SSNEWS-title2別刊訪問 皆さん、こんにちは!スモールサン事務局の山口恵里です。
 「山口 恵里の“現場に行く!”」第30回は、京都市右京区にある株式会社三橋製作所の代表取締役、三橋宏氏にお話をお聞きしました!

01 「入れる」「そろえる」「巻く」「拡げる」をキーワードに、モノ作りの工程と工程をつなぐ4つの技術を活かし、ニッチな製品を開発製造する三橋製作所。即席ラーメンに入っているスープなどのパウチを正確に「入れる」包装関連装置では、なんと国内シェアの60%!

 しかし、今年75年目となるその歴史は、けっして順調なばかりではありませんでした。
 大手精密機械メーカーの下請け協力会社として50年余り、大きく成長させてもらった一方で、90年代後半には厳しいコストダウンの要請からその売上げは4割以下にまで激減。「いつ潰れるか」という危機の中で、脱下請けとなる第二創業を支えたのが、それまで地道に取り組んできた自社製品の開発でした。
 皆さん、ご期待ください!

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社名:株式会社三橋製作所
創業:昭和19年2月21日
代表取締役:三橋 宏
営業品目:【包装関連装置】PACK、パウチ・ディスペンサー、カード・ディスペンサー、パウチ・ローダー、パウチ・ワインダー、【コンバーティング関連機器】LPC、AIRX SHAFT、UE、その他自動化省力化機器
本社・本社工場:
 〒615-0082 京都府京都市右京区山ノ内赤山町1
東京営業所:
 〒111-0043 東京都台東区駒形2丁目4番11号 ヨシクニ駒形ビル9F
九州営業所:
 〒812-0016 福岡県福岡市博多区博多駅南4丁目2番10号 南近代ビル6F
上海蜜橋貿易有限公司:
 上海市浦東新区長清路1200弄36号1314室
WEBサイト:http://www.mitsuhashi-corp.co.jp/

関連会社:三橋サンブリッジ株式会社
 〒719-3101 岡山県真庭市赤野三橋610番
WEBサイト:http://sunbridge-corp.co.jp/



「入れる」=包装関連装置

~即席ラーメンのパウチを自動で正確に投入~

山口 三橋製作所では、「2つの分野の4つの技術」というのがキーワードになっているとお聞きしましたが、具体的にどういったものを扱っているのですか?

三橋 当社では、包装関連装置とコンバーティング関連機器という大きな2つの分野を中核に展開しています。コンバーティングというと聞きなれない方もいらっしゃるかと思いますが、紙やフィルムなど薄い素材を加工して、付加価値の高い製品を生みだすことを言います。包装の分野では「入れる」技術、コンバーティング分野では「そろえる」・「巻く」・「拡げる」技術に特化した機器の設計開発、製造、販売を行っています。

山口 なるほど、それで「2つの分野の4つの技術」なんですね。この「入れる」というのはどういった技術なんですか?

三橋 分かりやすく説明をしますと、即席ラーメンに付属するスープや薬味などのパウチを「入れる」機械です。これらのパウチは通常長く連なった連包の状態で納品されますので、メーカーはそれを一つひとつ切り離して麺の上にセットしていかなくてはいけません。当然それらを手作業でやっていては膨大な手間がかかりますので、そのための省力化装置ですね。

山口 まず麺やスープが製造される。それらが包装されて一つの製品になる。その間をつなぐ工程なんですね。

三橋 パウチを一つずつ正確に投入するパウチ・ディスペンサーの他、連包状態のパウチを一定個数単位でつづら折りにして箱詰するパウチ・ローダー、個包の生菓子の台紙などカード状のものを定位置に投入するカード・ディスペンサーなど、様々な目的や用途に応じた「入れる」技術に特化しています。

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山口 確かに一言で「入れる」といっても、入れたいものの形状や重さ、どこにどういう風に入れたいのか、色々な要望がありますよね。

