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		<title>スモールサンニュース - 対談</title>
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		<copyright>Copyright (C) 2026 スモールサンニュース All rights reserved.</copyright>
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		<item>
			<dc:creator>山口恵里</dc:creator>
			<title>対談　2026年4月号</title>
			<link>https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6404.html</link>
			<description><![CDATA[
				
				



<!-- テキスト -->

<h2 >「社長の教科書(補章2　社長の健康)<br />
～社長と従業員の「心の健康」を守るために～」</h2>









































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<p>公認心理士(SSメンタルヘルスプロデューサー)　咲江氏<br />
聞き手　立教大学名誉教授　山口義行（ｽﾓｰﾙｻﾝ主宰）</p>









































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<p>「シリーズ:社長の教科書」はすでに第4章まで掲載を終え、本年1月号では<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6295.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">「補章1　社長の数字」</a>を掲載した。今回は「補章2　社長の健康」を掲載する。<br />
社長と従業員の「心の健康」を守るために何ができるか、何をすべきかをテーマに柏崎咲江氏にお話を伺う。咲江氏は公認心理師の国家資格をお持ちで、(社)日本産業カウンセラー協会認定の産業カウンセラーとしても活躍されている。読者諸氏の中にはスモールサンラジオ「咲江の“メンタル・タフネスへの道”」のパーソナリティーとして、同氏をご存じの方も多いと思う。</p>








































<hr class="clearHidden">





<!-- 画像 -->
<div class="column-image-right">
		<img class="columnImage" src="https://www.smallsun.jp/archives/002/202604/c5a33187b8f07b43f8c12559218055c0abbf940910117c125b6deab79b7310b4.jpg" alt="" width="196" height="207">
</div>


































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<p><b>【咲江氏プロフィール】</b><br />
国家資格である公認心理師とキャリアコンサルタントの他、産業カウンセラーやタッピングタッチ・インストラクターの資格を有する。<br />
大手企業の他、官公庁（財務省、警察庁、労働基準監督署、その他）、中小企業など幅広い分野において500社以上のメンタルヘルスやハラスメント研修、相談業務、コンサルティングの実績を持つメンタルヘルスの専門家。<br />
スモールサンニュースの執筆活動以外にも、テレビ出演（スーパーJチャンネル）や行政の相談員（東京都、厚生労働省）も歴任。<br />
2011年の東日本大震災では福島県内企業の従業員への心理カウンセリングや、2024年能登半島地震後の被災地へのタッピングタッチボランティア活動にも従事。<br />
さらに夫の会社で実際に人事総務部門責任者も兼務するなど、経営者側の視点・従業員側の視点・心理職の視点を兼ね備えながら、多角的視点に基づく実践的支援を強みとしている。</p>








































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<!-- テーブル -->
<div class="column-table-">
	<div class="entry-container">
	<table class="table-">
	<tr>
		<td><b>「シリーズ:社長の教科書」について
</b><div>社長に就任してまだ日が浅い経営者。今後社長に就任する予定の次世代経営者。社長の右腕として経営の一旦を担う幹部社員。社長としての経験は豊富だが、あらためて社長のあり方について考え方を整理したいと思っている熟練経営者。そんな人たちのために、スモールサンに関わる専門家や経営者の知恵を結集したスモールサン版『社長の教科書』を作りたい。——そんな私の思いに賛同してくださった方々とともに、すでに数回にわたり教科書作りの準備を兼ねて対談形式で「社長学」を論じてきた。
</div><div><br></div><div>第1章「社長の仕事～社長が絶対にやらなければならない“４つの仕事”～」では栗原正幸氏との対談を掲載した。——スモールサンニュース<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5282.html" target="_blank">２０２４年２</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5347.html" target="_blank">３</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5432.html" target="_blank">４</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5469.html" target="_blank">５月号</a>。</div><div>第2章 「社長の心得～社長が知っておくべき“４つの心得”」では新田信行氏との対談を掲載した。——スモールサンニュース<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5492.html" target="_blank">２０２４年６</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5518.html" target="_blank">７</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5567.html" target="_blank">８</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5616.html" target="_blank">９月号</a>。</div><div>第3章「社長の思考～賢い経営者は弁証法的に考える～」では、私(山口)がライターの大崎まことさんを相手に「社長業を遂行するにあたって有意義な“弁証法的思考法”」について語った。——スモールサンニュース<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5756.html" target="_blank">２０２４年１２</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5789.html" target="_blank">２５年１</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5872.html" target="_blank">２</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5983.html" target="_blank">５</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6037.html" target="_blank">６</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6053.html" target="_blank">７</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6103.html" target="_blank">８月号</a>。</div><div>第4章「社長の知識～大学では“中小企業”をこう教えている～」では遠山恭司立教大学教授との対談を掲載している。——スモールサンニュース2025年<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6199.html" target="_blank">10</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6239.html" target="_blank">11</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6262.html" target="_blank">12月号</a>。</div><div>補章１「社長の数字～「社長がどんな数字と向き合うか」が会社経営を決定づける～」では小柴佳嗣氏(株式会社コージン管理部長)との対談を掲載している。——<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6295.html" target="_blank">スモールサンニュース2026年1月号</a>。</div><div>補章2 「社長の健康～社長と従業員の「心の健康」を守るために～」——本号に掲載。</div></td>
	</tr>
</table>

	</div>
</div>




































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<h3 >良い弁護士、良い会計士、そして良い心理カウンセラー</h3>









































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<p><b>山口：</b>本章の表題は「社長の健康」ですが、このテーマには社長だけでなく、従業員の皆さんの心の健康も含まれています。ただ、社長の心の健康の問題については、「社長は強い人」というイメージがあるのか、あるいは社長には仕事上の自己決定権があるからストレスにも自分で対処できるので心配ないと思われているのか、あまり話題にされてこなかったように思います。そこで、この対談では最初に社長自身の心の健康問題を取り上げたいと思うのですが、よろしいですか。<br />
<br />
<b>咲江：</b>私も山口先生と同様の認識を持っていますので、大いに賛成です。そうしましょう。<br />
<br />
<b>山口：</b>私が言いたいのは、社長だってうつ病になることもあるんだということです。売上げとか資金繰りとか社長を悩ます問題はたくさんありますが、これに先代の社長との関係がうまくいかないとか、従業員間の人間関係のトラブルがなかなか解決できないといった悩ましい問題が重なると、経営者も精神的にかなり追いつめられていきます。場合によっては「うつ」的な症状が出る場合もあると思うんです。<br />
<br />
<b>咲江：</b>中小企業の経営者って孤独なところがありますよね。先代の社長との確執とか、社員間の問題を社内の誰かに相談すると、あたかも「悪口」を言っているかのように受け取られかねないから、それはできない。かといって、社外の人に社内の問題を話すのはもっとリスクがあります。そのため、どうしても自分一人で抱えてしまうことになります。<br />
<br />
<b>山口：</b> どうしたらいいんでしょう。<br />
<br />
<b>咲江：</b>欧米ですと「経営者は、良い弁護士・良い会計士・そして良い心理カウンセラーの3人は必ず持っておきなさい」といわれています。<br />
<br />
<b>山口：</b>なるほど。心理カウンセラーも、社長の「必須アイテム」の一つだというわけですね。</p>









































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<h3 >「強さ」は「賢さ」</h3>









































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<p><b>咲江：</b>日本ではまだメンタルヘルスの問題をネガティブにとらえる傾向があります。カウンセリングについても、うつ病になっちゃったとか、かなり切羽詰まった状態になった時に受けるものというイメージがあります。でも、アメリカのドラマなどを観ていると、カウンセリングを受けるシーンが日常の一コマとして出てきますよね。<br />
<br />
<b>山口：</b>たしかにそういうシーンをよく見かけます。それぞれが自分に合ったカウンセラーを持っていて、気楽にカウンセリングを受けている。<br />
<br />
<b>咲江：</b>そうなんです。社長という仕事は精神的にタフじゃないとやっていられないし、実際強い人が多いとも思うんです。ただ、その強さというのは正しい対処の仕方を知っていて、それを実践している「強さ」、いいかえると「賢さ」ですよね。その正しい対処法の一つが「専門家の活用」で、心理カウンセラーの活用もその一つに入る。そんな風に考えるべきだと思うんです。<br />
<br />
<b>山口：</b>「体の健康」の場合だと、かかりつけ医がいてちょっと体調が悪くなると、その医者に診てもらう。だからといって、そんな風にしている人を「弱い人」だとは言いませんよね。おかげで健康を維持できて、かなりハードな仕事をこなしているとすれば、むしろその人は「強い」人だということになります。「心の健康」の場合も同じだと。「強さ」は「賢さ」なんだというのは大変重要な指摘だと思います。カウンセラーの活用も「賢さ」の一つであり、「強さ」の一つなんだということですね。</p>









































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<h3 >カウンセリングの実際</h3>









































<!-- テキスト -->

<p><b>山口：</b>私自身はまだそういうカウンセリングを受けた経験はないんですが、柏崎さんは社長にカウンセリングされることもあるんですよね。相談者とどんなやり取りをされるのか、少し触りだけでも教えていただけませんか。<br />
<br />
<b>咲江：</b>私の経験でいうと、多くの場合、答えは相談者である経営者自身がすでにお持ちになっている。ただ、経営者はリスク回避をしなきゃいけないので「ああなったらどうしよう、こうなったらどうしよう」といろいろ考えてしまいます。当然、そういう思考もすごく大事なんです。でも、それに縛られちゃってぐるぐる回りをしてそこだけで留まってしまうと、問題の全体が見えなくなり、結果として出口が見つからなくなってしまう。<br />
<br />
<b>山口：</b>なるほど。<br />
<br />
<b>咲江：</b>そこで、私たちカウンセラーが何をするかというと、お話を聞かせてもらいながら、いろいろと“質問”するんですね。質問をすることで、相談者が潜在的に持っている答えを見えやすくするというか、引き出しやすくしてあげる。<br />
<br />
<b>山口：</b>たとえばどんな質問をされるんですか。<br />
<br />
<b>咲江：</b>カウンセリングの手法の一つに、サバイバル・クエスチョンというのがあります。過去に起きた同じように大変だった時期のことを思い出してもらって、「その時はどんな状況だったんですか」とか、「どうやって乗り越えましたか」といった質問します。そういう質問をしていくことで、「そうか、たしかにあの時もすごく不安でかなり落ち込んだなあ」と当時のことを思い出してもらいながら、「それでも、なんとか乗り越えて来たんだ」と自己肯定的な心境へと導いていく。そして、「今回もあの時のようにすれば、なんとか乗り越えられるかも」といった前向きな気持ちになってもらう。<br />
<br />
<b>山口：</b>大変だった過去を振り返ることで、そういう大変な状況を乗り越えて来た自分を肯定的に再認識してもらう。落ち込んでいる時は自分を否定的に見てしまっていますから、この作業はたしかに大切ですね。こうして一旦過去に戻ることで、「なんとかなりそうだ」という未来志向に気持ちを向けて行くわけですね。<br />
<br />
<b>咲江：</b>カウンセラーは話を聞いて「そうですか、大変ですね、つらいですね」って共感しているだけではダメなんです。相談者が潜在的に持っている答えを導き出しやすいように質問を繰り返していくのが仕事です。ですから、カウンセリングを使う場合にはメンタル不調になってしまう手前の段階で相談していただいた方がいい。できるだけ良いコンディションのままステップアップしていけるように、カウンセリングを日常の中に織り込んでいく。それが一番いいカウンセリングの使い方なんですね。<br />
<br />
<b>山口：</b>自分1人で何とかしようとあまり思わないで専門家を積極的に活用する、それから「転ばぬ先の杖」と言いますか、「メンタル不調に陥ったらカウンセラーに相談しよう」というのではなく、その前にもっと気楽に、日常的にカウンセラーを活用して良いコンディションを保てるようにする、そういう姿勢が大切なんだということですね。大いに納得できました。ところで、こうした姿勢は従業員の心の健康を維持していく上でも大切ですよね、<br />
<br />
<b>咲江：</b>その通りです。従業員がメンタル不調に陥ったら、いつでもカウンセラーに相談できる体制を会社として整えておく——これももちろん大切なんですが、そういうことだけでなくて、社内に従業員のメンタル不調を引き起こすような要因があるのか、ないのか、その辺りをチェックして、かりにそういう要因があれば、それをできるだけ減らしておく。従業員がメンタル不調にならないように「健康的な社内環境」の維持に努める。その環境づくりにカウンセラーを活用してほしいと思っています。</p>









































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<h3 >ストレスチェックの活用</h3>









































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<p><b>山口：</b>厚生労働省が推奨している「ストレスチェック」は、そういう意図のもとに制度化されたんですよね。<br />
<br />
<b>咲江：</b>そのとおりです。「ストレスチェック」は2015年から従業員数50人以上の事業所に年1回の実施が義務付けられています。今のところ従業員50人未満の事業所に関しては努力義務にとどめられていますが、これを義務化する方針を政府はすでに打ち出しています。<br />
<br />
<b>山口：</b>いずれ50人未満の中小企業にも義務化されるということですか。<br />
<br />
<b>咲江：</b>そうですね。ただ「義務だからやらなきゃあ仕方がない」というのではなく、これを活用して会社をいい方向にもっていくんだという姿勢が大切なんですね。<br />
<br />
<b>山口：</b>厚生労働省のホームページで、どんなチェック項目があるかを見てみたんですが、「なかなかうまくできているなあ」という印象を持ちました。全部で57項目あって、それがA～Dまでの４つに分けられている。<br />
Aは「仕事」について。たとえば「時間内に仕事が処理しきれない」とか「私の部署内で意見の食い違いがある」とか「私の職場の雰囲気は友好的である」といった設問が17個ならんでいて、それぞれについて「そうだ」「まあそうだ」「ややちがう」「ちがう」から選んで〇をつける。<br />
Bは「自分自身の状態」に関するもので、「元気がいっぱいだ」とか「イライラしている」とか「物事に集中できない」など29項目。それぞれについて「ほとんどなかった」「ときどきあった」「しばしばあった」「ほとんどいつもあった」の4つから答えを選ぶ。<br />
Cは——これがこの調査に特徴的だと思うんですが——、自分の周りの人的環境について問うもので、たとえば「次の人達はどれくらい気軽に話ができますか」とか「あなたが困った時、次の人たちはどのくらい頼りになりますか」と聞いて、「上司」「職場の同僚」「配偶者、家族、友人等」のそれぞれについて「非常に」「かなり」「多少」「まったくない」から選ぶようになっている。<br />
Dは「満足度」。「仕事に満足だ」というのと「家庭生活に満足だ」という2つの設問について、「満足」「まあ満足」「やや不満足」「不満足」から選ぶ。<br />
<br />
<b>咲江：</b>その回答をもとに集団分析を行って、たとえば人間関係がストレスになっているとか、業務量がストレスになっているといった問題点を抽出する。それを仕事のあり方の改善や組織作りに役立てていくんです。<br />
<br />
<b>山口：</b>分析をしたり、改善策を構築する際に、心理カウンセラーに手伝ってもらうといいということですね。</p>









































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<h3 >カウンセラーも交えて改善策をみんなで考える</h3>









































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<p><b>咲江：</b>私もいろいろな企業で実際に関わらせていただいています。ストレスチェックをやってらっしゃる会社さんの会議に参加して、分析結果をもとに「どうやって職場の人間関係をもっと良くしていくか」とか、「みんなが頑張れるような組織にしていくにはどうしたらいいか」といった点について、カウンセラーの立場から意見を言わせていただいています。<br />
社内には何を重視するかという点でいろんな価値観の人がいらっしゃいますから、「何を最初にやるべきか」「重点課題は何か」といった点で意見は区々でなかなかまとまらないんです。そんな中で私が関わりながら、まずは一般職の方々に集まっていただいて侃々諤々議論していだたく。その次には管理職の方々で侃々諤々やっていただく。そうした議論を踏まえて、「じゃあまずはこういうことから始めて、さらにはこんなこともやってみましょう」という流れを作る。私はそんな具合に関わっていきます。<br />
<br />
<b>山口：</b>それはありがたいですね。<br />
<br />
<b>咲江：</b>みんなで改善策を作っていくことが大切なんだと思うんです。社長が一人で旗を振って「やるぞ!」というよりは、いろんな人たちがそれぞれの考えを寄せ合って一緒にチームを組んで行動していく。その方がより強い組織が作れると思っています。<br />
<br />
<b>山口：</b>先ほど従業員50人未満の中小企業にもストレスチェックが義務化されるというお話がありましたが、自分のメンタル面の状況について回答する設問もありますから、少人数ですと、データを集計する際に回答者個人が特定されてしまう危険がありますね。<br />
<br />
<b>咲江：</b>その点が大変難しいところで、「特定されそうだ」と思うと皆さん正直に回答できなくなってしまいます。そういうことを避けるためにも、データの一次的な分析は私たち社外の者が行なって、その分析結果を踏まえて私たちが問題提起を行う。それを受けて、改善点などについて社内で議論していただく。そんな風にした方がいいのではないかと思っています。<br />
<br />
<b>山口：</b>なるほど。</p>









































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<h3 >密接に関わる「経営理念」と「心の健康」</h3>









































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<p><b>咲江：</b>従業員の「心の健康」という点に関して、ぜひ社長さんたちに知っておいてもらいたいことが一つあるんです。<br />
<br />
<b>山口：</b>なんでしょうか。<br />
<br />
<b>咲江：</b>それは、経営理念や経営方針をしっかりと浸透させ、根づかせるということが、従業員の「心の健康」にはすごく大事なんだということです。このことを示すデータも最近発表されたんです。<br />
<br />
<b>山口：</b>そんなデータがあるんですか。<br />
<br />
<b>咲江：</b>公益財団法人日本生産性本部というところが発表したデータなんですが、図１がそれです。このグラフに明らかなように、社員さんたちが「会社の理念や経営方針が、従業員に十分に浸透していない」と感じている企業では、メンタル不調が増加傾向にあるとする割合が高くなっています。一方で、理念や経営方針が浸透していると感じている企業では、その割合は明らかに低くなっています。</p>








































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<!-- 画像 -->
<div class="column-image-left">
		<img class="columnImage" src="https://www.smallsun.jp/archives/002/202604/5f0840034e183c60337cc899cb6dd3f63ce2b90826d32281e982f10f2857d4fd.png" alt="" width="1654" height="731">
</div>

































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<!-- テキスト -->

<p><b>山口：</b>たしかに。「会社の理念や経営方針が浸透している」企業では、「心の病」が減少傾向にあるとする答えが5.4%なのに対し、「浸透していない」企業では1.７％しかない。経営理念の「浸透の不十分さ」と「心の病の広がり」とが相関関係にあることは間違いなさそうですね。<br />
<br />
<b>咲江：</b>「この会社は何を大切にしているのか」「自分の仕事は、そのどこにどうつながっているのか」——それが見えているかどうかが、従業員の安心感や前向きさに大きく影響していることを示しています。<br />
大切なのは、経営理念や経営方針が示されているかどうかではなく、それがどの程度“浸透”しているかだという点です。理念や方針が朝礼で唱和されていても、冊子に書かれていても、それだけではダメだということです。それらが日々の仕事と結びついていなければ、従業員の心には届かないということです。日常の意思決定、上司の言葉、評価の考え方、現場との対話など、そうした一つひとつの場面を通じて、「この会社は本気でこう考えているのだ」と社員の皆さんが実感できてこそ理念は生きたものになります。だからこそ、このテーマは社長自身が向き合うべき領域、「社長が向き合うべき心の健康問題」だと言えるわけです。<br />
<br />
<b>山口：</b>経営理念の重要性は繰り返し訴えてきましたが、それが従業員の心の健康問題とこんなに密接に関わっているとはちょっと認識不足でした。<br />
<br />
<b>咲江：</b>経営の考えを自らの言葉で語り、判断の背景を丁寧に伝え、「あなたの仕事は、この方向につながっている」と示し続けること。それは、組織の軸を整える重要な役割であると当時に、実はメンタルヘルス対策にもなっているんです。</p>








































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<!-- テキスト -->

<h3 >「承認の文化」を社内に広げる<br />
～(株)五常の“チョレイ” ～</h3>









































<!-- テキスト -->

<p><b>咲江：</b>スモールサン会員の会社さんで、私が見学に行かれることを推奨しているいい事例があるんですよ。ゼミ千葉でプロデューサーをされている河野さんの会社、(株)五常の「チョレイ」です。<br />
<br />
<b>山口：</b>河野佳介氏にはスモールサンニュースの対談でも何度か登場していただいています。でも「チョレイ」は知りません。それは何ですか。<br />
<br />
<b>咲江：</b>朝礼のことです。それを「チョレイ」と呼ぶユーモアにも感心しますが、その内容や雰囲気がすごくいいんです。私は実際に見学させていただいたんですが、非常に参考になる事例だなと感じました。<br />
<br />
<b>山口：</b>どういう朝礼なんですか。<br />
<br />
<b>咲江：</b>毎月一回実施される朝礼です。河野さんが経営方針や年間目標との関係で「中間報告はこんな感じです」っていうことをまず話されるんです。でも、それは全体3時間のうち10分程度。中心はむしろ社員さんたちがその目標に向けてどんな風に挑戦しているのかを具体的に各々発表することにあります。といっても、大それた発表をする必要はまったくなくて、本当にちょっとしたこと、「えっこれ言う？」みたいことを皆が次々に発表するんです。<br />
<br />
<b>山口：</b>たとえば?<br />
<br />
<b>咲江：</b>そうですね。あくまでもイメージですが、たとえば経理の人が経費削減という目的のために請求書を印刷して出すのを少しやめてみましたとか言う。おかげで月5000円経費が浮きましたとかね。何億っていう売上げのうちの5000円ですから、報告するほどのこともなさそうですが、チョレイはそういう小さなことでも全然かまわないという雰囲気なんです。繰り返しますが、この話は私がチョレイを見学して感じたイメージですからね。実際にこういうやり取りがあったということではないですから、誤解しないでくださいね。<br />
<br />
<b>山口：</b>わかりました。でも、そういう雰囲気なんですね。</p>








































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<!-- 画像 -->
<div class="column-image-left">
		<img class="columnImage" src="https://www.smallsun.jp/archives/002/202604/4268ab6b61d86c6669699449515bb45a2a837ee6defe595bf1da865015015275.png" alt="" width="2200" height="889">
</div>

































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<p><b>咲江：</b>そうなんです。どんな人でも、日々ちょっと工夫して仕事をしているってことあると思うんです。成果はわざわざ口にするほどのことでもない。でも、チョレイではそれを発表する。すると「おお、がんばってるね。いいじゃん、いいじゃん」と皆さんが反応する。チョレイはお互いの存在や努力を承認し合う場なんですね。<br />
<br />
<b>山口：</b>なるほど。たとえば新入社員が「僕は最近ちゃんと相手の目をみて挨拶するようにしています」と言ったとすると、「そんなの当たり前だろう」とは言わないわけですね。<br />
<br />
<b>咲江：</b>「いいねえ、そういうのって、わが社の理念に照らしても大事なことだよ」とか言うわけです。そんな雰囲気なんです。そこにあるのは「承認の文化」です。皆さんがいろいろなことをちょっと工夫しながらやっている。それをあたり前としないで、ちょっとしたことでもきちんと皆で承認しあう。それを今年の経営目標とかにつなげて実践しているのがチョレイなんですね。これは従業員の「心の健康」に大いに貢献すると思うんです。<br />
<br />
<b>山口：</b>チョレイ、ぜひ見学に行ってみたくなりました。<br />
今回のお話は、社長が自分自身や従業員の心の健康問題とどう向き合うべきかを考える上で大変参考になりました。まだまだお聞きしたいことがたくさんありますが、今回はここまでとしておきます。ありがとうございました。</p>








































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<!-- テキスト -->

<p><div align="right">——2026.1.29対談</div></p>








































				
				
			]]></description>
			<category>対談</category>
			<guid isPermaLink="true">https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6404.html</guid>
			<pubDate>Mon, 20 Apr 2026 12:00:59 +0900</pubDate>
		</item>
		<item>
			<dc:creator>山口恵里</dc:creator>
			<title>対談　2026年1月号</title>
			<link>https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6295.html</link>
			<description><![CDATA[
				
				



<!-- テキスト -->

<h2 >「社長の教科書(補章1　社長の数字)<br />
～『社長がどんな数字と向き合うか』が会社経営を決定づける～」</h2>









































<!-- テキスト -->

<p><a href="https://www.kojin.co.jp/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">株式会社コージン</a>　管理部長　小柴佳嗣氏<br />
聞き手　立教大学名誉教授　山口義行（ｽﾓｰﾙｻﾝ主宰）</p>








































<hr class="clearHidden">





<!-- 画像 -->
<div class="column-image-right js_notStyle acms-col-sm-6">
	<a href="https://www.smallsun.jp/archives/002/202601/large-beed51d71fa1bdd947874591d7c1cc6bfb4e116688ced8fd060a903204415bde.png" data-rel="SmartPhoto[6295]" data-caption="">
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	</a>
</div>


































<!-- テキスト -->

<p>「シリーズ:社長の教科書」はすでに第4章まで掲載を終えたが、今回は「補章1　社長の数字」を掲載する。「経営と数字」をテーマに、株式会社コージンの管理部長小柴佳嗣氏にお話を伺う。小柴氏には同社が赤字経営から脱却し、成長企業へと転身するにあたって「数字」がいかに決定的な役割を果したかを語っていただく。本稿をご一読いただき、「企業経営にとって数字がいかに重要な意味を持つか」についてあらためて認識する機会としていただければ幸いである。</p>








































<hr class="clearHidden">



<!-- テーブル -->
<div class="column-table-">
	<div class="entry-container">
	<table class="table-">
	<tr>
		<td><b>「シリーズ:社長の教科書」について
</b><div>社長に就任してまだ日が浅い経営者。今後社長に就任する予定の次世代経営者。社長の右腕として経営の一旦を担う幹部社員。社長としての経験は豊富だが、あらためて社長のあり方について考え方を整理したいと思っている熟練経営者。そんな人たちのために、スモールサンに関わる専門家や経営者の知恵を結集したスモールサン版『社長の教科書』を作りたい。——そんな私の思いに賛同してくださった方々とともに、すでに数回にわたり教科書作りの準備を兼ねて対談形式で「社長学」を論じてきた。
</div><div><br></div><div>第1章「社長の仕事～社長が絶対にやらなければならない“４つの仕事”～」では栗原正幸氏との対談を掲載した。——スモールサンニュース<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5282.html" target="_blank">２０２４年２</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5347.html" target="_blank">３</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5432.html" target="_blank">４</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5469.html" target="_blank">５月号</a>。</div><div>第2章 「社長の心得～社長が知っておくべき“４つの心得”」では新田信行氏との対談を掲載した。——スモールサンニュース<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5492.html" target="_blank">２０２４年６</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5518.html" target="_blank">７</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5567.html" target="_blank">８</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5616.html" target="_blank">９月号</a>。</div><div>第3章「社長の思考～賢い経営者は弁証法的に考える～」では、私(山口)がライターの大崎まことさんを相手に「社長業を遂行するにあたって有意義な“弁証法的思考法”」について語った。——スモールサンニュース<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5756.html" target="_blank">２０２４年１２</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5789.html" target="_blank">２５年１</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5872.html" target="_blank">２</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5983.html" target="_blank">５</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6037.html" target="_blank">６</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6053.html" target="_blank">７</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6103.html" target="_blank">８月号</a>。</div><div>第4章「社長の知識～大学では“中小企業”をこう教えている～」では遠山恭司立教大学教授との対談を掲載している。——スモールサンニュース2025年<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6199.html" target="_blank">10</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6239.html" target="_blank">11</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6262.html" target="_blank">12月号</a>。</div><div>補章１「社長の数字～「社長がどんな数字と向き合うか」が会社経営を決定づける～」では小柴佳嗣氏(株式会社コージン管理部長)との対談を掲載している。——本号に掲載。</div></td>
	</tr>
</table>

	</div>
</div>




































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<h3 >「わが社はなぜ赤字なのか」——この疑問から始まった!</h3>









































