スモールサンニュース大澤徳の“現場レポート”

 最近各ゼミの冒頭でスモールサン・ニュース「景気を読む」の読み合わせを行っているゼミも増えてきました。
 世の中には数多くのニュースが飛び交っていますが、どの情報を拾い、どういう切り口で読むのかによって、見えてくる世界も変わってくるなと思っています。
 そこで8月に引き続き、山口先生のニュースを補完するような記事や、IT導入やDX化において知っておいた方が良いニュース、また最近の若者に関するニュースなどを、私の視点でのコメントをつけてご紹介したいと思います。

巨額貿易赤字は恒常化の恐れ、円安促進材料に

日本の8月貿易赤字は単月として過去最大を記録した。このままのペースが続けば、2022年は暦年で過去最大を更新しそうだ。問題はこの赤字が一過性にとどまるのか、恒常的なトレンドになってしまったのかという点だ。残念ながら巨額貿易赤字の計上が恒常化する可能性が高まっている。
その大きな証拠の1つが、円安が進展する中で輸出数量が6カ月連続で前年比マイナスを記録していることだ。円安を利用して輸出で稼ぐ国際競争力が失われてしまったようだ。岸田文雄政権の提唱する新しい資本主義の中心に「稼ぐ力」の再構築が入らないと、日本経済の再生は難しいだろう。

<円安でも輸出数量はマイナス> 
8月貿易収支の結果は、衝撃的と言ってもいいだろう。輸入額は10兆8792億円と単月として過去最大となり、輸出額の8兆0619億円を大幅に上回った
8月の為替レートは135円08銭と前年比22.9%の円安で、エネルギー輸入額の押し上げ要因になったが、本来なら円安を背景に輸出数量が増えて輸出額を押し上げることがあってもよかったはずだ。
ところが、輸出数量は前年比マイナス1.2%と、6カ月連続の減少。これまで半導体不足などで不振だった自動車の輸出(金額ベース)は、前年比プラス39.3%と回復した。それにもかかわらず、輸出全体の数量ベースが円安効果をてこに伸びてこない理由は何か。日本の輸出産業の国際競争力が、急速に失われているという事実があるのではないか。
(赤字は大澤による強調)

 2022年3月号のスモールサンニュース「景気を読む」で、山口教授が「ロシアに対する経済制裁で石油とか天然ガスなどのエネルギー価格がさらに上昇する可能性がある。そうなれば、エネルギー小国である日本の貿易収支の赤字額がさらに膨らむ。」と指摘していました。
 前月の本コーナーでも紹介したとおり貿易赤字は2022年1~6月で過去最大7.9兆円し、上記のニュースにあるように8月の貿易赤字は単月として過去最大を記録するなど、貿易赤字が定着しつつあります。
 これまで貿易赤字だったのは、半導体不足を理由に自動車を生産・輸出ができず、円安により輸入品の価格が上がったことが一つとの理由と思われていました。ところが、実際に自動車輸出(金額ベース)が前年比プラス39.3%と回復したにもかかわらず、なかなか貿易赤字が縮小せずにいます。今後の動向に注目です。

1ドル=145円を防衛ラインに介入続けられず=篠原元財務官

世界金融危機前後の2007年から2年間、財務官を務めた篠原尚之氏はロイターとのインタビューで、政府・日銀による為替介入について「1ドル=145円を防衛ラインに介入を続けることはないだろう」と語った。投機的な動きを背景に乱高下する為替市場に対応した日本の立場に、米国はあえて反対しなかったとの見方も示した。
日本は1998年6月を最後に円買い介入を行っていなかった。24年3カ月ぶりとなる22日の円買い介入について、篠原氏は「引き続き金融政策の緩和は力強くやっていく必要はあるが、為替市場が乱高下した際は介入するということだろう」と述べた。インタビューは24日に実施した。

もっとも、「介入で相場の大きな流れを変えることは不可能」とし、「(円買い介入を)頻繁にやったり、マーケットに水準を意識させてしまうやり方をすれば米国が許容できないのではないか」と指摘。一定の防衛ラインを念頭に、介入を繰り返すことに否定的な見解を示した。外貨準備を使う円買い介入には量的な制約もあるとした。
(赤字は大澤による強調)

