スモールサンニュース大澤徳の“現場レポート”

スモールサンでオンラインゼミをやってみて


 新型コロナウイルスの感染拡大のために、皆が1つの場所に集まってゼミを開催するのが難しく、オンラインでのゼミ開催が続いています。筆者は、オンラインのゼミよりも、実際にお会いしてゼミと懇親会を開催するほうが、様々な情報交換や交流ができるので良い面が多いと思っているものの、(経営者や講師ご自身が高齢の場合や、そうでなくともご高齢の方と同居されている場合なども考慮すれば)感染拡大が続く以上は、オンラインゼミの開催もしくは、オンラインとリアルを併用したハイブリット型のゼミの形を模索していく必要があるだろうと感じています。
 今回の記事では、本年3月以降にスモールサンがどのようにオンラインゼミを開催したのか、開催してみてどうだったか、などについて会員の皆様と共有させていただきます。
 映像や音声について本業ではないスモールサンの取り組みではありますが、この記事をご覧の皆様が何かしらウィズコロナへ向けてオンラインを活用した経営を考える上で、実践例の一つとして参考になりましたら幸いです。

コロナ禍をきっかけに求められるデジタルトランスフォーメーション(DX)

 この数ヶ月間で、大学の授業や、就職活動の面接、営業の場面や、テレワーク下での社内の打ち合わせなどでも、リアルの代替手段として、オンラインでのコミュニケーションが普及してきました。これまでも海外との打ち合わせで、オンライン面談を導入する事例は聞いたことがあるものの、日本国内でここまで一気にオンラインでのコミュニケーションへの移行が進むとは思ってもみませんでした。
 中小企業においても業務の一部かもしれませんがテレワークの制度構築が求められ、顧客とのデジタルでの接点をどのようにビジネスに繋げていくのか、問われている時代になってきていると感じます。私はこの数ヶ月の間、地方への出張ができておりませんので、東京都内での限定的な印象かもしれませんが、テレワーク未整備の会社の社員の中には、勤務先に対して「社員への配慮が足りないのではないか」という疑念を持つ方もいらっしゃいます。また、転職後に一度も職場に出社することなくテレワークのみで勤務している方や、一度も実際に会うことのないままオンラインのみの面接で採用を決めて出社予定は早くても1年後だったり、そもそも出社を前提としないという新しい形の雇用形態で組織変革を進めている企業の話もちらほら聞くようになってきました。

 ちなみに都内で就職活動中の大学生に話を聞くと、求人企業が面談する際に提案するツールが、Microsoft TeamszoomGoogle MeetCisco WebEx Meetings、その他のツールのどれなのかによって、企業に対しての印象が異なるようです。



 こうした変化は、経済産業省がいう「デジタルトランスフォーメーション(DX)」へ向けた新しい取り組みの一つといえるかもしれません。
※経済産業省のデジタルトランスフォーメーションの定義についてご紹介したいと思います。本記事では詳細に触れませんが、アフターコロナなど これからの時代を考える上で大切な視点だと思っています。


デジタルトランスフォーメーションとは?
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や 社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務その ものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

経済産業省「デジタル経営改革のための評価指標(「DX推進指標」)」資料より

オンラインzoomゼミ 導入期

 コロナの影響により2020年3月はほとんどのゼミが延期になり、4月以降のゼミについては「オンラインゼミでの開催を検討していただきたい」とゼミの皆様にご相談させていただいた際には、「実際に会わないとゼミの意味がない」「講師が(現地に)来ないのは何事だ!」というようなお叱りに近いようなご指摘もたくさんいただきました。
 スモールサン事務局として「何が何でもオンラインがいい」と思っているわけではありません。しかし、「こんな緊急時だからこそ、中小企業経営者向けの勉強会を通じて、情報提供を行う必要がある」という気持ちも強くあり、まだ慣れないオンラインゼミを実現させるべく、ゼミ生の皆様へzoomのサポートすることに決めました。

 オンラインゼミのサポートを始めた4月は、zoomのインストール方法からミーティングルームへの入り方、基本的な操作方法の説明に始まり、「デスクトップパソコンで音が出ない」と言われてよくよくお話しを聞いてみると、そもそもスピーカーがついていないパソコンだったのでヘッドセットの購入をご提案したり、「スマートフォンでzoomが使えない」という方へスマートフォンアプリのダウンロード方法を説明しようとするもののお電話ではなかなか伝わらずに苦労したりといったことも多くありました。
 こうしたサポートのために、スモールサン事務局として相当のリソースを費やしましたが、「急激な変化が求められるタイミングだからこそ、他の企業よりもスモールサン企業が早く変化して、企業として強くなって欲しい」ただただ、そういう想いでした。

オンラインゼミをやってみて感じたメリット・デメリット

オンラインゼミを開催してみて、いただいた意見を下記の表にまとめました。


メリット デメリット
ゼミ生側 ・画面表示の設定によって講師と自分の1対1のように感じるので、講師との心理的な距離感が近い
・会場だとスライドの文字が小さくて見られないのが、画面上だとはっきり見える
・ゼミ会場まで遠いので参加できないことがあったが、zoomだと参加しやすい
・出張先でも参加することができる
・勉強するだけだったらzoomでも問題ない
・懇親会ができない
・会場の雰囲気がわからない
・講師やメンバー同士での交流ができない
・画面をずっと見ているのが辛い
講師側 ・移動時間がない
・受講生の顔を1人ずつ、見られる (会場だと、遠くの方の表情を確認できない) 
・画面では受講生の反応がわかりにくいので、一方的に話すのが大変
・いつもだと笑い声がある場所で笑い声がないのが話しにくい
・カメラをオフにしてる方が多いと、受講生がどんな反応なのかわからない
・普段であれば、懇親会でいろいろゼミ生と話せるのがチャンスがない