三橋 はい。軽い粉末スープなのか重い液体スープなのか、とにかく大量に箱詰めしたい場合もあれば、逆にきっちり100個ずつ箱詰めしたい場合もあります。生麺の袋ですとスープを3連ずつで折りたたんだり、食品以外にも薬の箱に入っている能書きを入れる機械なども製造しています。包装関連装置では競合他社が1社ありますが、国内では当社がシェアの6割を占め、海外でも40ヵ国以上との取引をしております。

山口 即席ラーメンは今や世界中で作られていますし、非常にニッチでありながら世界で活躍できるというわけですね。

三橋 現在、売上げの6割がこれら包装関連装置で、残りの4割がコンバーティング分野の3つとなっています。


「そろえる」「巻く」「拡げる」=コンバーティング関連機器

~高機能フィルム加工の材料ロスを軽減!~

山口 コンバーティング分野では「そろえる」「巻く」「拡げる」ということでしたが、これらはどういった技術なんですか?

三橋 例えば紙に印刷をする場合、ロール状に巻かれた紙の状態から巻き出して加工ラインに流し、加工後は再びロール状に巻き取られます。この工程の途中では必ず蛇行によるズレが生じ、加工後のロールの端は不揃いな状態になってしまいます。その蛇行を検出して制御し「そろえる」のが蛇行制御装置のLPC(Line Position Control)です。

山口 なるほど、コンバーティング機械のためのユニットなんですね。

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三橋0708 はい。もう一つの「巻く」というのが、ロールの巻き取りや繰り出しの際に、中軸との着脱を容易にするエアーシャフト(AIREX)です。シャフトの内部にゴムチューブが組み込まれていて、圧縮空気で膨張することでツメが突き出しロールを確実にロックします。
そしてもう一つが「拡げる」。薄い素材に加工をする際に、シワができていると困りますよね。そのシワを生じさせず綺麗に「拡げる」のが、このシワ取りロール(UE)です。通常シワ取りロールというと湾曲ロールが一般的なのですが、これには「中央部では過剰に伸び、耳端付近ではたるむ」という構造的な欠陥がありました。当社のシワ取りロールは、表面のゴムを中央から両側へ向かって徐々に大きく伸びるようにすることで、手で中央から外に向けてシワを伸ばすようにシート全体を均一に「拡げる」ことができるんです。

山口 包装関連装置でもそうですが、ここでも工程と工程を繋ぐ「ニッチ」だけれど「なくてはならない」技術を突き詰めることで、業界での独自の立ち位置を築かれているんですね。

三橋 「そろえる」「巻く」「拡げる」という3つをこのようにトータルで製造しているのは当社だけです。高機能フィルムの需要が高まっている中で、高価な素材を加工する際の材料ロスが減ったと高評価をいただいています。

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厳しいコストダウンで売上げ激減!脱下請けの第二創業へ

~下請けの仕事で培ったメーカーとしての土壌~

山口 これらの自社製品というのは創業時から扱ってきたのですか?

三橋 いえ、当社は1944年に私の父が創業したのですが、1950年から京都に本社を置く大手精密機器製造の島津製作所さんの協力下請け会社となり、医療用X線装置や材料試験機といった精密機器の製造に携わってまいりました。高度経済成長もあって大きく業績を伸ばし、下請けでありながら従業員250名を超えるまでになりました。

山口 現在の事業とはかなり異なっていたんですね。

三橋 しかし、90年代後半になると円高が進み、受注先が海外生産にもっていかれ、親会社からのコストダウンの要請に応じることができなくなっていきました。毎年数パーセントずつコストダウンの要請があったのですが、ある時期にはそこから更に3割引いてくれと…。

山口 3割!さすがに対応できる範疇を越えていますよね。

三橋 私たちと同じく親会社も厳しい状況だったのだと思います。医療用X線装置などは新しい機種がどんどん出るものではありませんので、何十年も同じ機械を製造していればコストもだんだん下がっていきますから。しかし価格の要求に応えられず、仕事を断れば売上げは4割減…。この頃は本当に潰れるかどうかという瀬戸際で、何とか土地を売却したり人員を削減しながら、2004年の創業60周年を機に脱下請けをして自社製品を中心とした事業展開にシフトしました。まさに「清水の舞台から飛び降りる」覚悟でしたね。

山口 厳しいコストダウンに、売上げの激減からの第二創業…、大変苦しかったことと思います。

三橋 そうですね。ですが、私は今でも島津製作所さんには感謝していますし、当社の「恩人」と思っています。

山口 と、言いますと?