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<p><b>山口：</b>読者の皆さんの中には、株式会社コージンについて「知っているよ」という方も少なくないと思います。というのは、一昨年から昨年にかけて私は「再定義」をテーマに各地のゼミを講演して回っていたんですが、その際「再定義の実践事例」の１つとしてコージンを取り上げてきたからです。もちろん、スモールサンニュース(<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/report/entry-5691.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">2024年10月号</a>)でもコージンの画期的な試みを紹介しました。ですから、コージンをニュースで知ったという方もおられると思います。<br />
私がコージンの試みの中でとくに注目したのは、“現場”と“経営”をつなぐデータづくり、そしてそのデータを経営者だけでなく社員の皆さんが現場で活用できるソフトを開発されたことでした。今日お話を伺う小柴佳嗣さんは、社長であるお兄さん(小柴雅信氏)の下で、そのデータづくりやソフト開発に取り組んで来られた、まさにその張本人です。<br />
小柴さんは「経営者がどんな数字と向き合うかが会社経営を決定づけることになる」として、その重要性を強調しておられます。なぜそう考えるようになったのか、まずはその経緯からお話しいただければと思います。<br />
<br />
<b>小柴：</b>先ほどご紹介いただいたデータづくりやソフト開発に私が取り組み始めた元々のきっかけは、弊社がある時期から赤字に陥っていて、そこからなかなか脱却できないでいたことにあります。<br />
<br />
<b>山口：</b>どれくらいの期間赤字だったんですか。<br />
<br />
<b>小柴：</b>2012年から2020年まで営業赤字が続いていました。でも、現場の皆さんが努力を怠ったがゆえに赤字になったというわけではありません。黒字の時期と同じように、製造部門も営業部門も社員の皆さんは当時本当によく頑張って働いていてくれていました。<br />
「みんなこんなに頑張っているのになぜ赤字なのか」。実はそれがよくわからなかったんです。これでは赤字からの脱却など出来ようはずもありません。そこで、まずは赤字の原因がどこにあるのか、どうすれば赤字から抜け出すことができるのか、それを明らかにするために経営データを再構築することから始めようと考えたんです。<br />
<br />
<b>山口：</b>御社はプラスチックのインサート成形を専門とする製造業ですよね。<br />
<br />
<b>小柴：</b>はい、主な顧客は半導体分野、自動車分野、工作機械分野の大手メーカーです。<br />
<br />
<b>山口：</b>製品を作って大手メーカーに販売する——そういう仕事で赤字が出るということは、要するに販売価格が原価を割っている製品があるからじゃないんですか。そのかぎりでは、「なぜ赤字になるのか」という理由ははっきりしていると思うんですが。<br />
<br />
<b>小柴：</b>私もそう思いまして、まずは製品ごとの原価表を見てみました。弊社が手掛けている製品は100近くあります。その１つ１つについて原価表を確認したのですが、その過程で当時の原価表には大きな問題があることに気づいたんです。<br />
原価表があるにはあったけれど、それを製造や営業の現場で生かすことができていなかったし、社長が経営の観点からそれを使って戦略を立てることもできなかった。端的に言うと、「使える原価表」になっていなかったんです。<br />
<br />
<b>山口：</b>なるほど。そこで「経営と現場をつなぐデータを再構築しなればならない」という問題意識が浮上したわけですね。</p>









































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<h3 >原価表の4つの問題</h3>









































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<p><b>小柴：</b>私は、当時の原価表には４つの問題があると認識しました。<br />
その1つは、データの保管のあり方です。当時原価表はお客様ごとに、そしてその中でさらに製品ごとに細分化されてエクセルファイルで保管されていたんです。ですから、原価表を使って経営的な観点から全体を俯瞰することなどとてもできず、したがって数字を活用して経営戦略をたてることもできませんでした。<br />
<br />
<b>山口：</b>“現場の数字”を“経営の数字”として役立てることができていなかったわけですね。これはたしかに赤字を生む原因の１つと言えそうですね。<br />
<br />
<b>小柴：</b> 2つ目は原価表を適宜更新していくことが難しかったという問題です。当時の原価表は大きく４つの費用項目で構成されていました。材料費、加工費、不良金額、管理費です。材料の価格が変化したり、人件費が変化したりすれば、適宜原価表を更新することが必要になります。でも、この作業が大変だったんです。その都度複数のファイルを開き、各シートに記された価格などを手作業で修正しなければなりません。元々は3カ月に1回は更新することになっていたのですが、事実上それができなくて、お客様からある製品の値下げ要請が出た時にその製品に関するところだけ更新するという場当たり的な運用になっていました。<br />
<br />
<b>山口：</b>先ほど「現場の数字を経営の数字として役立てることができなかった」と言ったんですが、そもそもその「現場の数字」そのものがちょっと怪しい。現状をきちんと反映していない可能性があるということですね。 <br />
<br />
<b>小柴：</b>これは、お客様との価格交渉力にも影響します。こちら側が自信をもって交渉にあたるだけのデータを持っていないということになりますから。実際、値上げを提案しても、先方から「自社でコストダウンを進める方が先でしょ」という返事がきてしまう。これに十分な反論ができない。赤字脱却のためには値上げを進めることが不可欠なんですが、それが難しかったんです。<br />
<br />
<b>山口：</b>的確なデータを持っていなかったことが価格交渉力を低下させ、結果的に赤字を生む要因になっていたということですね。<br />
<br />
<b>小柴：</b>３つ目の問題は、原価表に記載される設定値の妥当性が確認できなかったことです。<br />
先ほど原価表は材料費、加工費、不良金額、管理費からなっていると言いましたが、例えば管理費はどうやって算出されたものなのか、それを確認しようとしてもできない状況でした。材料費、加工費、不良金額の合計に一定の「割合」を乗じて管理費を算出していたのですが、その「割合」の根拠がはっきりしない。これでは原価表そのものの妥当性に疑いが生じます。<br />
<br />
<b>山口：</b>なるほど。<br />
<br />
<b>小柴：</b>4つ目の問題は原価表そのものがわかりにくくて、担当者以外は内容を理解できないものだったということです。計算式や表形式のデータが並んでいて、一見でそれが何を意味するかを理解するのは不可能です。会計用語や費用区分などの専門的知識が必要ですから、担当者以外の社員にとっては見る気にもなれないものになっていました。これでは社員が一体となって課題解決に取り組むことができません。</p>









































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<h3 >費用項目の総点検とデジタル化</h3>









































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<p><b>山口：</b>これら４つの問題を克服すべく、小柴さんの悪戦苦闘が始まったわけですね。<br />
<br />
<b>小柴：</b>「悪戦苦闘」というより「地道な努力」の積み重ねですね。粘り強く課題を一つ一つ乗り越えていく。<br />
<br />
<b>山口：</b>まずはどんなところから?<br />
<br />
<b>小柴：</b>損益計算書にある各項目のうち、原価表の項目と紐づけるべきなのに紐づいていないものがないかを点検することから始めました。本来含めなければならないにもかかわらず、原価表に含まれていない費用があるのではないかと感じたからです。<br />
<br />
<b>山口：</b>結果はどうでしたか?<br />
<br />
<b>小柴：</b>減価償却費や水道光熱費は入っていたものの、修繕費、消耗品費、製造間接労務費など、本来製造原価に含めるべき経費が原価表から抜け落ちていることがわかりました。私は、従来の「管理費」という項目を廃止し、そこに含まれていた経費のうち製造にかかわるものを「製造管理費」として整理しました。さらに、販売や管理に関わる費用を「販管費」として区分し、費用構成の全体を再編しました。こうした改訂によって、製品単位の採算性を正しく把握できるようになったと思っています。<br />
<br />
<b>山口：</b>その結果見えてきた「現実」というと?<br />
<br />
<b>小柴：</b>かなり衝撃的な「現実」が見えてきました。先ほど弊社が手掛けている製品は100種類近くあると言いましたが、そのうちの半数以上が「販売価格が原価を割っている」、つまり赤字だということがわかりました。中には、あるお客さんに納入している製品のすべてが赤字だったというケースも見つかりました。<br />
<br />
<b>山口：</b>それでは社員の皆さんが頑張れば頑張るほど赤字が膨らんでいくことになりますね。<br />
<br />
<b>小柴：</b>そうなんです。そこで新しく作った原価表を手掛かりにして、一社一社廻って「値上げ」をお願いしに行くという活動を始めました。<br />
<br />
<b>山口：</b>赤字脱却に向けて、ようやく一歩を踏み出せたという感じですね。<br />
<br />
<b>小柴：</b>そうですね。でも、問題はまだ残っています。その１つが「更新」の問題です。適宜更新が出来なければ、新しく作った原価表も現実を正しく表現していないものになってしまいます。<br />
そこで、それまで複数のファイルとシートに分かれていた情報を1つのファイルに統合しました。インプット、プロセス、アウトプットという三つの層に分け、いわゆる「マクロを組む」ことで、たとえば材料費が変わったら、それをインプットすると関連する数値がすべて自動的に変更されて新しい原価表がアウトプット用シートに出力できるようにしました。<br />
<br />
<b>山口：</b>まさにデジタル化ですね。<br />
<br />
<b>小柴：</b>おかげで更新作業が大幅に短縮され、データの一貫性も保たれるようになりました。 </p>









































<!-- テキスト -->

<h3 >「原価を知るための数字」から「戦略を得るための数字」へ</h3>









































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<p><b>山口：</b>費用項目の中身も総点検して再構成した。さらにデータが顧客ごと製品ごとでバラバラに保管されていたという問題もデジタル化で解決し、あわせて更新の遅れという問題も解決できた。となると、残された問題は1つ、原価表が難しくて社員の皆さんがそれぞれの現場でそれを活用することができないという問題ですね。これが残っている。<br />
<br />
<b>小柴：</b>そうなんです。この問題を解決しようと試行錯誤を繰り返したんですが、ハードルは高くてなかなか解決には至りませんでした。でも、その試行錯誤の過程で「あること」に気づいたんです。それは、この問題を解決するためには、「数字」というものに対する考え方を抜本的に転換する必要があるということです。<br />
<br />
<b>山口：</b>といいますと。<br />
<br />
<b>小柴：</b>一言で言えば、「原価を知るための数字」から「戦略を得るための数字」への転換です。当たり前ですが、原価表はあくまでも「原価を知るための数字」です。それは現場が「何をすべきか」「どこに力を入れるべきか」といったことを教えてくれる数字ではありません。そのためには、原価表から「戦略を得るための数字」を導き出すという作業が必要になります。しかも、それがわかりやすくて、経営者はもちろん現場の社員の方々も一目で内容を理解できるものでなければなりません。<br />
<br />
<b>山口：</b>たしかにそんな数字があったら便利ですが、それを追い求めて、最終的にどんな「数字」にたどりついたんですか。<br />
<br />
<b>小柴：</b>あれこれ考えに考えて、私がたどり着いた数字は「社内労働時間あたりの限界利益」でした。<br />
<br />
<b>山口：</b>それだけを聞いてもピンときません。もう少し、詳しく解説していただけませんか。</p>









































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<h3 >「社内労働時間あたりの限界利益」という“数字”</h3>









































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<p><b>小柴：</b>「限界利益」というのは「売上－変動費」のことです。<br />
<br />
<b>山口：</b> それくらいなら私にも分かります。<br />
<br />
<b>小柴：</b>その「限界利益」を「社内労働時間」で除して算出したものが「社内労働時間あたりの限界利益」です。つまり、1時間の労働がどれくらいの「限界利益」を生み出すかを示したものです。これを製品ごとで算出して比較すれば、Aという製品は1労働時間あたり大きな利益を生んでいるけど、Bという製品は同じ時間労働してもあまり利益を生んでいないといったことがわかるわけです。<br />
<br />
<b>山口：</b>そうすると、同じ時間を費やすなら、BよりもAを作った方が効率的だということになりますね。<br />
<br />
<b>小柴：</b> そうなりますよね。製品ごとで「社内労働時間あたりの限界利益」を算出して、それ並べて全体を俯瞰する。そうすることで、社内の限られた労働資源をどの製品の生産に当てることがもっとも効率的なのかを判断することができます。つまり、経営者が採るべき戦略を「数字が教えてくれる」わけです。<br />
<br />
<b>山口：</b>なるほど。<br />
<br />
<b>小柴：</b>さらにいうと、戦略的に「外注」を活用することも可能になります。この「数字」を得るまでは、「忙しくて社内の人材だけでは手が回らない」といった時に「外注」でそれを補うという感じだったんですが、製品ごとの「社内労働時間あたりの限界利益」を俯瞰することで、戦略的に「外注」を活用することができるようになりました。つまり、「外注」を活用することで社員の労働時間に余裕をつくり、それを「社内労働時間あたりの限界利益」が高い分野に集中して投じる。そうすれば、会社は効率的に利益を生む企業へと移行することができます。<br />
<br />
<b>山口：</b>「数字が戦略を語ってくれる」という感じですね。<br />
<br />
<b>小柴：</b>現場の社員もこの「数字」を知ることでいろいろ考えるようになり、それが改革の原動力になりました。たとえば、自分たち関わっている製品の「社内労働時間あたり限界利益」が会社全体の平均値を下回っていることを知ったら、社員さんも「どうやって効率性を高めてこの数値を上げていくか」ということに知恵を絞ることになりますから。<br />
<br />
<b>山口：</b>なるほど。<br />
<br />
<b>小柴：</b>さらにもう一つ、この「数字」が価格交渉力の引き上げにも大きく貢献してくれたことを指摘しておきたいと思います。実際、お客様にこの資料を見せて、「御社からの注文で生産した製品の限界利益は他の製品に比べてこんな具合に突出して低いんです。せめて平均並みになるように値上げを認めてください」とお願いする。そうすると、「それじゃあ仕方がないな」と認めていただける。こんなケースが増えました。<br />
<br />
<b>山口：</b>会社経営にとって「数字が持つ役割」がいかに大きいか、今日のお話でよくわかりました。<br />
<br />
<b>小柴：</b>私にとってもそれは実感です。実際、この「数字」に出会ったことが弊社にとって大きな転換点となり、おかげで以後しっかり利益を稼げる体質に変わっていきました。その成果は給与の引き上げや休暇の増加という形で社員さんたちにも分配しています。</p>









































<!-- テキスト -->

<h3 >バブルチャートと「見積シミュレーション・ソフト」</h3>









































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<p><b>小柴：</b>最後に若干付け加えておきたいことがあるんですが、よろしいですか。<br />
<br />
<b>山口：</b>はい、ぜひお願いします。<br />
<br />
<b>小柴：</b>私たちがたどり着いた「社内労働時間あたりの限界利益」という「数字」、これを役立てるためには数字を羅列するのではなく、視覚的にその意味が捉えられるようなグラフをつくらなければならないと考えたんです。このグラフが非常に大きな役割を果してくれました。<br />
<br />
<b>山口：</b> 図1がそれですね。</p>








































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<!-- 画像 -->
<div class="column-image-left">
		<img class="columnImage" src="https://www.smallsun.jp/archives/002/202601/1bd085ae6715414bb4a998b5d143a2f512e0aa15fa8d05622fdf229ad5a0c214.png" alt="" width="2004" height="1400">
</div>

































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<!-- テキスト -->

<p><b>小柴：</b>風船が散らばったみたいに見えるので、「バブルチャート」と呼ばれているグラフです。１つ１つのバブルの大きさは製品ごとの販売数量を表しています。それを、縦軸は「限界利益」、横軸は「生産に必要な人数」という2本の座標軸の中に位置づけて配置しています。図の中に、「丸」でかこった部分がありますよね。<br />
<br />
<b>山口：</b>はい。<br />
<br />
<b>小柴：</b>この丸は、同程度の人員をあてて生産したものでも製品によって「社内労働時間あたりの限界利益」にかなりばらつきがあることを知ってもらうためにつけたものです。同じ人員をあてるのなら、できるだけバブルが上に位置している製品を多く作った方が利益に貢献できることを示しています。<br />
<br />
<b>山口：</b>なるほど。<br />
<br />
<b>小柴：</b>さらにいうと、バブルが下の方に飛び出している「濃い青のバブル」をどうやって上に移動させるか、これが全社的な課題であることが手に取るようにわかるということです。そこで、製造の現場はそのための施策を練ることになりますし、営業はお客さんの所に行って値上げさせてくださいとお願いしにいくことになります。<br />
<br />
<b>山口：</b>お客さんにもこのバブルチャートを見せちゃうんですか。<br />
<br />
<b>小柴：</b>はい、このチャートを見せながら、なんとかもう少し上の方にこのバブルを持っていきたい。そうしないと、わが社は適正な利益が確保できないと訴えます。お客さんも、このチャートを見せられると、自社だけが突出して低い位置にあることがわかりますから、拒否しにくくなって「じゃあ仕方ないな」と値上げを認めてくれる。<br />
<br />
<b>山口：</b>“数字”を視覚的に表現することが肝要なんですね。<br />
<br />
<b>小柴：</b>そうですね。これは中小企業の価格交渉力を格段に引き上げることに役立ちます。<br />
<br />
<b>山口：</b>このニュースをお読みになった読者諸氏の会社でも、ぜひ検討してもらいたいですね。<br />
<br />
<b>小柴：</b>最後にもう一つ、今お話したことはバブルチャートを見て事後的に値上げ交渉に入る場合のことですが、新規の注文を得る時に前もって「いくらでこの仕事を受ければ、この製品はバブルチャートのどのあたりに位置づけられることになるのか」ということを営業担当者が分かるようにすれば、後になって値上げをお願いに行く必要もなくなるし、頑張って仕事すればするほど利益率が低下してしまうなどということもなくなります。<br />
<br />
<b>山口：</b>たしかに。<br />
<br />
<b>小柴：</b>そこで、私は「見積シミュレーションソフト」というものを開発しました。これまでに蓄積したデータをもとに作ったのですが、営業担当がお客様と交渉している最中にこのソフトを使いながら「見積り」ができる。たとえば、お客さんがもう少し値引きできないかと言ってくる。そこで、値引きした価格をこのソフトに入れると、この製品の「社内労働時間あたりの限界利益」が会社の平均値を下回ってしまうとわかる。そこで、「それは無理です」「せめてこれくらいの価格で」といった交渉をする。こんな風に活用することで、わが社も「利益をきちんと稼げる」会社になっていったんです。<br />
<br />
<b>山口：</b>素晴らしいですね。“数字”を見出すだけでなく、“数字”を生かす仕組みをつくる。ここに到達すれば、たしかに会社は変わっていくだろうなと感じました。<br />
今日のお話はかなり刺激的で、私も大変勉強になりました。いずれにしても、会社経営にとって“数字”がいかに重要なものかを社長がしっかり認識することが出発点ですね。<br />
読者諸氏が今日の小柴さんのお話を参考にされて、わが社が向き合うべき“数字”、それが何なのかを見つけ出し、それを生かす仕組みを作っていただけたらと思います。小柴さん、どうもありがとうございました。「補章1　社長の数字」をこれで終えたいと思います。</p>








































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<!-- テキスト -->

<p><div align="right">——2025.12.11筆</div></p>








































				
				
			]]></description>
			<category>対談</category>
			<guid isPermaLink="true">https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6295.html</guid>
			<pubDate>Tue, 20 Jan 2026 12:00:59 +0900</pubDate>
		</item>
		<item>
			<dc:creator>山口恵里</dc:creator>
			<title>対談　2025年12月号</title>
			<link>https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6262.html</link>
			<description><![CDATA[
				
				



<!-- テキスト -->

<h2 >社長の教科書(第4章 社長の知識)<br />
～大学では“中小企業”をこう教えている(その第3節)～</h2>








































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<!-- 画像 -->
<div class="column-image-right js_notStyle acms-col-sm-6">
		<img class="columnImage" src="https://www.smallsun.jp/archives/002/202510/2ce907276dd51f3422583502596cce024a9adb926b2d1899be6e40e6a4a353d5.jpg" alt="" width="340" height="440">
</div>


































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<p>立教大学教授　遠山恭司氏<br />
聞き手　立教大学名誉教授　山口義行（ｽﾓｰﾙｻﾝ主宰）</p>









































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<p>先々月号より、「シリーズ:社長の教科書」は第4章「社長の知識～大学では“中小企業”をこう教えている～」に入った。「第1節 “未来”を担う中小企業」、「第2節　“構造”に挑戦する中小企業」に続き、本稿は「第3節 地域と共に、従業員と共に」である。<br />
<br />
本稿も遠山恭司立教大学教授から同氏が大学で講義されている「中小企業論」の概要をお聞きする。“現代の中小企業の全体像”を概観し、中小企業経営者がより広い観点から自身の経営活動を捉える一助にしてもらいたい。</p>








































<hr class="clearHidden">



<!-- テーブル -->
<div class="column-table-">
	<div class="entry-container">
	<table class="table-">
	<tr>
		<td><b>「シリーズ:社長の教科書」について
</b><div>社長に就任してまだ日が浅い経営者。今後社長に就任する予定の次世代経営者。社長の右腕として経営の一旦を担う幹部社員。社長としての経験は豊富だが、あらためて社長のあり方について考え方を整理したいと思っている熟練経営者。そんな人たちのために、スモールサンに関わる専門家や経営者の知恵を結集したスモールサン版『社長の教科書』を作りたい。——そんな私の思いに賛同してくださった方々とともに、すでに数回にわたり教科書作りの準備を兼ねて対談形式で「社長学」を論じてきた。
</div><div><br></div><div>第1章「社長の仕事～社長が絶対にやらなければならない“４つの仕事”～」では栗原正幸氏との対談を掲載した。——スモールサンニュース<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5282.html" target="_blank">２０２４年２</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5347.html" target="_blank">３</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5432.html" target="_blank">４</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5469.html" target="_blank">５月号</a>。
</div><div><br></div><div>第2章 「社長の心得～社長が知っておくべき“４つの心得”」では新田信行氏との対談を掲載した。——スモールサンニュース<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5492.html" target="_blank">２０２４年６</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5518.html" target="_blank">７</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5567.html" target="_blank">８</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5616.html" target="_blank">９月号</a>。
</div><div><br></div><div>第3章「社長の思考～賢い経営者は弁証法的に考える～」では、私(山口)がライターの大崎まことさんを相手に「社長業を遂行するにあたって有意義な“弁証法的思考法”」について語った。——スモールサンニュース<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5756.html" target="_blank">２０２４年１２</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5789.html" target="_blank">２５年１</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5872.html" target="_blank">２</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5983.html" target="_blank">５</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6037.html" target="_blank">６</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6053.html" target="_blank">７</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6103.html" target="_blank">８月号</a>。
</div><div><br></div><div>第4章「社長の知識～大学では“中小企業”をこう教えている～」では遠山恭司立教大学教授との対談を掲載している。——<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6199.html" target="_blank">前々号</a>以降</div></td>
	</tr>
</table>

	</div>
</div>




































<!-- テキスト -->

<h2 >Ⅲ 地域と共に、従業員と共に</h2>









































<!-- テキスト -->

<h3 > &nbsp;“地域を支え”、“地域に支えられる”中小企業</h3>









































<!-- テキスト -->

<p><b>山口：</b>この対談シリーズも最終回となりました。そこで、今回は私の方から若干の問題提起をさせていただこうかと思います。大企業と対比してみた時、「中小企業ならでは」の特徴というと——いくつもあると思うのですが——、その１つとして「地域との密着性」をあげることができると思うんです。<br />
<b><br />
遠山：</b>たしかにそうですね。<br />
<br />
<b> 山口：</b>私は現在東京と石垣島(沖縄県)の二拠点生活をしているのですが、東京の拠点は山手線池袋駅の隣にあたる大塚駅の周辺にあります。その大塚では毎年「東京大塚阿波踊り」(ポスター参照) というのがあります。何十人かの単位で踊りながら練り歩く「連(れん)」というのが各地区から出るんですが——ちなみに今年は15連、総勢1000人以上の踊り手が参加しました——その「連」の中に巣鴨信用金庫大塚支店の「連」があるんです。巣鴨信用金庫の職員の方々が1か月ほどかけて練習して参加されます。僕は縁あって練習風景を見せてもらう機会があったんですが、皆さん仕事を終えた後の時間に本当に一生懸命練習されていて頭が下がる思いがしました。</p>








































<hr class="clearHidden">





<!-- 画像 -->
<div class="column-image-left js_notStyle acms-col-sm-12">
	<a href="https://www.smallsun.jp/archives/002/202512/large-df8ed8d5d0bb71dfa9c9244006b2f7f8ab9febf77a7c952684c026fe18c33a12.png" data-rel="SmartPhoto[6262]" data-caption="">
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	</a>
</div>

































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<!-- テキスト -->

<p><b>遠山：</b>金融機関で「連」を出しているのは巣鴨信金だけなんですか。<br />
<br />
<b>山口：</b>そうなんです。もちろん大塚には三菱UFJ銀行をはじめ大手銀行の支店もあるのですが、「連」を出しているは巣鴨信用金庫だけ。同信金の田村和久前理事長とは大変懇意にさせていただいていたんですが、その田村氏が「地域に支えられている地域金融機関にとって、地元のお祭りに参加することは大変重要な地域貢献、お返しの一つなんです」と言われていました。「地域に支えられながら、同時に地域を支えていく」——これは中小企業のあり様を考える場合、とても重要な視点なのではないかと思うんです。「中小企業論」の講義では「地域と中小企業」というのはテーマとして取り上げられるんでしょうか。<br />
<br />
<b>遠山：</b>もちろんです。中小企業の場合商圏が小さくて「地元相手の仕事」が主なビジネスだという場合もありますし、対象とするマーケットはもっと広範囲なものだけれど、働いている従業員は地元の人達がほとんどという場合もあります。その意味でやはり「地元からの信頼」がなければ仕事を続けていくのが難しい。大企業はCSV（共有価値の創造）とかパーパス経営、CSR（企業の社会的責任）といったキーワードや文脈で地域貢献を表現しています。中小企業はあえてCSRなどといわないまでも、日頃から地域社会の構成員という認識が備わっているので、ご紹介にあったお祭りなどへの参加もまったく違和感がないのでしょう。中小企業は地域の住民の暮らしや産業連関を支えているし、同時に中小企業は地域に支えられてはじめて仕事が出来ている。しかも最近は、こういうビジネスの関係を超えて、地域経済の活性化をどう主導していくかという観点から、中小企業経営者たちが行政に積極的に関わっていくというケースが増えています。</p>








































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<!-- テキスト -->

<h3 >中小企業振興基本条例</h3>









































<!-- テキスト -->

<p><b>遠山：</b>中小企業振興基本条例というのがありますが、ご存じですか。<br />
<br />
<b>山口：</b>はい、知っています。たしか中小企業家同友会がその制定に積極的に関わってきましたよね。ただ、その中身というか、具体的にどんなことが行われているかまではあまり知らないですね。<br />
<br />
<b>遠山：</b>中小企業振興基本条例というのは、首長と中小企業者と市民たちみんなで「地元の中小企業を盛り上げましょう」という条例で、これを自治体が策定して、それに基づいた産業政策や地域政策を実行していくというものです。<br />
一番初めにそれをやったのが東京都の墨田区で、1979年でした。それ以降こういう条例を制定しようという動きが徐々に広がって行ったんですが、とくにここ十何年ぐらいで制定する自治体がすごく増えて、今年11月の時点では756市区町村(428市、17区、271町、40村)に及んでいます。<br />
実際に私も新宿区——私はそこに住んでいるわけじゃないですけど——の産業振興会議に学識経験者という形で参加しています。構成メンバーは、学術関係から3名、公募区民1名、公募事業者2名、商店街代表1名、各種業界団体から2名、中小企業支援団体関係から2名、地域金融機関1名、区内大学関係者から1名の総勢13名です。<br />
<br />
<b>山口：</b>その会議の様子はどんな感じですか。<br />
<br />
<b>遠山：</b>私は学術的な観点から好き放題言いますが、地元の産業界や商店街の方々はもっと現実的なというか、現場的な観点からどんどん意見を出される。そこに公募によって参加した区民の方々が加わって、まさに“侃々諤々”やり合うんです。<br />
<br />
<b>山口：</b>本気で議論するんですね。私も行政のいろいろな委員会に参加しましたが、どの委員会でもだいたいにおいて最終的な結論というか、方向性は官僚がすでに作っていて、各委員の意見がそれに「彩り」的にそえられるという感じです。侃々諤々議論したなんて経験はまったくありません。<br />
<br />
<b>遠山：</b>先日の会議でも、今期の産業振興会議の報告書を作るときに、区役所の皆さんが頑張って作った概念図みたいなものがあったんですけど、それに対して委員の皆さん遠慮なく駄目出しをして、もう大改訂させるぐらいの厳しい意見がどんどん出されました。<br />
<br />
<b>山口：</b>そんな会議なら、我々学者も参加し甲斐がありますね。<br />
<br />
<b>遠山：</b>徹底的に議論して、「次の課題はこうだよね」というところまで詰める。そうすると、次の会議の議題も決まります。そこで次回はそれについて徹底的に議論する。こういうのを何回か繰り返した上で、今度はその議論を政策に落とし込む。そして、その政を区長に報告する。そんな手順になります。<br />
<br />
<b>山口：</b>中小企業経営者や市民が参加して政策を立案していくという、これこそ民主主義ですね。<br />
<br />
<b>遠山：</b>こんな感じのことを、地道だけどもやっていることが、実は地域で頑張っていらっしゃる中小企業に政策を届けることにも役立つんです。<br />
<br />
<b>山口：</b>中小企業支援政策が施行されても、ほとんどの中小企業がそれを知らないために、せっかくの支援のメニューが届かないということが多々ありますからね。<br />
<br />
<b>遠山：</b>そうなんです。会議では広報戦略のようなところにも議論が及びますが、行政に広報をお願いするだけでなく、自分たちもどのようにして広報活動に参加すべきかということも議論します。そんな白熱した議論に感化されてか、なかには、頑張ってかなりの金額の予算を確保して政策展開を後押しする課長さんや部長さんが出てきたりします。<br />
<br />
<b>山口：</b>自分たちが関わってできた施策ですから、それが積極的に活用されて地域が元気になることを強く願うことになりますものね。<br />
<br />
<b>遠山：</b>スタートアップ企業への支援などは、その重要性を首相が基本方針の中で触れたりすれば、メディアでも取り上げられて学生たちも目にすることになります。でも、中小企業振興条例のようなメディアではなかなか取り上げられない地道な地域活動が、地域と中小企業の発展に貢献している。そういうことを学生たちにも知ってもらいたいという思いで、講義でも「地域と中小企業」をテーマとして取り上げます。<br />
<br />
<b>山口：</b>なるほど。</p>









































