社、外資系ラグジュアリーブランドで人事総務庶務として、健康診断・給与・人事考課・社会保険・休復職・就業規則・メンタルヘルスなどに16年携わり、その後　独立。
</div><div>現在はカウンセラー、キャリアコンサルタントとして様々な企業でメンタルヘルス・ストレス対策・リラクセーション・コミュニケーションなどの研修や、メンタルヘルスの相談業務、メンタルヘルス制度構築などを行っている。また、小・中学校で不登校児童の支援、震災後に心のケアとして注目を集めているタッピングタッチのインストラクターとしても活動中。
<a href="mailto:sakie_zaki@yahoo.co.jp" target="_blank" rel="noopener noreferrer">sakie_zaki@yahoo.co.jp </a></div></td>
	</tr>
</table>

	</div>
</div>




































<!-- テキスト -->

<h3 >ストレスチェック制度とは何か<br />
〜「うつ病を見つける制度」ではない〜</h3>









































<!-- テキスト -->

<p><b>山口：</b>まず前提として、ストレスチェック制度って、そもそも何のための制度なのか、改めて教えていただけますか。<br />
<br />
<b>咲江：</b>まずお伝えしたいのは、そもそもストレスチェックは「うつ病を見つけるための制度」ではないんですね。ここが一番誤解されやすいところなんですけれども。会社で働いている方が「今の自分のストレス状態がどんな感じなのか」を知って、自分で整えるために使ってもらう、いわば「予防のための制度」です。<br />
<br />
<b>山口：</b>なるほど。チェックされて引っかかったらアウトといったものではないと。<br />
<br />
<b>咲江：</b>言ってみれば健康診断とすごく近い考え方です。健康診断って、年に一回受けて、血圧が高いなとか、体重ちょっと増えたなとか、自分でチェックして「そろそろ食事に気をつけようかな」とか考えますよね。ストレスチェックもそれと同じ。ただ、今までメンタルの状態って目に視える形で把握する手段がなかったんです。それで５７の質問に答えていくことで、自分の働き方やメンタルの状態を数字やグラフで客観的に把握できるようにしようという仕組みです。</p>








































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<!-- 画像 -->
<div class="column-image-left">
		<img class="columnImage" src="https://www.smallsun.jp/archives/002/202601/03d8119ba71515b9d6a5b6b91e2ce793e57a32878a11f39a41919577b187309f.png" alt="" width="1344" height="857">
</div>

































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<p><b>山口：</b>「今のコンディションはこうですよ」というのを可視化することで、自分で少し整えたり、生活を見直したりするためのものなんですね。<br />
<br />
<b>咲江：</b>そうなんです。勿論、結果として数値がかなり高く出る、いわゆる「高ストレス者」と判断される方がいることもあります。ただ、その場合でもすぐに何かを強制されるわけではありません。高ストレスの状態にある方に対しては医師面談の機会が用意されますが、これもあくまで任意です。メンタル不調の場合、なかなか自分から医療機関に行くのってハードルが高いですよね。でも、こうやって数値として「今、ちょっとしんどい状態ですよ」と出ることで、「一度話を聞いてもらおうかな」と思えるきっかけになる。そこに意味があります。<br />
<br />
<b>山口：</b>なるほど。制度としてはかなり配慮されているんですね。<br />
<br />
<b>咲江：</b>とてもセンシティブな制度なので、本人の同意なしに個人の結果がそのまま会社に伝わることは基本的にありません。高ストレスで医師面談を受ける場合は結果提供の同意の下で会社側に開示されますが、面談内容については就業上必要な配慮を行うための「意見書」として伝えられますので、詳細な相談内容がそのまま伝わることはありません。<br />
<br />
<b>山口：</b>まずは「自分の状態を知る」「悪くなる前に気づく」ための予防の仕組みが、ストレスチェック制度なんですね。</p>








