三橋 最初は加工業者のひとつとして取引きが始まりましたが、その後50年余りのお付き合いの中で、様々な仕事に取り組ませていただきました。そういった中で加工だけでなく機械の組立もするようになり、機械は電気がないと動きませんから次に電気配線も行い、さらには資材調達も、という具合に担当領域を徐々に広げていきました。そしてある時期に設計も手伝わないかと声を掛けていただき、気が付けばメーカーとして必要な要素を全て備えることができていました。今こうして自社製品を持ち、メーカーとして存続できているのもまた、島津製作所さんとのお付き合いがあったからこそです。

山口 なるほど。下請けの仕事の中で、メーカーとしての土壌を育ててもらったのですね。


救ったのは赤字を出しながら開発を続けた自社製品

~「今は良くても、いずれ下請けだけでは苦しくなる」~

山口 とはいえ、よい土壌があっても、下請け業者から自社製品を持つというのは簡単なことではありませんよね。現在の事業分野には、どのようにして辿り着いたのでしょうか?

三橋 当社は亡くなった先代に強いメーカー志向があったんです。当時下請けの仕事はそれだけで相当儲かっている状態でしたが、先代は「いずれ下請けだけでは苦しい時期が来るはずだ」と常に考えていました。そこでかなり早い時期から、下請けで業績を上げながら、その売上げで自社製品の開発を行ってきました。自社製品1号を製作したのは1953年です。

山口 そんなに早い時期から製品開発に挑戦されていたんですか!下請けは待ちの仕事が多いと思うのですが、自社製品となると自分たちで仕事を取りに行くわけですよね。

三橋 「何かテーマはないですか?」と色々な企業へ飛び込み営業を掛けました。ですが、現実問題としてそう簡単に良いテーマは見つかりませんので、開発部門は赤字続きです。下請けで儲かっていた分、社員からは「こんな赤字の事業をやらなければボーナスも増えるのに」というような意見も多くありました。それでも先代は「高度経済成長期は下請けでもいいけれど、いずれ自社製品を持たないと立ちゆかなくなる」と言い続けていました。現在の蛇行制御装置は、この頃に染織機械の企業さんから相談をいただき、着物の原反のために開発されたものが原型なんです。布地から紙へ、紙からフィルムへと時代が変わるとともに、試行錯誤を繰り返して形を変えながら生き残っています。

山口 おお、京都という土地ならではですね。

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三橋 素人営業のようなものでしたが、こうして粘り強く続けていく中で出会ったのが即席ラーメンです。大阪にある大手食品メーカーから、当時手作業でスープを麺の上に乗せていたのを自動化できないかと相談をいただき、試行錯誤の末1971年にパウチ自動ディスペンサーを開発しました。

山口 下請けとして技術を磨く一方で、現状だけを見て安心せずに、業績の良いうちから先を見越して新事業に挑戦をする。そして、実際に下請けが厳しくなった時、新たな軸となったのがそれらの新事業だったのですね。素晴らしいです!


ニッチ分野へのこだわり

~「大きな市場より、大きなシェア」~

山口 当時色々なことをされてきたと思いますが、その中で方針などはあったんですか?