<!-- テキスト -->

<h3 >経営者と従業員の距離</h3>









































<!-- テキスト -->

<p><b>山口：</b>冒頭、大企業と対比して指摘できる「中小企業ならでは」の特徴ということで、「地域との密着性」をあげたんですが、もう一つ「中小企業ならでは」の特徴として「経営者と従業員の距離が近い」という点を上げることができると思うんです。<br />
最近は大企業をリタイヤーして中小企業に転職する人が結構いるんですが、そういう人たちに「中小企業の良さ」について質問すると、真っ先に上がるのが「経営者との距離が近い」ということなんです。<br />
<br />
<b>遠山：</b>たしかに巨大企業だと、入社式で遠くからチラッと見ただけで、それ以来経営者の顔を一回も見たことがないままサラリーマン人生を終えるということも少なくないですからね。<br />
<br />
<b>山口：</b>見たこともない人が経営方針を決定して、自分たちはその方針に従って日々活動をしている。これが大企業で働くということ。中小企業では日頃から顔を合わせ、お互い気楽に話ができ、また会議でも社長と直接議論することだって可能だから、経営方針についても自分なりの意見があればそれを経営者に直接伝えることもできる。そういう関係性の中で働くことができるのが中小企業です。どちらがいいかは人それぞれだと思うのですが、これは間違いなく中小企業の魅力の１つだと思うんです。こういう点は学生たちにもぜひ知ってもらいたいのですが、講義で取り上げることもあるんですか。<br />
<br />
<b>遠山：</b>講義では「中小企業での働き方」という単元もありますから。「経営者と従業員との距離感」というのはその際の重要なテーマです。<br />
最近は人手不足で転職が一般化してしまっていて、人を雇い入れるだけでも大変なのに、せっかく育てた人材が離職してしまうということが頻繁に起きています。これは中小企業にとっては大きな痛手です。そんな中にあって、従業員をファミリーのように、一緒にバーベキューをしたり、皆で旅行に行ったりということをしている中小企業では、比較的ちゃんと人が定着していたりするんですよね。<br />
<br />
<b> 山口：</b>「中小企業ならでは」の魅力をどう形にしていくか。経営者としてもそういうことを考える必要があるということですね。<br />
<br />
<b>遠山：</b>トヨタのお膝元である中京地区では、中小部品メーカーの経営者の多くから「もう全然、高卒新卒者の採用ができない」という声が強く聞かれます。トレンドとしてそもそも少子化で若年人口が減少しているうえに、トヨタやデンソーがごっそり採用し尽くしてしまい、就職先として製造業は夜勤があるなどして人気がありません。中小企業にとって、もはや人事・総務部に任せきりにしたり、高校やハローワークに求人票を出したりするだけで高卒を採用することは不可能です。このようななかでも、採用できている会社は、経営者みずからが、自分の言葉と熱意でもって、直接、高校生に会社の魅力や働き方のビジョンを届け続けているところだけです。<br />
<br />
<b>山口：</b>それで響きますか？<br />
<br />
<b>遠山：</b>響かせるしかないです！もちろん、1回やってすぐに採用できるなど甘くはないようです。5年も10年も地元の高校に通い続けて、先生たちとの関係性を築き上げて、生徒に直接話す機会を設けてもらったり、インターンシップを受け入れたりして、会社を知ってもらう努力の結果だといいます。また、就職した先輩からの情報や会社の雰囲気を伝えるSNS発信も大きく影響します。ですから、会社の人事制度や教育体制がどのように整備されているか、社長や上司からとのコミュニケーションや評価・指導が自分のキャリアデザインや成長につながっているかどうか、きちんと体系化されている必要があります。<br />
<br />
<b>山口：</b>なるほど、経営者との距離の近さは大事だけれども、人事評価や教育の仕組みが整っていることが重要で、その中小企業の魅力を形にして、しっかりと伝えていく、それが響いた高校生が就職してくれるわけですね。では、中途採用なんかは、どうでしょう？<br />
<br />
<b>遠山：</b>アジア最貧国のバングラデシュでバッグをつくり、日本や台湾、シンガポールで販売しているマザーハウスという会社が東京台東区にあります。バングラデシュを代表する地元の素材ジュートを使い、洗練されたデザインと日本並みな品質基準で現地生産したバッグを販売しています。もう20年近く前に創業した社会課題解決型のベンチャーですが、経営が不安定な成長期のころから旧財閥系商社や大手コンサルからの転職組が年収半減しても中途で入社しています。<br />
あるいは、求人票に「会社の組織改革と生産性向上に本気で取り組む人材を募集」といった内容を書き込み、今の職場で思うように能力を発揮できていない人材にメッセージを送り続ける中小製造業には、おのずとそれ相応の人材が応募して入社しています。</p>









































<!-- テキスト -->

<h3 >失敗を怖がらない</h3>









































<!-- テキスト -->

<p><b>遠山：</b>ですから、中小企業で働くことの魅力という点で、もう一つ指摘しておきたいのは、自分で裁量権を持ってチャレンジできる機会が大企業に比して多いということです。<br />
<br />
<b>山口：</b>たしかに。それも経営者と従業員との距離が近いからこそできることですよね。<br />
<br />
<b>遠山：</b>そうですね。「社長が見ていてくれる」という安心感がチャレンジをしてみようという気持ちにしてくれる。経営者としては、やる気のある社員に、大きなことはなかなかできないけれども、小さなチャレンジをさせる。ある程度裁量権を持ってやらせる。一回やって駄目だったりしても、それは当たり前と受け止めて、10回やって7回は三振するのが野球だとしたら、ビジネス上の挑戦も10回のうち3回うまくいけばいいぐらいな気持ちで、小さなチャレンジを促す。そういうことができるのが中小企業の魅力です。このことを経営者も意識して、挑戦的な社風をつくっていくことが大切なんだと思うんです。<br />
<br />
<b>山口：</b>先ほど大企業から中小企業に転職した人に「中小企業の良さ」について質問すると、真っ先に上がるのが「経営者との距離が近い」という点だという話をしましたが、実は同じ質問でもう一つよく上がるものがあるんです。それは「失敗を怖がらないでいられる」というものなんです。大企業は「減点主義」。出世するにはいかに「失敗しないか」が大事。でも中小企業だと、社長が「失敗してもいいから、挑戦してみな」と言ってくれると。<br />
<br />
<b>遠山：</b>まさにそこですよね。大企業でもそれは可能かもしれないけど、中小企業では比較的裁量権を任されてやれるところに醍醐味がある。「中小企業での働き方」という講義では、私はこの点を強調していますね。<br />
スモールサンニュースでの連載「中小企業コラム」の<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/column/entry-4444.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">2022年7月号「『恐れのない』チーム」（2022年7月号）</a>で取り上げた、「心理的安全性」を構築しやすいのも、中小企業の特徴ではないでしょうか。<br />
<br />
<b>山口：</b>ハーバード大学ビジネススクール教授のエイミー・エドモンドソン教授の学説ですね。彼女は経営学・経営思想・ビジネス界でもっとも影響力のある50人（THINKERS 50）の常連のようです。<br />
<br />
<b>遠山：</b>このところどんどん順位が上昇して、近年は1位とか2位にいます。このことは、学術でもビジネスの世界でも、この「心理的安全性」という概念と組織実践がいかに重要であるかを示唆しているのではないでしょうか。読むのは「空気」ではありません。心理的安全性の有無です。<br />
今一度、心理的安全性を説明しますと、「心理的安全性は、より率直に話し、好奇心旺盛で、協力し合い、結果として高い成果を上げる職場環境の土台」のことです。ですから、居心地の良いだけのぬるま湯や仲良しクラブをまったく意味していません。組織の共通目標を達成するために、円滑なコミュニケーションが保証され、その結果、高いパフォーマンス（下記、図の第1象限）を達成するための組織環境を形成することです。</p>








































<hr class="clearHidden">





<!-- 画像 -->
<div class="column-image-left js_notStyle acms-col-sm-12">
		<img class="columnImage" src="https://www.smallsun.jp/archives/002/202512/c1b173450518c0573941e00a87e566fac8a00138273e2b205e79827e36e0aef7.png" alt="" width="700" height="425">
</div>

































<hr class="clearHidden">

<!-- テキスト -->

<p>中小企業は経営者、管理・監督者、一般社員の距離が近いわけですから、心理的安全性の構築には向いているといえるでしょう。ただ、重要なのは、心理的安全性を構築・維持するために、リーダーシップの役割やコミュニケーションのあり方・方法を全階層でバージョンアップするための教育を受けることではないかと感じています。世代ごとに育った環境や受けた教育などが異なり、この世代間のコミュニケーション・ギャップをストレスに感じて離職する若年世代も少なくないと聞きます。<br />
学生たちが心理的安全性の構築された会社に就職した際に、しっかりと自分の頭で考えて、論理的に、かつ、能動的にチームに提案・発言して活躍できるような人材になってもらいたいと思って、ゼミナールや講義でもきちんと議論・対話できるよう指導に励んでいます。正直にいいますと、講義の方での対話（チャット）は、思うようなほどの盛り上がりにつながることが少ないので、日々、実践と改善を繰り返しています。<br />
<br />
<b>山口：</b>遠山さんの「中小企業論」、本当に素晴しい講義だと思います。ちなみに遠山ゼミナールの活動も素晴しくて、私は教師としての遠山さんの真剣な姿勢に現役時代から敬服いたしておりました。<br />
さて、1年分の講義をざっと見せていただくという無謀な対談の試みにお付き合いいただき、本当にありがとうございました。日々中小企業経営者と接している私ですが、今回対談をさせていただいて、あらためて自分のミッションについて考える機会となりました。読者諸氏も、自社あるいは経営者としての自分自身を客観的に見る手掛かりとしていだたけば幸いです。これで「社長の教科書」第4章の対談を終了させていただきます。</p>








































				
				
			]]></description>
			<category>対談</category>
			<guid isPermaLink="true">https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6262.html</guid>
			<pubDate>Mon, 22 Dec 2025 12:00:59 +0900</pubDate>
		</item>
		<item>
			<dc:creator>山口恵里</dc:creator>
			<title>対談　2025年11月号</title>
			<link>https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6239.html</link>
			<description><![CDATA[
				
				



<!-- テキスト -->

<h2 >社長の教科書(第4章 社長の知識)<br />
～大学では“中小企業”をこう教えている(その第2節)～</h2>








































<hr class="clearHidden">





<!-- 画像 -->
<div class="column-image-right js_notStyle acms-col-sm-6">
		<img class="columnImage" src="https://www.smallsun.jp/archives/002/202510/d0cc26fa3833bb1d73ceb2f503a9f6b442582b585137d6c2b367b1b60e1d7fa9.jpg" alt="" width="340" height="440">
</div>


































<!-- テキスト -->

<p>立教大学教授　遠山恭司氏<br />
聞き手　立教大学名誉教授　山口義行（ｽﾓｰﾙｻﾝ主宰）</p>









































<!-- テキスト -->

<p>先月号より、「シリーズ:社長の教科書」は第4章「社長の知識～大学では“中小企業”をこう教えている～」に入った。「第1節 “未来”を担う中小企業」に続き、本稿は「第2節　“構造”に挑戦する中小企業」である。<br />
<br />
本稿も前号に引き続き、遠山恭司立教大学教授から同氏が大学で講義されている「中小企業論」の概要をお聞きする。“現代の中小企業の全体像”を概観し、中小企業経営者がより広い観点から自身の経営活動を捉える一助にしてもらいたい。</p>








































<hr class="clearHidden">



<!-- テーブル -->
<div class="column-table-">
	<div class="entry-container">
	<table class="table-">
	<tr>
		<td><b>「シリーズ:社長の教科書」について
</b><div>社長に就任してまだ日が浅い経営者。今後社長に就任する予定の次世代経営者。社長の右腕として経営の一旦を担う幹部社員。社長としての経験は豊富だが、あらためて社長のあり方について考え方を整理したいと思っている熟練経営者。そんな人たちのために、スモールサンに関わる専門家や経営者の知恵を結集したスモールサン版『社長の教科書』を作りたい。——そんな私の思いに賛同してくださった方々とともに、すでに数回にわたり教科書作りの準備を兼ねて対談形式で「社長学」を論じてきた。
</div><div><br></div><div>第1章「社長の仕事～社長が絶対にやらなければならない“４つの仕事”～」では栗原正幸氏との対談を掲載した。——スモールサンニュース<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5282.html" target="_blank">２０２４年２</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5347.html" target="_blank">３</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5432.html" target="_blank">４</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5469.html" target="_blank">５月号</a>。
</div><div><br></div><div>第2章 「社長の心得～社長が知っておくべき“４つの心得”」では新田信行氏との対談を掲載した。——スモールサンニュース<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5492.html" target="_blank">２０２４年６</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5518.html" target="_blank">７</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5567.html" target="_blank">８</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5616.html" target="_blank">９月号</a>。
</div><div><br></div><div>第3章「社長の思考～賢い経営者は弁証法的に考える～」では、私(山口)がライターの大崎まことさんを相手に「社長業を遂行するにあたって有意義な“弁証法的思考法”」について語った。——スモールサンニュース<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5756.html" target="_blank">２０２４年１２</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5789.html" target="_blank">２５年１</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5872.html" target="_blank">２</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5983.html" target="_blank">５</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6037.html" target="_blank">６</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6053.html" target="_blank">７</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6103.html" target="_blank">８月号</a>。
</div><div><br></div><div>第4章「社長の知識～大学では“中小企業”をこう教えている～」では遠山恭司立教大学教授との対談を掲載している。——<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6199.html" target="_blank">前号</a>以降</div></td>
	</tr>
</table>

	</div>
</div>




































<!-- テキスト -->

<h2 >Ⅱ “構造”に挑戦する中小企業</h2>









































<!-- テキスト -->

<h3 > &nbsp;“構造”に目を向ける</h3>









































<!-- テキスト -->

<p><b>山口：</b>中小企業というものを「多様性と多数性」という視点で捉える——この重要性を学生たちに理解させることが「中小企業論」導入部の問題意識だと前回の対談でお聞きしました。その際お話しいただいた (株)ユーグレナや(株)パン・アキモトの事例は——中小企業こそ時代を先取りしていると言ってもいいような事例で——大変興味深いものでした。さて、講義はそんな導入部を終えて次に進んでいきます。<br />
<br />
<b>遠山：</b>そうですね。次のテーマは“構造”です。<br />
<br />
<b>山口：</b>といいますと。<br />
<br />
<b>遠山：</b>中小企業に関する様々な現象を学生たちも見聞きするわけですが、そうした現象を一つの「情報」として受け取ってそれで終わりというのではなく、その背後にはどんな“構造”があるのか——学生たちの視線や思考をそういうもっと深いところに向けさせようというのが、次の私の問題意識になります。<br />
<br />
<b>山口：</b>「上っ面な現象を知っただけで“分かった気”になっていてはだめだ」ということは、ネット情報が蔓延する現代では、とくにしっかり伝えておく必要がありますよね。そもそも「学問」というものの醍醐味は「目に見える事象」を「目には見えない奥」にまで切り込んで捉えようとするところにあるわけで、学生たちにもぜひその「面白味」を感じてほしいと思います。<br />
<br />
<b>遠山：</b>たとえば学生たちの比較的関心の高いテーマでいうと、企業の「福利厚生」というのがあります。学生たちが就職を考える場合「やっぱり大企業がいいな」と思う大きな理由の1つに、「福利厚生」の充実度が大企業と中小企業とでかなり違っているということがあります。このこと自体は否定しませんが、でも「だから、やっぱり大企業がいいな」ということにとどまるのではなく、「なぜそういうことが起きるのか」、そこに思いが至ることが重要です。<br />
福利厚生というのはいうまでもないことですが、「原資」があってこそできることです。ですから、福利厚生の差は結局のところ利益を得る力の差ということになります。ではなぜ、利益を得る力に大企業と中小企業とでは差ができてしまうのか。問題をこうして掘り下げていくと、そこには個別企業の問題を越える「構造的な問題」があることに気づきます。<br />
<br />
<b>山口：</b>なるほど。<br />
<br />
<b>遠山：</b>たとえば、大企業と中小企業とでは市場支配力に雲泥の差がある。大企業数社による寡占状態になっている市場も少なくない。そういう市場では、大企業はコストに十分な利益を上乗せして価格を設定できます。しかし、中小企業は数も多く競争も激しいからそれがなかなか難しい。結果として、大企業のように福利厚生を手厚く行えるほどの利益がなかなか確保できない。<br />
<br />
<b>山口：</b>最近新築マンションの値上がりが激しくて、庶民では手が出ないほどの価格になっています。これには建設資材の値上がりや人件費の高騰というコスト上昇が要因としてあるわけですが、それだけではないみたいですね。というのは、近年新築マンションを供給するデベロッパーの数が減ってきていて、市場が今や大手の寡占状態になってしまっている(注)。その結果マンションの供給が制限され、価格が高騰しているという面があるようです。</p>








































<hr class="clearHidden">



<!-- テーブル -->
<div class="column-table-">
	<div class="entry-container">
	<table class="table-">
	<tr>
		<td>(注) 「新築マンションのマーケットを例えば首都圏（１都３県）でみると、20年前に比べるとだいたい3分の1にまで縮小しているんですが、マンション・デベロッパーというプレイヤーの方は約4分の1とそれ以上に減少しています。要するに、マーケットの寡占化が進んだわけです。今やメジャーセブンという大手デベロッパー7社がマーケットの半分以上を牛耳っちゃっている。」(<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-4864.html" target="_blank">スモールサンニュース2023年5月号「対談　二極化する不動産市場」</a>での牧野知弘氏の発言)</td>
	</tr>
</table>

	</div>
</div>




































<!-- テキスト -->

<p>大手のデベロッパーはその市場支配力に任せて、増大する建設コストを賄うのに十分な価格でマンションを販売することができる。そのおかげで建設資材は価格が上昇しても需要が減らないですむ、つまり「価格の高止まり」ということになるのですが、問題はそのあおりを食らう中小の工務店です。彼らは大企業のように市場支配力を持っているわけではありませんから、建設コストの上昇分を十分に販売価格に転嫁できない。結果として利益が圧縮されてしまう。こんなふうに、建設業界を見ただけでも市場支配力による大企業と中小企業との差は歴然としています。そういう「構造」が「利益を得る力」の差、したがってまた福利厚生の差を生んでいるわけですよね。</p>









































<!-- テキスト -->

<h3 >「資本」を銀行借入で賄うという矛盾</h3>









































<!-- テキスト -->

<p><b>遠山：</b>大企業と中小企業の「差」は、市場支配力の違いということだけにはとどまりません。これは先生のご専門ですが、金融面の違いも大きいですよね。<br />
<br />
<b>山口：</b>日本の金融機構は中小企業向け融資を専門にする信用金庫や信用組合、そして地方銀行があり、その上に主に大企業を相手にしてきた都市銀行、いわゆるメガバンクがいるというように重層的になっています。さらに、これらとは別に中小企業向けを対象にした政府系金融機関がある。これまで中小企業の育成という点ではこうした金融機構は比較的うまく機能してきたように思います。<br />
ただ、そうであっても大企業と中小企業とでは金融面で決定的な違いがあって、この差はまさに「構造的」なものでなかなか埋まらない。それは何かというと、大企業なら株を発行して「資本として」調達する資金を、中小企業の場合は「銀行借入れ」という形で——いわゆる「間接金融」で——賄わなければならないということです。<br />
<br />
<b>遠山：</b>そのため大企業と違って、中小企業には常に「返済圧力」というものが付いて回ることになる。<br />
<br />
<b>山口：</b>そうなんです。例えば設備資金、これは本来的に——理屈上はといってもいいですが——株式を発行して「資本」という形で調達すべきものであって、返済が必要な「借入」で調達すべきものではありません。<br />
設備に投じた資金は売上げの中から少しずつ回収されるわけですが、それは更新期に新たな設備を購入するために企業の内部に留保しておくべきものです。ところが、設備資金を「借入」で調達すると、その回収した資金を返済に回すことになりますから、更新期にはまた銀行から借入をして設備資金を賄う必要が出てきます。こうして中小企業は「借入⇒返済⇒借入⇒返済」を繰り返すことになって、常に「返済圧力」が付きまとうことになります。<br />
そんな中、少し景気が悪くなって売上げが減ってしまうと、中小企業は途端に返済に窮して銀行に頭を下げて返済を猶予してもらったりしなければならなくなります。こういうことが度々あると、銀行が融資の際に基準にしている「企業の格付け」が下がって金利を引き上げられたり、場合によっては借入の更新を断られたりして経営が一気に不安定化してしまうことになります。中小企業はそういう不安定性を抱えながら、日々経営にあたるという「運命」にあるわけです。<br />
ところが、大企業の場合には、設備資金は株を発行して「資本」として調達しますから、そもそも「返済」の必要がない。設備が生んだ利益の一部を株主に「配当」する必要はありますが、調達した設備資金を「返済」する必要はありません。売上げから回収した資金は企業の内部に留保することになります。そこで、その留保した資金をいろいろな金融資産で運用してそこから更に利益を得ることもできるわけです。この「金融資産から得る利益」、これが大企業の大いなる「ゆとり」を生むことになります。中小企業とは大違いですよね。<br />
<br />
<b>遠山：</b>そういう金融面などに目を向けることで、大企業と中小企業の「利益を生む力」の差、福利厚生の差がどういうことにもとづいて生じるのかも明らかになります。<br />
<br />
<b>山口：</b>今回の対談の冒頭で「講義での問題意識は学生たちの目を“構造”に向けさせること」だと言われましたが、まさにこういう「構造」を理解した上で中小企業という存在を捉える必要があるわけで、いわゆるエコノミストと称される専門家たち、残念ながら一部の学者たちの中にも、こうした「構造」を理解しないで「中小企業問題を安易に語っている」例は少ないというのが現状です。そういう人たちにはぜひ遠山さんの講義を受けてもらいたいですね。</p>









































<!-- テキスト -->

<h3 >「下請け」という“構造”</h3>









































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<p><b>遠山： </b>「構造」という点で避けて通れないのが、いわゆる「下請け構造」です。これは、私の専門分野に属しますが、そこにはまさに「古くて新しい」問題が横たわっています。これは基本的には企業間のパワーバランスの問題ですから、当事者間だけでは解決しがたい面があります。たとえば親会社である大企業から不等な値引き要求があっても、中小企業がそれを拒否するというのはなかなか難しいというような…。<br />
<br />
<b>山口：</b>そうですよね。現在は「円安」が問題になっていますが、20年以上前には「円高」が問題になっていました。その頃は大手輸出企業では「為替差損」が生じていましたので、この損失を穴埋めしようと下請け中小企業に凄まじい「値引き要請」を繰り返しました。おかげで、随分多くの中小企業が泣かされました。もちろん大企業の側から言わせれば、「あんたたちも輸出のおかげで仕事を得ているんだから、円高で厳しい時くらい値引きで損失を負担してくれてもいいだろう」ということになるのでしょう。でも、現在「円安」で大手輸出企業は大儲けしていますが、「ウチばかりが儲けては申し訳ないから、仕入れ値を上げて下請けの皆さんにも利益を還元しますよ」とは口が裂けても言いません。<br />
<br />
<b> 遠山：</b> たしかに。<br />
<br />
<b>山口：</b>こんな風に下請け構造に関しては理不尽を感じる事象が非常に多いですが、パワーバランスの偏りはけっして「値引き」という価格上の問題だけに現われるわけではないですよね。先ほど「古くて新しい」問題だと言われましたが、去年問題になった「金型無償保管問題」もその一つです。 <br />
<br />
<b>遠山：</b> 使わなくなった金型を下請け企業に無料で長期にわたって保管させていたという問題ですよね。2023年に中小企業庁が実施した調査では、保管費用の全額を金型の発注業者が負担していたケースは2割にとどまり、5割は全く費用を負担していなかった。そこで、一昨年あたりから公正取引委員会がそうした業者を対象に積極的に是正勧告をするようになりました。<br />
<br />
<b>山口：</b>下請け業者としては発注元に「保管費用を負担してくださいよ」とはなかなか言えなかったということですよね。そんなことを言って仕事を貰えなくなったら大変だということで。<br />
<br />
<b>遠山：</b> そうなんです。重要なのは、先ほど申し上げたように下請け問題というのは基本的には企業間のパワーバランスの問題ですから、当事者間だけでは解決しがたい面があるということです。ですから、行政の介入ということがどうしても必要だし、そういうものなしには公正性が保てない。そのことをしっかりと認識することが大切です。実際、「取引適正化」に向けた取り組みというのは政府もかなりやっていますし、そういうことの必要性も社会的にすでに認知されているといえます。<br />
個別企業としてはまさにパワーバランス上「泣き寝入り」というケースも少なくないとは思いますが、業界団体や様々な中小企業組織などを通して中小企業の側から常に行政に対して積極的取り組みを促していくことが大切です。大学の講義でも「構造を知る」だけでなく、そうした構造ゆえに「政策的取り組みが必要であること」を理解させて、政治というものに——学生たちも有権者ですから——学生たちの関心が向くように心掛けています。</p>









































<!-- テキスト -->

<h3 >“構造”に挑戦する中小企業</h3>









































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<p><b>遠山：</b>“構造”問題を論じる場合、忘れてならない大切なことがもう一つあります。先ほどから繰り返しているように“構造”を根っこにもつ問題というのは個別企業では解決し難いわけですが、そんな中にあっても挑戦的に頑張っている中小企業も少なくないということです。<br />
<br />
<b>山口：</b>それこそ、前回テーマになった「多数性と多様性」ですね。<br />
<br />
<b>遠山：</b>そうですね。「構造上こうなっているから」ということだけで、中小企業の存在を「一色」に見てしまうことも避けなければなりません。そこが「中小企業論」の特徴です。実際「下請け」として大企業と長期の契約を結んで大企業のさまざまな要求に応えながら、その間技術や経営ノウハウを蓄積して今や大企業も「無視できない存在」になっている、結果として「対等とまではいかなくても、価格交渉力もしっかり具えている」、そんな中小企業も少なくないんです。<br />
<br />
<b>山口：</b>今のお話を聞いて、あるスモールサン会員企業のことが頭に浮びました。株式会社ニシカワという会社です。本社は埼玉県戸田市なんですが、山形県内に2つの工場があって、西川俊行社長は社員の方々と共に鶴岡市からスモールサン・ゼミYAMAGATAに参加されています。<br />
この会社は精密機械加工を専門にしているのですが、精密光学機器部品の製造で培った技術をベースにして今は大型半導体・液晶露光装置の部品製造も行っています。「トレーラーに一つしか載せられない」ような大物鋳造部品(8m×４ｍ)を、設計・加工・塗装と一貫生産できる仕組みも持っています。同社は自らを「大物精密加工屋」と称しています。<br />
そんな株式会社ニシカワは、1978年に大手カメラメーカーからの仕事を受注したのを機に、そのカメラメーカーの協力工場となって文字通り「下請け」として育ってきました。私の目を引いたのは西川社長のモットーです——</p>









































<!-- テキスト -->

<div class="entry-container"><blockquote>「お客様の無理難題を、喜び、チャンスと捉え、自らの積極的な行動によって輝く未来を開く。そして、生き残る」</blockquote></div>









































<!-- テキスト -->

<p>同社は下請け中小企業、他方の注文主は世界市場を相手にする大手カメラメーカーです。長年の歴史の中でいろいろな「無理難題」も押し付けられたに違いありません。でも、それを「しょうがない、ウチは下請けだから」といって引き受けるのではなく、その無理難題を「学びと成長の機会」と前向きにとらえて、したたかに着々と自社の力を養ってきた。現在は160名の社員を抱え、その大手カメラメーカーにとって「なくてならない存在」になっています。たとえば、西川社長はこんな風に言っています——</p>









































<!-- テキスト -->

<div class="entry-container"><blockquote>「現状は、お取引先である大手カメラメーカーでも持っていない大型の機械がここニシカワにはあるので、そのメーカーの主要な大型加工はニシカワで造られています。」</blockquote></div>









































<!-- テキスト -->

<p><b>遠山：</b>「大型の機械がここニシカワにはある」ということは、そういう機械を活用してモノづくりをできるだけの技術やノウハウがあるということですから、これはたしかに強みですね。大手カメラメーカーの方が中小企業であるニシカワに依存している構図だともいえます。<br />
<br />
<b> 山口：</b>「下請けという構造を活用」しながら、同時にまたその「構造に挑戦している」。ニシカワの経営実践からは、そんな感じを抱きます。こういう企業にたくさん出て来てほしいですね。</p>








