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<!-- テキスト -->

<h3 >ストレスチェック実施の流れを整理<br />
〜「実施者」「実施事務従事者」〜</h3>









































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<p><b>山口：</b>ストレスチェック制度について、「目的は予防」というのは分かったのですが、実際に実施する場合誰が担当するのか、会社はどこまで関わるのかといった仕組みについても教えていただけますか。<br />
<br />
<b>咲江：</b>大まかな流れとしては、以下の通りです。</p>








































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<!-- 画像 -->
<div class="column-image-left js_notStyle acms-col-sm-12">
		<img class="columnImage" src="https://www.smallsun.jp/archives/002/202601/72aa5241ae0300e8d395aeec89e3b911036b62c366fbe01e2d1d8f3d6aa4373f.png" alt="" width="700" height="761">
</div>

































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<p>重要なのは、ストレスチェック制度自体は会社の義務であり責任ですが、実際にストレスチェックを行う「実施者」は医師や保健師、あるいは私のような公認心理士といった厚生労働省令で定められた有資格者でなければいけないということです。<br />
<b><br />
山口：</b>健康診断と同じように、ちゃんと専門家に見てもらわないといけないんですね。<br />
<br />
<b>咲江：</b>とはいえ、じゃあ保健師さんに全て丸投げできるかというと、そういう訳にもいきませんよね。質問票の配布と回収、未回答者へのフォロー、結果の記録や通知といった運営上必要な実務があります。これらについては、会社の中で「実施事務従事者」という役割の人を立てていいことになっています。<br />
<br />
<b>山口：</b>実施者の補助をする人という感じですね。<br />
<br />
<b>咲江：</b>そうですね。実施事務従事者は、あくまで事務を行う人であって、結果を判断したり、高ストレス者かどうかを決めたりする立場ではありません。そのため特別な資格は必要ありませんが、かといって誰でもいいという訳でもありません。非常にプライベートな情報を取り扱うことになりますので、守秘義務に則って適切にデータを扱えることは勿論、ストレスチェックを受ける人の人事に関して直接権限を持つ人（人事権者）は、実施事務従事者になってはいけないことになっています。<br />
<br />
<b>山口：</b>なるほど。人事権があると、ストレスチェックの結果で「ちょっとメンタルに問題ありそうだな。これ以上役職を上げるのはやめとこう」とかできちゃいますもんね。やるやらないは別としても、可能性がゼロでなければ回答する側も警戒して素直に答えられなくなりそうです。<br />
<br />
<b>咲江：</b>ストレスチェックは、工場や現場作業が中心でパソコンを使いづらい職場では紙で実施しているところもありますが、多くは効率を考えてWeb上での回答が主流になっています。厚生労働省が無料で使えるツールを提供していますので、それを使えば費用をかけずに実施することも可能ですが、その場合でも実施者や実施事務従事者をどうするか、プライバシーをどう守るか、という点はきちんと整えなければなりません。「無料だから簡単」というわけではないことは念頭に置いておいてほしいですね。<br />
<br />
<b>山口：</b>なるほど。ちゃんと理解していないと「やっているつもりで、実はできていない」ということにもなりかねないですね。<br />
<br />
<b>咲江：</b>そうなんです。だからこそ、まずは制度の仕組みを正しく理解することが、義務化に向けた第一歩だと思います。</p>








