三橋 はい。現在でもそうですが、これからの事業としては必ずニッチな分野を選ぼうということです。京都の企業には「大きな市場より、大きなシェア」という言葉があるんですよ。包装関連装置では国内シェア6割で競合も1社のみ、エアーシャフトも競合は3社ほどで、蛇行修正装置も大手という意味では2社ほどです。シワ取りロールに関しては、実は同じ業界のユー技研工業株式会社さんが開発されたものなのですが、後継者がおらず「この製品を自分の代で終わらせるのはもったいない」ということで事業譲渡のお話をいただき、社長の意思を継いで当社のラインナップに入っています。これは他所には無い製品です。

山口 なるほど、大きな市場を狙えば、いつか必ず大企業や競合の参入を受けてシェアを奪われる。しかし、中小企業だからこそ狙えるニッチな分野なら大きなシェアを取ることができますよね。

三橋 そしてもう一つは、やはり「自分たちで販売できる」ということ。かなり以前の話にはなりますが、省力化装置を作る中で、かつて洋服の襟を縫う際の自動補正機械を製作したことがあります。それは大手メーカーに採用していただき、機械としてはそれなりに売れたのですが、残念ながら次の開発には繋がりませんでした。

山口 自分たちで販売ルートを持てないものは、結局単発で終わってしまうと。

三橋 はい。ニッチな分野で顧客のニーズを捉えて開発し、他の販売制限を受けることなく自分たちでアクションを起こして販売できること。これが当社の重要な事業方針であり、今後も変わらないと思います。


「世界のMITSUHASHIブランド」へ!

~目指すはグローバルニッチトップ~

山口 三橋製作所さんでは、早い時期から海外展開をされてますよね。

三橋 20数年前に蛇行制御装置で中国への販売を始め、ほぼ同時期に包装関連装置も始めました。現在、全製品の35%が海外向けで、包装関連装置においては50%です。即席ラーメンは世界中で食べられていて、年間に大体1000億食生産され食されている中で、日本で食されているのはわずか55億食です。当社でもインドや中国など、様々な国に出させていただいています。中国でのコピー製品など頭の痛い問題もありますが、例えばアフリカなどでも即席ラーメンの消費が伸びているなど、まだ伸びていく要素はある分野です。また、コンバーティング関連機器においても、高機能フィルムの需要は拡大しています。

山口 全体としてはまだ伸びていく可能性のある大きい分野でありながら、その中の非常にニッチな部分を狙って事業にすることで、大手との競合を避けながら世界に進出ができるわけですね。

三橋 はい。包装関連装置だけでなく、私どもの機械というのは基本的に単独では何にもできないんですよ。前工程があって後工程があって初めて成り立つものです。でもそれがないとやっぱり困る。当社のそういったユニット系も、方向性を間違えることなくきちんと事業展開できれば、まだこれから伸びていくと思っています。

山口 素晴らしいですね!それでは、今後のビジョンをお聞かせください。

三橋 新しい創業の年として脱下請けを果たした60期目に、ブランドメーカーとして「三橋ブランドを世界のブランドにする」という大きな目標を掲げました。まだまだ結果は出せていませんが、一歩ずつ近づいて行っているかなと感じています。
また、三橋製作所のハード・ブランチを担う関連会社の三橋サンブリッジ株式会社が岡山にあるのですが、今年3月にホームページをリニューアルしました。これからの時代で残っていくのは、技能士が手を尽くした一品物的なニッチな分野だろうということで、手を尽くす技能士の集まり「手技能士集団」というコンセプトを掲げ、三橋サンブリッジの方向性を打ち出しています。

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山口 サイト拝見しました。「手技能士集団」という独自のコンセプトの中で「手技能士」たちがフューチャーされていて、とても印象的でした!

三橋 私は第二創業として下請けから自社製品へとシフトチェンジしてきました。あの時に決断していなければ、今当社は存在していないでしょう。ですが、それは一つの流れであって、それまでにメーカーとしての素地はできていました。私自身はというと、まだ次の時代に対するアクションというのは何もできていないと思っています。そういう思いからスモールサン・ゼミKYOTOにも参加させていただいています。当社は今年で創業75年目ですが、京都の企業ではまだまだ「ひよっこ」。次の展開、次の時代へと繋げていくためにはどうしていけばいいのかを常に考え、変化していきたいと思っています。

山口 見るのは「今」ではなく「次の時代」、そして次の時代にも生き残っていくために今学び続けることが大切なんですね。本日は素晴らしいお話をありがとうございました!


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