<hr class="clearHidden">

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<h3 >“構造”も変化する </h3>








































<hr class="clearHidden">

<!-- テキスト -->

<p><b>遠山：</b>今回は“構造”ということをテーマにお話しさせていただきましたが、最後に強調しておきたいのは「構造も変化する」あるいは「変化しつつある」ということです。<br />
<br />
<b>山口：</b>といいますと。<br />
<br />
<b>遠山：</b>一昨年からになりますが、全トヨタ労連というトヨタグループの労働組合の皆さんと一緒にある調査に参加したんです。その際に実感したんですが、大手は大手でサプライチェーンの持続性（下請け機構）に関する問題意識をかなり強くもっているということです。<br />
下請け問題というと、中小企業が大企業に対して隷属的な地位にあるという側面ばかりが目についてしまうのですが、一方大企業の方も「中小企業なしではやっていけない」わけで、両者は本来“相互に依存する関係”にあるわけです。<br />
<br />
<b>山口：</b>たしかに。<br />
<br />
<b>遠山：</b>特に最近は大手としても中小企業を含めたサプライチェーンを維持し、強化していくことに強い関心を持っています。そこで、下請けの実態を知るための調査をしようということになって私のところに協力依頼があったわけです。一緒に調査して回って、トヨタはトヨタなりに、労働組合やグループ企業の皆さんも「取引の適正化」を進めなければならないという意識を強く持っていると感じました。トヨタ以外の自動車メーカーや自動車産業以外の大企業については十分に把握できていないのですが、こういう動きを見ていると、徐々にせよ「構造も変化するのではないか」と感じます。<br />
<br />
<b>山口：</b>下請問題については社会の視線も厳しくなっているし、政府の関心度も強くなってきていますからね。<br />
<br />
<b>遠山：</b>そうですね。たとえば最近は「賃上げの推進」ということを、政府が企業に強く要請するようになってきています。物価が上昇しているのに給料が上がらないのでは景気も悪くなるし、国民の不満も高まりますからね。その際問題になるのは、中小企業の賃上げです。中小企業でも賃上げを進めていくためには、その「稼ぐ力」を高めないといけない。でも、そのためには今回取り上げたような「構造」を何とかする必要があるわけです。たとえば、大企業が下請け企業に対してその圧倒的優位性を背景に不等な値引きを強制しているようでは、中小企業は賃上げをしたくてもできません。そこで、「取引適正化」ということが政府の重要政策にならざるをえなくなります。すると、大企業としても何らかの対応を迫られることになる。そんな構図になっているのではないでしょうか。<br />
<br />
<b>山口：</b>中小企業の側にも、そういう社会的要請に「自社はどう対応すべきか」ということを真剣に考え、行動していく姿勢が求められますね。<br />
<br />
<b>遠山：</b>そのとおりですね。<br />
<br />
<b>山口：</b>スモールサンの会員企業の中に株式会社コージン(本社富山県)というプラスチックの加工を専門にしている会社があるんですが、この会社、近年自社のコスト状況を徹底的に調べあげ、製品ごとの限界利益や一人当たり付加価値などが一目でわかるソフトを開発したんです。最近は材料費やエネルギーコストが目まぐるしく変化しますが、そうした変化も瞬時に反映できるソフトです。<br />
同社の顧客は半導体や自動車関係の大手メーカーですから、もともと価格交渉力にはハンデーがあったんですが、このソフトをもって交渉にあたることで状況が大いに変わってきたそうです。かつては値上げをお願いしに行っても「おタクの企業努力で何とかすべきでしょ」と門前払いされていたんですが、このソフトを使ったグラフを示して「御社からの注文が他社のものと比較して飛びぬけて時間当たり限界利益が低いんです。これでは注文を受ければ受けるほど自社の利益率は下がって行ってしまいます」と説得したら、「値上げもやむなし」と認められたというんですね。このように、中小企業自らがデータを整備して価格交渉力を高めて行く努力、これも欠かせませんね。<br />
<br />
<b>遠山：</b>最近どの中小企業でもDXの活用が非常に重要なテーマになっていますが、DXというものが——それを多くの中小企業がうまく活用していけば——中小企業の“構造”的な不利を緩和ないし解消する可能性も生まれてきています。<br />
<br />
<b>山口：</b>たしかにそう思わせてくれる事象がいろいろなところで散見されるようになってきましたね。<br />
<br />
<b>遠山：</b>それから、先ほど先生が指摘された金融面での構造問題にも少しずつ変化が見られます。たとえば政府系、民間を問わず金融機関がベンチャーキャピタルを創設して、中小企業に「融資」ではなく「資本として」資金を投じるということも徐々に広がってきています。<br />
<br />
<b>山口：</b>「劣後ローン」と称される「資本性ローン」の改革も進んできています。<br />
<br />
<b>遠山：</b>中小企業がこうした変化を知って、自社のさらなる発展にそうした変化をどうつなげていけるのか、今はむしろそれが問われている局面だともいえそうです。<br />
<br />
<b>山口：</b>本当にそうですね。今回も興味深いお話をありがとうございました。次回は最終回です。引き続きよろしくお願いします。</p>








































				
				
			]]></description>
			<category>対談</category>
			<guid isPermaLink="true">https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6239.html</guid>
			<pubDate>Thu, 20 Nov 2025 12:00:59 +0900</pubDate>
		</item>
		<item>
			<dc:creator>山口恵里</dc:creator>
			<title>対談　2025年10月号</title>
			<link>https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6199.html</link>
			<description><![CDATA[
				
				



<!-- テキスト -->

<h2 >社長の教科書(第4章 社長の知識)<br />
～大学では“中小企業”をこう教えている(その第1節)～</h2>








































<hr class="clearHidden">





<!-- 画像 -->
<div class="column-image-right js_notStyle acms-col-sm-6">
		<img class="columnImage" src="https://www.smallsun.jp/archives/002/202510/125c1c43ea43a7622a543a8b58c38e8727028fe190151dc424d356b3ea6d6ef7.jpg" alt="" width="340" height="440">
</div>


































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<p>立教大学教授　遠山恭司氏<br />
聞き手　立教大学名誉教授　山口義行（ｽﾓｰﾙｻﾝ主宰）</p>









































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<p>中小企業経営者が“現代の中小企業の全体像”を概観し、より広い観点から自身の経営活動をあらためて捉えてみる。厳しいビジネス環境のもとで経営を担う社長たちには、時にはそんなことも必要なのではないか。そうした問題意識から、本稿では遠山恭司立教大学教授との対談を掲載する。遠山教授が立教大学経済学部で講義されている「中小企業論」の概要をお聞きしながら、同氏ともに中小企業の“今と未来”に迫ってみたい。<br />
<br />
なお、本稿は「シリーズ:社長の教科書」の第4章「社長の知識～大学では“中小企業”をこう教えている～」の「第1節 “未来”を担う中小企業」として企画されたものである。</p>








































<hr class="clearHidden">



<!-- テーブル -->
<div class="column-table-">
	<div class="entry-container">
	<table class="table-">
	<tr>
		<td><b>「シリーズ:社長の教科書」について
</b><div>社長に就任してまだ日が浅い経営者。今後社長に就任する予定の次世代経営者。社長の右腕として経営の一旦を担う幹部社員。社長としての経験は豊富だが、あらためて社長のあり方について考え方を整理したいと思っている熟練経営者。そんな人たちのために、スモールサンに関わる専門家や経営者の知恵を結集したスモールサン版『社長の教科書』を作りたい。——そんな私の思いに賛同してくださった方々とともに、すでに数回にわたり教科書作りの準備を兼ねて対談形式で「社長学」を論じてきた。
</div><div><br></div><div>第1章「社長の仕事～社長が絶対にやらなければならない“４つの仕事”～」では栗原正幸氏との対談を掲載した。——スモールサンニュース<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5282.html" target="_blank">２０２４年２</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5347.html" target="_blank">３</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5432.html" target="_blank">４</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5469.html" target="_blank">５月号</a>。
</div><div><br></div><div>第2章 「社長の心得～社長が知っておくべき“４つの心得”」では新田信行氏との対談を掲載した。——スモールサンニュース<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5492.html" target="_blank">２０２４年６</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5518.html" target="_blank">７</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5567.html" target="_blank">８</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5616.html" target="_blank">９月号</a>。
</div><div><br></div><div>第3章「社長の思考～賢い経営者は弁証法的に考える～」では、私(山口)がライターの大崎まことさんを相手に「社長業を遂行するにあたって有意義な“弁証法的思考法”」について語った。——スモールサンニュース<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5756.html" target="_blank">２０２４年１２</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5789.html" target="_blank">２５年１</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5872.html" target="_blank">２</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5983.html" target="_blank">５</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6037.html" target="_blank">６</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6053.html" target="_blank">７</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6103.html" target="_blank">８月号</a>。
</div><div><br></div><div>第4章「社長の知識～大学では“中小企業”をこう教えている～」では遠山恭司立教大学教授との対談を掲載する。——本号以降</div></td>
	</tr>
</table>

	</div>
</div>




































<!-- テキスト -->

<h2 >Ⅰ “未来”を担う中小企業</h2>









































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<h3 > “多様性と多数性”</h3>









































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<p><b>山口：</b>我々が学生時代に学んでいた頃の「中小企業論」では、中小企業の存在を「二重構造論の一環として論じる」というスタイルのものが多かったように思います。現代の資本主義は歪んだ「二重構造」を様々な分野で抱えている。中小企業の存在はその「二重構造」を示す典型的な事象だというのが基本認識でした。<br />
たとえば「近代化が進む大企業」と「遅れた中小企業」という二重構造、「優位な地位に立って利益をむさぼる大企業」と「不安定で過酷な競争を強いられている中小企業」という二重構造、また「大企業労働者と中小企業労働者の給与格差」なども二重構造の一つとして捉えられてきました。<br />
こうした視点をもつことは今も重要だと思いますが、でもこうした視点からばかりで現状を見ていると、いろいろ注目すべき事象を見落としてしまうような気もします。遠山さんは立教大学経済学部で「中小企業論」を講義されているわけですが、この点どんな風に考えられて授業されているのでしょうか。<br />
<br />
<b>遠山：</b>今先生の言われた問題意識を私も共有しています。中小企業と一口に言っても、内実は非常に多様ですし、数としてもすごくボリュームがあります。講義では「二重構造論」で指摘されてきたような問題ももちろん取り上げますが、とくに講義の導入部分では中小企業の存在を「多様性と多数性」という視点でとらえる、そのことの重要性を学生たちに認識してもらうことに重点を置きます。<br />
<br />
<b>山口：</b>中小企業は「多様性と多数性」——たしかにそうですね。 <br />
<br />
<b>遠山：</b>たとえば、最近は中小企業の中にも「時代に遅れている」どころかむしろ「時代を先取りしている」ともいうべき企業が出てきています。社会問題の解決を使命とする「ソーシャル・エンタープライズ」と呼ばれる中小企業などは、大企業と対立的な関係にあるのでもないし、かといって大企業の下請けになっているわけでもない。資金面その他で大企業の協力や支援を受けながらも、あくまでも自分たちが主役となって様々な活動を実践しています。<br />
<br />
<b>山口：</b>従来の中小企業のイメージとはずいぶん違っていますね。<br />
<br />
<b>遠山：</b>図体が大きくて身動きがとりにくい大企業より、スピーディーに動ける身軽な中小企業の方が社会の多様なニーズに応えて問題を解決していくのには適している。大企業は自分で実行する代わりに、そういう中小企業に協力することで自社の社会貢献をアビールしています。これなどは従来の「二重構造」論の中には収まらない事象です。</p>









































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<h3 >将来を自分たちの手でつくっていく</h3>









































<!-- テキスト -->

<p><b>山口：</b>講義では具体的にどんな中小企業を取り上げられるのでしょうか。またその事例を通してどんなことを学生たちに伝えようとされているのか。講義の具体的な内容をここで少しお話しいただけませんか。<br />
<br />
<b>遠山：</b>講義で最初に取り上げる企業の１つに「株式会社ユーグレナ」があります。最近は中小企業の枠に入りきれないほどに大きな会社になっていますが、これなどは「ワクワクするような未来」と「中小企業ならではの厳しさ」の両面を体現していて、学生たちに最初に語るには格好の事例だと思っています。<br />
同社はご存じのようにミドリムシを培養して栄養価が非常に高い食品を提供していますが、最近はミドリムシがつくる油を航空エンジンのジェット燃料などに使うという夢の技術にも挑戦しています。<br />
<br />
<b>山口：</b>ユーグレナは2005年に出雲充氏が立ち上げた会社ですよね。石垣島でミドリムシの本格的な培養を始めたということで、「にわか石垣市民」である私も同社には親近感をもっています。出雲氏の著書を読むと、起業の原点は1998年——同氏が18歳の時——にバングラデシュを訪れたことにあったみたいですね。<br />
<br />
<b>遠山：</b>そうなんです。バングラデシュは「子供たちは栄養失調、大人たちは貧困にあえいでいる」国ですが、彼は実際に行ってバングラデシュには小麦もコメもあふれるほどあることを知ります。足らないのは栄養素なんだと。栄養素を含む食物が足りていないし、そうした食物を新鮮な状態で現地に届けるのが難しい。——「何か解決策はないものか」とこの時に感じた問題意識、これがのちに彼をミドリムシというものにたどり着かせるんです。<br />
<br />
<b>山口：</b>「なぜミドリムシなのか?」と疑問をお持ちの読者諸氏もおられると思うので、出雲氏の著書から関連個所を引用しておきます。</p>









































<!-- テキスト -->

<div class="entry-container"><blockquote>自然界に存在するミドリムシが、太陽エネルギーを吸収していろいろな栄養素を作り出し、ミジンコや他の微生物がそれを食べて生活する。そしてそのミジンコを、イワシなどのより大きな魚が食べて、さらにマグロなどの大型の魚類がイワシを食べる。<br />
僕たちが魚を食べることで体に取り入れているDHAという栄養素も、元をたどればミドリムシなどによって生産されている。ミドリムシが持つ栄養素が、食物連鎖を通じて、あらゆる動物の成長を支えている…つまりミドリムシは、すべての食物の原点なのである。<br />
出雲充著『僕はミドリムシで世界を救うことに決めた。』(小学館新書2017年刊)、72－3ページ。</blockquote></div>









































<!-- テキスト -->

<p><b>遠山：</b>こんなミドリムシを大量に培養できれば、バングラデシュの子供たちを栄養失調から救うこともできる。そういう想いから、出雲氏は会社を設立し、世界初のミドリムシの大量培養に取り組み、成功したんです。<br />
<br />
<b>山口：</b>起業の動機が非常に鮮明で、社会性に富んでいるところが同社の特徴ですね。<br />
<br />
<b>遠山：</b>さらに同社は2010年あたりからミドリムシが作る油でジェット燃料を生産するプロジェクトを始め、2021年にはその技術を完成させて試験飛行も行っています。この燃料は燃焼過程ではCO2を排出しますが、ミドリムシが光合成の過程でCO2を吸収するのでカーボンニュートラルということになります。CO2削減という社会的課題にもミドリムシを使って貢献しようとしているわけです。<br />
<br />
<b>山口：</b>そんなユーグレナの話に学生たちはどんな反応を見せますか。<br />
<br />
<b>遠山：</b>貧困問題や地球温暖化問題などについては学生たちも非常に敏感ですから、目を輝かせて聞いていますね。<br />
<br />
<b>山口：</b>ユーグレナのように社会問題の解決に向けて会社を起業し、ビジネスの採算に乗せながらそれを実践しようとまい進している中小企業がある――これは、学生たちの中小企業イメージに大きな影響を与えそうですね。<br />
<br />
<b>遠山：</b>ビジネスというと「いかに時流に乗るか」が大事だというイメージがありますが、ユーグレナのように「自分たちの手で新たな未来を作っていこう」としている会社もある。中小企業というのはそういう存在でもあるわけです。そのことを伝えて、学生たちに「多様性と多数性」のもつ豊富な内容を感じ取ってもらおうというのが、私の講義の導入部なんです。</p>









































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<h3 >辛酸をなめ尽くす苦労の連続</h3>









































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<p><b>山口：</b>先ほどユーグレナが「世界初のミドリムシの大量培養に成功した」と言われましたが、これは本当に画期的なことで、当時の出雲氏たちの挑戦は誰の目からも無謀なことのように思われていたみたいですね。<br />
<br />
<b>遠山：</b>その「無謀な試み」を成功させて、しかも一つの事業としてビジネスにまで育て上げたわけですから、これは並大抵の努力でできることではありません。先がまったく見えない中で、多くの時間と大量の資金を費やさなければなりませんから。実際、出雲氏自身「辛酸をなめつくすような」苦労をされたようで、講義ではその努力の内容も学生たちに伝えて、中小企業が新たにビジネスを立ち上げ育てていくことがいかに厳しいかも感じ取ってもらうようにしています。<br />
<br />
<b>山口：</b>ミドリムシの培養は出雲氏らが挑戦する前から研究者たちが試みてきたようですが、まったく上手くいかなかった。「ミドリムシが培養できたら、もうほかに培養できないものはない」とまでいわれていたようです。なぜそんなに難しいのか、出雲氏は著書の中でこう記しています。</p>









































<!-- テキスト -->

<div class="entry-container"><blockquote>なぜかといえば、ミドリムシの栄養価があらゆる微生物の中でもトップレベルにあるからだ。栄養があればあるほど、他の微生物に狙われやすい。だから培養は極めて難しく、ちょっとの汚染で全滅してしまう。<br />
結果、当時の技術では研究室内で「月産耳かき1杯」、つまり月にほんの数グラムしか算出できず、産業として成り立つ目処など夢のまた夢、という状況だった——同上、72ページ</blockquote></div>









































<!-- テキスト -->

<p><b>遠山：</b>こんな「夢のまた夢」のような話に一体どれほどの人が理解を示し、出資までしてくれるのか。<br />
<br />
<b>山口：</b>たしかに出資者を探すだけでも至難の業です。</p>








































<hr class="clearHidden">





<!-- 画像 -->
<div class="column-image-right js_notStyle acms-col-sm-6">
		<img class="columnImage" src="https://www.smallsun.jp/archives/002/202510/4fb5dda0024dd1fa07165d511c8989e6ba2f9fffc447766087f087b29e0ef2fa.png" alt="" width="340" height="284">
</div>


































<!-- テキスト -->

<p><b>遠山：</b>「僕の企画を一緒に手伝っていただけませんか？」と、出雲氏はなんと500の会社をわたり歩いたそうです。そしてようやく500社目で支援してくれる会社を見つけた。もちろん何度も心が折れそうになるんですが、そんな時に支えになったのはやっぱり18歳の時のバングラデシュでの経験。「いつか、ユーグレナを使って安くて栄養価の高いクッキーをつくってバングラデシュの子供たちに配りたい」。そんな想いが支えになって、厳しいハードルを乗り越えてきた。現在、実際にユーグレナでは売り上げの一部を使って「ユーグレナクッキー」をバングラデシュの子供たちに無償配布しています(写真１)。<br />
<br />
<b>山口：</b>経営者の「強い想い」——これ無くしては、中小企業は存続できない。このことは「多様性、多数性」の中にある中小企業を貫く共通項だと思います。<br />
<br />
<b>遠山：</b>そうですね。あわせて講義では、こうした中小企業やベンチャーを生み出す素地だとか、それらを応援する社会づくりの重要性を語るようにしています。<br />
<br />
<b>山口：</b>それは学生たちが中小企業を通して社会を見るということでもありますね。素晴らしいことだと思います。</p>









































<!-- テキスト -->

<h3 >パンを“缶詰”にしたパン屋さん</h3>









































<!-- テキスト -->

<p><b>遠山：</b>「自社のビジネスを通して社会に貢献したい」という想いは、ユーグレナのようなスタートアップ企業に限定されるものではけっしてありません。もっと「身近な中小企業」でもみられるものです。<br />
<br />
<b>山口：</b>「身近な中小企業」といいますと。<br />
<br />
<b>遠山：</b>たとえば普通のパン屋さんが震災を機に新商品だけでなく新しい「仕組み」を作って、世界に向けて社会貢献しているというケースもあります。<br />
<br />
<b>山口：</b>それもまたすごいですね。もう少し具体的に教えていただけますか。<br />
<br />
<b>遠山：</b>それは栃木県の那須塩原にある「パン・アキモト」というパン屋さんです。地元の小中学校にパンを作って納めたり、それを自社の店舗で販売する「身近な中小企業」の一つでした。<br />
<br />
<b>山口：</b>変化のきっかけは震災だと。<br />
<br />
<b>遠山：</b>はい、1995年に発生した阪神淡路大震災がきっかけです。被災した人々の状況に心を痛めた当時の社長秋元義彦氏(現会長)らが、「パンを届けて支援しよう」と焼きたてのパンをトラックに積んで被災地に届けたんです。ところが、届けたパンの3分の2が食べられる前に傷んでしまっていた。<br />
<br />
<b>山口：</b>通常は非常食用のパンというと「乾パン」ですよね。<br />
<br />
<b>遠山：</b>乾パンだったら痛むこともなかったんでしょうが、彼らは「焼きたてのパン」を届けたかった。それに被災者からも「歯が悪いから乾パンは食べられない」とか、「柔らかくておいしくて、長持ちするパンをつくってほしい」という声が聞かされ、その思いを一層強くしたんです。でも、そこから同社の悪戦苦闘が始まります。真空パックがいいか、あるいは冷凍保存がいいかとか、いろいろ試行錯誤するんですが、うまくいかない。そんな試行錯誤の末、「パンを缶詰にする」というアイデアにたどりつくんです。<br />
<br />
<b>山口：</b>「パンを缶詰にする」——画期的なアイデアですね。<br />
<br />
<b>遠山：</b>ところが、ただパンを缶に入れただけでは、すぐにカビが生えてきてしまう。それなら「パンの生地を缶に入れて焼けばいいのではないか、これなら殺菌と焼成が同時にできる」と考えたんですが、でもそれだとパンが缶にくっついてしまう。<br />
<br />
<b>山口：</b>どうやって解決したんですか。<br />
<br />
<b>遠山：</b>「紙」です。<br />
<br />
<b>山口：</b>「紙」?<br />
<br />
<b>遠山：</b>耐熱性があってパンに適度にくっつき、水に濡れても破れない。そんな紙があれば、それで包んだパンを缶に入れて焼けばいい。そこで「紙探し」に奔走し、ようやく適した紙を見つけてパンの缶詰が誕生したというわけです(写真2)。</p>








































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<!-- 画像 -->
<div class="column-image-left">
		<img class="columnImage" src="https://www.smallsun.jp/archives/002/202510/55b47d1f63d9f0f4943090697cf5ae072a2c4d14f80bc26de389731582938065.png" alt="" width="2126" height="1204">
</div>

































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<!-- テキスト -->

<h3 >「普通のパン屋さん」が世界に“貢献” </h3>








































<hr class="clearHidden">

<!-- テキスト -->

<p><b>山口：</b>中小企業の商品開発力、“恐るべし”ですね。でも、そのパンの缶詰、売れたんですか?<br />
<br />
<b>遠山：</b>当初はさっぱりだったようです。でも、新潟県中越地震の際に支援のために届けたパンの缶詰を被災者がおいしそうに食べている姿がテレビで放映されたり、完全性が評価されて2009年にスペースシャトル「ディスカバリー号」に積まれて宇宙食として活躍したりといったことがあり、いろんな自治体が同社のパンの缶詰を備蓄するようになったんです。この商品は今や備蓄品としてかなり定番品になっています。<br />
<br />
<b>山口：</b>それはよかった。<br />
<br />
<b>遠山：</b>でも定番品になったのはいいんだけど、あくまでも備蓄品ですから、賞味期限が近づくと結局処分されてしまいます。つまり、一生懸命作ったパンを食べてもらえない。そこで、賞味期限が3年だとしたら2年過ぎたあたりで、この会社はその備蓄品を回収することにしたんです。<br />
<br />
<b>山口：</b>回収した缶詰はどうするんですか。<br />
<br />
<b>遠山：</b>それを飢餓や貧困にあえいでいる諸外国へ支援物資として送ることにしたんです。そこで、「この試みに協力してくれる会社はないですか?」と大手企業に呼びかけた。おそらくこの呼びかけに応じてくれた会社は多数あったと思うんですが、なかでもヤマト運輸は空いているスペースを利用して「運んであげるよ」と言ってくれた。<br />
<br />
<b>山口：</b>「普通のパン屋さん」が大企業を巻き込んで世界に向けて社会貢献する。いやはや感心しますね。<br />
<br />
<b>遠山：</b>中小企業が新商品を開発しただけでなく、大企業をも取り込んだ新しい社会貢献の仕組みまで「開発」したんですものね。冒頭お話した中小企業の「多様性と多数性」が、心や社会の豊かさを実現していくのに大いに役立っている。学生たちには、そういう目線で中小企業というものを見てほしいと思うんです。<br />
<br />
<b>山口：</b>学生たちだけでなく、現在中小企業の経営を担っている社長さんたちにもぜひ「そういう目線」を持ってもらいたいです。日々の経営の励みにもなりますし、“未来”への展望も開けます。今回は非常に興味深いお話を聞かせていただきました。引き続き次回もよろしくお願いします。</p>








































				
				
			]]></description>
			<category>対談</category>
			<guid isPermaLink="true">https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6199.html</guid>
			<pubDate>Mon, 20 Oct 2025 12:00:59 +0900</pubDate>
		</item>
		<item>
			<dc:creator>山口恵里</dc:creator>
			<title>対談　2025年8月号</title>
			<link>https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6103.html</link>
			<description><![CDATA[
				
				



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<h2 >「社長の教科書(第3章 社長の思考)<br />
～賢い経営者は弁証法的に考える(その第4節[3])～」</h2>









































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<p>立教大学名誉教授　スモールサン主宰　山口義行　<br />
聞き手　大崎まこと(ライター）</p>








































<hr class="clearHidden">





<!-- 画像 -->
<div class="column-image-right">
		<img class="columnImage" src="https://www.smallsun.jp/archives/002/202503/e6b845cc0ac2106c4904a051c85e059168f80b83124cacc3a130932afdbe15e2.png" alt="" width="340" height="258">
</div>


































<!-- テキスト -->

<p>　社長に就任してまだ日が浅い経営者。今後社長に就任する予定の次世代経営者。社長の右腕として経営の一旦を担う幹部社員。社長としての経験は豊富だが、あらためて社長のあり方について考え方を整理したいと思っている熟練経営者。そんな人たちのために、スモールサンに関わる専門家や経営者の知恵を結集したスモールサン版『社長の教科書』を作りたい。——そんな私の思いに賛同してくださった方々とともに、すでに数回にわたり教科書作りの準備を兼ねて対談形式で「社長学」を論じてきた。<br />
<br />
<br />
　第1章「社長の仕事～社長が絶対にやらなければならない“４つの仕事”～」では栗原正幸氏との対談を掲載した。——<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5282.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">スモールサンニュース2024年２</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5347.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">３</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5432.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">４</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5469.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">5月号</a><br />
　第2章「社長の心得～社長が知っておくべき“４つの心得”」では新田信行氏との対談を掲載した。——<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5492.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">スモールサンニュース2024年６</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5518.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">７</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5567.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">８</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5616.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">９月号</a>。<br />
　そして、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5756.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">昨年12月号</a>からは第3章「社長の思考～賢い経営者は弁証法的に考える～」として、私(山口)がライターの大崎まことさんを相手に「社長業を遂行するにあたって有意義な“弁証法的思考法”」について語っている。本稿はその第4節「弁証法で企業発展の全体像を捉える」の「その3　理念と衝動」である。</p>









































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<h2 >Ⅳ 「弁証法で企業発展の全体像を捉える(3)<br />
　　～“理念と衝動”～」</h2>









































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<h3 >“理念”って何なの?</h3>









































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<p><b>大崎：</b>いよいよ第4節も最終回になりました。最終回のテーマは「理念と衝動」です。<br />
<br />
<b>山口：</b>これまで経営理念とか企業理念あるいは事業コンセプトといったものの重要性について繰り返し指摘してきた。でも、そもそも「理念」とは何なのかということについて正面切って取り上げたことはなかったよね。最終回である今回はこの点をはっきりさせること、それから経営理念に関する議論で見落とされがちな重要な点について話したいと思う。<br />
<br />
<b>大崎：</b>よろしくお願いします。<br />
<br />
<b>山口：</b>まずは「理念とは何か」なんだけど、これについては、僕はスモールサンゼミでの講演でこんな風に説明してきた。それは「変化を貫く自己同一性」だと。 <br />
<br />
<b>大崎：</b>どういうことですか。 <br />
<br />
<b>山口：</b>会社というのは、時代の変化に対応していろいろ変化するよね。 <br />
<br />
<b>大崎：</b>時代とともに扱う商品やサービスの内容がすっかり変わってしまったという会社は少なくないし、一見したかぎりでは百年一日のごとく変わっていないように見えても実はよく見るといろいろ変化しているという会社もあります。<br />
<br />
<b>山口：</b>そういう変化を遂げながらも、なおもその変化を貫いて「変わらないもの」がある、それが「理念」だ。と言っても抽象的でわかりにくいと思うので、経営者の発言を例に挙げながら、それを手かがりにして説明するね。<br />
<br />
<b>大崎：</b>ぜひお願いします。<br />
<br />
<b>山口：</b>たとえば、(株)タニタの前会長、谷田大輔氏の発言を見てみよう。前回も話題にしたようにタニタは次々に新商品を開発し、しかもその多くがそれまで世の中になかったような商品だから、製品開発だけでなく、同時に市場創造にも挑戦してきた。そこで、同氏との対談(<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-121.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">スモールサンニュース2012年6月号</a>)の中で、タニタのように「『市場創造型』ビジネスを実践していくうえでもっとも大切なことは何だとお考えですか」と単刀直入に訊いてみたんだ。<br />
<br />
<b>大崎：</b>谷田さんは何とお答えになったんですか。<br />
<br />
<b>山口：</b>「自社の事業コンセプトをどう設定するかだと思います」というのが答え。その際、このことを確信したのはアメリカで「美術館を見て回った」時だったとして、こんな話をされている——</p>









































