スモールサンニュース大澤徳の“現場レポート”

「『景気を読む』を読む会」第1回開催レポート

スモールサン会員同士で自社や業界を取り巻く景気や環境の変化を情報共有する「スモールサンニュース『景気を読む』を読む会」をオンライン開催いたしました。今回は、そのレポートです。
資源高、人件費高騰、金利変動など、世界のビジネス環境が目まぐるしく変化する昨今、経済動向や社会の変化を“読む力”は、私たち中⼩企業にとっても生き残るための必須能力であるといえます。
スモールサン会員の皆様は既にスモールサンニュースをご覧いただき、経済構造の変化や景況感の理解を深め、経営判断の質を高めていらっしゃることと思います。
この度は、その一歩進んだ形で、スモールサン会員企業と共に経済の動向や変化を共に共有し、理解を深めるための場を創ることで、”今”という時代の理解に繋がるのではないか。そのような想いで開催いたしました。

『景気を読む』を読む会」の概要

6月27日(火)15時から16時30分の90分間で開催し、30名以上の方にお申込いただきました。今回の「『景気を読むを読む』を読む会」は開催日から2週間前という直近のご案内で、しかも初めての試みということで数名でも集まれば嬉しいと思っていたところ、想定よりも多くの方にお申込いただき、大変嬉しく思います。このように多くの方にお集まりいただき、スモールサン会員皆様の経済動向への関心の高さを感じます。

まず冒頭で、毎月20日に発行しているスモールサンニュース「景気を読む」を参加者の皆様で読み合わせを行いました。もしかすると、参加される方からこの読み合わせについては「既にニュースを読んでいるので、この読み合わせの時間がなくてもいい」と感じられる方もいらっしゃるかもしれません。私たち事務局としてはご参加される皆様に実際に声に出して、読んで改めて理解を深めていただきたいと考えております。

ニュースを読み終えた後に、参加されている皆様から、最近の経営状況や各社の経営状況から見える世界や日本での景況感や業界の動向などについてご報告いただきました。
皆様が報告される場面のファシリテーターはスモールサン事務局の大澤が務めさせていただきました。初めてのこのような試みで至らない点も多々あったかと思います。いろいろ試行錯誤しながら、良い形を目指していきたいと思っています。今回の会の目的については、「全国のスモールサン会員で景況感を共有する」ことに重きをおいておりました。もしかすると、それぞれの経済や個別企業についての情報が並列的に紹介されて、特定の経営テーマや、景況感についての深掘りが足りなかったようにも感じています。今後は「景気を読む」の記事の中での論点を設定して、ディスカッションするような形式も模索していきたいと思っています。

2023年 中小企業が直面する課題

最近、中小企業経営者から聞く課題は、1つが仕入価格高騰や価格転嫁の難しさなど物価が上がっていることへの対応、2つ目に、人手不足が深刻ということ。今回の参加された企業でも皆様おっしゃっていました。
日本では長らく継続的に物価が下落もしくは横ばいの状態が続いていましたが、昨年からは食品、エネルギー(ガソリン、電気、ガスなど)を中心に外食なども含め、身の回りのモノやサービスの値上がりが連日のように報じられています。総務省の消費者物価指数でみると、2020年から比べると5%ほど上昇しています。

実際にどのくらい物価があがっているのか、総務省 2020年基準消費者物価指数 全国 2023年5月分から一部抜粋してご紹介いたします。


[総合指数の前年同月比に寄与した主な内訳] 10大費目 中 分 類  前年同月比(寄与度) 品 目、前年同月比(寄与度)食料     調理食品   9.4%(0.34)   ・・・・・ からあげ 11.7%(0.04) など外食 6.4%(0.30)          ・・・・・ ハンバーガー(外食)17.1%(0.04) など菓子類 11.3%(0.27)        ・・・・・ チョコレート 14.4%(0.04) など乳卵類 17.5%(0.22) ・・・・・ 鶏卵 35.6%