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<!-- テキスト -->

<h3 >中小企業にとって何が一番大変なのか<br />
〜想定される課題と必要な情報〜</h3>









































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<p><b>山口：</b>ここまで制度について整理してきましたが、いざ実施しようと思うと結構大変な気がしますね。<br />
<br />
<b>咲江：</b>正直に言うと、私も「50人未満の小規模事業場で本当にこれを回せるのかな」という不安は、かなりあります。例えば、50人以上の事業所では必ず産業医を選任しなくてはいけないので、おそらく殆どの企業でその産業医さんが実施者になっていると思います。でも、これが10人や20人といった規模の会社だったりすると、前提条件がまったく違いますよね。産業医がいない、専門職とのつながりもない、そもそも制度を運用するための人手が足りない、という会社さんが多いんじゃないかと思います。<br />
<br />
<b>山口：</b> 50人以上の事業場ではある程度それまでの延長線上で対応できていたけれど、これからはゼロから導入しなくてはいけない企業がたくさん出てくるということですね。<br />
<br />
<b>咲江：</b>実際「ここからが本番だな」と感じています。厚生労働省でも、50人未満の事業場向けの運用については、まだ審議中なんです。私自身、厚生労働省の外郭団体で中小企業を支援している産業保健総合支援センターに所属しているので、今日も確認したんですが、「決定事項はまだ何もありません」というのが正直な回答でした。（2025年10月取材時点）できるだけ中小企業の負担が少なくなるように、という前提では話が進んでいるようですが、実施者に専門職が関わるといった大枠はおそらく変わらないと思います。<br />
<br />
<b>山口：</b>そこは簡単には緩められないですよね。プライバシーの問題もありますし。<br />
<br />
<b>咲江：</b>これは私の推測ですが、産業医の選任義務のない50人未満の小規模事業場を対象に労働安全衛生法に基づいた産業保健サービスを無料で提供する地域産業保健センター（地さんぽ）という機関があるので、おそらくストレスチェックの実施者がいない場合はこの地さんぽの医師につなぐ形か、外部の専門業者に委託することになるんじゃないかなぁと想像しています。とはいえ、地さんぽが十分な受け皿になるかどうかは微妙なので、私のような公認心理士や保健師がいかに中小企業の皆さんと繋がりを持てるかもこれからの課題だと思っています。<br />
それでも不安はあって、私たちはストレスチェックの実施はできても、高ストレス者が医師面談を希望した場合の面談はできません。現状希望があった場合には1ヶ月程度を目安に速やかに医師面談を行うとなっているのですが、これがもし半年待ちとかってことになってしまうと、その間に状況が悪化してしまう可能性もあります。<br />
<br />
<b>山口：</b>義務化となって慌てて対応すると更に大変そうです。事前にしっかり情報を入れておくことが大切ですね。実施していない場合の罰則というのはあるんですか？<br />
<br />
<b>咲江：</b>今のところ未実施に対する直接的な罰則はありませんが、ストレスチェックの結果についての報告義務を怠ったことには罰則が設けられています（※1）。また、未実施の会社で適応障害やうつ病などメンタル不調になった従業員が出た場合、安全配慮義務を怠ったとして責任を問われる可能性がありますし、それこそ訴訟問題になればまず会社が負けることになります。最近は労災認定も急激に増えていますから、そういう意味でも実施しないことで会社としてのリスクはより大きくなります。<br />
<br />
<b>山口：</b>経営者の方がちゃんと知っておかないと、「こんなはずじゃなかった」ということになりかねませんね。<br />
<br />
<b>咲江：</b>だからこそ、施行までに一定の準備期間が設けられているんだと思います。いざスタートしてから慌てないように、今のうちから心構えをしておいてほしいな、というのが正直なところです。</p>








































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<!-- テーブル -->
<div class="column-table-">
	<div class="entry-container">
	<table class="table-">
	<tr>
		<td>※1　労働基準監督署への報告は労働安全衛生法第 100 条に基づくものであり、違反の場
<div>合には罰則があります。50 人未満の事業場については、現段階では報告義務はありません。</div></td>
	</tr>
</table>

	</div>
</div>




































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<h3 >「義務だからやる」ではもったいない！<br />
〜やるなら「経営に活かす」使い方を〜</h3>









