<!-- テキスト -->

<div class="entry-container"><blockquote>昔仕事でアメリカに行ったときに、1000ドルで車を買って、3ヶ月かけてアメリカの観光地や工場、それから趣味の美術館を見て回ったんです。その美術館の多くはアメリカの富豪たちが作ったんですが、それを見ながら、私はそのことを確信しました。…<br />
ご承知のように、合衆国はイギリス人がヨーロッパからアメリカに移住してつくったんですが、その当時には大西洋を横断できる船会社が富を築きました。その後、その人々がアメリカの西部へと進出していったんですが、それに応じてアメリカ大陸を横断できる鉄道が必要になった。そこで今度は鉄道会社が巨万の富を築いた。そしてその後は、モータリゼーションの進展とともにアメリカは典型的な「自動車社会」になっていったんですが、そうなると今度は自動車会社が富を築いた。<br />
美術館を回りながら、そんな時代の変化、その担い手たちの栄枯盛衰を感じたのですが、考えてみれば、船も鉄道も自動車も「人を移動させる」手段です。船会社だ、鉄道会社だ、自動車会社だと考えるのではなく、自社は「人の移動手段を提供する会社」なんだというようにコンセプトを設定していれば、その会社は、船から鉄道そして自動車へと時代が変わっても、時代を超えて事業を拡大し続けることができたはずです。<br />
——スモールサンニュース2012年6月号</blockquote></div>









































<!-- テキスト -->

<p><b>大崎：</b>時代の変化にともなって求められるビジネスの形は変わっていく。でも、企業はそういう変化を乗り越えて存続していかなければならない。そのためには、具体的なビジネスの在り方を“超える”事業コンセプトが必要なんだということですよね。<br />
<br />
<b>山口：</b>そのとおり。たとえばある会社が船会社から鉄道会社へと業態転換したとする。それを見た人が「御社もすっかり変わってしまいましたね」と言うと、社長が「いえいえ変わっていませんよ。わが社はもともと『人の移動手段を提供する会社』なんですから」と答える。——これが「変化を貫く自己同一性」だ。<br />
<br />
<b>大崎：</b>ビジネスの形は変化しても、あくまでも「わが社はわが社」であって変わっていないんだというわけですね。<br />
<br />
<b>山口：</b>そう。そのように言わせるもの、それがまさにその会社の「理念」なんだ。</p>









































<!-- テキスト -->

<h3 >「経営理念」の３つの役割</h3>









































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<p><b>山口：</b>君は中小企業家同友会という組織は知っているよね。<br />
<br />
<b>大崎：</b>もちろんです。スモールサン会員の中にも同友会会員の方がたくさんいらっしゃいますよね。<br />
<br />
<b>山口：</b>中小企業家同友会はかねてより「経営理念」というものを重視してきて、会員企業に経営理念の策定を強く促してきた。僕はこの点「中小企業運動」のあり方として大変高く評価しているし、「同友会でその重要性を知って、弊社でも経営理念を策定しました」という経営者に出会うたびに同友会の存在意義を強く感じてきた。<br />
そこで、僕はそういう人たちに「経営理念を策定してどういうところが良かったと思いますか」と度々質問してきた。<br />
<br />
<b>大崎：</b>経営者の皆さんはどう答えられたんですか。<br />
<br />
<b>山口：</b>答えは２つ。1つは「経営上の指針」として役立ったというもの。「経営理念があったおかげで、会社が変な方向に行かないですみました」と多くの経営者が答えていた。<br />
<br />
<b>大崎：</b>なるほど。<br />
<br />
<b>山口：</b>理念とは「変化を貫く自己同一性」だといったよね。ビジネスの形はいろいろ変化しても「わが社には変わらないもの」がある——それを文章化したものが「経営理念」だ。それを経営の中心に意識的に据えておくことで、たとえば利益追求を優先しすぎたり、時代の風潮に流されてしまって「そもそも何のためにわが社が存在し、事業活動をしているのか」を見失ってしまうことのないようにする。「経営理念」にはそういう役割があるんだということだね。<br />
<br />
<b>大崎：</b>本章第3節で「否定の否定」という弁証法的な思考法について学びました。企業というものは現状を「否定」することで変化していく。でも、その変化をもう一回「否定」して「変わったように見えても実は変わっていないぞ」と、常に「経営理念」に回帰することが重要だと話されました。そうじゃないと「糸が切れた凧」みたいになって、「一時的には上手く行ってもいずれは墜落することになりかねない」と。「経営理念があったおかげで、会社が変な方向に行かないですみました」という経営者の言葉は、まさにそれを指していますね。<br />
<br />
<b>山口：</b>そのとおりだね。<br />
<br />
<b>大崎：</b>2つ目は?<br />
<br />
<b>山口：</b>「社員の意思統一をはかるのに役立った」というもの。「社内がバラバラになりそうな時にはいつも経営理念を引き合いに出して議論するようにしました。おかげで会社が一つにまとまることができました」という声はよく聞かれた。<br />
<br />
<b>大崎：</b>「分裂と統合」をテーマにした前回のお話でも、先生は「統合の要」としての「理念」の重要性を強調されていました。「社員の意思統一をはかるのに役立った」というのは、経営理念がまさに「統合の要」として機能したということですよね。<br />
<br />
<b>山口：</b>「経営理念」の意義に関する以上の2つ指摘はいずれもきわめて的確なものだと思うんだけど、僕は経営者の答えがこの「2つ」にとどまっていることにかねてから「物足りなさ」を感じてきたんだ。<br />
<br />
<b>大崎：</b>どうしてですか。 <br />
<br />
<b>山口：</b>というのは、経営理念にはもう1つ重要な役割があると考えているから。それは、「変化の原動力」としての役割。「経営理念を策定したおかけで、わが社が大きく変化することができました」とか、「経営理念の策定がビジネス上の新展開につながりました」といった声を聞きたかった。でも、残念ながら、こういう声を聞くことはほとんどなかった。<br />
<br />
<b>大崎：</b>それで「物足りなさ」を感じられていたと。<br />
<br />
<b>山口：</b>実は冒頭で谷田氏の発言を引用したのも、今回ぜひこの点を強調したいと思ったからなんだ。<br />
<br />
<b>大崎：</b>そのあたり、もう少し詳しくご説明いただけますか。</p>









































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<h3 >「変化への衝動」としての“理念” </h3>









































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<p><b>山口：</b>「理念」は変化を貫く“自己同一性”だから、「変わらない」というところに意義がある。それは間違いないんだけど、他方で「理念」というのは“変化を生み出すもの”でもある。そのことを谷田氏が提示した先ほどの例で説明してみよう。<br />
たとえば、ここに「船を提供する会社」があったとしよう。でも、その会社は自社の事業理念を「船を提供する会社」ではなく、「人の移動手段を提供する会社」として設定していた。そのため、その会社は船に限らずいろいろな移動手段について情報収集をしたり、研究したりしてきた。おかげで、他社に先駆けて自動車という新しい技術と出会い、その技術をビジネスに乗せようと「自動車部門」を設立した。やがてそれがこの会社の「主流ビジネス」になり、この会社は「船の会社」から「自動車の会社」へと大きく変貌することになった。谷田氏の話をストーリー仕立てにすればこういうことになると思うんだけど、このストーリーの起動点がどこにあるかと問えば、いうまでもなく自社を「人の移動手段を提供する会社」とした理念設定にあるよね。<br />
<br />
<b>大崎：</b>自社のコンセプトを「船の会社」と設定していたら、そもそもこういう変化は起きなかったでしょうからね。<br />
<br />
<b>山口：</b>谷田氏が言いたかったのはまさにこの点なんだ。時代を超えて企業が社会に貢献し続けるためには、「変化を生みだす」あるいは「変化を可能にする」ような「理念」の設定、これが必要なんだと。<br />
<br />
<b>大崎：</b>そういえば、タニタも自社のコンセプトを「体重をはかる」から「健康をはかる」へと転換させたことが、会社を大きく変貌させることになりました。<br />
<br />
<b>山口：</b>谷田氏は「健康をはかる」というコンセプトを設定したら、「やるべきことがたくさん見えてきました」(<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-121.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">スモールサンニュース2012年6月号</a>)と語っている。新しいコンセプトにもとづいて最初に「やるべき」だと判断したのが、前回も話したけど、「ベストウェイトセンター」という研究所の設立。そして、その研究所での専門家との出会いが「体脂肪計」という新商品の誕生に結びついた。つまり、「理念」が「変化の原動力」になっている。<br />
<br />
<b>大崎：</b>最近では体重計とは似ても似つかない「睡眠の深さをはかる器具」まで販売しています。<br />
<br />
<b>山口：</b>そんな風にどんどん変化していっても、「健康をはかる」という同社の理念は一貫していて変わらない。まさに「理念は変化を貫く自己同一性」だ。でも、その「変わらない理念」が同社の「変化を生む原動力」になっている。<br />
<br />
<b>大崎：</b>たしかに。<br />
<br />
<b>山口：</b>「やるべきことがたくさん見えてきました」という谷田氏の言葉が示すように、新たに「理念」を策定したことで「やるべきこと」「やりたいこと」が見えてきて、さらにそれを実行に移そうという「衝動」が生まれる。その結果として、会社が大きく発展する。こういう「変化への衝動」としての「理念」の役割——これを多くの経営者にもっと強く意識してもらいたいというのが僕の考えだ。</p>









































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<h3 >社長の仕事は、“抽象的な理念”を“ビジネス上の衝動”に変えること!</h3>









































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<p><b>山口：</b>ここで大切なのは、「理念」はそれ自体としてはたんなる「抽象」でしかないということだ。「船会社だ、鉄道会社だ、自動車会社だと考える」のではなく、「人の移動手段を提供する会社」として捉えるべきだといっても、これは言ってみれば船、鉄道、自動車という具体性を捨象してそれらを「移動手段」という普遍的な言葉に置き換えたにすぎない。つまり、それ自体はたんなる「抽象化」でしかない。だから、それだけでは何のパワーも生みださない。大切なのは、“理念という抽象的なもの”を、「こういうことをやりたい」とか「こういうことをやらなければならない」という“ビジネス上の衝動”に転換することなんだ。そこにこそ、社長が果たすべき役割がある。<br />
<br />
<b>大崎：</b>そういえば、かつて私が取材させていただいたonde株式会社も、松波正晃社長が新たに設定した事業理念を「ビジネス上の衝動」に置き換えることで発展してきた会社だといえますね。<br />
<br />
<b>山口：</b>たしかにそのとおりだね。株式会社ondeのビジネスモデルはスキンケア専門サロンを通してスキンケア商品を最終消費者である女性たちに販売していくというもの。だから、このビジネスを成立させるためにはサロンの経営者であるオーナーたちをたくさん生み出していくことが不可欠になる。これはビジネス用語でいえば「顧客創造」だ。でも、松波氏はそれをたんなる「顧客創造」としてではなく、「経済的に自立できていない女性たちのための“自立支援”」なんだというように捉えた。そして、この「女性の自立支援」というコンセプトを自社の事業理念に設定して、この「理念」に見合ったビジネスのあり様を徹底的に追求してきた。その結果、多くの女性たちの共感と信頼を得て会社が飛躍的な発展を遂げたんだ。<br />
<br />
<b>大崎：</b>私が松波社長の波乱万丈の人生を一冊の本にまとめさせていただいたのは、2016年のことです。その本の表題は『コーリン～女性の自立のために…ある経営者の軌跡』(スモールサン出版、2016年7月刊)というもの。<br />
「コーリン」というのは「神から与えられた使命」という意味ですが、松波さんは「女性の自立支援」を自分の「コーリン」と認識したんですね。そして、この「使命」を具体的なビジネスの形にしていくんですが、驚くべきはその徹底ぶりです。<br />
チェーン展開しているサロンを新たに開設するとなると、通常サロンのオーナーたちは加盟料とかロイヤリティーを支払わなければなりませんよね。でも、ondeが展開しているスキンケアサロンでは、そういうものは一切必要ないんです。それから、これも通常は結構高額になるんですが、店舗を運営するのに必要なコンピューターシステムの使用料、これも無料です。さらにサロンに来たお客さんがクレジットカードを使用した場合にカード会社に払わなければならない手数料、これもondeが負担するからサロン側は負担しなくていいんです。——これらはすべて、できるだけ小さなコストとリスクでサロンの起ち上げや運営をできるようにして「女性の自立を支援する」んだという事業コンセプトゆえの仕組みです。　<br />
さらに、オーナーあるいはオーナー希望者たちにはスキンケアの技術的な研修に加えて、経営者として必要な会計知識や事業計画書の作り方などもondeが徹底的に教育、指導します。そして、いざ起ち上げとなってサロンオーナーがそのための資金を調達しなければならなくなると、政策金融公庫に松波社長も同行して担当者との折衝に当たるといったこともしています。公庫側にも「女性の自立支援」という社会貢献の一つとして対応してもらえるように、公庫とondeとの間で話し合いができているんです。</p>









































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<h3 >「まだやるべきことがある」</h3>









































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<p><b>山口：</b>本当にすごい徹底ぶりだね。『コーリン』の出版が2016年。その当時サロンの数は50店舗程度だったと思うけど、今やその3倍の150店舗近くになっている。松波氏の経営姿勢がいかに多くの女性たちの共感と信頼を得てきたか、この数字がそれを物語っているよね。ところで、その松波氏がまた新たなプロジェクトを始めたんだけど、知っている?<br />
<br />
<b>大崎：</b>いや、存じ上げないです。<br />
<br />
<b>山口：</b>それは「独立チャレンジプログラム」というもの。松波氏は僕にこんな風に語ってくれた——</p>









































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<div class="entry-container"><blockquote>サロン経営にチャレンジしたいという女性は潜在的にはたくさんいます。でも、今の生活を維持することが精いっぱいで、未来のための準備をする余裕がないというケースが少なくありません。子育てや親の介護をしながら、当面の生活費を稼ぐために月十数万円のパート労働をしてなんとかやりくりしている。そんな人も、頭の中では「このままじゃダメだ、未来につながるような勉強や仕事をしなくちゃ」と思っている。でも、そんな余裕はないというのが現実です。</blockquote></div>









































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<p>松波氏はそういう女性たちにもチャレンジの機会を提供できてこそ、本当の「自立支援」だと考えた。そこで新たに起ち上げたのが「独立チャレンジプログラム」。このプログラムの内容はこうだ——</p>









































<!-- テキスト -->

<div class="entry-container"><blockquote>そういう女性たちにチャレンジの機会を提供していくためには、「保障」が必要です。そこで、月100時間労働で20万円という仕組みを作りました。100時間労働で20万円ですから、時給にすると2000円という計算になります。100時間の中には既存のサロンで実際に仕事をする時間と研修のプログラムを受けて勉強する時間が含まれています。そういう研修時間も含めて月100時間です。社会保険を付けてほしい人には、130時間で26万円を支給しますから、やはり時給2000円という計算になります<br />
そのかわり、採用された人には1年でこのプログラムを卒業して独立してもらう。そのために既存のサロンで仕事をしながら、新規のお客さんを30人、40人と作っておいてもらう。それは当面は店の売り上げになりますが、独立する時にはその客さんを持って出ていくことができます。ですから、スタート時からある程度の売り上げを確保できるわけです。<br />
弊社の最大の利点は「理念」が共有できていること。だから、研修者を引き受けた既存店のオーナーも、その女性が30人、40人のお客さんを引き連れて独立しても不満を言いません。「私も創業支援してもらったから、研修で来た人のこと、しっかり応援してあげてね。私も応援するから」と、皆さんがそう言っていただけるんです。</blockquote></div>









































<!-- テキスト -->

<p><b>大崎：</b>すばらしいですね。<br />
<br />
<b>山口：</b>こういう新しいプログラムを思いつき、それを実現したいと思う――この「衝動」も「女性の自立支援」という「理念」から発している。松波氏がバージャー病という難病を抱えてかなりしんどい人生を生きていることは、君の著書の影響もあって多くのスモールサン会員の方々がご存じだと思う。でも、そんな彼が「オレにはまだやるべきことがある」と感じて前向きに頑張ることができるのも、彼が「神から与えられた使命」と感じるほどの事業理念に遭遇したからだ。</p>









































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<h3 >ヘーゲルから学んだ</h3>









































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<p><b>大崎：</b>さて、今回は「社長の思考～賢い経営者は弁証法的に考える～」の最終回です。でも、その割には弁証法への言及があまりなかったように思います。最後に、この点に関してお話いただけますか。<br />
<br />
<b>山口：</b>そうだね。たしかに今回は弁証法という言葉がほとんど出てこなかったね。ただ、「理念と衝動」という視点から企業の発展を捉えるという発想そのものが、弁証法論理学を確立したヘーゲルから僕が学んだものだということは言っておきたいね。<br />
<br />
<b>大崎：</b>そうなんですか。<br />
<br />
<b>山口：</b>ヘーゲルの文章は見慣れない哲学用語がたくさん出てきて読みづらいので、この場では極力引用しないようにしてきたんだけど、今回は最終回なので少しだけ引用させてもらうね。たとえば、『大論理学』という本の中にこんな文章がある——</p>









































<!-- テキスト -->

<div class="entry-container"><blockquote>或る現存在が、概念を抽象的な即自有としてもつだけでなくて、…衝動、生命、感覚、表象等としてもつときには、この存在そのものが自身で制限の超越をくわだて、その超克をなしとげることになる。 (ヘーゲル『大論理学』(上巻の一)、岩波書店『ヘーゲル全集第6巻ａ』157ページ) </blockquote></div>









































<!-- テキスト -->

<p><b>大崎：</b>やっぱりヘーゲルの文章は難しくてよくわかりません。 <br />
<br />
<b>山口：</b>そうなるよね。でも、若干の解説を加えれば、この文章も理解できないわけではない。文章冒頭の「或る現存在」というのは、「今現実に存在しているもの」という意味だから、「既存の企業」を指すんだと思えばいい。それから「概念を…」と書いてあるけど、「概念」というのは今回取り上げてきた「理念」のことを指している。だから、この文章はこんな風に読み解くことができる——</p>









































<!-- テキスト -->

<div class="entry-container"><blockquote>既存の企業が自身の理念(概念)を、たんなる抽象的なものとしてではなくて、<br />
衝動としてもつならば、その企業は自分自身で制限を乗り越えようと「くわだて」、実際にそれを「なしとげる」ことになる。</blockquote></div>









































<!-- テキスト -->

<p><b>大崎：</b>なるほど。たしかにこういう風に読めば、今回先生が話されてきたこととヘーゲルの文章がぴったり重なってきますね。自社の「理念」をビジネス上の「衝動」へと転換できる社長がいれば、その会社はみずから現在の制約を乗り越えて、新しい企業に脱皮できるんだと。先生がその発想をヘーゲルから学んだといわれている意味もわかります。<br />
<br />
<b>山口：</b>それから「衝動」という言葉だけど、この言葉、以前にヘーゲルの文章を引用した時にも出できたような気がしないかな。<br />
<br />
<b>大崎：</b>そういえば、第2節「矛盾と変化」のところ(<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5789.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">2025年1月号</a>)で、先生が引用されたヘーゲルの文章の中にも出てきました。<br />
<br />
<b>山口：</b>その文章がこれ——</p>









































<!-- テキスト -->

<div class="entry-container"><blockquote>矛盾は、あらゆる運動と生命体の根本である。或る物は、それ自身の中に矛盾をもつ限りにおいてのみ運動するのであり、衝動と活動性とをもつのである。 (ヘーゲル『大論理学』(中巻)、岩波書店『ヘーゲル全集第7巻』78ページ) </blockquote></div>









































<!-- テキスト -->

<p><b>大崎：</b>「矛盾をもつ限りにおいてのみ…衝動…をもつ」と書いてあります。ということは、今回先生が強調されていた「衝動」も、その背後にはなんらかの矛盾があるということなんでしょうか。<br />
<br />
<b>山口：</b>そのとおり。その矛盾とは何かというと、「理念」と「現実」との矛盾だ。自社の「理念」からすれば「こうでなければならない」のに、ビジネスの「現実」は「そうなっていない」という矛盾。この矛盾を埋めようとする社長の欲求が、今回いろいろ語ってきた「衝動」にほかならない。<br />
「女性の自立支援」を自社の「理念」としながらも、他方では子供や介護の必要な親を抱えて日々の生活費を稼ぐことで精いっぱいという女性たち——もっとも支援が必要な人たち——に、自社が自立の機会を与えられていないという「現実」がある。この「理念」と「現実」との矛盾が、松波氏をして「新たな独立支援プログラム」を起ち上げたいという「衝動」を生んだわけだ。<br />
<br />
<b>大崎：</b>第3章「社長の思考」に付された副題は「賢い経営者は弁証法的に考える」ですが、お話を伺っていて「賢い経営者は弁証法的に行動する」としてもいいのではないかと思いました。先生には今後もあらゆる機会を通して、弁証法的思考の有効性を経営者諸氏に語っていっていただきたいと強く思います。私も大変勉強になりました。あらためて感謝を申し上げて、このシリーズの終了とします。どうもありがとうございました。</p>








































				
				
			]]></description>
			<category>対談</category>
			<guid isPermaLink="true">https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6103.html</guid>
			<pubDate>Wed, 20 Aug 2025 12:00:59 +0900</pubDate>
		</item>
		<item>
			<dc:creator>山口恵里</dc:creator>
			<title>対談　2025年7月号</title>
			<link>https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6053.html</link>
			<description><![CDATA[
				
				



<!-- テキスト -->

<h2 >「社長の教科書(第3章 社長の思考)<br />
～賢い経営者は弁証法的に考える(その第4節[2])～」</h2>









































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<p>立教大学名誉教授　スモールサン主宰　山口義行　<br />
聞き手　大崎まこと(ライター）</p>








































<hr class="clearHidden">





<!-- 画像 -->
<div class="column-image-right">
		<img class="columnImage" src="https://www.smallsun.jp/archives/002/202503/3d8114770b6e6e95da05284ff0ea5c72d3b1366d901e3f91bbae9902935601e3.png" alt="" width="340" height="258">
</div>


































<!-- テキスト -->

<p>　社長に就任してまだ日が浅い経営者。今後社長に就任する予定の次世代経営者。社長の右腕として経営の一旦を担う幹部社員。社長としての経験は豊富だが、あらためて社長のあり方について考え方を整理したいと思っている熟練経営者。そんな人たちのために、スモールサンに関わる専門家や経営者の知恵を結集したスモールサン版『社長の教科書』を作りたい。——そんな私の思いに賛同してくださった方々とともに、すでに数回にわたり教科書作りの準備を兼ねて対談形式で「社長学」を論じてきた。<br />
<br />
<br />
　第1章「社長の仕事～社長が絶対にやらなければならない“４つの仕事”～」では栗原正幸氏との対談を掲載した。——<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5282.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">スモールサンニュース2024年２</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5347.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">３</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5432.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">４</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5469.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">5月号</a><br />
　第2章「社長の心得～社長が知っておくべき“４つの心得”」では新田信行氏との対談を掲載した。——<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5492.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">スモールサンニュース2024年６</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5518.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">７</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5567.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">８</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5616.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">９月号</a>。<br />
　そして、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5756.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">昨年12月号</a>からは第3章「社長の思考～賢い経営者は弁証法的に考える～」として、私(山口)がライターの大崎まことさんを相手に「社長業を遂行するにあたって有意義な“弁証法的思考法”」について語っている。本稿はその第4節「弁証法で企業発展の全体像を捉える」の「その2　分裂と統合」である。</p>









































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<h2 >Ⅳ 「弁証法で企業発展の全体像を捉える(2)<br />
　　　～“分裂と統合”～」</h2>









































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<h3 >“分裂”なしに「変化」なし</h3>









































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<p><b>山口：</b>物事の「変化」を論理的に捉える——ここに弁証法の特徴があることはこれまでも繰り返し述べてきた。今回は「変化」を「“分裂と統合”という視点で捉える」弁証法独特の思考法について話したいと思う。<br />
<br />
<b>大崎：</b>よろしくお願いします。<br />
<br />
<b>山口：</b>そもそも物事が変化する場合には必ず「分裂」という過程が含まれている、言い換えると「分裂」という過程を経ないでは物事は変化できないというのが弁証法的な「変化」の捉え方だ。<br />
<br />
<b>大崎：</b>どういうことですか。<br />
<br />
<b>山口：</b>たとえば、以前「ストレスは成長の証だ」という話をしたよね。 <br />
<br />
<b>大崎：</b>はい、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5789.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">第2節「矛盾と変化～成長する企業を目指して～」(スモールサンニュース2025年1月号)</a>のところだったと思います。<br />
<br />
<b>山口：</b>成長というのは“かつての自分”と“新しい自分”とが戦って、“新しい自分”が勝っていくプロセス。だから、その過程でストレスが発生するのは当り前で、それは「成長の証」として前向きに捉えるべきだと言ったんだよね。この「 “かつての自分”と“新しい自分”とが戦っている」状態、これが「分裂」だ。<br />
<br />
<b>大崎：</b> 1人の人間の中で「新旧2人の人間が戦っている」わけですから、たしかに分裂状態ですね。<br />
<br />
<b>山口：</b>子供が大人になる過程も同じ。子供が大人へと成長していく過程では、「子供」の中で「大人」の要素がだんだんと大きくなっていって、「子供としての自分」と「大人としての自分」が戦うようになる。これも第2節で述べたよね。<br />
<br />
<b>大崎：</b>はい、だから子供の発言も矛盾するようになると言われました。たとえば「ちゃんと親らしく面倒みろよ」と言ったかと思うと、「いつまでも子ども扱いするなよ」と文句を言う。前者は「子供」としての発言、後者は「大人」としての発言。2つの発言は明らかに矛盾しているけど、成長というのはそもそもそういう「矛盾」を抱え込んでいることだから、これは当然のことなんだと説明されました。<br />
<br />
<b>山口：</b>1人の人間の中で「子供としての自分」と「大人としての自分」が戦っているんだから、これも「分裂」だよね。そういう「分裂」を経て子供は大人に転化していく。<br />
しつこいようだけど、これは企業が変化・発展していく場合でもいえること。<br />
「既存の企業」が「新しい企業」に生まれ変わっていく過程では、「既存の企業」の中で「新しい企業」の要素がだんだんと大きくなっていって、１つの企業の中で「新旧2つの企業」が衝突する局面がある。そういう「分裂」を経てはじめて、「既存の企業」は「新しい企業」に生まれ変わる。<br />
<br />
<b>大崎：</b>まさに「分裂」なくしては変化も発展もないということですね。以上の説明で、「分裂」については理解できたように思います。では、“分裂と統合”の「統合」というのはどういう意味なんでしょうか。</p>









