参考 総務省2020年基準消費者物価指数 東京都区部 2023年6月分(中旬速報値)
参考 総務省 2020年基準消費者物価指数 全国 2023年5月分

人手不足については、地域や業界、職種によって状況が様々です。人手不足の原因は、少子高齢化で労働者の数が減っていることがあげられます。コロナ禍によって企業の人で不足感は、一時的に収まったように感じたかもしれませんが、基本的には景気が戻れば一気に人手不足感が高まる構造は変わっていません。最近では飲食・小売業で採用しようと思っても「採用できない」という声をよく聞きます。
人手については採用だけではなく育成や定着率をどうするか、賃上げと既存社員との賃金とのバランスをどうするか、など多くの課題を抱えてらっしゃると思います。筆者の個人的な意見ですが、労働者側にとっても従来の長期雇用を前提とした仕事観が変わりつつあり、若い従業員との世代間ギャップも関係しているように感じています。

下記に、労働者の過不足状況について厚生労働省の調査結果を共有させていただきます。正社員においては、「運輸業、郵便業」「建設業」「医療、福祉」で、パートにおいては「宿泊業、飲食サービス業」で人手不足感が高いことがわかります。




参考 厚生労働省 労働経済動向調査(令和5年5月)の概況

参加企業からの報告

参加メンバーからいただいた情報をいくつかご紹介します。実際にはもう少し突っ込んだ話もでたりしましたが、参加メンバー企業が特定されないように、業種ごとにまとめて大まかに記載させていただきます。皆様の経営においても共感される内容もあるかと思います。

製造業関連の方より
 「自動車関連部品において中国向けの輸出は伸び悩んでいる。一方、米国向けは好調な印象。」「価格転嫁できている」という方もいれば「値上げできていないので苦しい」という声も。「価格転嫁できて表面の売上があがっているように見えるが、出荷量が減っているので、価格転嫁だけに集中すると経営判断を見誤ってしまうと感じてる。」「正社員雇用が難しい」

小売業の方より
「割と値上げできているが、顧客の財布のひもが固くなったように感じている」「人手不足が深刻。正社員雇用よりパートタイム労働者の戦力化に注力」「冷蔵庫などで電気をたくさん使うので、今後の電気代対策が課題」

建築・不動産業界の方より
 「資材価格高騰により家1軒で坪単価3割くらいあがったように感じてる」「また住宅ローン金利が上昇すれば、総支払額が上昇するので、戸建て単価に影響がある」 「不動産自体の単価はあがっているものの、自社の地域外の富裕層と海外投資家の方が購入されるので、取引に関われない」「海外投資家から日本の物件を見ると、円安で2〜3割ほど割安に見えるのでは」
(参考記事) 対談 2023年5月号「“二極化”する不動産市場~その① 活況なのか? 不振なのか?~」
特に「“タワマン・ブーム”を支える地方富裕層と大都会の投資家たち」

あと「インバウンドが増えた」という声もありました。日本政府観光局によれば、北米やインドネシア、ベトナムからの訪日外客数は既にコロナ前の2019年を上回っている状況です。ただ、中国からの旅行客数がコロナ前と比べると低い水準です。2023年5月時点での中国からの訪日外客数は、2019年比約2割で、今後中国からの旅行客が2019年並みに戻ると考えれば、より一層インバウンドは増加し、観光産業で売上増加するものの、人手不足感は増していくかもしれません。

次回に向けて

ウクライナでの戦争、インバウンドなど、海外経済と日本経済が密接につながっていて、日本国内においても、不動産・建築、製造業、個人消費、雇用の動向が密接に絡み合っているなど、経済を読む視点は様々です。

今回企画させていただいた「『景気を読む』を読む会」を通じて、「読む力」を高める一助になれば幸いです。いろいろ試しながら進めていきたいと思っておりますので、今後も様々な曜日・時間で開催を検討したく思っております。
次回の開催日は、7月27日17時〜18時30分を予定しています。
お気軽にご参加いただけますと幸いです。



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