 今後の名目ドル円レートがどうなっていくのか気になっている方も多いと思います。上の記事で篠原元財務官は「為替介入で大きく流れを変えることは不可能」とはっきり述べています。実際に、為替介入によって一次的に円高になりましたが、一週間程度で元の水準に戻ってしまいました。
 また、すでに日経新聞などでも指摘されていますが、自国通貨を元手に為替介入するのと異なって、ドル売り円買いの為替介入については、日本の外貨準備の残高に依存するため、為替介入するにしても限度があります。
 円安になっている理由については、日米の金利差が大きくなっていることや、貿易赤字の拡大など構造的な理由があげられることが多いように感じています。こうした構造的に進んでいる円安を、為替介入で円高方向に流れを変えるのは、難しいと思います。

米30年物住宅ローン金利が6%突破、08年以降で初

米抵当銀行協会(MBA)が14日発表した9月9日までの週の30年固定住宅ローン平均金利が7ベーシスポイント(bp)上昇し6.01%と、2008年以降で初めて6%を超えた。前年比では2倍以上となった。
また、住宅ローンの申請件数を測る指標が前週比1.2%低下。前年比では64%低下した。借り換えを示す指数は前週比4.2%低下、前年比83.3%低下となった。
(赤字は大澤による強調)

 米国の住宅金利の上昇に伴って、住宅ローンの申請件数が低下しています。こうした動きが今後どうなるのか注目しています。住宅ローン金利が上昇して、住宅ローンの支払が増えれば、既に住宅を持っている方であれば、他の消費を減らすことが予想されます。また、住宅を建てることを検討されている方は、金利負担が増えることを避けるために、住宅を建てること控えるかもしれません。
 日本において、すぐに住宅ローン金利がアメリカ並みになる事は現時点では考えられませんが、もし日本の長期金利が上昇して、日本の住宅ローン金利も上昇すると、日本でも個人消費の減少やマンションの購入などが減る可能性があります。
 ざっくりとした計算ですが、仮に2000万円の住宅ローンを変動金利で借りていて、1%分の金利が上昇すれば、年間で20万円の負担増になります。家計に20万円分の費用増がそのままのしかかってきます。
金利動向が実際に経済に影響を与える経路として、住宅ローン金利の変動は気になります。

「スポットワーカー」760万人に 仲介4社、副業需要で急増

オンライン上で募集される数時間単位の仕事に従事する「スポットワーカー」が急増している。主要仲介サービス4社の登録会員数の合計はのべ約760万人となり、新型コロナウイルスの感染拡大前と比べて2倍超に達した。テレワークの定着や雇用不安などで本業の合間に働く副業者などが多い。人手不足に悩む飲食・サービス業に浸透し、農業などにも広がり始めた。
(赤字は大澤による強調)

 これまでスモールサンニュースや山口の講演でも副業人材についての活用事例などを紹介してきました。実際に、上記の記事にあるように数百万人単位で副業人材が増えているようです。私の周辺でも副業を行う友人が増えてきました。元々、中小企業は経営資源が潤沢ではないのですが、副業人材を上手に活用する事で、これまでは取り組む事が難しかったようなことが実現できる道が拓けつつあると思うと夢が広がります。とはいえ、副業人材と自社の従業員とのコミュニケーションスタイルの相違や、副業としての発注する業務の範囲など、様々な課題も山積しているように思います。また副業といっても、高度なスキルを持った方の副業もあれば、割と所得水準が低い層がダブルワークをして、少しでも収入を増やすことを目的とする場合もあり、副業する側のニーズも様々なように思います。

大学費用、家計に重い日本 負担割合52%、OECD平均は22% 進学の妨げにも

大学の教育費を巡り、日本の家計負担の重さが目立っている。経済協力開発機構(OECD)は3日、日本の高等教育費のうち学生の家計が負担している割合は52%で、OECD平均(22%)の2倍超だとする報告書をまとめた。政府は経済的な理由で進学を断念する学生を減らそうと支援を広げる。公費投入には効果の検証も求められる。
(赤字は大澤による強調)

 最近の大学生は、奨学金を借りて大学に進学するのが、2人に1人とかなり一般的になっています。またアルバイトを行って自らの大学の学費や生活費を賄う事も珍しくなくなってきました。日本においては、大学の学費を家計で負担することが一般的なことのように思われていますが、他のOECD加盟諸国は、税金など公的負担で教育費を賄っている比率が高い。家計への教育費の負担している割合が高いことにより、大学や専門学校の進学を諦めたり、奨学金を借りてなんとか卒業できたとしても借金が多く、その後のライフスタイルにおいて結婚を思いとどまるなど、様々な影響があると考えられます。もっといえば、日本全体で、高度な人材を育てて、付加価値の高い生産性の高い仕事を遂行できる人材を生み出す必要がある中で、教育費を家計に負担するような状態を放置していていいのか疑問に感じています。


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