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<p><b>山口：</b>ここまでお話を聞いていると、「正直、大変そうだな…」というのが率直な感想なんですが、ストレスチェックをすることのメリットはあるんでしょうか？<br />
<br />
<b>咲江：</b>勿論あります。義務化と聞くと、どうしても「やらされる」「負担が増える」というマイナスの印象になりがちですが、きちんと使えば会社にとって大きなヒントになる制度なんです。それが「集団分析結果」というもので、ストレスチェックでは個人個人の結果を見ることはできませんが、10名以上の母数があれば全体や一定のグループ単位での傾向を分析して見ることができるんです。<br />
<br />
<b>山口：</b>ストレスチェック制度の実施手順で「努力義務」となっていた部分ですね。<br />
<br />
<b>咲江：</b>これは何が分かるかというと、メンタル不調に限らず、上司や職場の支援がどれくらいあると感じてるのか、仕事の量や質による負担感はどれくらいなのか、従業員が実際にどう感じているのかをデータとして見れるようになる訳です。これって経営者さんからすると普段は見えづらい部分で、「最近ちょっと元気がないな」「雰囲気が重いな」と感じていても、それが業務量の問題なのか、人間関係なのか、感覚だけでは分からないことが多いですよね。私も色んな会社さんの集団分析結果を見ていて、「あ、ここなんだな」というポイントが見えてくることが多々あります。<br />
<br />
<b>山口：</b>どんなケースがあるんですか？<br />
<br />
<b>咲江：</b>例えば、「業務量は平均値に比べてかなり多いんだけど、全体のストレスチェック結果は悪くない」という会社さんがあって、「何故だろう？」と思って見ていくと、上司の支援や同僚のサポートの数値がとても高かったりするんです。要は人間関係がすごく良いから、業務量が多くてもストレスにつながっていないんですね。これとは逆のパターンで、仕事量はそれほどでもないのに調子の悪い人がちらほらいて、よく見ていくと人間関係に問題があることが分かったりする。そうすると、「何から手を付ければいいか」が分かるんです。業務量の調整なのか、配置の見直しなのか、それとも管理職の関わり方なのか。それを感覚ではなく、根拠を持って話ができるというのも大きいと思います。社長の感覚で「ここを変えよう」と言うのと、「こういう結果が出ているから、ここを見直そう」と言うのでは、説得力が全然違いますね。<br />
<br />
<b>山口：</b>集団分析結果は、職場改善のスタート地点。「悪い結果が出た＝ダメな会社」ではなくて、「課題が見えた」と考えるのが大切ですね。<br />
<br />
<b>咲江：</b>厚生労働省も「集団分析結果を出せますよ。生かしてくださいね」と言ってはいるんですが、それだけだとやっぱり難しい部分があるので、私は色々な会社さんでストレスチェックを見せていただく時に「まず結果の読み解き方を管理職研修でやりませんか」と提案しています。管理職の人たちが結果を見て、「うちの会社は今こういう傾向なんだね」と理解した上で、「じゃあ、どう変えていこうか」と話し合う。それだけでも、職場の空気は少しずつ変わっていくと思います。<br />
実際にストレスチェックを実施する場合、実施事務従事者の負担がかなり大きくなるので、おそらく外部委託を選ばれるケースが多いと思います。委託業者さんも様々なので、こういった分析までしっかりやってくれるところもあれば、ストレスチェックの結果だけ出して終わりというところもあります。何をどこまでやってくれるのか、委託する際はしっかり確認することが大切です。安いと思ってお願いしたら、「うちはツールを提供するだけです。実施者はそちらでご用意ください」なんてケースもあるので注意が必要です。<br />
<br />
<b>山口：</b>一言で「義務化」と言っても、義務対応としてだけやるのか、経営の材料として使うかで、意味合いがまったく変わりますね。<br />
<br />
<b>咲江：</b>本当にそうです。確かに準備は大変ですし、負担もあります。でも、「やらなきゃいけないから仕方なく」ではなく、「会社をよくするために使おう」という視点を持っていただければ、結果として人が辞めにくい職場づくりにつながっていくと思います。<br />
<br />
<b>山口：</b>この義務化をきっかけに、制度を上手に使って、会社の財産にしてほしいですね。今日はありがとうございました！</p>








































				
				
			]]></description>
			<category>山口恵里の”現場に行く！”</category>
			<guid isPermaLink="true">https://www.smallsun.jp/smallsun_news/other/yamaguchi/entry-6287.html</guid>
			<pubDate>Mon, 05 Jan 2026 12:00:59 +0900</pubDate>
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