スモールサンニュース山口恵里の”現場に行く!”

第41回 有限会社平和防水工業


皆さん、こんにちは!スモールサン事務局の山口恵里です。
「山口 恵里の“現場に行く!”」第41回は、有限会社平和防水工業 代表取締役の浦田 和裕氏にお話をお聞きしました!

これまでスモールサンの「学びの象徴」の一つとして、山口教授からもその重要性を説かれてきた「管理会計」。
管理会計には、単純な売上げ拡張主義では様々な壁を乗り越えられない現在で「中小企業が利益を生むために必要な手法」が詰まっているからです。

一般的に「会計」と聞いてイメージする財務会計は、過去の業績を外部へ報告するための過去会計。
一方で管理会計は、会社の発展を持続させるための徹底した経営管理、そして「数字で未来を語り」、社長と社員みんなで「共有」する未来のための会計なのです!

とは言っても、「じゃあ具体的にどう活用できるの?」と思いますよね。
そこで今回は、スモールサンの管理会計研究会で初期から学び、自社にあわせて実践したことで「売上げを下げながら利益は3倍に成長」させた平和防水工業の浦田社長に、なぜ管理会計を学ぼうと思ったのか、実際にどのように自社で管理会計を活用しているのかなど詳しくお話をお聞きします!

この4月からは東京管理会計研究会が、5月から名古屋管理会計研究会が新期スタートを迎えます。
皆さん、ぜひ一度「管理会計」の魅力を知り、ご検討くださいね。


会社名:有限会社 平和防水工業
住所:〒270-2216 千葉県松戸市串崎新田182-14
創立年月:平成6年2月
知事許可:千葉県知事 許可(般-21) 第38098号
代表:浦田 和裕
事業内容:雨漏り調査、修理、防水工事、外壁塗装、リフォーム、改修工事
     遮熱、断熱コーティング工事、LED照明販売施工
     精密板金加工、建材販売
資格:各種防水一級施工技能士、有機溶剤、他

千葉県の防水工事業
 ~隣接異業種でリフォームや外壁塗装も~

山口 まずは事業内容からお教えいただけますか?

浦田 当社は、建設業の中で「防水工事業」をメイン事業としています。例えば屋根や屋上、ベランダなど、基本的に雨があたる箇所に何も処理を施さなければ、そこから滲み込んで雨漏りしてしまいます。そういったところを対象に工事をして、雨漏りしないようにするのが防水工事です。

山口 なるほど、雨漏りする箇所の修繕ですね。

浦田 もちろん新築工事の仕事もあります。屋上やベランダといった屋外の他にも、ビルなんかでいうと例えば店舗の厨房など、屋内で水を使う場所もそのままにしていると下に水が漏れちゃうんですよ。そういった場所の防水工事をして水が漏らないようにする事前対策も行っています。一番得意としている仕事としては「雨漏りを直す仕事」なんですが、近年では他の業種の許可も取得してリフォーム工事やビルの大規模修繕も請け負うようになっています。

山口 少しずつ業態を拡げてこられたんですね。

浦田 と言いますのも、基本的に雨漏りに気付くのは、屋内にまで水が滲みだしてからですよね。それで滲み出した箇所も一緒に直してほしいという依頼をいただくことがあり最初は断っていたのですが、外側が直ったら内側も綺麗に直したいのは当然ですし、少しずつ自分たちでリフォーム工事もやるようになっていきました。

山口 たしかに、雨漏りって目に見えるとこまで来ないと分からないですもんね。そして見えた時には被害が大きくなっているという…。

浦田 山口先生の言う「隣接異業種」ですね。あれは耳からずっと離れない言葉でしたから。そんなような感じでやってきて、今では十数種の建設の許可を取得し、塗装工事だったり様々な依頼に対応できるようになっています。

山口 素晴らしいですね!



数字を知らないことで「必ずぶつかる壁」
 ~伸びている会社の社長は「数字」に強い~


山口 さて、ここからは「管理会計」についてお聞きしたいと思います。最初に管理会計を始めたのはいつ頃なんですか?

浦田 名古屋で管理会計研究会が始まるという話を聞いて参加したんですよね。

山口 名古屋管理会計研究会は2011年に第1期が始まりましたので、もう8年前ですね。参加を決めたきっかけはあるんでしょうか?

浦田 正直、「直感」でしたね。

山口 と、言いますと?