 ゼミ生からは、「研修面については概ね問題ない」「ゼミ生同士の横の繋がりを作りにくい」という意見が多く、講師側からは「移動時間がない」「ゼミ生の反応がわかりずらい」という意見をいただくことが多いです。皆様はいかがでしょうか。
 もし何かご意見などございましたら、事務局宛にご連絡いただきたく思います。

スモールサンスタジオの整備

 オンラインゼミを始めた当初、山口教授がゼミで講演する際の方法について、「zoomの画面共有の機能を使いながらパソコンの前で講師が1人で話す」という一般的な講演スタイルも考えました。ただ、講演内容を伝えるだけでなく山口教授の熱量も届けるためは、なるべく実際の講演に近いような雰囲気で配信したい……。そう考えた結果、スモールサン事務局の事務所を改造して、オンラインで配信できるスタジオを設置しました! 話し手の様子を映すためのメインカメラとサブカメラ、資料を表示するための資料用カメラといった複数のカメラやパソコン、スイッチャーなどの機材を駆使して臨場感のある講演を配信できるスタジオです。また、話し手側も多くの受講者のお顔を拝見しながら講演できる方が話しやすいだろうと考え、通常zoomでは同時に25人までしかビデオ表示されないところ、現在の「スモールサンスタジオ」では同時に最大49人のビデオを表示する事ができるようにしています。
ちなみにこのスモールサンスタジオから、各テレビ局へ生放送の配信や収録なども行って参りました。

スモールサンスタジオの機材図については参考までに概要を公開させていただきます。
もし会員企業の中で「映像配信の機材を揃えることを考えていて、スモールサンがどんな機材を使っているのか気になる」などご質問がございましたら、可能な範囲でお答えいたしますので、お気軽にお問い合わせください。



配信時には、各機材をコントロールするために、下記の役割を事務局員で分担しています。


役割名 役割
資料用PC係 操作 話し手からの指示に基づき、パソコンの操作をして、投影する資料を選びます。
リアルの講演会でいえば、プロジェクターに投影される資料をコントロールする役割です。
ビデオ調整 話し手の動きに合わせて、カメラの動きを調整します。
たとえば、座って話す⇔立って話す、カメラ目線で話す場合⇔モニターの資料をメインで映す場合など、場面ごとにカメラに入る映像を調整します。
ビデオスイッチャー 講演の流れを考えながら、複数のビデオ、パソコンからの映像のうち、どの映像を配信用のPCに送るか、選びます。
配信用PC インターネットの回線速度が適切かどうか、各ビデオや音声からの入力値が正常かどうか、PC自体の稼働状況が正常範囲かどうかを モニタリングしながら、
zoomのホストとして参加者のミュートの管理などを行います。
配信映像管理 スモールサンスタジオの音声や映像が正常に届いているか、視聴者として配信されている映像や音声を確認しています。

参考までに機材の一覧を記します。
○カメラ
ソニー ビデオカメラ FDR-AX45 4K
https://www.sony.jp/handycam/products/FDR-AX45/

○資料用PC
パナソニックLet’s note

○配信用PC
 iMac クアッドコアIntel Core i7

○プロジェクター
Epson EB-W05
https://www.epson.jp/products/dreamio/ebw05/

○照明
Neewer 2パック 調光可能な二色480 LEDビデオライトとスタンドライティングキット
https://amzn.to/3i8SPSM

今後の課題 コロナの“せい”から、コロナの“おかげ”を目指して

 正直なところ、オンラインゼミをはじめたころは、コロナの“せい“でリアルのゼミを開催できないので、緊急避難的に仕方なくオンラインゼミを開催するという意識でした。
 確かに早期にコロナの影響が沈静化するのが理想ですが、感染症自体の影響が長期化する、また、一度進んだデジタル技術の進歩が戻らない部分がある、という前提に立って考える必要もあると思います。その場合このままオンラインゼミを継続せざるを得ないとすると、具体的にどのような形がいいのか……。はっきりした形はまだ見えてきていませんが、オンラインゼミの場合「講師とゼミ生が双方向性をどうやって感じられる工夫ができるのか」「会員間の横のコミュニケーションの機会をどうやって作れるのか」何かしら工夫が必要だろうと思っています。

 また、ただ単にこれまでの日常を代替するためにデジタル技術を使うのではなく、これからはコロナの”おかげ“で技術が進んだという前提の中で、何か新しい事ができるはず。コロナが落ちついたときに、更に何かしらの機能が強化されている状態を目指して、「オンラインやデジタルだからできる」「オンラインじゃないとできない価値」を模索していく必要もあると思っています。
まだまだ先行き不透明な状況が続きますが、苦境にあっても諦めず更なる価値の追求を続けたいと思います。


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