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<h3 > “分裂”から“統合”へ</h3>









































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<p><b>山口：</b>「子供」は先ほど話した「分裂」の時期を経て、最終的には——「大人としての自分」が「子供としての自分」を打ち負かして——「大人」になる。でも、大人になったからと言って、子供の頃の学びや体験が無に帰してしまうわけじゃないよね。「子供」の時の学びや体験は、「大人」の中でちゃんと生きている。<br />
<br />
<b>大崎：</b>もちろんです。<br />
山口：そういう意味では、「大人」の中にも「子供」が存在しているといえるけど、それは子供の頃のように両者がお互いを否定し合うような「分裂」的な状態ではない。「大人」は「子供」——正確には、子供だった頃の「自分」——を、「今の自分を形成する一部」として肯定的に自分の中に取り込んでいる。この状態が「統合」だ。<br />
<br />
<b>大崎：</b>２つの要素が相互に否定しあうような関係——「分裂」——ではなくて、それらが相互に必要なものとして肯定的につながり合う関係、それが「統合」だと。<br />
<br />
<b>山口：</b>もともと1つであったものが、その中に新しいものが育って一時は「分裂」状態に陥る。でも、やがてはその「分裂」は克服され、新たな「統合」に達する。弁証法では、物事の変化をこのように捉えるんだ。<br />
<br />
<b>大崎：</b>ということは、企業も「分裂」と「統合」の過程を経て発展していくということになりますね。<br />
<br />
<b>山口：</b>そのとおり。今回の対談で一番伝えたいことはまさにそれだ。 <br />
スモールサンを起ち上げて17年になるけど、その間僕は会員諸氏にいろんな提案をしてきた。その中に「５％の新規性」というのがある。「売上ないしは利益の5％程度でいいから、それを新規ビジネスの開拓のために投資しましょう」という提案だ。ちなみに、その際の投資先は現在のビジネスのすぐ近くにあるマーケットを対象にした分野、ただし扱う商品やビジネスのやり方が既存のビジネスとは違う——これを「隣接異業種」という造語で表現して——そういう分野に新展開するのがいいのではないかとも言ってきた。<br />
<br />
<b>大崎：</b>「５％の新規性」と「隣接異業種」、この2つのキーワードは私もスモールサン会員の方々からよく聞かされます。<br />
<br />
<b>山口：</b>この提案を積極的に受け止めて実践した企業の中には、飛躍的な成長を遂げた企業も少なくない。たとえば、スモールサンニュースにもたびたび登壇してもらっている近藤正人氏率いる(株)アートフレンドなどはその典型だ。僕が近藤氏と出会った頃は、同社はトラックのカスタマイズ部品を手掛ける売上1億円強の中小製造業だった。でも、「５％の新規性」、「隣接異業種」を手掛かりに中古トラックの販売に進出し、その後もこの2つのキーワードを実践していって今や売上100億円を射程に収めるグループ企業になっている。<br />
<br />
<b>大崎：</b>すごいですね。<br />
<br />
<b>山口：</b>ここで言いたいのは、企業が新分野、新規ビジネスへと展開していけば、多かれ少なかれ既存分野との間で確執が起きるということ。「５%」にとどまっているうちはそれ程でなくても、その分野が成長するにつれて、たとえば人材の配置とか利益の配分などの点で確執は大きくなる。「隣接」とはいえ「異業種」であれば、ビジネスのやり方も従業員に求められる能力も違うだろうからなお更だね。でも、経営者は冷静にこれを成長の第一段階である「分裂」の局面と受け止めて、第二段階である「統合」へとどう移行していくか、そこに知恵を絞るというのでなければならない。<br />
<br />
<b>大崎：</b>「分裂」を避けていては成長がないし、それを克服して「統合」へと達しないと企業がバラバラになっちゃう。「分裂」と「統合」の道をうまく歩んでいく必要があるわけですが、そのためにはどういうことが大切なのでしょうか。<br />
<br />
<b>山口：</b>僕は少なくとも２つのことが重要だと思っている。１つは「統合」の“要”となる「理念」の確立。もう1つは「統合」を支える仕組みの構築だ。</p>









































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<h3 > 「統合」の“要”としての「理念」 </h3>









































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<p><b>山口：</b>君は、株式会社タニタは知ってる?<br />
<br />
<b>大崎：</b>もちろんです。「体脂肪計」を開発して有名になった会社ですよね。<br />
<br />
<b>山口：</b>タニタは、もともとは体重計やライターなどを作っていた金属加工の町工場だ。この中小製造業が、前会長である谷田大輔氏が父親から社長業を引き継いでから大きく変貌を遂げた。きっかけは君も知っている「体脂肪計」の開発だ。やがてそれが同社の主力商品になるとともに様々な新製品の開発を進めて、今や押しも押されもしない一大「健康計測器メーカー」になっている。<br />
まさに「既存の企業」の中で「新しい企業」の要素が徐々に大きくなっていって、結果的に会社がまるごと変わってしまったケースだ。<br />
<br />
<b>大崎：</b>その発展過程においては、「分裂」的な状況に陥る局面もあったんでしょうね。<br />
<br />
<b>山口：</b>そのあたりについては谷田氏から詳しい話は聞いていないけど、当然あったと思うよ。<br />
谷田氏によれば体脂肪計のヒントを得てから製品が出来上がるまでに5年かかり、それを家庭用に仕上げるのにさらに2年、そして一般消費者が受け入れられる値段にまでコストダウンするのにもう2年かかったそうだ。つまり、「体脂肪計」が商品としてモノになるのに10年近くかかっている。その間は、この分野への投資は「一方的な支出」となって既存分野の重荷になっていたわけだから、当然不安や不満が社内にくすぶっていたと思う。さらにビジネスとして動き出したら動き出したで、相当数の人材をその新分野に当てなければならなくなる。そこでも多かれ少なかれ既存分野の担当者との間で確執も起きただろうと推測できる。<br />
それでも「分裂」状態を克服し、全社がまとまって発展を遂げていけたのには、谷田氏が打ち立てた「理念」(事業コンセプト)の存在が大きい。しかも、その「理念」が、既存のビジネスの意味を徹底的に掘り下げることで獲得されたものだという点が重要なんだ。<br />
<br />
<b>大崎：</b>その辺り、もう少し詳しくお話しいただけますか。</p>









































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<h3 >“理念との遭遇”</h3>









































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<p><b>山口：</b>谷田氏には<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-121.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">スモールサンニュース2012年6月号</a>の対談でご登壇いただいているんだけど、同氏はその中でこんなことを語っている――</p>









































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<div class="entry-container"><blockquote>うちはもともと体重計に関しては非常に優れた技術を持っていました。ただ、体重計を生産しているだけでは、ジリ貧が避けられない。そこで、技術者に「体重計は今後どうなっていくと思う？」と問いかけたのですが、答えが返ってこない。もちろん、私も一生懸命考えました。<br />
その時、「そもそも人はなぜ体重計に乗るのか」と問うてみたんです。「健康が気になるから体重計に乗る」。だったら、「体重計は“体重をはかる”機械というよりも、 “健康をはかる”機械であるべきだ」。ここから、「健康をはかる」という自社の事業コンセプトが生まれたんです…<br />
——スモールサンニュース2012年6月号</blockquote></div>









































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<p><b>大崎：</b>既存の体重計を「体重をはかる」道具ではなく、「健康をはかる」道具として捉え直す。まさに事業コンセプトの転換ですね。<br />
<br />
<b>山口：</b>体重計を「健康をはかる」道具と見做すためには、まずは体重というものを「健康のバロメーター」としてきちんと認識することから始める必要がある。そこで、谷田氏は「ベストウェイトセンター」という名の研究所を設立して、医師、栄養士、インストラクターなどの専門家とともに「体重と健康の関係」を研究することにした。ところが、その研究所で、谷田氏は専門家から「健康か不健康かの判断は、体重をはかっただけではわからない」のだと聞かされる——</p>









































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<div class="entry-container"><blockquote>「身長や筋肉量は個人差がありますから、体重が重ければ肥満だ、不健　　　康だとは一概に言えない」ということです。「じゃあ、どうすれば健康をはかれるんですか」と聞くと、専門家の皆さんから、「体重と脂肪との関係が重要」なんだという答えが返ってきました。そこで、先生方の病院ではどのように脂肪を測っておられるのか、それを見せてくださいということになりまして、実際に見学に行きました。そこで知った測定法を応用して、体重計にその機能を付け加えることはできないか。そう考えて、早速その研究を技術者に依頼しました。<br />
——同上</blockquote></div>









































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<p><b>大崎：</b>そういう経緯を経て「体脂肪計」が誕生したんですね。<br />
<br />
<b>山口：</b>「体重をはかる」から「健康をはかる」へという事業コンセプトの転換がすべての出発点なんだけど、その経緯からも明らかなように、社長がどこかから「新しいコンセプト」を持ち込んできて事業コンセプトの転換がなされたわけではない。ここが重要な点だ。<br />
谷田氏が「体重計とは何か」という問いを深掘りして、「体重計測」という機能の奥にある、「より普遍的な本質」つまり「健康計測」という「理念」にたどり着いた。僕はこういうのを“理念との遭遇”と呼んでいるんだけど、この「理念との遭遇」の帰結として事業コンセプトの転換が果たされた。<br />
だから、「体脂肪計」はたしかに新商品ではあるんだけど、それは旧来の製品と横並び的に追加される性質のものではなく、旧来の体重計をその理念に基づいて“進化”させたものだということになる。ここに既存のビジネスと新規のビジネスをつなぐ統一性が存在する。<br />
<br />
<b>大崎：</b>なるほど。</p>









































<!-- テキスト -->

<h3 >新旧をつなぐ“統一性” </h3>









































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<p><b>山口：</b>「体脂肪計」の開発やそれをビジネスの俎上に載せる試みは、従業員からすれば「新しい異質な試み」ではなく、自分たちが取り組んできた既存のビジネスを「より進化させていく試み」にほかならない。だから、既存ビシネスに愛着やエネルギーを注いできた人たちも、「体脂肪計」という「新しい製品」を世に送り出すことに共感し、情熱を注ぐことができた。<br />
<br />
<b>大崎：</b>だから全社的な一体感を維持しながら、会社が大きく変化を遂げて行くことができたわけですね。<br />
<br />
<b>山口：</b>既存ビシネスの意味を深掘りすることで獲得された「理念」によって、既存のビジネスと新しいビジネスが一貫性をもって、統一的につながっている。そのおかけで、「体脂肪計」という新しいビジネスの試みが、会社の不可欠な一部として、社員の皆さんによって「肯定的」に受け入れられることができたわけだ。<br />
<br />
<b>大崎：</b>「理念」の確立が「統合」の“要”だというのはそういう意味なんですね。<br />
<br />
<b>山口：</b>タニタは「体脂肪計」で成功した後も、次々に新しい「健康計測機器」を生み出しているよね。<br />
<br />
<b>大崎：</b>そうですね。タニタの製品の中には、「ベッドに敷いてその上で寝ると、どれくらい深い睡眠ができたかがわかる計測器」もありました。<br />
<br />
<b>山口：</b>僕もそれを使ったことがあって、いかに自分が浅い眠りしかできていないかを知らされて愕然としたことがあった。これなどはもはや「体重計」とは完全に切り離されたものだよね。でも、「健康をはかる」という「理念」の下では、両者はちゃんとつながっている。「理念」が新旧をつなぐ“統一性”として、「統合」の要になる役割を果しているわけだ。<br />
<br />
<b>大崎：</b>なるほど。<br />
<br />
<b>山口：</b>先ほど、子供が大人になると、「大人としての自分」が「子供としての自分」を、「自分自身を形成する不可欠な一部」として取り込むようになる、これが「統合」だと言ったんだけど、そういうことが可能なのはそもそも「子供としての自分」も「大人としての自分」もどちらも「自分」だという点で、一貫性、統一性があるからだよね。会社の場合には、その「一貫性、統一性」が「理念」にほかならない。ヘーゲルは「分裂」から「統合」への過程を「理念への回帰」という意味を含めて説明していることが多いんだけど、タニタの歩みを見ていると、そういうヘーゲルの考え方に説得力を感じるね。</p>









































<!-- テキスト -->

<h3 >「統合」を促す“仕組み”をつくる</h3>









































<!-- テキスト -->

<p><b>大崎：</b>先生は先ほど、企業が「分裂」を乗り越えて「統合」へと歩んでいくためには2つのことが重要だと言われました。１つは「統合」の“要”となる「理念」の確立。これについてはご解説を頂いたんですが、もう1つの「統合」を支える仕組みの構築、このことについてまだお話しいただけていません。最後にこの点について、お話しくださいますか。<br />
<br />
<b>山口：</b>その点についてもタニタを事例にして解説したいと思うんだけど、残念ながらこの「仕組みづくり」については谷田氏に正面切って質問したことがないんだ。ただ『対談』ではこの問題にも関わる極めて興味深いお話を聞けたので、まずはそれを紹介したいと思う。少々長くなるけど、僕の質問の部分も含めて引用するね。</p>









































<!-- テキスト -->

<div class="entry-container"><blockquote><b>山口</b>　谷田さんは常に市場創造に挑戦してこられたわけですが、会社が新しいことに挑戦しようとしても、その担い手となる人がいない。あるいは、新分野に人を充てれば、既存の分野が手薄になってガタガタしてしまう。そんなことを心配されている経営者も少なくないと思います。この点について、何かアドバイスはありませんか。<br />
<br />
<b>谷田</b>　例えば、100人の社員が所属している部署があったら、私はそこから「優秀な上位の１割」を引き抜いて新規の部署に配置します。<br />
<br />
<b>山口</b>　そんなことをしたら、新規分野は強くなれますが、既存分野の業績がダウンしてしまいませんか。<br />
<br />
<b>谷田</b>　ですから、その「上位の1割」の社員に、「自分たちが抜けた後も大丈夫なように、残される人たちをちゃんと責任を持って指導しておくように」と前もって指示しておきます。「もし、既存分野の業績がダウンしたら、それは新規分野に移ったあなたたちの責任ですよ」とクギを刺しておきます。<br />
<br />
<b>山口</b>　それでうまくいきますか。<br />
<br />
<b>谷田</b>　不思議なもので、残された人たちの中から「人が育つ」んです。新規分野に移動したら、もう元の部署で自分が動くわけにはいかないので、その人たちは「早目に、自分が蓄積したノウハウを後継者に伝えておこう」とします。それに、残された側は頼りにしていた人たちがごっそりいなくなるわけですから、「これからは自分たちがしっかりしなければならない」という自覚が出てくる。結果として、会社全体が強くなります。…ちょっと勇気のいることかもしれませんが、これをしないと技術やいろいろなノウハウが次世代に伝わっていかないし、新しいことにチャレンジする人材も育ちません。</blockquote></div>









































<!-- テキスト -->

<p><b>大崎：</b>新規分野への展開を前提に、その担当になりそうな社員が「自分たちが抜けた後」のことも考えて既存分野で人育てなどをしっかりやっておく——そういうことが常態化しているなんて、タニタはやっぱりすごい会社ですね。<br />
<br />
<b>山口：</b>文字に起こさなかったけど、実際の「対談」では谷田氏は新分野へ担当替えになった社員のボーナス査定についても話してくれた。谷田氏によれば、「かつて在籍していた部署がその社員が抜けた後にどうなったか」ということを、その社員のボーナス査定の評価対象に含めるということだった。<br />
<br />
<b>大崎：</b>「『もし、既存分野の業績がダウンしたら、それは新規分野に移ったあなたたちの責任ですよ』とクギを刺しておきます」と語っていらっしゃいましたが、ただ「クギを刺しておく」だけじゃなかったんですね。もしそうなったら、そのことが異動後のボーナス査定でマイナスの評価になる「仕組み」まで作ってある。<br />
<br />
<b>山口：</b>そうだね。わかりやすく単純化して言うと、新規分野に異動した人たちがその分野で成果を出しても、以前いた部署の業績がそれと同じくらいダウンしたら、その人たちのボーナスは上がらない。反対に、以前いた部署の業績が伸びてくれれば、移動後もそのことがボーナス査定でプラスに評価される。<br />
<br />
<b>大崎：</b>たしかにそういう仕組みになっていれば、異動の前から「しっかり部下を育てておかなきゃあ」という気持ちになりますね。<br />
<br />
<b>山口：</b>タニタは新製品の開発、新規分野への進出を積極果敢に展開している会社だけど、新しいところばかりに目が向かないように配慮して、常に既存・新規含めて会社が“全体として”伸びていけるような「仕組み」が作られているといっていい。<br />
<br />
<b>大崎：</b>理念としての「統合」だけじゃなく、その「統合」を支える仕組みが構築されている、この事例はたしかにそう読み解くことができますね。<br />
<br />
<b>山口：</b>実際には、「統合」を支える仕組みは各社各様といっていいほど多様だ。先ほど少し触れた近藤正人氏のアートフレンド・グループなどもこの点に関係するいろいろな仕組みが構築されている。これについては<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5155.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">スモールサンニュース2023年11月号</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5186.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">12月号</a>の「対談」で近藤氏が詳しく語っているので、読者諸氏はぜひそれも参考にしてもらいたい。<br />
<br />
<b>大崎：</b>「分裂」と「統合」という視点から企業の発展を見る——この弁証法的な思考法は自社を大きく成長させようと考えている社長さんには欠かせないものですね。今回も興味深いお話、ありがとうございました。</p>








































				
				
			]]></description>
			<category>対談</category>
			<guid isPermaLink="true">https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6053.html</guid>
			<pubDate>Tue, 22 Jul 2025 12:00:59 +0900</pubDate>
		</item>
		<item>
			<dc:creator>山口恵里</dc:creator>
			<title>対談　2025年6月号</title>
			<link>https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6037.html</link>
			<description><![CDATA[
				
				



<!-- テキスト -->

<h2 >「社長の教科書(第3章 社長の思考)<br />
～賢い経営者は弁証法的に考える(その第4節[1])～」</h2>









































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<p>立教大学名誉教授　スモールサン主宰　山口義行　<br />
聞き手　大崎まこと(ライター）</p>








































<hr class="clearHidden">





<!-- 画像 -->
<div class="column-image-right">
		<img class="columnImage" src="https://www.smallsun.jp/archives/002/202503/f9aadfaf2c7c5aeabc363fbeef1541868778a737a546724a3d3c51d49b9a61d9.png" alt="" width="340" height="258">
</div>


































<!-- テキスト -->

<p>　社長に就任してまだ日が浅い経営者。今後社長に就任する予定の次世代経営者。社長の右腕として経営の一旦を担う幹部社員。社長としての経験は豊富だが、あらためて社長のあり方について考え方を整理したいと思っている熟練経営者。そんな人たちのために、スモールサンに関わる専門家や経営者の知恵を結集したスモールサン版『社長の教科書』を作りたい。――そんな私の思いに賛同してくださった方々とともに、すでに数回にわたり教科書作りの準備を兼ねて対談形式で「社長学」を論じてきた。<br />
<br />
<br />
　第1章「社長の仕事～社長が絶対にやらなければならない“４つの仕事”～」では栗原正幸氏との対談を掲載した。———<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5282.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">スモールサンニュース2024年２</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5347.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">３</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5432.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">４</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5469.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">5月号</a><br />
　第2章「社長の心得～社長が知っておくべき“４つの心得”」では新田信行氏との対談を掲載した。――<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5492.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">スモールサンニュース2024年６</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5518.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">７</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5567.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">８</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5616.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">９月号</a>。<br />
　そして、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5756.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">昨年12月号</a>からは第3章「社長の思考～賢い経営者は弁証法的に考える～」として、私(山口)がライターの大崎まことさんを相手に「社長業を遂行するにあたって有意義な“弁証法的思考法”」について語っている。本稿はその第4節「弁証法で企業発展の全体像を捉える」である。</p>









































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<h2 >Ⅳ 「弁証法で企業発展の全体像を捉える(1)<br />
　　　～“当為と制限”～」</h2>









































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<h3 >“当為”と“制限”</h3>









































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<p><b>大崎：</b>前回の対談の最後に「次回はいよいよ最終回です」とお伝えしたんですが、どうも今回1回だけで「第4節」のすべてをお話しいただくのが難しそうだとお聞きしました。<br />
<br />
<b>山口：</b>そうなんだ。読者の方々には約束を違えることになって申し訳ないんだけど、「これを話そう」「あれを話そう」と考えていると、どうも1回の対談では終りそうもないなと…。<br />
<br />
<b>大崎：</b>ということで、今回は「第4節　弁証法で企業発展の全体像を捉える」の「その1」という位置づけでお話しいただくことにします。それでは、始めましょう。<br />
<br />
<b>山口：</b>前回は「否定の否定」ということについて話したんだけど、その終りの所で企業の発展とはどういうことかという話をしたよね。<br />
<br />
<b>大崎：</b>はい、結論的なところだけを言うと、「企業の発展というのは、経営理念のもつ具体的な内容がより豊かになっていくこと」であり、それは「否定の否定」という過程を通して「らせん階段をのぼるように」進行していくんだということでした。<br />
<br />
<b>山口：</b>以下では、その「企業の発展」を——その全体像を捉えるべく——さらに多様な視点から見ていこうと思う。その1つ目の視点は「当為(とうい)と制限」という考え方。<br />
<br />
<b>大崎：</b>制限というのはわかりますが、当為というのは聞き慣れない言葉です。<br />
<br />
<b>山口：</b>当為というのは、ドイツ語ではsollen[ゾーレン]というんだけど、「あるべき」とか「なるべき」、あるいは「なることになっている」といった意味。第1節のところで、「子供」と「大人」がどういう関係にあるのかって話をしたことがあったけど、覚えている?<br />
<br />
<b>大崎：</b>はい。子供はまだ「大人ではない」ことを意味するし、大人はもう「子供ではない」ことを意味するのだから、両者は相互に「排除しあう関係」にある。と同時に、子供は大人というものがあってはじめて成立する概念、大人も同様。だから、両者は「相互に依存する関係」にもあると。<br />
<br />
<b>山口：</b>そのとおりだね。ところで、その子供についてだけど、子供はたしかに君が今指摘したように「大人ではない」ことを意味するんだけど、同時に「大人になるべきもの」「大人になることになっているもの」という意味も含んでいるよね。<br />
<b><br />
大崎：</b>そうですね。だって子供はやがては大人になるわけですから。<br />
<br />
<b>山口：</b>この「大人になるべきもの」、「大人になることになっているもの」という場合の「なるべき」とか「なることになっている」というのが“当為”だ。だから、子供はまだ「大人ではない」んだけど、「当為」としては「大人」だということになる。<br />
<br />
<b>大崎：</b>たとえば蝶々の幼虫はどうみても蝶々じゃないけど、それは蝶々になるべく変化していくものなんだから、「当為」としては蝶々だというわけですね。<br />
<br />
<b>山口：</b>そのとおり。<br />
<br />
<b>大崎：</b>「当為」という言葉の意味や使い方は分かりました。もう一つの「制限」というのは、それとどう関連するんですか?<br />
<br />
<b>山口：</b>子供を「当為」として、つまり「大人になるべきもの」「大人になることになっているもの」として見たら、子供特有の未熟さとか、可愛らしさとかは「いずれは無くなるべきもの」、「乗り越えていかなければならないもの」だということになるよね。<br />
<br />
<b>大崎：</b>たしかにそうなりますね。<br />
<br />
<b>山口：</b>この「無くなるべきもの」、「乗り越えなければならないもの」というのが“制限”だ。<br />
つまり、<b><u>あるモノを「当為」として見たら、そのあるモノの「現在」は乗り越えるべき「制限」だということになる。</u></b><br />
<br />
<b>大崎：</b>「当為」と「制限」は “ワンセット”になっているわけですね。<br />
<br />
<b>山口：</b>あるモノの「当為」がそのあるモノの現状を「制限」とし、その「制限」を越えることで「当為」が実現される。物事はこういう過程を繰り返しながら変化を遂げて行くという——これも弁証法的な捉え方の一つだ。<br />
<br />
<b>大崎：</b>なるほど。ここまではわかりましたが、これが会社経営とどんな関係があるんですか。</p>









































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<h3 >「当為」を示し、「制限」を見抜くのが社長の仕事!</h3>









































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<p><b>山口：</b>「大いに関係がある」というよりも、これこそが会社経営そのものだと言ってもいい。<br />
<br />
<b>大崎：</b>どういうことですか。<br />
<br />
<b>山口：</b>「社長の教科書」と題するこの連続対談の第1章は「社長の仕事」。「社長が絶対にやらなければならない“４つの仕事”」について栗原正幸氏と対談している。その中で栗原氏は社長の仕事のうち「一番重要」なのは、「自分の会社の未来を創造し、それを従業員の皆さんに理解してもらうこと」なんだと強調している。スモールサンニュースから関連個所を引用すると——</p>









































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<div class="entry-container"><blockquote><b>栗原：</b>まず１つ目ですけども、自分の会社の未来を創造し、それを従業員の皆さんに理解していただいて、具体的な計画に落とし込み、それに向かって会社を成長させていくことです。これが経営者の仕事の中で一番重要なところ、まさに“一丁目一番地”だと思っています。…<br />
3年、5年ぐらいの先まで見て「こうなりたい」「こうでありたい」という社長の気持ちを従業員のみなさんにきちんと知っておいてもらう…<br />
実際に経営にあたっていると、日々いろんな問題が次々に起きて来ますから、どうしてもその対応に追われてしまう。そのため3年後、5年後の未来を描くということができていないまま経営者をやっているケースが少なくないんです。<br />
——<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5282.html"target="_blank" rel="noopener noreferrer">スモールサンニュース2024年2月号</a>より。</blockquote></div>









































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<p>ここで栗原氏が言われている「社長が創造する会社の未来」、社長の気持ちの中にある「こうなりたい」「こうでありたい」という想い、これが弁証法でいう「当為」だ。先ほど話したように、子供は「当為」としては大人。だから大人になることを目指して成長していく。これと同じように、企業も社長が示した未来を「当為」として、それに向けて成長していくというのでなければならない。<br />
<br />
<b>大崎：</b>なるほど。<br />
<br />
<b>山口：</b>子供の「当為」が大人だということ——子供が大人を目指して変化していくものだということ——は、その体の中にある遺伝子に組み込まれている。だから、子供は誰に命令されなくとも大人になるべく成長していって、いずれは——少なくとも生物学的には——大人(成人)になる。ところが、企業にはそんな遺伝子はない。生まれながらにして定められた「未来」なんてものは企業にはない。それはあくまでも社長が自ら「創造」するもの。だから、「未来の創造」が社長の仕事の「一丁目一番地」になるというわけだ。でも、今回強調したいことはこの続き…。<br />
<br />
<b>大崎：</b>どういうことですか。<br />
<br />
<b>山口：</b>先ほど、あるモノを「当為」として見たら、そのあるモノの「現在」は乗り越えるべき「制限」になる、と言ったよね。<br />
<br />
<b>大崎：</b>はい、そう言われました。<br />
<br />
<b>山口：</b>この論理に従うなら、社長が自社の未来を創造し、「当為」を示すということは、とりもなおさず自社の何が「制限」なのか、何が乗り越えるべきものなのかを示すことにほかならない、ということになる。<br />
<br />
<b>大崎：</b>たしかに。当為と制限は“ワンセット”ですものね。<br />
<br />
<b>山口：</b>ところが、これが意外に難しい。「こうありたい」「こうなりたい」という想いを抱くことはできても、それを達成する上で自社の何が「制限」なのか、これをきちんと見抜き、それを乗り越えるための施策を講じるのはけっして容易ではない。<br />
もちろん資金量とか従業員の数といった「量的」な制限はわかりやすい。でも「制限」はそれだけではないからね。<br />
<br />
<b>大崎：</b>「こうなりたい」けど、そのためにはこれだけの資金が必要だとか、従業員をあと何人くらい雇う必要があるとか、そういった「量的」な制約はたしかに目に見えます。でも、こういうもの以外にも「制限」があるんだと。<br />
<br />
<b>山口：</b>そうなんだ。その中でもとくに重要なのが「企業風土」。従業員が「挑戦的」でなくて、そもそも「変えたい」「変わりたい」というエネルギーが著しく欠けた企業風土だったら、社長が「こんな会社にしよう」といくら思っても、その実現は無理だよね。<br />
「このままでいい」のなら、それでも構わないのかもしれない。でも、「こうありたい」という視点に立てば——つまり、その会社を「当為」としてみるならば——、この企業風土はなんとしても「変えなければならないもの」、どうしても乗り越えなければならない「制限」になる。今回「当為と制限」をとりあげたのは、この点を強調したかったからだ。</p>









































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<h3 > “制限” 突破のための“3つの実践” </h3>









































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<p><b>大崎：</b>でも、非挑戦的で変革心の乏しい企業風土なんて、一体どうやったら変えられるんですか。そもそも「変わろう」とか「変えよう」という雰囲気が乏しいわけですから、それを変えるのは「至難の業」だと思いますが。<br />
<br />
<b>山口：</b>そうだよね。そこで以下では、ある会社の事例を取り上げてみようと思う。それは富山県に本社を置く (株)アイペックの経営実践だ。同社の東出悦子社長とは<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-4018.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">2021年9月号のスモールサンニュース</a>で対談している。<br />
同社は非破壊検査の会社で、橋や建物の検査だけでなく土木検査なども含めて50種類以上の検査方法で「見えないものを見る」仕事をしている。<br />
<br />
<b>大崎：</b>レントゲンなどを使って体の健康診断をするようなものですね。<br />
<br />
<b>山口：</b>そうだね。ところで、「検査」というのはある程度決まった「周期」があるからそんなに頻繁にやるものではない。だから、こういう会社の経営は安定しているかもしれないけど、売上げが伸び続けるのは基本的に難しいんじゃないか。そういう感じがするよね。<br />
<br />
<b>大崎：</b>たしかにそういうイメージはありますね。<br />
<br />
<b>山口：</b>ところが、アイペックは現社長が就任して以降、売上げが毎年伸び続けているんだ。そんなことがなぜ可能なのか、その答えを探ろうというのが対談を企画した理由だった。この疑問に対して、東出社長はこう答えている——</p>









































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<div class="entry-container"><blockquote><b>東出</b>　検査をするだけでなく、何か問題が見つかった場合に様々な関連の検査を提案したり、補修工事の設計などもお手伝いするようにしてきたんです。既存分野はたしかにあまり伸びていないのですが、そういう新しい分野への挑戦が効を奏して売り上げ増が実現できました。…それが可能になったのは、社員の皆さん一人ひとりがそういうことの重要性をしっかり認識してくれたからだと思っています。実際、社員の皆さんが1人で必要な資格を10個以上、多い人ですと25個くらい取得するなど、非常に積極的に努力をしてくれました。<br />
——<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-4018.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">スモールサンニュース2021年9月号</a>より。</blockquote></div>









































