スモールサンニュース大澤徳の“現場レポート”

「スモールサン中小企業アンケート
『金利アップ、倒産・廃業について』レポート」

なぜ進む円安?「中小企業経営者のためのワンポイント・スタディー」

先日事務局よりスモールサン会員の皆さんへ、山口義行教授の「中小企業経営者のためのワンポイント・スタディー」と題したメールを配信させていただきました。
円安が進んでとうとう1ドル150円台が常態化しつつある中、スモールサンニュースでも円安については度々取り上げてきました。そこでワンポイント・スタディでは、スモールサンニュース10月号の「景気を読む」から円安についての解説を一部抜粋して紹介しました。

山口  (日米)金利差について最近の状況を見ると、7月に植田日銀総裁が「10年物国債の利回りを0.5%以下に抑える長期金利コントロール」を緩和して、「上限1%まで認める」というように政策変更したよね。以後、徐々に10年物国債の利回りは上昇して、現在は0.8%くらいにまで達している。

北嶋 日本の長期金利も7月以降0.3%くらい上昇しているんですね。

山口 ところが、アメリカの方はそれ以上に金利が上がっているんだ。7月には4%程度だった10年物国債の利回りが今は4.8%くらいになっている。…

北嶋 7月以降日本は0.3%くらい、アメリカは0.8%くらい上がったわけですから、金利差は拡大してきているということですね。それで円安がまた進んだということですか。

山口 そうなんだ。問題は今後どうなるかだけど、日本の方は日銀が長期金利コントロールをさらに緩めない限り1.0%が上限、つまり今後0.2%くらいしか上がる余地がない。だから、アメリカの長期金利がそれ以上に上昇したら、つまり金利が5.0%以上に達したら日米金利差は再び拡大することになる。

北嶋 その場合はさらに円安が進むということですか。

山口 そうだね。…

山口教授「直近のアメリカ10年物国債の利回りは4.85%、去る25日には一時5.0%に達する局面もありました。今後は日銀次第ということになります。」(メールより抜粋)

まだ10月号の「景気を読む」を読んでいないという方は、続きはこちらからお読みください。

金利動向が中小企業へも影響し始めている?

上記のワンポイント・スタディーを配信したところ、とある会員の方より事務局へ下記のような趣旨のご連絡をいただきました。

「金融機関から『全ての企業へ金利アップをお願いしています』と連絡がありました。政策金利が上がっていない現状で、どこまで利上げ要求が進んでいるか、調べられませんか?」

長期金利は上昇しているものの政策金利が上がっていない中で、中小企業の借入金利が上昇し始めているとすれば、金利動向がすでに中小企業の経営にも影響を与えはじめている可能性があるということです。
そこで、スモールサンでは、会員の方を対象とした「中小企業アンケート」を実施しました。ご回答くださった皆様、誠にありがとうございます。多くの方々のご協力により、200件以上の回答をいただきましたので、今回のニュースではこのアンケートの内容を共有させていただきたいと思います。

<金利について>

(1)御社へ金融機関から金利アップの打診はありましたか?


金利アップについては、82.9%の方は「ない」と回答でした。金利アップを打診された方は11%でした。
その他ついては、「固定金利で借りている」「無借金」などという回答がありました。

このデータをみて、皆様はどのように感じられるでしょうか?金利アップを交渉されている企業が意外と多いと感じるか、逆に少ないと感じるか。
前提として、この1回のアンケート結果をもって、金利アップを求められている企業が増えているかどうかを判断することはできません。また、金利アップを打診されたという回答において、それが金融機関の方針によるものなのか、または企業の財務状態によって判断されているのかについても、詳細はわかりません。
とはいえ、金融機関から金利アップを交渉されるという事は、企業にとっては費用増であり、利益を圧迫させる可能性がある状況を意味します。現時点で、そうした企業がすでに10%以上存在するという結果になりました。
また、今後の金利動向によっては、金融機関からの金利アップの打診は増えていく可能性もあります。皆さんはその時への備えは十分できていますでしょうか?