浦田 まず、私は数字を勉強してこなかった人たちが「必ずぶつかる壁」というのがあると思うんです。当社は今年で創業25年目で、私が25歳の頃に立ち上げた会社です。よくあることだと思うんですが、初代って勘で動く、勘がすごいという人が多いんですよね。でも、その「勘で何となく」というのは、実は本人が一番不安なんです。確信が持てないわけじゃないですか。そんな中で悩んでいた時に、「管理会計研究会」という話が耳に入ってきて、「これだ!」と。それで、名古屋だったんですけど迷わず行こうと思ったのが一番初めなんです。

山口 「これが今の自分に必要なものだ」という直感があったんですね。

浦田 そうですね。壁にぶつかった時に、「何が駄目なんだろう」とか「どうしてこうなんだろう」と悩みますよね。そういう時に「勉強する人」と「そうじゃない人」がいて、後者の会社はやはり駄目になっちゃうんじゃないかなと思います。それで周りの伸びている会社の社長を見ていると、皆ちゃんと数字を勉強しているんですよ。それで何となく「そもそもそこが経営の大事なとこなんだろうか」と感じたんです。

山口 それで名古屋まで通ってくださったんですね。

浦田 実は東京にも管理会計研究会があるっていうのを知ったのはその後で…(苦笑)。ですので、私は名古屋で2回参加した後に、東京でも参加してるんですよ。名古屋と東京で講師が違うので、教えている内容は同じなんだけどその教え方が違っていて、逆に両方体験できたことで更に幅が広がった気がします。

山口 そう言っていただけると嬉しいです。

「未来」を「数字」で共有できる強み
 ~経営者の「感覚」は実は本人こそ不安~


山口 実際に経営者として管理会計を学んでみていかがでした?

浦田 「まさにこれだな」という感じでしたね。まず管理会計って、過去の結果をどうこうするというものではないんですよ。まるっきり無いわけではないですが、あくまでも管理会計は「会社をこうしたい」「こうなりたい」という未来に向かって、じゃあ「こうしていかなきゃいけないね」とか「こういう仕事を取らなきゃいけないな」ということを「数字」を使って明確にするものです。

山口 財務会計は「過去会計」、管理会計は「未来会計」と言われていますよね。

浦田 過去の会計というのは税理士の先生に頼んでも出ます。それで、経営者の意識レベルによって月次で出したりしながら、「自分の会社がどうなっているのか」というのを判断する。そして特に初代に多いのは、そこから「これからどうしていこう」「こう動かないと」っていうのを「感覚」で導き出す。でも、この「感覚」というのが人によって違うから怖いんですよ。

山口 確かに、経営者さん本人は感覚で理解しているのでいいですが、それを社員に言葉で説明した時にちゃんと伝わるかというと難しいところですよね。

浦田 実際そういった説明をするのに言葉で色々やってきて、非常に悩みがあったんですよね。「数字が大事だ」という理由はそこにあるんだとはっきりわかりました。私は管理会計を知ることによって、自社の仕事の内容や無駄な部分というのを「数字」で説明することができるようになりました。そのおかげで、今までただ「もっと無駄をなくそう」と言うだけではいまいち伝わらなかったのが、具体的に自分たちの仕事がどういう風になっていて、その中の何が無駄で、その無駄を省くとどうなるのか、逆にそこに無駄を入れる代わりに次はここでこうすればいいとかっていう具体的な話をできるようになりました。

山口 一般的に会計と聞いてイメージされるのは、過去の業績を外部報告するための財務会計です。一方で未来会計と言われる管理会計は、会社の未来のビジョンとそれを達成するためのプロセスを明確にし、社内で共有することができる「経営のための会計」ですね。

「管理会計に正解はない」
 ~社長が考え「自社にあった形」で落とし込める~

山口 この「未来を数字で共有する」というのは、管理会計の大きなポイントですね。

浦田 世界共通で「1」といったらやっぱり「1」ですからね。経営者の感覚ではなく、皆に共通の認識として持たせることができます。だからこそ管理会計は用途や部署なんかで変化させながら、落とし込んで活用していくことができるんじゃないかなと。

山口 なるほど。具体的にどのように活用されてるんですか?


浦田 当社は建設業で、「どんぶり勘定」と言われているような業界なんです。自分たちも実際に以前はそうだったのですが、「ストラック図(変動損益計算図)」を浸透させたことで、利益率が大幅に改善されました。売上げがいくら、必要な材料費や人件費、会社の固定費がいくらで、計算すると利益がいくらになるというシンプルな作業なんですが、前もって予想の原価をパーセンテージも含めて出したりすると、ちゃんとその数字をキープしようとしますし、自然と管理の仕方も一工夫するようになっていくんです。

山口 素晴らしいですね!

浦田 特に建設業にとっては非常に分かりやすいし通用すると思いますよ。当社が本当に大きく変われたのはそこで、単品管理で一件一件の利益がどうなっているのかをちゃんと見るという。その集大成が売上げになるわけで、その一つひとつを管理して「これは駄目だな」とか「こっちの方だけにしよう」と判断する。無駄な部分をやめることで、そこに携わっていた人間が他でより利益が出る仕事をすることができる。

山口 売上げを上げようとすると、つい件数ばかり追ってしまうことってありますね。そこを「利益の出る仕事をとる」という感覚へ変えることができたんですね。

浦田 大事なのは「自分の会社に合っている内容」を見つけることで、それが「社長の仕事」なんだと思います。管理会計には「これが正しい」という正解がないんです。だからこそ、当社は建設業ですが例えば製造業やサービス業だったり、その中の部署や人によって「合った形に落とし込む」という努力はやっぱり必要になってきますよね。管理会計の「コツ」はそこにあるんじゃないかなと思います。自分の会社のこと、社員の理解度なんかを経営者がちゃんと分かっているか。皆が理解して取り組むことができるように、そこに合った形で落とし込む。「つくる」のは経営者ですが、経営者だけで取り組めることではないですからね。