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<p><b>大崎：</b>「新しい分野への挑戦」が継続的な売上げ増を可能にしたと。<br />
<br />
<b>山口：</b>そうなんだ。そして、その「新しい分野への挑戦」を可能にしたものが、従業員一人ひとりが自ら積極的に仕事を提案したり、それに必要な資格の取得に挑んだからだと。要するに、そういう「挑戦的な企業風土」があったからこそ、継続的な売上げ増が可能だったんだと東出社長は指摘している。ここで注目したいのは、そういう「挑戦的な企業風土」を構築するために、東出社長がどんなことを実践してきたのかという点だ。<br />
<br />
<b>大崎：</b>そうですね。ぜひそこが聞きたいです。<br />
<br />
<b>山口：</b>東出社長のお話を僕なりに整理すると、従業員に向けた「3つの経営実践」が大きな意味を持ったように思う。<br />
１つ目は、自らファシリテーションについて勉強して「会議のあり方を変えた」こと。<br />
2つ目は、「従業員の目を社会に向けさせる」べく、勉強会を積み重ねたこと。<br />
そして3つ目は、本社移転を機に「変革の合理性を体感させた」こと。</p>









































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<h3 >会議を変えた!</h3>









































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<p><b>大崎：</b>1つ目の「会議を変えた」ってどういうことですか。<br />
<br />
<b>山口：</b>東出社長ご自身の言葉で語っていただいた方がわかりやすいので、スモールサンニュースから当該箇所を引用するね。</p>









































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<div class="entry-container"><blockquote><b>東出</b>　私が入社したのは11年前のことでした。当時は父が会長で、私は経営企画室長という肩書きでした。そのとき、幹部を集めて会議が行われたのでそこに出席したんですが、その体験がものすごく衝撃的だったんです。…<br />
会議の最中父がずっとしゃべっていて、出席者はほとんどの時間じっとだまって聞いている。しかもそれで何が決まったのかというと、それもはっきりしない。私はアイペックに入社するまでの10年間ほどアメリカに居て会計事務所で働いていたんですが、こんな会議風景はアメリカの会社ではおよそ見たことがありませんでした。本当にびっくりしました。…<br />
みんな黙っていても、実は一人ひとりいろいろな「もの」を持っている。そういう一人ひとりの能力や想いを最大限に引き出して、それを生かしていけば会社はもっと伸びるはずだと。「トップダウン式の経営」が、そういう潜在的な「力」を埋もれさせてしまっている。そう思ったんです。私が衝撃を受けた会議風景は、まさにその象徴でした。ですから、まずは会議から変えていこうと。<br />
——同上。</blockquote></div>









































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<p><b>大崎：</b>なるほど、よくわかりました。それで、東出社長は「会議を変える」ためにどんなことをされたんですか。<br />
<br />
<b>山口：</b>「ファシリテーション協会」というのが富山にあるんだけど、そこの毎月の練習会に通ったり、そこで紹介された本を読むなどしてファシリテーションについて一から勉強したんだ。そうやって学んだことを自社の会議で実行に移してみる。これをなんと3年間も続けた。<br />
ファシリテーションの基本は、一人ひとりの声にきちんと耳を傾けること。3年後には、その甲斐あって「何を言っても大丈夫」だという「安心感」が従業員の間に醸成された。そして、その「安心感」が従業員の積極性、主体性となって「挑戦的な企業風土」に結実したんだと、東出社長は語っている——</p>









































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<div class="entry-container"><blockquote><b>東出</b>　3年かかりましたが、だんだんと声が上がるようになってみんなで議論ができるようになっていったんですが、そうなると、「この会社は何を言っても大丈夫なところだ」「多少変なことを言っても、叱られたり馬鹿にされたりしないんだ」という安心感が社内に生まれてきます。そういう雰囲気ができてくると、職場も明るくなっていって、それぞれが自分の頭で考え、自ら進んで行動できるようになっていきます。実際、「この人こんなことを考えていたんだ」とか、「気づかなかったけど、この人にはこんな能力もあったんだ」というように、一人ひとりの隠れていた才能に驚かされるということも多々ありました。…　<br />
私は何よりもまず「社員一人ひとりが安心感をもって活き活きと働ける職場」をつくる、それに全力で取り組んできました。先生が先ほど言って下さった「挑戦的な社風」が弊社にあるとすれば、それはその成果なんだと思います。<br />
——同上。</blockquote></div>









































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<p><b>大崎：</b>「会議を変える」というのは、農業でいえば「土壌改良」のようなものなんですね。土壌が良くなければ、植物が育ちにくく、実もならない。東出社長は「会議を変える」ことによって、まずは「土壌改良」に取り組んだ。ビジネス上の実りはまさにその成果なんだと。<br />
<br />
<b>山口：</b>まさにそうだね。それも、長年の「トップダウン式の経営」で定着してしまっていた「受け身的」な企業風土、それこそが自社の一番の「制限」なんだということに東出社長が気づいたからこそできたことだ。</p>









































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<h3 >目を社会に向けさせた!</h3>









































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<p><b>大崎：</b>2つ目の、「従業員の目を社会に向けさせる」というのはどういうことでしょうか。<br />
<br />
<b>山口：</b>東出社長はSDGsに関する全員参加型ワークショップを継続的に実施してきた。当初は従業員からかなり反発もあったみたいだけど、これも継続することで従業員の意識を変えることに繋がっていった。対談ではこんな風に語っている——</p>









































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<div class="entry-container"><blockquote><b>東出</b>　社員全員参加で、SDGsについてのワークショップ(体験型のグループ学習)を実施しました。最初は、皆さん嫌々の参加で、「なんでこんなことやらなきゃいけないのか」とか、「お金と時間の無駄だ」とか散々批判されました。でも、講師もやり方も良かったので、だんだん皆さん積極的に参加してくれるようになりました。…<br />
<br />
<b>山口</b>　社員の皆さんに変化はありましたか。<br />
<br />
<b>東出</b>　驚くほどの変化が起きてきています。最近は、小学校や中学校でもSDGsが授業に出てくるようになりましたから、「子どもと一緒に勉強しました」と嬉しそうに言ってこられたり、普通に社内の会話の中でも「ちょっとこれってSDGs的にはダメなんじゃない？」みたいな言葉が出てくるようになりました。…<br />
それから、会社に推薦図書ということで何冊か貸出用に本が置いてあるんですが、たとえば貧困、人口、教育、エネルギーなどについて正しく事実を知ろうという『FACTFULNESS』という本とか、野村総研が100年後をデータでシュミレーションした『未来年表』といった本が頻繁に貸出中になっているんです。<br />
<br />
<b>山口</b>　自分が今どんな時代を生きているのか、これからどんな時代がやって来るのか、そういうことに関心が向かうようになってきたということですよね。まさにSDGsが社員と社会をつないでくれたと言えそうですね。<br />
——同上。</blockquote></div>









































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<p><b>大崎：</b>自社あるいは自分たちの仕事、さらには自分自身の生き様が社会とどうつながっているのか、そこに目を向けることで仕事に対する姿勢も変わってくるということなんでしょうか。<br />
<br />
<b>山口：</b>そのとおり。「社会」や「時代」というものに目を向けることではじめて、従業員の仕事への積極性や挑戦的な姿勢が本物になる——東出社長はこう考えていたみたいだ。それは以下の発言にも現れている。</p>









































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<div class="entry-container"><blockquote><b>東出</b>　社員一人ひとりが、自分たちが今生きている社会がどんな問題を抱えているのかということに関心をもっている。そうした社会とのつながりの中から自分たちの仕事を改めて見直したり、新しいビジネスを提案したりできる、そんな会社にしていきたいと思っています。<br />
——同上。</blockquote></div>









































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<h3 >“変革の合理性”を体感させる</h3>









































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<p><b>大崎：</b>最後になりましたが、3つ目の「変革の合理性を体感させる」というのは、どういうことですか。<br />
<br />
<b>山口：</b>2022年に開催されたスモールサン日曜大学に、東出社長がパネラーとして登壇された。その際に話されていたことなんだけど(その内容は<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/ronkou/entry-4695.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">2023年1月号の論考「中小企業の未来を拓くキーワードその①」</a>で紹介した)、同社は2019年の社屋移転を機に「フリーアドレス」を導入し、それに伴って徹底的にペーパーレス化を進めた。これも当初は社内から強い反発を受けるんだけど、粘り強く説得を重ねてこれを断行したんだ。東出社長は当時の状況をこう語っている——</p>









































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<div class="entry-container"><blockquote><b>東出：</b>たしかにはじめは「絶対無理」と言われ続けました。抵抗は非常に強かったです。弊社の仕事は施設やビルの非破壊検査ですが、これは健康診断と似ていまして最終的に報告書というものをお客様に提出するんですね。キングファイルの分厚いのを3冊分くらい書いて提出する。まさに「紙の世界」なんです。ところが、フリーアドレスにするためにはペーパーレスにしなければいけない。データをほぼ全部サーバーに入れてどこからでもアクセスできるようにする必要があります。ですから、「紙の世界」にどっふり浸かってきた社員の皆さんが「フリーアドレスなんて絶対無理」という感覚を抱かれたのも当然だったと思います。役員からも反対されました。でも私はこれを断行しないと、これからの時代持続的に若い人たちを採用することもできませんし、仕事を効率化して時短を実施していくこともできない。フリーアドレス化は絶対に避けて通れない課題だと思っていました。</blockquote></div>









































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<p><b>大崎：</b>東出社長はどうやって、社内の強い抵抗を乗り越えられたんですか。<br />
<br />
<b>山口：</b>フリーアドレスを導入して成功している会社に従業員共々視察に行くことを繰り返したそうだ。その数なんと20社。そのおかげで従業員の皆さんも「うちの会社でもできそうだ」と思うようになり、さらには「今これをやらないと時期を逃すな」というふうに考えるようになったそうだ。そこに到達するまでに、2年間も費やしたんだって。<br />
<br />
<b>大崎：</b>「トップダウン式の経営」のマイナス面をよく知っている東出社長ならではの粘り強さですね。<br />
<br />
<b>山口：</b>結果は、従業員の皆さんも大満足。ペーパーレスによって無駄な手間が省け仕事が効率化したし、データベースの活用によって情報共有も進んだことで相互の協力関係もよりスムーズに取れるようになった。東出社長は「みんな気持ち良く仕事ができていますし、お客様満足も増えています」と、その効果を語っている。<br />
仕事の仕方を大きく変えなければならないために当初は強く抵抗した職人さんたちも、今や「変えてよかった」「変わってよかった」と感じている。<br />
<br />
<b>大崎：</b>「変革の合理性を体感する」というのは、まさにこのことですね。<br />
<br />
<b>山口：</b>「フリーアドレス化」は、それ自体としてはオフィス使用に関わる小さな改革かもしれない。しかし、その小さな改革を通して従業員が「変革の合理性を体感した」ことが、その後の同社の成長に大きな意義をもったことは間違いない。<br />
<br />
<b>大崎：</b>それにしても東出社長の経営実践、すごいですね。社長が粘り強く取り組めば、「企業風土」って変えられるんだということを教えてくれています。<br />
今回は「当為と制限」という弁証法の思考法を起点にして、(株)アイペックの貴重な経営実践へとお話が進みました。読者の皆様にも大変参考になるものだったと思います。次回もよろしくお願いいたします。</p>








































				
				
			]]></description>
			<category>対談</category>
			<guid isPermaLink="true">https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-6037.html</guid>
			<pubDate>Fri, 20 Jun 2025 12:00:59 +0900</pubDate>
		</item>
		<item>
			<dc:creator>山口恵里</dc:creator>
			<title>対談　2025年5月号</title>
			<link>https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5983.html</link>
			<description><![CDATA[
				
				



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<h2 >「社長の教科書(第3章 社長の思考)<br />
～賢い経営者は弁証法的に考える(その第3節[2])～」</h2>









































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<p>立教大学名誉教授　スモールサン主宰　山口義行　<br />
聞き手　大崎まこと(ライター）</p>








































<hr class="clearHidden">





<!-- 画像 -->
<div class="column-image-right">
		<img class="columnImage" src="https://www.smallsun.jp/archives/002/202503/402f4d9267657057a554a44b6df0235bdd9d3cc79860d9e8863811b871fe0bde.png" alt="" width="340" height="258">
</div>


































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<p>　社長に就任してまだ日が浅い経営者。今後社長に就任する予定の次世代経営者。社長の右腕として経営の一旦を担う幹部社員。社長としての経験は豊富だが、あらためて社長のあり方について考え方を整理したいと思っている熟練経営者。そんな人たちのために、スモールサンに関わる専門家や経営者の知恵を結集したスモールサン版『社長の教科書』を作りたい。――そんな私の思いに賛同してくださった方々とともに、すでに数回にわたり教科書作りの準備を兼ねて対談形式で「社長学」を論じてきた。<br />
<br />
<br />
　第1章「社長の仕事～社長が絶対にやらなければならない“４つの仕事”～」では栗原正幸氏との対談を掲載した。———<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5282.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">スモールサンニュース2024年２</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5347.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">３</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5432.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">４</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5469.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">5月号</a><br />
　第2章「社長の心得～社長が知っておくべき“４つの心得”」では新田信行氏との対談を掲載した。――<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5492.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">スモールサンニュース2024年６</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5518.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">７</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5567.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">８</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5616.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">９月号</a>。<br />
　そして、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5756.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">昨年12月号</a>からは第3章「社長の思考～賢い経営者は弁証法的に考える～」として、私(山口)がライターの大崎まことさんを相手に「社長業を遂行するにあたって有意義な“弁証法的思考法”」について語っている。本稿はその第3節「弁証法で変化の多様性を知る(2)～“否定の否定”～」である。</p>









































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<div class="entry-container"><table><tr><td>※2025年6月9日一部修正いたしました。SS事務局</td></tr></table></div>









































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<h2 >Ⅲ 「弁証法で変化の多様性を知る(2)～“否定の否定”～」</h2>









































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<h3 >「わかる」とは“ドッホ(doch)”だ!</h3>









































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<p><b>大崎：</b>連載「社長の教科書　第3章社長の思考」の第3節は「弁証法で変化の多様性を知る」がテーマです。3月号に掲載された(1)は「量質転化」を取り上げました。今回はその(2)「否定の否定」です。<br />
<br />
<b>山口：</b>「1回否定して、さらにもう1回否定する」というのが「否定の否定」。弁証法では、物事の変化のプロセスを「否定の否定」として捉える。といっても、これだけじゃあ「一体何言っているの?」って感じだろうね。<br />
<br />
<b>大崎：</b>はい、正直に言うと、そういう感じです。 <br />
<br />
<b> 山口：</b>僕が大学院に進学して早々こんなことがあった。ある日指導教授から「君はこれから研究者の道を歩むんだけど、そもそも『わかる』ってどういうことなのか、理解できているかな?」と聞かれたんだ。どう答えたらいいかわからなくて、僕がキョトンとしていると、「『わかる』というのはドッホなんだよ」と。<br />
<br />
<b>大崎：</b>ドッホ?<br />
<br />
<b>山口：</b>ドッホというのはドイツ語で、スペルはdoch。ドイツ語ではchを「ホ」と発音するからドッホとなる。その意味は、「やっぱり」ということ。教授が僕に言いたかったことは、このドッホ、つまり「やっぱり」にたどり着いてこそ、物事が「わかった」と言えるんだということなんだ。<br />
<br />
<b>大崎：</b>どういうことですか?<br />
<br />
<b>山口：</b>たとえば本を読むとき、「参考書を読みながらその内容を頭に叩き込んでいく受験生」のような読み方もあるけど、これは研究者には適さない。研究者であれば、著者の言っていることをまずは“否定”してかかる。「著者はAが正しいと書いているけど、違うんじゃないか。本当はBなんじゃないか」とかね。その上でいろいろ検討し、その結果「やっぱり著者が言うようにAが正しい」となったら、その時はじめて著者の主張を受け入れる。それが、“真理を探究する研究者”らしい本の読み方だと。<br />
<br />
<b>大崎：</b>「やっぱり」が出てきてはじめて「わかった」となるわけですね。<br />
<br />
<b>山口：</b>著者の主張Aをまずは “否定”してBじゃないかと考えてみる。でも、最終的にはそのBをもう1回“否定”して、「やっぱりAが正しい」という結論にたどり着く。これが、「1回否定して、さらにもう1回否定する」という「否定の否定」だ。</p>









































<!-- テキスト -->

<h3 >「否定の否定」で“らせん階段”をのぼる</h3>









































<!-- テキスト -->

<p><b>山口：</b>Aから出発して、一旦はそれを否定するんだけど、「やっぱりA」だとしてまたAに戻ってくる。ここで大切なのは「最初のA」と「最後のA」はけっして同じではないということなんだ。わかるかな。<br />
<br />
<b>大崎：</b>どういうことですか。<br />
<br />
<b>山口：</b>「最初のA」はあくまでも「著者の考え」だよね。<br />
<br />
<b>大崎：</b>はい。<br />
<br />
<b>山口：</b>でも、「最後のA」は著者の考えをいろいろ検討した結果獲得した「僕の考え」だ。<br />
<br />
<b>大崎：</b>たしかに。自分で考えた末に「やっぱりAが正しい」という結論にたどり着いたわけですものね。<br />
<br />
<b>山口：</b>この点で「最初のA」と「最後のA」は決定的に違う。さらに、その思考の過程の中で、「なぜAなのか」とか、「なぜBではいけないのか」とか、「Cの可能性はないのか」とかいろいろ考えたわけで、その意味でAというもののもつ内容も豊富になっている。理解が深まっていると言ってもいい。<br />
<br />
<b>大崎：</b>たしかに。<br />
<br />
<b>山口：</b>君は「らせん階段」というものを知っているよね。<br />
<br />
<b>大崎：</b>はい。ぐるぐる回りながら、上にのぼっていく階段ですよね。 <br />
<br />
<b>山口：</b>「否定の否定」というのは、まさにこの「らせん階段」をのぼっていくのと同じだ。「らせん階段」をのぼっている人を上から見ていると、ただぐるぐる回っているようにしか見えない。１周回ると、また同じ場所に戻る。でも、「らせん階段」を横から見ていると、けっして同じ場所に戻っているわけではないことがわかる。人は1周したことで、一段上に達している。<br />
<br />
<b>大崎：</b>「否定の否定」もこれと同じだと。<br />
<br />
<b>山口：</b>先ほどの例で言えば、Aから出発して――「否定」を2回繰り返して――「やっぱりA」だと元に戻る。でも、最後にたどり着いたAは最初のAと違って、ずっと内容が豊富になっている。一段上の高みに達しているわけだ。<br />
<br />
<b>大崎：</b>なるほど。<br />
<br />
<b>山口：</b>物事は、このように「否定の否定」を経て、「らせん階段」をのぼるようにして発展していく――こういう捉え方をするのが弁証法なんだ。社長がこういう思考法を身に着けることは、従業員と接する際にも、あるいは企業の未来を展望する上でも大変有効だ。以下ではその点について話そうと思う。<br />
<br />
<b>大崎：</b>ぜひ、お願いします。</p>









































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<h3 >“ネガティブ社員”は貴重!?</h3>









































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<p><b>山口：</b>時々、経営者からこんな相談が寄せられることがある。</p>









































<!-- テキスト -->

<div class="entry-container"><blockquote>弊社の社員の中にいつもネガティブなことを言う人がいて困っているんです。私が「こういうビジネスに挑戦しよう」と何かを新たに提案すると、必ずその社員があれこれ理屈を付けて反対する。この社員には辞めてもらいたいんだけど、部下からの人望もそれなりにあるから、そんなわけにもいかない。どうしたもんでしょうかねえ。</blockquote></div>









































<!-- テキスト -->

<p><b>大崎：</b>たしかにありそうですね。それで、先生はなんて答えるんですか。<br />
<br />
<b>山口：</b>「反対意見を言ってくれる社員さんは、むしろ貴重なんですよ」と言う。<br />
<br />
<b>大崎：</b>「どうしてですか?」と聞かれますよね。<br />
<br />
<b>山口：</b>そこで、僕はこう続ける———</p>









































<!-- テキスト -->

<div class="entry-container"><blockquote>そもそも社長が「こういうことをしよう」と言ったら、あまり考えもしないで「はい、わかりました」と答える社員は――社長から見たら「可愛い社員」かもしれませんが――、実は社長の言わんとしていることをちゃんと理解していないことが多いんです。なぜかというと、社員さんが本当に「腹落ち」するためには、社長の提案をまずは批判的に検討してみることが必要だからなんです。ネガティブ社員の存在はその点で大いに役立ちます。</blockquote></div>









































<!-- テキスト -->

<p><b>大崎：</b>なるほど。ここで、「わかる」とは“ドッホ(doch)”なんだという話が出でくるんですね。<br />
<br />
<b>山口：</b>ネガティブ社員が、「社長はそうおっしゃいますけど、それをやろうとすると随分コストがかかりますよ」とか、「今そういうビジネスに挑戦するにはリスクが大きすぎませんか」とか、いろいろ否定的意見を出してくれる。<br />
<br />
<b>大崎：</b>1回目の「否定」ですね。<br />
<br />
<b>山口：</b>社長は「待っていました」とばかりに、そういう否定的な意見を積極的に取り上げて議論の俎上に載せる。その上で、みんなで検討する。もちろん社長としては「コストはたしかに小さくないけど、なんとかなる」とか、「リスクをおかしても今こそやるべきだ。やらないことのリスクの方がはるかに大きい」といったことを説得的に話す必要がある。そして、そうした議論を経た後、社員さんたちが「いろいろ検討してみたけど、やっぱり社長の意見が正しい」と“ドッホ”にたどり着く。<br />
<br />
<b>大崎：</b>2回目の「否定」ですね。<br />
<br />
<b>山口：</b>社員さんたちにとって社長の提案が本当に「腑に落ちる」のはこの時なんですと。<br />
<br />
<b>大崎：</b>なるほど。<br />
<br />
<b>山口：</b>しかも、いろいろな否定的意見を取り上げて検討した結果、社長の提案自体もより内容豊かで説得力のあるものになっているはずです、と。<br />
<br />
<b>大崎：</b>「否定の否定」という「らせん階段」をぐるりと回って、一段高みに達したわけですね。こう言われて見ると、たしかにネガティブ社員の存在は貴重ですね。社長の考え方ひとつで、「煙たい存在」が「貴重な存在」に変わるなんて、これはもう「弁証法」マジックです。<br />
<br />
<b>山口：</b>日本の教育はどうしても受験勉強型が中心で、「批判的に物事を見る」という訓練をしていない。「さあ、これから皆さんで私の意見を批判してみてください」なんて、先生が生徒に話しかけるような授業、見たことにないでしょ。<br />
<br />
<b>大崎：</b>ないですね。<br />
<br />
<b>山口：</b>だから、日本の企業とくに中小企業では話が「社長から社員への一方通行」になりがちで、結果として「“ドッホ”無きまま、わかったこと」にして事が進んで行ってしまうことが多い。これでは、従業員が自ら工夫するという主体性も出てこない。「ウチの従業員には指示待ち人間が多い」といって社長が愚痴をこぼすことになるのも、多くはこれが原因だ。</p>









































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<h3 >「主体的」な従業員を育てるために</h3>









































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<p><b>山口：</b>ここで、「主体性」ということについてもう少し話しておきたいんだけど、いいかな。<br />
<br />
<b>大崎：</b>ぜひ、お願いします。<br />
<br />
<b>山口：</b>冒頭で、大学院に進学して早々教授から「『わかる』ってどういうことか」という質問を受けたという話をしたけど、その際もう一つ「山口君、『主体的』ってどういうことかわかるかな?」という質問もあった。僕が答えられずにいたら、教授が「『主体的』ということは、実は『批判的』というなんだ」と教えてくれた。<br />
<br />
<b>大崎：</b>「主体的」とは「批判的」であること!?<br />
<br />
<b>山口：</b>「主体的」というと良いイメージ、「批判的」というとネガティブで良くないイメージという“常識的”な感覚にどっぷり浸かっていた当時の僕には教授のこの説明がちょっと意外で、おかげで今でもこの時のことを鮮明に覚えている。<br />
教授が言わんとしたことは、先ほどの読書の例を考えてみれば明らかだ。著者の主張Aをまずは否定してかかって、あれこれ批判的に検討した結果として「やっぱりAが正しい」にたどり着く。その際「最初のA」は「著者の考え」だけど、「最後にたどり着いたA」はもはや「著者の考え」ではなく、いろいろ検討した結果獲得した「自分(読者としての自分)の考え」だといったよね。<br />
<br />
<b>大崎：</b>はい。<br />
<br />
<b>山口：</b>社長と従業員の今のやり取りの例でも同じ。「最初の提案」は「社長の考え」だけど、従業員が最後に「やっぱり社長の提案は正しい」と「ドッホ」にたどりついた時には、それはもはや社長の考えではなくて、従業員が自分の頭でいろいろ検討した結果たどりついた「従業員自身の考え」だ。「主体性」はそこから生まれる。<br />
<br />
<b>大崎：</b>「自分自身の考え」だから、なぜ「その提案を実行するのか」ということも「腹落ち」しているし、困難に突き当たった時も「じゃあ、こんな風にやってみよう」といった打開のための工夫も生まれる。<br />
<br />
<b>山口：</b>そのとおり。「やっぱり」にたどり着いていないと、ちょっと上手くいかないと、「そもそも社長の提案に無理があったんだよな」とか言って、結局は社長の所為にして終わってしまいかねない。<br />
<br />
<b>大崎：</b>「あとは、社長の次の指示を待つ」だけになってしまうと。<br />
<br />
<b>山口：</b>無批判に「はい、わかりました」と受け入れるのではなく、「否定的」「批判的」に検討してその後に「ドッホ」にたどり着く。このプロセスがあってはじめて、物事に「主体的」に向かう姿勢が生まれるわけだ。<br />
<br />
<b>大崎：</b>なるほど。「主体的」とは「批判的」であること――先生の指導教授ってすごい人なんですね。毎回の事ですが、弁証法についていろいろお話を伺っていると、なんだか凝り固まっていた頭がほぐされて視野が広がって行くというか、頭の容量が大きくなっていく感じがします。弁証法は面白いですね。<br />
<br />
<b>山口：</b>そう思ってくれると嬉しいね。</p>









































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<h3 >企業も「らせん的」に発展する</h3>









































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<p><b>大崎：</b>ところで、もう1つ質問なんですが…<br />
<br />
<b>山口：</b>どうぞ。<br />
<br />
<b>大崎：</b>物事は「否定の否定」を経て、「らせん階段」をのぼるようにして発展していく――こういう捉え方をするのが弁証法なんだと先ほど言われました。その際、社長がこういう思考法を身に着けることが「企業の未来を展望する上で大変有効だ」と言われましたが、この点についてはまだご説明いただいていません。これはどういう意味なんでしょうか。<br />
<br />
<b>山口：</b>企業も「らせん的」に発展していくものだから、社長が弁証法を知っていれば、自社の未来の歩みをそういうものとして描くことができるということ。知らないと、「場当たり的」になりかねない。一見会社が発展しているように見えていても、実は「糸が切れた凧」みたいにフラフラと行方も知れず風任せで飛んでいるだけ、やがて失速して急落なんてこともありうる。<br />
<br />
<b>大崎：</b>企業も「否定の否定」を経て、「らせん的」に発展していくんですか。<br />
<br />
<b>山口：</b>そうだよ。ただ、その場合大切なのは、その「発展」とは何なのかということだ。企業規模が大きくなることかと言えば、たしかにそういう側面はあるけど、ちょっと違うよね。<br />
<br />
<b>大崎：</b>規模はさほど大きくなっていないけど、「事業内容が随分多角化したなあ」なんて時も「発展した」と言えそうに思います。<br />
<br />
<b>山口：</b>ここでちょっと、問題の立て方を変えてみよう。たとえば企業規模が大きくなったり、事業の多角化が進んだことで、その企業の「何」が発展したのか――こんな風に問うたら、君はなんて答える?<br />
<br />
<b>大崎：</b>企業規模とか事業の多様性は発展の「形」にすぎないということですよね。そういう「形」に表現される発展の「中身」は何か。えっ、何だろう。難しいなあ。<br />
<br />
<b>山口：</b>実は、そこに答えを与えるのが「否定の否定」、企業の発展における「やっぱり(ドッホ)」なんだ。<br />
<br />
<b>大崎：</b>どういうことですか。</p>









































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<h3 >発展は現状の「否定」から始まる</h3>









































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<p><b>山口：</b>ここはすごく重要なところなので、この点をはっきりさせるために企業の実例を使って解説してみたいと思う。<br />
<br />
<b>大崎：</b>お願いします。<br />
<br />
<b>山口：</b>ここで取り上げようと思うのは、(株)メガネマーケットの事例。同社の久賀きよ江社長のお話はスモールサンニュースでも何回か紹介しているので、ご存じの読者の方も多いと思う。久賀社長との最初の対談は2018年8月号で、大手ディスカウンターに押されて既存の眼鏡店が次々と撤退を余儀なくされていった2000年代初頭、中小眼鏡店である(株)メガネマーケットがこの逆風の中で何を学び、どう対応して行ったかというお話を久賀社長から伺った。<br />
<br />
<b>大崎：</b>当時はディスカウンターの出現によって眼鏡市場の規模が激減したみたいですね。<br />
<br />
<b>山口：</b>久賀社長のお話では、市場規模が8000億円から3900億円に半減してしまったらしい。近くのディスカウンターのお店はお客さんでにぎわっているのに、自分のお店は閑古鳥が鳴いている。こういう現実を突きつけられたことで、久賀社長の頭の中に「自社が存在する意義はどこにあるのか」という根本的な疑問が浮かんでくる。この問いに答えを出すことから、打開に向けた一歩が始まった。社長は対談でこんな風に語っている——。</p>









