(1)で「あった」と回答された方は、新規借り入れ・既存借り入れどちらに関する金利についてかお教えください。


金利アップを要求されたうち新規借入のが74.1%、既存借入が25.9%という回答でした。
今回のアンケートでは、利上げの打診は新規借入が中心となっています。現在は新規で借りようという企業がそんなに多くないと思われますので、まだ利上げに遭遇していない企業が多いのではないかと予想されます。
また、だからと言って、既存借入なら大丈夫とは勿論言い切れません。既存借入は変動金利は上げられないため、たまたま更新期にあたらないと金利引上げしにくい。つまり、今後更新期のタイミングで金利引上げに遭遇する可能性もあるので注意が必要です。

<倒産廃業について>

今回のアンケートでは、もう一つ企業の倒産廃業についてもお聞きしました。
2022年以降急増していると言われている企業倒産について、中小企業経営者の「体感」として周辺でどの程度起きているのかをご回答いただきました。

(2)御社の周辺で倒産や廃業はありましたか?


倒産や廃業が「あった」と回答された方が47.1%で、「ない」と回答された方は52.4%でした。M&Aがあったと回答された方もいらっしゃいました。約2社に1社は周辺で廃業・倒産を見聞きしていらっしゃるという状態です。ぱっと見の印象ですが、かなり多くなってきたなと感じます。

「商工リサーチが8月に実施した『経営環境に関するアンケート』調査では、取引先(仕入先・販売先の一方または両方)に廃業があったと答えた企業は回答数の37.5%、4割近くにのぼっている。」という数字もあります。(引用:インタビュー/景気を読む 2023年10月号)

商工リサーチの調査で、取引先に廃業があったのが4割近い数字で、今回スモールサンのアンケートでは5割近い状態になっています。スモールサンのアンケートの方が約1割多い結果になっています。商工リサーチのアンケートに比べて、スモールサン会員のまわりのほうが廃業・倒産が多いのは釈然としません。

この理由について詳細はわかりませんが、
①    アンケート調査時期が8月と10月で異なるため、廃業倒産の件数が増えている傾向を表す可能性
②    スモールサン会員の方々が各地域や業界団体などで役割を果たされている方が多い、商工リサーチに比べてスモールサン企業のほうが規模が大きい、などスモールサンに所属されている方は普段から関わっている企業数が多いために、廃業・倒産の話を見聞きしやすい可能性
③    商工リサーチの場合は、取引先の廃業を聞いているのに対して、スモールサンのアンケートは取引先の廃業に加えて、取引先の倒産や、同業他社の倒産や廃業も含めて聞いているので、スモールサンのアンケートのほうが数字が高くなっている可能性
などが考えられます。

私はおそらく①の廃業倒産件数の伸びにより、多くの方々が身近での倒産を感じるようになっている傾向があるように思います。皆様はどう思われるでしょうか?

(2)で「あった」と回答された方は、仕入れ先、販売先、同業他社いずれであったかお教えください。


仕入れ先18.6%、販売先28.9%、同業他社36.1%という結果でした。
同業他社が多くて、仕入れ先の率が低いのはなぜでしょうか。あくまで推測ですが、同業他社の率が35.4%と高いのは、社長が日常的に所属されている業界団体などで全国の同業他社の情報が早くまわりやすいからでしょうか。逆に仕入れ先については、日常的な仕入れ先の廃業倒産については早く情報がはいるものの、年に1回とか数年に1回の仕入になったりするような頻度の少ない仕入れ先については、発注しようとしてはじめて廃業倒産を知ることになる、ということだったりするのでしょうか。
いつも通り仕入れようと思ったら、仕入れ先がなくなっていて、急きょ新しい仕入れ先を開拓する必要に迫られるといったことも今後増えていくかもしれないですね。

おわりに

借入金利が上がれば、費用が増えて利益を圧迫するので経営が苦しくなる、と感じられる方が多いと思います。他方では、円安の影響で物価上昇が続いていて、それもまた企業の経営を苦しめている現状があります。
一見するとこの二つ、企業の借入金利と円安による物価上昇は、つながっているようには見えないかもしれません。
しかし先述のワンポイント・スタディーでお伝えしたように、円安の理由には日米の金利差が拡大していることが背景の一つとしてあり、日本の長期金利をあげれば円安が円高に向かっていくという予想もされます。長期金利の上昇を容認して円安を抑えていくのか、長期金利をあげずに円安を容認するのか……。企業だけではなく日本にとっても、重要な選択を迫られている場面のように思います。

注)調査期間 2023年10月27日〜11月4日
回答数 208


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