山口 なるほど。正解がないから自分で自分に合った形に落とし込まなくてはいけない。でも、逆に言えば正解がないからこそ、「自分たちに合った形で活用できる」ということですね。

社長だけでなく、社員にも学ばせる
 ~「社長も同じこと言ってたな」という体験~

山口 とはいえ、実際に管理会計を導入するとなるとハードルを高く感じる方もいると思うのですが、どのように導入されていったんですか?

浦田 私は社員5~6名に管理会計研究会に参加させました。行かせたのは、基本的に仕事を取ってくれる番頭や営業の人たちです。何でも仕事を取ればいいわけではなく「どういう仕事を取るか」が重要であることや、自分が取った仕事に対して成績がどうなるのかといったことを一番初めに分からなきゃいけないのが彼らですからね。

山口 でも、一度に何名も行かせるというのは大変じゃないですか?

浦田 確かにコストはかかりますが、そこは問題ではないです。例えばそれを私自身が皆に一つひとつ教える時間や労力を考えると、そんなに高い買い物じゃないなと。ましてやプロの先生が教えてくれるわけですから、私が皆を集めて取り澄まして教えるより費用対効果もいい。アウトソーシングの考え方として理にかなっていますよね。それに、社長じゃなく「他の方から学ぶ」というのも重要かなと。私だけでは「社長にガミガミ言われてるけど…」となるところ、「あ、社長も同じようなこと言ってたな」という体験をするのって大事かなと思っています。

山口 なるほど。外で同じ内容を聞くことで、より腑に落ちるというのはありますね。

浦田 ですので、まずは分からなくていいからとにかく参加するという状況をつくりましたね。もちろん私自身は授業の内容を分かっているので、そこで質問をつくるんです。勉強してきた時に「ここ習ったよね?」とか「これちょっとやって」っていう形で徐々に実践でやっていきながら、その人がどれくらい理解しているかを見ていく。話をする時でもその勉強をしている流れの中で会話できる「空間」を最初につくろうと。それで最初に数名一気に行かせた感じですね。

山口 なるほど。最初、社員さんたちの反応はいかがでした?

浦田 当然、最初は「行かされ感」ですよね。何やるんだろう…という。その点でも一人ではなく数名で参加してもらったのは良かったと思いますね。ワイワイガヤガヤみたいな感じで皆参加してくれましたから。なので、私自身も挑戦だった部分がありますが、それは「絶対に身にさせる」つもりでちゃんとコントロールできるかというところであって、「絶対に悪い結果にはならない」という確信はありましたので、特にそんなに思い切ったことではなかったですね。

「言葉」の経営理念と「数字」の管理会計
 ~二つがシンクロしてこそ会社が伸びる~


山口 こうしてお聞きしていると、「未来会計」というのは正にその通りですね。

浦田 はい。「自分たちの未来」は当然みんなが知っておかないといけません。そうでなくてはそれぞれが向かっている方向が違うものになってしまう。その時に「数字」という「共通言語」で伝えることができる大事な「ツール」ですよね。勿論それだけではないんですけどね。

山口 会社の未来とそこに向かう道筋を正確に伝えることができると。

浦田 人間にとって「ゴールがない」「ゴールが分からない」というのは恐怖なんですよね。だから小さいゴールをつくってPDCAを回しながら大きなゴールへ向かって行く。そういう意味では、「目標」を示してあげるという点で経営理念と近いものがありますね。

山口 なるほど。確かに、経営理念が言葉で目標を伝えるのに対して、管理会計は数字で目標を伝えるわけですね。

浦田 ただ単にバーンとノルマを与えて「こうだよ」と言っても反発しかない。だから、そこに一つ管理会計という「テーマ」を置いて、数字を基に目標と道筋を共有する。理念も同じで、色々な形で向かい合ってぶつかり合っている時も「うちの会社の考え方はこうなんだ」というところに向かって話をすることができる。どちらかだけじゃなく、この二つがシンクロしないとどこかで歪みが生じるんだと思います。

山口 これはとても大切な考え方ですね。

浦田 先ほど出た「管理会計のやり方に正解はないよ」っていうのもそこですよね。「正解がない」ということは、論理的に言うと「何でも正解だし、何でも不正解」ということ。その中で自分たちが決めたものを正解にしていくために、PDCAを回していきながら試行錯誤で修正していく。そこに「目標数値」があり「経営理念」があり、皆が社長と同じような見解になった時、その会社が良くならないわけがないですよね。悩んでいる会社のヒントっていうのは、そういったところにあるんじゃないかなと思います。

山口 本日はありがとうございました!


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