瀧本智恵のシネマ・ノート　2023年8月号

『シモーヌ フランスに最も愛された政治家』（英題：Simone,a Woman of the Century） 今日よりも明日を信じて 私は屈しない 海を臨むテラスで、シモーヌ・ヴェイユ（エルザ・ジルベルスタイン）は自伝に取り組む。司法官・政治家として携わった出来事、少女時代の家族との幸せな思い出、そしてナチス・ドイツの収容所での壮絶な体験・・・様々な記憶が蘇り、その度にペンは止まる。 1974年パリ。中絶法成立のため、保健大臣のシモーヌは夫アントワーヌらと共に策を練る。「中絶が悲劇だと確信するには女性に聞けば十分です」。反対する右派の男性議員たちとの激しい攻防の末、賛成284票、反対189票で中絶の合法化法案は可決。国会の外で感...