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<div class="entry-container"><blockquote>逆風の中で私たちがたどり着いた「答え」——それは「私たちの役割はメガネを売ること自体にあるのではなく、そういうことを通して“快適な生活”をお客様に提供していくことなんだ」というものでした。(<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-196.html"target="_blank" rel="noopener noreferrer">スモールサンニュース2018.8月号</a>)</blockquote></div>









































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<p><b>大崎：</b>まさに経営理念の再定義ですね。この再定義で同社にどんな変化が起きたんでしょうか。<br />
<br />
<b>山口：</b>第一に、従業員の意識が変わった。「自分たちは眼鏡を売る仕事をしているのではないんだ。目の前にいるお客様の生活の改善に貢献するんだ」というように意識しはじめ、従業員と顧客との距離がぐんと縮まった。<br />
<br />
<b>大崎：</b>なるほど。<br />
<br />
<b>山口：</b>二つ目は、新事業への展開だ。「お客様の生活の改善に貢献する」ということであれば、必ずしも眼鏡にこだわる必要はない。そこで、新たに「補聴器」を扱うことにした。最近は補聴器を扱う眼鏡店も増えてきているけど、当時の中小眼鏡店ではそういうケースはまれ。完璧な聴力検査室をつくり、検査機器を設置。さらに従業員も外部の研修に通った。おかげで、かなりレベルの高い高額な補聴器を扱えるようになった。結果的に、これが業績回復に大きく貢献した。<br />
<br />
<b>大崎：</b>中小としては思い切った投資ですよね。<br />
<br />
<b>山口：</b>三つ目は新業態の開発だ。具体的には子供の眼鏡だけを専門に扱う「こども眼鏡館」を開店した。メガネをかけることにコンプレックスを感じていた子供たちの「心」に目を向けて、子供たちがワクワクしながらメガネを選べるように子供用のブランド眼鏡が多数並ぶ「子供専用の眼鏡店」を新規開店したんだ。<br />
こうした３つの変化を伴いながら、同社は危機を脱し、力強くあらたな歩みを重ねて行くことになった。<br />
<br />
<b>大崎：</b>素晴らしいですね。<br />
<br />
<b>山口：</b>ところで、補聴器ビジネスを始めたり、「こども眼鏡館」という新業態を開発したりというのは、要するに既存の「眼鏡専門店」のあり様を「否定」したということだよね。<br />
<br />
<b>大崎：</b>たしかに。<br />
<br />
<b>山口：</b>これが「否定の否定」でいう、1回目の否定だ。発展は現状の「否定」からはじまる。何でもそうだけど、現状を「否定」する勇気と知恵がないと発展は不可能だ。<br />
では、2回目の否定は何なのか。その結果たどり着いた「やっぱり(ドッホ)」とは何だったのか。<br />
<br />
<b>大崎：</b>そこです。私がお聞きしたいのは。</p>









































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<h3 >企業が「否定の否定」でたどり着くもの</h3>









































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<p><b>山口：</b>(株)メガネマーケットの事例の中には、それを教えてくれるエピソードがある。先ほど、新規事業として補聴器の分野に進出したと言ったよね。<br />
<br />
<b>大崎：</b>はい。<br />
<br />
<b>山口：</b>その補聴器を求めて、ある高齢男性がお店にやってきた。そして、その男性が「最近、自分は生き甲斐を失った」と言って、こんな話をされたそうだ——</p>









































<!-- テキスト -->

<div class="entry-container"><blockquote>「私は妻といろんな話をするのが好きだ。今やそれが生き甲斐だと言ってもいい。でも、最近は年齢の所為で聴力が衰えたのか、妻の言っていることをうまく聞き取れなくなってしまった。これじゃあ、生き甲斐を失ったようなものだ」</blockquote></div>









































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<p>注目すべきは、この話を聞いた時の従業員の対応だ。その従業員は、「一度奥様にご来店いただけませんか」と申し出たそうだ。<br />
<br />
<b>大崎：</b>奥様に?<br />
<br />
<b>山口：</b>奥様に来てもらって何をしたかというと、奥様の声のトーンを調べた。そして、その男性のために用意した補聴器を奥様の声が一番聞き取りやすいように調整したんだ。後日、男性が奥様を伴って来店されて補聴器を装着すると、「妻の言葉がすごくよく聞き取れます。生き甲斐を取り戻した思いです」と言われて、大変喜んでくれたそうだ。<br />
<br />
<b>大崎：</b>その従業員さん、すごいですね。 <br />
<br />
<b>山口：</b>なぜ、そういう対応ができたか。それは、その従業員が「自分たちの役割は補聴器を販売すること自体にあるわけではない」と考えていたからだ。「自分たちの役割は、そういうことを通して“快適な生活”をお客様に提供していくことなんだ」と考えていた。だから、奥様を呼んで声のトーンをチェックするなんてことまで発想が至ったわけだ。<br />
<br />
<b>大崎：</b>それって、同社が眼鏡専門店である時に再定義した「理念」そのものですよね。<br />
<br />
<b>山口：</b>そう。だから、そんな従業員の対応を見て、久賀社長はこう思っただろうね。「私たちの経営理念は、やっぱり間違っていなかった」と。<br />
<br />
<b>大崎：</b>“やっぱり”(ドッホ)が出て来ました。<br />
<br />
<b>山口：</b>従来型の眼鏡専門店のあり様を「否定」して、同社は補聴器ビジネスや「こども眼鏡館」を併設する新たな業態へと変化した。でも、「 “快適な生活”をお客様に提供していく」という経営理念そのものは新たな業態においてもきちんと貫かれている。久賀社長が感じたであろう「やっぱり」は、「業態は変わっても、そこは変わっていないぞ」と、「否定」によって生じた“変化”をもう1回「否定」することで感じる「やっぱり」なんだ。<br />
<br />
<b>大崎：</b>「変わった」と否定したんだけど、それでも「変わっていないものがある」と再度否定する。だから、「否定の否定」なんですね。<br />
<br />
<b>山口：</b>ちょっとややこしいから、もう少し説明すると…。たとえば僕が子供の頃仲良くしていた友人と50年ぶりに会ったとする。友人はすっかり昔と違う僕の姿を見て「山口も変わっちゃったな」と思うだろう。これが1回目の否定だ。でも、しばらく話していると、だんだんと昔の僕が蘇ってきて、やがては「目の前に居るのは、やっぱり山口だ」と感じるようになる。「変わっちゃった」という「否定」を、「やっぱり変わっていない」ともう1回否定する。久賀社長が感じたであろう「やっぱり」もこれと同じ。いずれも、変化の中にあっても「変わっていないもの」があることを認識した時の「やっぱり」だ。<br />
<br />
<b>大崎：</b>その「変わっていないもの」が、企業の場合は「経営理念」だということですね。<br />
<br />
<b>山口：</b>そのとおり。「否定の否定」によって、わが社の理念は「やっぱり正しい」のだと、あらためて理念の存在やその重要性を再認識する。これが企業の発展における「ドッホ」だ。<br />
しかもその「理念」は新たな業務展開によって——(株)メガネマーケットの場合で言えば、補聴器ビジネスや「こども眼鏡館」の業務を通して——その具体的内容がより豊かなものになっている。<br />
<br />
<b>大崎：</b>「らせん階段」を1周してより高見に達したわけですね。企業も「らせん的」に発展するのだと言われていたのはそういう意味なんですね。ということは、先ほどの質問——企業規模を大きくしたり、事業の多角化を進めたことで、その企業の“何”が発展したのかという設問——の「答え」は、「経営理念」のもつ“具体的な内容”だということになりますか。<br />
<br />
<b>山口：</b>正解! 企業の発展というのは、弁証法的に言えば、経営理念のもつ具体的な内容がより豊かになっていくことなんだ。そして、それを実践していくためには、経営者はつねに自社の理念に立ち帰って、変化の中にその理念が貫かれているかどうかを確認する必要がある。そういう認識のないまま、利益追求だけで経営を進めていくと、まさに「糸が切れた凧」になって、一時的には上手く行ってもいずれは墜落することになりかねない。<br />
<br />
<b>大崎：</b>「繰り返し理念に立ち返りながら、でも変化を遂げて行く」、これが「らせん的発展」なんですね。<br />
<br />
<b>山口：</b>そのとおり。だから逆に言えば、経営理念は設定したけど、それに縛られて「全然変化できない会社になっちゃった」というのでは意味がない。そういう会社は経営理念がむしろ重石になって、「らせん階段」をのぼれないでいることになる。<br />
<br />
<b>大崎：</b>久賀社長のように、会社の具体的なあり様はいろいろ変化したけど、「“やっぱり”わが社の理念は間違っていなかった」と再認識できれば、その会社は間違いなく「らせん階段」をのぼっていることになる。そういう視点を持ちながら、日々経営実践を積み重ねていくことが必要だということですね。<br />
今回もまた、「弁証法的に考える」ことの重要性をあらためて認識できたように思います。ありがとうございました。次回はいよいよ最終回です。どうぞよろしくお願いします。</p>








































				
				
			]]></description>
			<category>対談</category>
			<guid isPermaLink="true">https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5983.html</guid>
			<pubDate>Tue, 20 May 2025 12:00:59 +0900</pubDate>
		</item>
		<item>
			<dc:creator>山口恵里</dc:creator>
			<title>対談　2025年3月号</title>
			<link>https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5872.html</link>
			<description><![CDATA[
				
				



<!-- テキスト -->

<h2 >「社長の教科書(第3章 社長の思考)<br />
～賢い経営者は弁証法的に考える(その第3節)～」</h2>









































<!-- テキスト -->

<p>立教大学名誉教授　スモールサン主宰　山口義行　<br />
聞き手　大崎まこと(ライター）</p>








































<hr class="clearHidden">





<!-- 画像 -->
<div class="column-image-right">
		<img class="columnImage" src="https://www.smallsun.jp/archives/002/202503/2260690e34a3b6bc596b25ebb41dace5.png" alt="" width="340" height="258">
</div>


































<!-- テキスト -->

<p>　社長に就任してまだ日が浅い経営者。今後社長に就任する予定の次世代経営者。社長の右腕として経営の一旦を担う幹部社員。社長としての経験は豊富だが、あらためて社長のあり方について考え方を整理したいと思っている熟練経営者。そんな人たちのために、スモールサンに関わる専門家や経営者の知恵を結集したスモールサン版『社長の教科書』を作りたい。――そんな私の思いに賛同してくださった方々とともに、すでに数回にわたり教科書作りの準備を兼ねて対談形式で「社長学」を論じてきた。<br />
<br />
<br />
　第1章「社長の仕事～社長が絶対にやらなければならない“４つの仕事”～」では栗原正幸氏との対談を掲載した。———<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5282.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">スモールサンニュース2024年２</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5347.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">３</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5432.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">４</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5469.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">5月号</a><br />
　第2章「社長の心得～社長が知っておくべき“４つの心得”」では新田信行氏との対談を掲載した。――<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5492.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">スモールサンニュース2024年６</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5518.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">７</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5567.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">８</a>、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5616.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">９月号</a>。<br />
　そして、<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5756.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">昨年12月号</a>からは第3章「社長の思考～賢い経営者は弁証法的に考える～」として、私(山口)がライターの大崎まことさんを相手に「社長業を遂行するにあたって有意義な“弁証法的思考法”」について語っている。本稿はその第2節「矛盾と変化～成長する企業を目指して～」である。</p>









































<!-- テキスト -->

<h2 >Ⅲ 「弁証法で変化の多様性を知る(1)～“量質転化”～」</h2>









































<!-- テキスト -->

<h3 >「爪に穴が開いた」</h3>









































<!-- テキスト -->

<p><b>山口：</b>今回も経営者の体験談から話を始めたいんだけど、いいかな。<br />
<br />
<b>大崎：</b>はい、お願いします。<br />
<br />
<b>山口：</b>テレビCMで「カンジョウ・ブギョオ～」っていうのを見たことあるよね。<br />
<br />
<b>大崎：</b>はい、オービックのコマーシャルですよね。会計ソフトで有名な会社です。<br />
<br />
<b>山口：</b>オービックが販売している会計ソフトの開発者は和田成史さん。現在は株式会社オービック・ビジネス・コンサルタント(OBC)の代表取締役社長をされている。大学時代に学んだ会計の知識を基に会計ソフトを開発して、それを大手企業に売り込んだことから和田さんのビジネスが始まった。<br />
<br />
<b>大崎：</b>そうなんですね。<br />
<br />
<b>山口：</b>その和田さんも立教大学経済学部出身。ちなみに彼は僕の1歳年下だから、大学時代には同じキャンパスに居たことになるけど、当時はまったく知らない仲だった。僕が教授になったあと、「立教経済人クラブ」(立教大学出身のビジネスマンたちの交流組織)に講演に行った際、和田さんがそのクラブの会長だったことで知り合ったというのが始まり。その後、僕がプロデューサー兼キャスターをしていた「中小企業ビジネスジャーナル」(BS11)というTV番組のスポンサーを引き受けてもらったりして大変お世話になった。和田さんにはその番組にもご出演をお願して経営者としてのいろいろな体験を語っていただいたんだけど、そのお話の中で強く印象に残っていることがある。<br />
<br />
<b>大崎：</b>どういうお話しですか。<br />
<br />
<b>山口：</b>「爪に穴が開いた」という話。<br />
<br />
<b>大崎：</b>「爪に穴」ですか?<br />
<br />
<b>山口：</b>会社を起ち上げて数年後、ストレスで「爪に穴が開いた」そうなんだ。<br />
<br />
<b>大崎：</b>ストレスで爪に穴が開くなんてことがあるんですか。<br />
<br />
<b>山口：</b>僕も和田さんにまったく同じ質問をしたことを覚えているけど、実際にあるらしい。余程すごいストレスだったみたいで、その時には奥様にも「俺は経営者としてもうダメかもしれない」と話されたみたいだよ。</p>









































<!-- テキスト -->

<h3 >集団から組織へ</h3>









































<!-- テキスト -->

<p><b>大崎：</b>和田さんをそれ程に追い詰めたものって何だったんですが。売上げが下がったとか、資金繰りがうまくいかないとか…。<br />
<br />
<b>山口：</b>そういう問題ではなかったみたいだ。オービック・ビジネス・コンサルタントの従業員数は現在1200人を超えている。会社起ち上げ時に何人だったかは知らないけど、10人、20人という時代があり、やがて50人、100人へ、そして現在に至った。まさに急成長なんだけど、その急成長が和田さんの悩みを生むことになる。<br />
中途採用で急速に従業員を増やしてきたために、会社がそれぞれ違う企業風土で育った人たちの集まりになっていた。50人くらいまではそれでもよかったみたいだけど、50人を超えたあたりから“悩み”が始まる。皆バラバラでまとまりがない。和田さんがイメージする会社の在り方とか、ビジネスの方向性とか、そういうものが従業員になかなか浸透していかない。「こういう従業員であってほしい」と思っても、そういうようには動いてくれない。それで、経営者として「俺はダメなんじゃないか」という気持ちになったみたいなんだね。<br />
<br />
<b>大崎：</b>和田さんはどうされたんですか。<br />
<br />
<b>山口：</b>先輩の経営者に相談したら、「君の会社には経営理念はあるのか」と問われたと。そこで早速理念づくりから始め、同時に優秀な人材コンサルタントを紹介してもらって、従業員教育、企業内研修を繰り返した。そうした努力の甲斐あって、会社に「統一性」が生まれ、一時期の危機を脱して会社はさらに飛躍的成長を遂げていくことになった。和田さんは、その時のことを「“集団”が“組織”になった時だ」と言われている。</p>









































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<h3 >「量の変化」が「質の変化」を要求する</h3>









































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<p><b>大崎：</b>「集団から組織へ」――経営者が学ぶべき点が多々ありそうなお話です。ところで、それと「弁証法」とはどういう関係があるんですか。<br />
<br />
<b>山口：</b>実は“大有り”なんだよ。今回 (第3章「社長の思考」の第3節)は「弁証法で変化の多様性を知る」というのがテーマなんだけど、弁証法的な思考法の中に「量質転化」というものがある。これは弁証法のもっとも重要な「法則」の一つともいわれている。<br />
<br />
<b>大崎：</b>量質転化!?<br />
<br />
<b>山口：</b>「量質転化」というのは、「量の変化が“ある限度を超える”と質の変化を引き起こす」ということ。たとえば、水をドンドン温めていくと、水の温度が上がっていくよね。これは量的な変化。温度は上がっていくけど、液体であることに変わりはない。しかし、この量的変化が進行していって温度が100度を超えると、水は一気に液体から気体に変わる。もう液体のままではいられなくなるわけだ。そこで、液体から気体へと「質的な変化」が起きる。——これが「量の質への転化」で、弁証法で重視される物事の変化のあり方だ。<br />
<br />
<b>大崎：</b>先ほどの和田さんのお話で、従業員が50人を超えたあたりから“悩み”が始まったと言われていましたが、これは従業員数という「量的な変化」が今までの会社経営のあり方に変更を迫るような「質的な変化」を要求する段階に至ったということなんでしょうか。<br />
<br />
<b>山口：</b>まさにそのとおり。従業員の数が増えるというのは、それ自体は「量的な変化」にすぎない。でも、それがある限度を超えると、会社経営のあり方そのものに変更をせまるようになる。経営理念があいまいだったり、従業員教育がなおざりだったりという経営ではもうだめ、会社が変わらなければならない――従業員数という「量的な変化」がそういう「質的な変化」を要求するわけだ。和田さんはそこを敏感に感じ取った。それで社内改革を進めて、会社の「質的な変化」を実現していった。おかげで、さらなる成長が可能になったというわけだね。<br />
<br />
<b>大崎：</b>なるほど。でも「量質転化」という言葉を知っていたら、和田さんも「爪に穴が開く」前に対応できていたかもしれませんね。<br />
<br />
<b>山口：</b>そうだね。「量質転化」というのは会社経営の上でも非常に重要な「変化の捉え方」だ。「売上げが増えた」、「従業員が増えた」、「内部留保もできた」、そういう「量的な変化」で満足して達成感を味わっているだけの経営者じゃダメだということだよね。そういう「量的な変化」がどんな「質的な変化」を要求しているのか、そこを感じ取ってしっかり分析して対応していくのが経営者の役割だ。それができないと、会社のさらなる成長が望めないだけでなく、むしろ会社を危機に陥れることになる。――以下では、この一連の関係を弁証法的に整理してみようと思うけど、いいかな。<br />
<br />
<b>大崎：</b>ぜひお願いします。</p>









































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<h3 >「量的変化」が物事を「反対物へと転化」させる</h3>









































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<p><b>山口：</b>当たり前だけど、「従業員が増えていく」というのはビシネスがうまく行っていることの証左だよね。<br />
<br />
<b>大崎：</b>もちろんそう思います。ビジネスがうまくいっていなければ、従業員を減らさなければならないですもの。<br />
<br />
<b>山口：</b>ビシネスの「成功」が従業員増を伴って進行していく。これがプロセスの第一段階だ。そして、従業員増という「量的な変化」がある限度を超えると、それが会社経営に「質的な変化」を要請するようになる。これが第二段階。そして、経営者がその要請にきちんと対応できないと、会社経営も行き詰ってビジネスも「失敗」してしまう。これが第三段階だ。<br />
<br />
<b>大崎：</b>出発点は「成功」だけど、終点は「失敗」ですね。<br />
<br />
<b>山口：</b>そうそう。これは「成功」が「失敗」という反対物に転化する過程を示している。その際、それを媒介するのが(この場合は従業員増という)「量的な変化」だ。――このように、「量的な変化」が媒介役となって物事を「反対物へと転化」させていく。「変化」をこういう風に捉えるというのも、弁証法の大きな特徴なんだ。<br />
<br />
<b>大崎：</b>前回先生は「成功の中に失敗を見よ」、「失敗の中に成功を見よ」というお話をされました。それが、物事を「対立物の統一」として捉える弁証法的な思考法だと。でも、「成功」がどうして「失敗」を導くことになるかについては説明されていませんでした。今のように「量質転化」ということを変化のプロセスのなかに含めて考えると、なぜそういうことが起きるのかについても合点がゆきます。<br />
<br />
<b>山口：</b>「量質転化」という考え方は、「成功から失敗へ」とか「失敗から成功へ」といった「質的な変化」――反対物への転化――がなぜ起きるのかを説明してくれる。前回「子供」が「大人」になる変化を取り上げたけど、この変化もそれがなぜ起きるかというと「子供」が肉体的、精神的に成長していくという「量的な変化」があるからだよね。そういう「量的な変化」を経て、「子供」はいつか「大人」という反対物に転化する。<br />
<br />
<b>大崎：</b>なるほど。</p>









































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<h3 >600回の「失敗」が生んだ「成功」</h3>









































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<p><b>山口：</b>新田信行氏が僕との対談の中で「エジソンは電球を作るまでに600回も失敗した」という話をされている。読者諸氏の中には読まれた方も多いと思うけど、その個所をちょっと引用するね——</p>









































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<div class="entry-container"><blockquote>例えば、エジソンという人は電球を作るまでになんと600回も失敗したらしいんです。いろんな素材で試すんですが、燃えちゃったり、溶けちゃったりしてうまくいかない。ところが、エジソン本人はその600回のうちの1回たりとも「失敗」だと思っていなかったらしいんですね。紙で試したら燃えちゃった――これは普通の人から見れば「失敗」なんでしょう。でも彼にとっては、これは「成功」なんです。というのは、おかげで「紙じゃダメなんだ」ということがわかったんだから、というわけです。…起きた事実そのものは同じなんですが、それを「失敗」と捉えるか、それとも「成功」と捉えるか、それ次第で結果は大きく違ってきます。もし「失敗」と捉えていたら、試す度に心が落ち込んでしまいますから、とても600回も挑戦することはできなかったでしょう。でも彼にとっては、その一つ一つがすべて「成功」なんです。彼がそう「解釈」したからこそ、へこたれずに600回も挑戦することができたし、結果的に世の中に存在しなかった電球というものを作り上げることができたわけです。<br />
——スモールサンニュース2024年８月号<a href="https://www.smallsun.jp/smallsun_news/taidan/entry-5567.html"target="_blank" rel="noopener noreferrer">「社長の教科書第2章第3節」</a></blockquote></div>









































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<p><b>大崎：</b>いいお話しですね。ちょっと元気がもらえそう。<br />
<br />
<b>山口：</b>このエジソンの話を新田さんは「解釈力」というテーマで話されていて、「起きてしまったこと」をどう「解釈」するか、それ次第で「運」が変わってくるということを言われているんだけど、「量質転化」という点で言えば、この事例のポイントは何と言っても“600回”という「量」にあるよね。<br />
<br />
<b>大崎：</b>たしかに1回や2回の失敗では何も発明できなかったでしょうからね。<br />
<br />
<b> 山口：</b>そうだよね。そのかぎりではただの「失敗」にすぎない。10回、20回でもやっぱりただの「失敗」だったかもしれない。でも、600回ということになると、さすがに「量的な変化」が「質的な変化」を生む段階に至る。その結果が、電球という画期的な発明だ。「量の変化」が媒介となって、「失敗」が反対物である「成功」へと転化したわけだ。</p>









































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<h3 >ギリギリ間に合った「量質転化」</h3>









































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<p><b>山口：</b>ところで、「量質転化」という変化の捉え方は「能力の取得」という点でも重要だよね。たとえば英会話の能力を身に付けるには、英語圏の国に行って生活してみることが一番手っ取り早いと言われている。でも、数日間とか数週間程度では生の英語を聞き取れるようにはならない。「さっぱり聞き取れない」という日々が長く続く。でも経験者によると、6カ月くらいしたところで「あれ? 結構聞き取れるかも」という感じがしてくるらしい。日々の体験が積み重なって徐々に進行していた英語力の向上がしばらくは「量的な変化」にとどまっていた。それが「聞き取れる」という「質的な変化」となって現れるには6カ月くらいかかったということだ。<br />
<br />
<b>大崎：</b>なるほど。「能力の取得」も「量質転化」の過程を辿るということですね。<br />
<br />
<b>山口：</b>またまた僕の経験談を持ちだして恐縮なんだけど、僕は大学院の「修士課程」から「博士課程」に進学する際の語学試験で「量質転化」というものを体感した。<br />
「修士課程」に入学する際の語学試験は英語だけなんだけど、「博士課程」に進む際の語学試験では英語以外にドイツ語がある。でも、僕はドイツ語なんて勉強したこともなかった。そこで、たまたま近くにドイツ語会話を教えてくれる「塾」があったので、そこに通って個人授業を受けることにしたんだ。「会話は必要ないんですが、文献を読めるように指導してください」と言ってね。<br />
先生と一緒にマックスウェーバーの『職業としての学問』を原文で読んだんだけど、もちろんさっぱり読めない。辞書を片手になんとか読もうとはするんだけど、全然ダメ。そんな日々が長く続いた。<br />
<br />
<b>大崎：</b>そのままでは、博士課程に進めませんよね。<br />
<b><br />
山口：</b>修士課程に在籍する2年間のうちにドイツ語がある程度読めるようにならないと学者の道は諦めなければならなくなる。必死に頑張ったんだけど、なかなか成果が出てこない。ところが、2年目の冬、試験の丁度1週間くらい前のある日、いつものようにドイツ語の原文に向かっていると、「あれ、読めるぞ」という感覚がしたんだ。その時の感覚は今も覚えている。「これなら、もしかして合格できるかも」と思って1週間後の試験に挑んだ。結果は、なんとか合格。当時は「量質転化」という言葉なんて知らなかったけど、これはまさに「ギリギリ間に合った量質転化」だ。おかげで、僕は学者になるための第一歩を踏み出すことができた。</p>









































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<h3 >「カリスマ性」か「論理の力」か</h3>









































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<p><b>大崎：</b>先ほどのエジソンの話でも、先生の今のお話でも感じるのですが、「量質転化」が起きて努力の成果がはっきり現れてくるまでの期間、どうやったらモチベーションを維持して頑張り続けられるか、そこがポイントだと思います。<br />
<br />
<b>山口：</b>経営者には「カリスマ性」が必要だという人がいるよね。<br />
<br />
<b>大崎：</b>よく聞きます。マスコミが使う「カリスマ経営者」という言葉は「褒め言葉」ですが、そこには「経営者にはカリスマ性があった方がいい」という判断が前提になっているように思います。<br />
<br />
<b>山口：</b>そうだよね。でも、なぜ経営者に「カリスマ性」が必要なのかと問うと、必ずしも答えははっきりしない。僕は、その答えは「量質転化」にあると思っている。<br />
<br />
<b>大崎：</b>といいますと。<br />
<br />
<b>山口：</b>物事は「量質転化」の過程を経ながら変化していく。これは言いかえると、努力はその度合いに応じて漸次的に成果を生んでいくわけではないということ。努力しても努力しても成果が現れない時期がある。でも、いずれは「量質転化」が起きて、これまでの努力が一気に成果となって現れる時が来る。君が言うように、問題はそれまでの期間、モチベ―ションをどう維持していくかだ。<br />
その際求められるのが、経営者の「カリスマ性」だと思う。「社長は今の努力を続ければきっとうまくいくと言っている。あの社長が言うんだから、間違いないだろう。今は成果が出ていなくてもやがては出てくる。それを信じて頑張ろう」。――そんな気持ちにさせてくれる経営者がいたらありがたいよね。これは、従業員が仕事上の能力を身に着けて行く過程でも言えることだし、会社として新規事業に挑戦する際にも言えることだ。<br />
<br />
<b>大崎：</b>なるほど。でも、社長の「カリスマ性」は実績があってはじめて身につくものですよね。たとえば代替わりしたばかりで、まだ経営者としての実績が乏しい社長の場合は、この手は使えません。<br />
<br />
<b>山口：</b> そこで必要になるのが、「論理的説得力」。社長は現在の努力にどういう意味があるかをきちんと伝えるとともに、物事の変化は「量質転化」を辿ることを示してこんな風に語ってほしい。——<br />
「量の変化」にとどまっている間は変化が目に見える形で現われて来ない。今の努力はその「量の変化」の段階にある。でも、目には見えないけど、変化は着実に起きている。だから、この調子で努力を続ければ、やがて「質的変化」が起きて、これまでの努力が成果となって目に見えてくる。それまで諦めないで頑張ろうよ——と。<br />
<br />
<b>大崎：</b>これはまさに「カリスマ性」に代わる「論理の力」ですね。今日もまた弁証法が実践上の武器になることを学びました。<br />
さて次回は、第3節「弁証法で変化の多様性を知る」の「（2）」です。どんなお話が聞けるのか楽しみです。次回もよろしくお願いします。</p>








































				
				
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			<category>対談</category>
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			<pubDate>Fri, 21 Mar 2025 12:00:59 +0900</pubDate>
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